「ミネラリーなワイン」と呼ばれるものについては、常に議論がつきまといます。存在そのものを疑問視する人もいれば、むしろ大きな影響を与える要素だと考える人もいる。実際のところ、ワインのミネラリティを捉えるのは容易ではありません。
もっとも分かりやすい例としては、以下のようなものが挙げられます。
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石灰質土壌(アルバリサ、チョーク、白い砂利など):塩味や旨味(サピディティ)
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火打石や花崗岩:スモーキーさと塩味的ミネラル感
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火山性土壌:酸味や灰、ゴムのようなニュアンス
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スレート(リコレリャ):鉄分を含んだ乾いた石の印象
こうした要素を手がかりに「ワインのミネラル感」を語り始めるわけですが、もちろんそこに気候や標高の影響が加わります。
修道院の文化と、山のブドウ畑が育む個性

プリオラートはまさに「山のワイン」の産地。大陸性気候の厳しさとリコレリャ(スレート)の存在が、その大きな特徴を形づくっています。急斜面の畑、段々畑(コステルス)で育つブドウは手間がかかりますが、1990年代に「クロス」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げた先駆者たちのおかげで地域は再び脚光を浴びました。若い世代は自らの土地を信じ、親の畑を守りながら、世界最高峰のワインと肩を並べる銘酒を生み出すようになったのです。

エスカラデイ修道院跡
修道院文化に端を発する小さなワイン産地プリオラートは、どこかルネサンス的な精神をも宿しています。多様なクローンのガルナッチャや、1902年以前に植えられた古木のカリニェナが残され、1940年代にはベルムントの鉱山で働いていたアンダルシア移民が持ち込んだペドロ・ヒメネスも定着しました。これらは地元のガルナッチャ・ブランカとともに、個性豊かな白ワインを生み出しています。それは、過剰なトロピカル香やハーブ香に寄りがちな新世界ワインとは一線を画す、「本物のワイン」といえるでしょう。
世界が認めた銘醸地

世界的に認められたDOCaプリオラートは、特にアメリカ市場で高く評価されたため、価格も上昇しています。フランスやアメリカのワインが1,000ユーロ、2,000ユーロ、あるいは3,000ユーロを超えるのなら、スペインのワインも同様に市場が評価する価格をつけて然るべきです。
とはいえ、プリオラートは小さな産地。むやみに拡大することなく、品質と価格のバランスを保ち続けることが重要です。
プリオラートのワイン――DOQ全域のワインから村名ワイン(Vi de Vila)、区画ワイン(Paratge)、単一畑の格付けワイン(Gran Vinya Classificada、グラン・クリュに相当)まで――はいずれも唯一無二の存在です。そこに込められているのは歴史、個性、そして厳しい大陸性気候やエブロ川流域の自然条件、さらにはミストラルの風がもたらす恩恵といった背景です。

現代のプリオラートを形づくったのは、アルバロ・パラシオス、ダフネ・グロリアン、ペレス家(サラ・ペレスと両親)、ルネ・バルビエ、カルレス・パストラナ、フェルナンド・グラシアらの先駆者たち。その後もフェレール=ボベ、トーレス、ペレラーダ、そして、ワイン評論家からも「気鋭の造り手」と称されるロジェール・グリフォイ・デクララをはじめ、新しい世代の造り手たちが次々と登場し、それぞれの個性と高い品質を追求したワインを生み出しています。
結局のところ、ワインを選ぶ基準は「産地」「品質」「個性」です。プリオラートのワインを選ぶということは、歴史と独自性、そして品質を選ぶことにほかなりません。
「歴史と個性、品質を飲む。それとも凡庸さとブランドを飲むか。選ぶのは自由であり、それぞれが尊重されるべきものです。」
―Salud, Priorat…そしてもちろんMucho Amor.
フアン・ムニョス – あなたのソムリエ
Juan Muñoz フアン・ムニョス
Master Sommelier
ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。
@juanmunozramos
さらに温暖化により、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどの国際品種は生育サイクルが乱れ、この地での栽培の難しさが年々増しています。そのため、8月から収穫を始める生産者も出てきました。一方、ガルナッチャやカリニェナといった土着品種は、干ばつや暑さにも耐え抜き、強靭さを示してくれました。
プリオラートが直面する課題は、気候変動に加え、深刻な人手不足にもあります。収穫を担う人々は高齢化が進み、険しい斜面に広がるブドウ畑は機械化が難しいため、人手不足は年ごとに厳しさを増しています。

偉大なワイン産地として世界に名を馳せるプリオラート。この地の歴史的な景観やワイン文化を「世界遺産に」という動きも広がっています。唯一無二の自然と風土、そして世代を超えて受け継がれてきた伝統が、この先も途切れることなく未来へとつながっていくことを願ってやみません。