本連載 “Spanish Lifestyle“では、
筆者がジャーナリスト兼学び手として
スペインのワインとガストロノミー界の権威である
フアン・ムニョス先生に同行し、学びの旅へ出かけます。
スペイン流のライフスタイルが
あなたの人生をより豊かに彩るレシピとなりますように—。
さあ、一緒にスペインの旅にでかけましょう。

カナリア諸島・テネリフェ島 唯一無二の畑──マイペ・デ・タガナナ

スペインをはじめ、ヨーロッパや日本の多くのぶどう畑を訪ねてきましたが、なかでも心を揺さぶられたのが、カナリア諸島の畑です。

ランサローテ島の、月面のクレーターを思わせる特別な仕立て「オヨス(Hoyos)」や、テネリフェ島の三つ編み仕立て「コルドン・トレンサード」も度肝を抜かれました。

そして、なにより忘れがたいのが、テネリフェ島北部、アナガ山塊に位置する1ha以下の小さな単一畑「マイペ・デ・タガナナ」です。


マイペは標高約350m、1100万年前に形成された島最古の土壌に根を張る畑で、樹齢120年以上の自根のリスタン・ブランコ(Listán Blanco)が、赤色玄武岩を含む粘土質の土地で力強く生き続けています。


幾たびの山崩れに押しつぶされそうになりながらも、無数の石の下で必死に命をつなぎ続けた――そんな健気な古樹たちが、今もなお静かにこの地に根を張っています。

湿ったツタ植物に覆われた急峻な山道を、幾度もカーブを越えながら数十分。ようやくたどり着いた畑、マイペで目にしたのは、苛酷な環境に屈せず育つブドウの姿でした。その生命力に、ただただ圧倒されました。

この特別な畑から生まれるのが、
MAIPÉ DE TAGANANA 2023(マイペ・デ・タガナナ) 
BODEGAS VIÑÁTIGO(ボデガス・ビニャティコ゚) 

生産本数1444本です。
(輸入元 Sara Corporation様)

 

フアン先生オススメのワイン

ぶどう・土壌・気候、そして品質を語る一本



このワインは、カナリア諸島の特異なテロワールを映し出す、非常に個性的な一本です。リスタン・ブランコは、ラテンアメリカやアメリカの一部で「クリオージャ・ブランカ」「パイス」「ミシオン」とも呼ばれ、近年再評価が進んでいる土着品種。その起源はスペイン南部にあるとされますが、特にテネリフェ島の「イコデ・ロス・ビノス」などで長く育まれてきました。

このワインに使われるブドウは、玄武岩や火成岩を含む岩盤斜面に育ち、旨みとともにミネラル感をもたらします。発酵、熟成は6ヶ月間アンフォラで行い、さらにフレンチオークで6か月間熟成。


フレッシュで伸びやかな酸と、樽由来のほのかなクリーミーさが調和し、火山性土壌ならではのミネラルが余韻に広がります。果実のアロマに加え、火山灰やラピリ(火山礫)、乾いた石、燻香といったニュアンスも特徴的。


これらは、森林火災などによるスモーキーさとは異なり、火山島の自然そのものが映し出す、ピュアで奥深い個性です。年間生産本数はわずか1563本。
大地の記憶を宿した、真に希少なテロワールワインです。

SALUD Y AMOR…..MUCHO AMOR
フアン・ムニョス – あなたのソムリエ
@juanmunozramos




2023年ヴィンテージから、アンフォラ(1000L)で発酵、熟成を開始。マイペ・デ・タガナナをはじめとした「特選区画(パーセル)ワインシリーズ」のブドウ栽培と醸造を手掛けるホルヘ。

Jorge Méndez Díaz(ホルヘ・メンデス・ディアス)

@bodegasvinatigo
@jorgemndzdz

ラ・ラグーナ大学で農業および農村環境工学の学位取得。マドリード工科大学でワイン栽培学と醸造学の修士号取得。父が創設したビニャティゴプロジェクトの二代目であり、メンデス家5代目。アルゼンチン、チリ、ブルゴーニュなどさまざまな地域でワイン造りの研鑽を積む。バスク・クリナリー・センターの選出する「ガストロノミー界の若き才能 100人 2024」の一人。将来を嘱望される若きブドウ栽培家兼醸造家。






Spanish Lifestyle:最高の人生を叶えるスペイン流レシピ

第四回目は、ただいまテネリフェ島から来日中の生産者「ビニャティコ」の特別な単一畑にスポットを当て、彼らが育むブドウ畑とテロワールの魅力をお届けしました。ワインのテイスティングコメントは、スペインワイン界の権威、フアン・ムニョス先生にご担当いただきました。
これからも、スペインワインやガストロノミー界の第一線で活躍する方々へのインタビューや、フアン先生ならではの深い知見、さらにおすすめのスペインレストランやバル、珠玉のワインたちをご紹介しながら、あなたの人生を豊かにするヒントをお届けしてまいります。次回もどうぞお楽しみに!

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Ikumi Harada
Journalist & Creative Director 

スペインワインとガストロノミー専門ジャーナリスト

大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして、クリエイティブな視点と戦略的思考を培う。
2005年から留学を機にスペイン食文化に魅了され、その研究に人生を捧げる。2009年から日本・アジア市場でスペインワインの輸出とプロモーションに従事。2011年に「スペインワインと食協会(AGE)」を創設し、クリエイティブディレクションや執筆を通じてスペイン食文化の普及と市場拡大に寄与している。2012年、プリオラートでワイン造りを始め、2024年に自らの初ヴィンテージをリリース。2025年より、フアン・ムニョス氏と共同企画「Spanish Lifestyle」連載開始。WSET ® Level 3, Spanish Wine SpecialistICEX認定)山口県出身。