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ワイングラスに
映る風景

Aromas〜アロマス〜
香りで綴る、スペインのワインとガストロノミー

地中海が生んだ、新しいイザカヤ「Alapar(アラパル)」

地中海が生んだ、新しいイザカヤ「Alapar(アラパル)」

美食家を魅了するバルセロナのイザカヤ

近年、スペインの食通の間で「OMAKASE(おまかせ)」という言葉がすっかり定着しました。

OMAKASEとは、料理の内容を料理人に委ねる日本発祥のスタイルです。その日仕入れた最良の食材を使い、料理人が流れを組み立てながら一皿ずつ提供していく—。料理人の感性と旬の食材を最も純粋に表現する食文化として、世界の美食家たちを魅了してきました。

バルセロナでも、この「OMAKASE」という概念はガストロノミーの世界に浸透しています。そして今、新たに注目され始めているのが、日本の「IZAKAYA(居酒屋)」というスタイルです。

料理と酒を自由に楽しみ、会話と時間を共有する場。
その文化が、この地中海の街でも新しい形で広がり始めています。



私が「地中海のイザカヤ」と呼ばれるこの店を訪れたのは、奈良の酒蔵「長屋王」を醸す中本酒造の栗田さんからのご相談がきっかけでした。世界各地のミシュランクラスのレストランでも採用されているこの酒にふさわしいお店を、バルセロナで紹介してほしいというご依頼です。そこで思い出したのが、バルセロナの食通の友人に勧められていた「ALAPAR(アラパル)」でした。

ElBarriの遺伝子を受け継ぐ場所

この店がある場所には、かつて名店がありました。

それが、アルベルト・アドリアが手がけた「Pakta(パクタ」です。

フェラン・アドリアの弟として知られるアルベルト・アドリアは、日本料理とペルー料理の融合に強い関心を抱き、2013年にPakta(パクタ」を誕生させました。

日本料理とペルーの食文化が融合した「ニッケイ料理」をテーマに掲げたこの店は、当時のバルセロナのガストロノミーに新しい視点をもたらしました。

しかし、Pakta(パクタ」は2020年に閉店します。

そして、その同じ場所に新たに誕生したのが、ALAPAR(アラパル)」なのです。


二人が“並んで”、築いたレストラン

ALAPAR(アラパル)」を率いるのは、シェフJaume Marambio氏(ジャウマ・マランビオ)と、共同オーナーのVicky Maccarone氏(ヴィッキー・マッカローネ)。

二人は13年前、ジローナ近郊で出会いました。それぞれの分野で経験を重ねながら、文字通り“a la par(並んで、ともに)”歩んできました。その関係性こそが、店名の由来です。

ジャウマは、バルセロナの三つ星レストラン「Disfrutar(ディスフルタール)」をはじめ、「Tickets(ティケッツ)」、「Pakta(パクタ)」など、バルセロナのモダン・ガストロノミーを象徴する厨房で経験を重ねてきた料理人です。

ヴィッキーは「Hoja Santa(オハ・サンタ)」や「Niño Viejo(ニーニョ・ビエホ)」でディレクターを務め、レストラン運営の中核を担ってきました。トップレストランの現場で培われた二人の経験が、この店の基盤になっているのです。

地中海の食材 × 日本の技術


ALAPAR(アラパル)」のコンセプトは「地中海のイザカヤ」です。

スペインの伝統的なボデガ(スペインの伝統的なワインバー)の温かさを持ちながら、料理には日本をはじめとした、アジアの技術が自然に取り入れられています。


酢漬け、繊細な火入れ、包丁の技術—。

地中海の食材を軸にしながら、日本の料理技法が軽やかに、そして鮮やかに重なります。

スペインでアジアの要素を取り入れた料理というと、日本から来た方の中には
「なぜスペインで日本風の料理を」と感じる方もいるかもしれません。

 

けれども、ALAPAR(アラパル)」の料理はその印象を軽やかに覆します。

ここで出会う料理は、日本料理への敬意を感じさせながらも、地中海の食材、ニッケイの要素、そしてカタルーニャの自由な発想が自然に融合しています。


その結果として生まれる料理は、日本人にとっても新鮮な驚きを与えてくれます。
また、日本の居酒屋のようにアラカルトで自由に選ぶスタイルではなく、一皿ずつシェフが組み立てるデグステーションスタイル(コース仕立て)で提供される点も、この店ならではの魅力です。

酒が進む料理

とりわけ印象的なのは、料理の味の輪郭が明確であり、味の深さと余韻の軽やかさが絶妙に重なっている点です。その結果、どの皿も自然に酒を引き立て、ペアリングの楽しみが広がります。

ワインリストには約155種類のワイン、そして約40種類の日本酒が揃います。

ヴィッキーはこう語ります。

「ワインは国際的なラインナップですが、私たちの料理と調和するものを常に意識しています。料理全体に寄り添えるワインを選んでいます。」

実際、ワインや酒と料理の相性が驚くほど自然です。そこにはエレガントなバランスが生まれています。

 


日本から受けたインスピレーション


ジャウマとヴィッキーが創り出す「ALAPAR(アラパル)」の世界。
その料理や器、プレゼンテーションからは、日本の影響がふんだんに感じられます。

二人は毎年のように日本を訪れ、日本人の友人たちと交流しているといいます。

「日本は、私たちにとって大きなインスピレーションです。
食材に対する敬意、料理に向き合う精密さ、そしてその繊細な感性。
訪れるたびに、料理とは静けさやバランス、そして感情でもあるのだと気づかされます。」

その言葉からは、日本での経験や食文化への思いがにじみ出ていて、なんだか胸が温かくなりました。

確かな味と、人に惹かれてまた訪れたくなる店



左から、中本酒造の栗田さん、ヴィッキー、筆者、ジャウマシェフ

そして、この店の魅力は料理だけではありません。
ジャウマとヴィッキーの人柄です。

自然体で温かく、それでいて料理への情熱は真剣そのもの。二人の空気感が、そのまま店の雰囲気になっています。

気がつけば、店内は満席。

軽やかなかき氷はデザートワインとともに。酒好きの心も満たすデザート。


料理、ワイン、酒、人――すべてが心地よく重なり合う場所。
バルセロナ式の洗練されたイザカヤ「ALAPAR(アラパル)」では、一皿一皿に地中海の旬の食材、日本の技術、そして二人の想いが軽やかに重なり合います。

日本人の私たちにとっても、きっと新たな驚きや発見があるはずです。
ぜひ一度、この独自の世界を味わってみられてはいかがでしょう。

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Alapar(アラパル)
📍 Carrer de Lleida, 5, Sants-Montjuïc, 08004 Barcelona
@alaparbcn

 


Ikumi Harada

Ikumi Harada 原田郁美
Journalist & Creative Director

スペインワインとガストロノミーを専門とするジャーナリスト。広告代理店でデザイナーとして経験を積み、クリエイティブな視点と戦略的思考を身につける。2005年のスペイン留学を機にワインと食文化に魅了され、以来その研究と発信に力を注いでいる。2009年から日本およびアジア市場におけるスペインワインの輸出・プロモーションに携わり、2011年「スペインワインと食協会」を設立し普及と市場発展に努めている。2012年よりプリオラートでワイン造りに取り組み、2024年に自らの初ヴィンテージを発表。2025年からバルセロナの国際ワインコンクール「Barcelona Wine Test」の運営メンバーとして活動。WSET® Level 3、Spanish Wine Specialist(ICEX認定)。山口県出身。
@ikumiharada