【創業1872年・バルセロナ】地元客が通う、クラシックなカタルーニャレストラン「ラ・クララ(La Clara)」
バルセロナで出会う、本物のカタルーニャ料理 「バルセロナで、伝統的なカタルーニャ料理に出会うのって、難しいですね」スペインとワインに精通し、大阪でワインショップを営むある方のこの言葉が、ずっと心に残っています。 たしかに、世界有数の観光都市であるバルセロナの中心部には、「パエリア」や「サングリア」といった観光客向けの定番メニューを掲げたレストランが軒を連ねています。一方で、2024年の「世界ベストレストラン50」で1位に輝いたミシュラン三つ星の「ディスフルタール」をはじめ、スタイリッシュな空間で独創的なコース料理を提供するガストロノミック・レストランも年々増えています。しかし、“クラシックなカタルーニャ料理”を味わえる店は、意外にも限られているのが現実です。 筆者自身、「本当においしいカタルーニャ料理は、家庭にある」と感じています。なかでも、お母さんやおばあちゃんの世代がつくる料理には、“愛情と栄養”がたっぷり詰まっていて、何ものにも代えがたい味わいがあります。 それでも、バルセロナの中心地からほんの少し足を伸ばせば、昔ながらの味と空気感を大切に守り続け、今なお地元の人々に親しまれているクラシックなレストランに出会うことができます。今回ご紹介する「La Clara(ラ・クララ)」も、そんな一軒です。 1872年創業、常連客が通う、カタルーニャレストラン バルセロナのグラン・ビア沿い、サン・アントニ地区に佇むレストラン「ラ・クララ(La Clara)」は、1872年からずっと、この場所、この建物で、カタルーニャ料理が提供されてきました。150年の歴史を持ちながらも、現代の感性を取り入れた空間で、今も地元客が通い、愛され続けています。 エントラスのカウンターでは、気軽にお酒やタパスを楽しめるカジュアルなバル、中に進むと、白いテーブルクロスが整然と並ぶエレガントなダイニングエリア、広々とした個室もあり、空間ごとに食体験の表情が変わります。 ワイン愛好家にとっての“聖地” 圧巻は、約1300種類を誇るワインセラー。スペイン各地はもちろん、世界の銘醸ワインが丁寧に保管されており、そのワインリストは、カタルーニャのワインアワード「CartaVi」を2度も受賞するほどの充実ぶり。垂直ヴィンテージも豊富に揃い、まさに“ワインの聖地”と呼ぶにふさわしい場所です。 CartaVi コンテストの表彰状:Associació Vinícola Catalana主催 スペイン最優秀ソムリエの栄冠に輝いたこともあるフアン先生も、そのセレクションに深く感銘を受けられていました。まさに、ワイン愛好家にとっては夢のような一本と出会える場所です。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 料理は、バルセロナの市場から届く新鮮な食材を使った、王道のカタルーニャ料理。写真左は、25年にわたり「ラ・クララ」の厨房を支え続けてきたフアン・シェフ。そして筆者の右隣のカルロス氏は、現在この店のディレクターを務める人物であり、実はフアン先生の教え子のお一人。 これまでも、スペインを代表するシェフやワイン関係者をフアン先生からご紹介いただき、「Spanish Lifestyle」で取材やインタビューを重ねてきましたが、世界各地で活躍する1万人を超える教え子たちが、こうしてレストランやワイナリーの最前線で活躍する姿に出会えるのは、本当に感慨深いことです。フアン先生とともに、筆者自身も「Spanish Lifestyle」を通じて、スペインのワインと食の世界をこれからも応援していきたいと、改めて感じました。 2007年には、「生粋のカタルーニャ料理を提供するレストラン」として、ニューヨーク・タイムズ紙にも紹介され、その記事はいまも店内に大切に飾られています。「まずはこれを」とカルロスがすすめてくれた、「塩だらのブニュエロ(Buñuelos de Bacalao)」。ふんわり軽やかに揚がった一皿は、絶妙な塩加減と食感が魅力。家庭では出せない、プロの洗練が伝わる逸品です。 「カンタブリア産アンチョビとエスカリバーダのティンバル風盛り合わせ」じっくりと炭火で焼き上げた香ばしいエスカリバーダ(焼き野菜のマリネ)と、旨味たっぷりのアンチョビが織りなす絶妙なハーモニー。 カタルーニャのソウルフード「パン・コン・トマテ」に生ハムをのせて。「スズキのタルタル(Tartar de lubina)」。こんなモダンな一皿も。 カタルーニャ伝統の味わいを楽しめるラ・クララ自慢の「カネロン(canelons)」。赤ワインで4時間じっくり煮込んだ牛と豚の肩肉がとろけるように旨みを放ち、クリーミーなソースと絶妙に調和した一皿。カルロスのおすすめのもう一皿は、「野菜とキノコのアロス(Arroz de Verduritas y Setas)」。野菜とキノコの旨みがじっくり染み込んだご飯は、硬さも味わいも絶妙です。お米料理ながら軽やかで、ワインが進むのもうれしいポイント。後味も爽やかで、あっという間に平らげてしまいました。 観光地の喧騒を離れた“本物”の一軒 リラックスした雰囲気の中で、地元の人々と肩を並べて食事が楽しめる「ラ・クララ」。ショッピングや観光の合間はもちろん、ビジネスの会食や、グループディナーにも幅広く対応できる個室も備えた、まさに“使い勝手の良い”名店です。 観光客にはまだ知られていない貴重な穴場であり、地元バルセロナの人々にとっては欠かせない、落ち着ける安定のレストランです。クラシックなカタルーニャ料理の真髄と厳選されたワインを心ゆくまで味わいたい方に、ぜひ訪れていただきたい一軒。次のバルセロナ訪問では、ぜひ足を運び、地元の温かさと味わい深い料理の世界に浸ってみられてはいかがでしょう? ーーーーーーーーーーーーーーーLa Clara Restaurant住所: Gran Via...