新連載
「スペイン食文化をつくる人たち」
100人の物語を未来へ。
料理も、ワインも、オリーブオイルも、人がつくる。

食文化は、一人ではつくれない
スペインの食文化は、有名なシェフだけがつくるものではありません。
第一線で活躍するシェフこそ、その味わいの背景に、数えきれないほどたくさんの方々が関わっている、そのことをよくご存知です。
畑でブドウを育てる人。
ワインを醸す人。
オリーブを育てる人。
チーズや生ハムをつくる職人。
市場で働く人。
サービスとしてお客様を迎える人。
そして、ひとつのイベントやプロジェクトを成功へ導くために奔走する人たち。
一皿の料理も、一杯のワインも、ひと匙のオリーブオイルも、ひとりの力だけでは生まれません。
それぞれの場所で誇りをもって、自分の仕事に向き合うプロフェッショナルがいて、初めてスペインの食文化は育まれています。

だからこの連載でご紹介するのは、多くの人に知られるシェフや生産者だけではありません。
表舞台に立つことが少なくても、その仕事や生き方に心を動かされた料理人や職人、生産者、ソムリエ、サービススタッフ、そして食文化を支える人たちも、この「100人」の中に記録していきたいと思っています。
この連載で大切にしたいのは、その人が何を大切にし、どんな思いで食文化を育み、未来へつないできたのか。
その人生や言葉を、一人ひとりていねいに記録していきたいと思っています。

わたしが惹かれたのは、料理だけではなく「人」だった
わたしが執筆を始めたのは、当時、業界最大手の飲食情報サイトでした。
担当は「ワインのある飲食店」。
新規オープンや話題のレストランを取材し、その魅力を伝える記事を書いていました。
編集長から言われていたのは、「店だけではなく、オーナーの生き様も書きなさい。」ということ。
だから取材では、お店のコンセプトや料理への想いだけでなく、「なぜ、この店をつくろうと思ったのですか。」と、質問していました。
すると、そこで聞いたことは、料理のことだけではない、ひとりのストーリーだったのです。
なぜ、この仕事を選んだのか。
どういうことに悩み、どんな壁を乗り越え、この店をつくろうと決意したのか。
そういうことを語られる場面が少なくありませんでした。

わたしはお店のコンセプトを聞くことは、もちろん好きです。
料理をいただき、その味わいに感動することも何度もありました。
でも取材の中でいちばん胸が高鳴ったのは、その人の人生に触れる瞬間でした。
「もっと聞きたい。」
気づけば、いつもそう思っていました。

実は私は、昔からドラマや映画が好きです。
心を惹かれていたのは、派手な展開ではなく、人が迷い、決断し、自分の道を歩んでいく姿でした。
だから取材で出会うシェフや生産者、職人たちが語る人生は、私にとって何よりも興味深い「本当の物語」だったのです。
現実の人生は、ときにどんなドラマや映画よりも心を動かすことがありますよね。
振り返れば、私は料理やワインを取材していたのではなく、その向こうにいる「人」の物語に惹かれていたのだと思います。

書ききれなかった物語
17年間、スペインの食文化に携わる中で、多くの方々にお話を伺う機会をいただきました。
しかし、イベントレポートや取材記事では、そのすべてを伝えることはできません。
取材が終わったあとに、ふとこぼれた一言。
誌面には載せられなかったエピソード。
長年のお付き合いだからこそ聞くことができた人生の話。
聞いた瞬間に思わず周りを見渡し「あれ、こんな素敵なこと、わたししか聞いていないなんて!」と、なぜか焦るような気持ちになることもありました。
同時に、この話を必要としている人がいるはず、と強く思えてなりません。
けれども、記事の趣旨からは外れてしまうし、文字数の関係ででカットせざるを得ない・・・
そんなことが少なくなかったからです。
そんな「伝えきれなかった物語」を、このまま埋もれさせてしまうのは、あまりにももったいない。
その思いは、取材を重ねるたびに大きくなっていきました。

この連載で記録したいこと
新連載「スペイン食文化をつくる人たち」では、新たな出会いを記録するとともに、17年間で出会った方々との記憶をたどりながら、これまで伝えきれなかった言葉やエピソードを、一つひとつ掘り起こしていきたいと考えています。
わたしが記録したいのは、「何をつくっているか」だけではありません。
どんな人が、その文化を育んできたのか。
なぜその時、どんな思いがあってその道を選んだのか。
その人の人生や価値観、その人らしさが表れる言葉を残したいのです。
新たな出会いも、17年間の記憶の中に眠る物語も、この連載をとおしてここに残していきたいと考えています。

人の言葉を、未来へ。
人はいつか記憶から消えてしまいます。
だからこそ、その人が残した言葉や、その人らしさが伝わる物語を記録し、未来へつないでいきたい。
スペイン食文化を支えてきた人々の人生を記録し、未来へつないでいく人物アーカイブ・プロジェクトにしたいです。
シェフも、生産者も、ソムリエも、職人も、サービススタッフも。
この連載をとおして、ひとり、また一人と、その人だけの物語を記録していきます。
「100人の物語を未来へ。」
料理も、ワインも、オリーブオイルも、人の手から生まれる。
スペイン食文化を支えている100人の物語を未来へ繋ぎたい。
それが、この連載に込めたわたしの願いです。

スペインワインと食協会プロデュース「スペインワインと食大学」とは
企業と一般の人々のプラットホームとなるオトナの学び場「スペインワインと食協会(=スペ食大学)」を開催しています。
多くの人に知られていない「スペインワインと食」を見る、聞く、味わう、体験と、五感を使い楽しみながら、その業界の一流講師による貴重な講義を体験できます。ここでしか得られないリアルイベントならではの仲間との出会いは一生の宝物です。
スペインワインと食協会( @spainwinefood_japan)とは
スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。
スペインワインと食大学運営:スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤 スペインオフィス/原田)
WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org
「スペインワインと食」に関する情報を、日本とスペインから、イベントの告知も含めて発信してまいります。最新情報をいち早く知りたい方は、毎週金曜日に配信しているスペインワインと食協会のニュースレター「LOHASPAIN」をご活用いただけたら幸いです。
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⭐︎スペインワインと食協会プロデュースWEBマガジン「LOHASPAIN」@lohaspain

Tomoko Kato 加藤智子
Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer
福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、インポーター業は17年目を迎える。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府、企業団体や生産者からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに参加するほか、取材、イベント企画を行う。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。GPEスペイン・ワイン・テロワール・ディプロマ、オリーブオイルソムリエ®、Spanish Pantry(ICEX公認)。