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LOHASPAIN by スペインワインと食協会
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NEWS

【冬季限定】幻の3年を超えて。第二弾、オトナのアーモンド・ショコラ誕生
by KatoTomoko11月,05,2025

【冬季限定】幻の3年を超えて。第二弾、オトナのアーモンド・ショコラ誕生

今回、初めて記事をご覧になる方は、ぜひアーモンド・キャラメリゼの記事を読んでここに戻ってきていただければ流れがスムーズです。 以前の記事でご紹介した、この夏の「スペイン産ラルゲタアーモンド・キャラメリゼ」。 その経緯はこちら。 記事:「幻の3年を超えて。100箱のキャラメリゼに込めた手仕事と再会の物語」 とはいえ、みなさんお忙しいと思いますので、 こちらに加筆・修正した形で新商品「スペイン産ラルゲタアーモンド・ショコラ」の記事をご紹介します。     1. かつての人気菓子。そして、終わりと始まり。 2020年から2023年までの3年間、 「ラルゲタアーモンドのショコラとキャラメリゼ」は、当時の販売元が企画・製造・販売してくださっていて、それはそれは多くのファンをもつ人気商品でした。 私は、その素材、つまり「ラルゲタアーモンド」を輸入する立場で、その人気を陰から見守らせていただいていたのです。   当時のラルゲタアーモンド・ショコラ     “幻の3年”とも言えるその時期、多くのファンを魅了しながらも、やがて製造は終了。しかし、その味を忘れられないという声は、ずっと絶えませんでした。 終売から2年が過ぎても、アーモンド販売の時期には「もう一度、あの味を」という声を必ずいただくのです。今年の春も、また。 そして私は初めて思いました。「あの味は、輸入元の私が形にしなければ、もう2度と味わえないんだな・・・」と。     左側・小さな袋は120g、右側・大きな袋は1Kg業務用   2. 10年越しのご縁と“その時”のひらめき。 2025年の春。年が明けて、ようやく届いた新物のラルゲタアーモンド。例年であれば冬の入荷ですが、気候変動の影響で、今年はそのタイミングさえも変わってしまったのです。「今季の味を、一日でも早く届けたい」と、私は120g入りの一袋を、大阪でパティスリーを営む加奈代さんに送りました。 加奈代さんとのご縁は、もう10年以上前にさかのぼります。きっかけは、まだ「グリフォイオイル」として展開する前の「カミロケオイル」。オリーブオイルを通して出会い、大阪から東京のイベントに駆けつけてくださったり、関西のマルシェで販売してくださったりと、“応援者”という言葉では足りないほど、温かく支えてきてくださった方です。ちなみに、ふたりともドリカムファンという共通点もあって(笑)     2016年夏、大阪にて販売元主催によるオリーブオイルのイベント乾杯の挨拶をしてくださった加奈代さん     2016年夏、大阪イベントにて(加奈代さん・中央列左から二番目、筆者・中央列右側)     2022年秋、スペインワインと食協会後援のワインイベント@東京に駆けつけてくださった加奈代さん(左から2番目)     アーモンドショコラ終売の後、加奈代さんがパティスリーをオープンされたのを知ったとき、ふと「いつか、このラルゲタアーモンドでショコラ菓子を一緒に作れたら」そんな未来が思い浮かんだことがありました。 そして今回。新物のアーモンドを購入くださる方々から「もう一度、あの味を」という声が次々と届き、私は思わず加奈代さんに連絡を入れてしまったのです。本当に、衝動のように。   3. たった120gから生まれた、感動のひと口。   すると、数日後。信じられないことが起こりました。 なんと加奈代さんから2種類のアーモンドショコラが届いたのです。だってお送りしたのは、たった120gの一袋のアーモンド。きっと数粒だけを味わい、残りのすべてを試作に使ってくださったのだと思います。 そういうところに、加奈代さんのお人柄と、カフェオーナーとしての覚悟がにじんでいますよね。味に対する敬意、素材に対する愛、そして“想いに応える人”という誠実さ。 「ラルゲタアーモンド・ショコラ」という形になって届いたその味。  ...

スペイン産チーズはどこにある?
by KatoTomoko10月,17,2025

スペイン産チーズはどこにある?

暑すぎた夏が遠い昔のように思えるほど、落ち着いた気温、金木犀の香り、と、秋真っ盛りな東京です。 さて東京の街で、思わず心が踊るような“スペインの香り”に出会いました。 日本ではまだ珍しいスペイン産チーズ。都内23区で見つけた専門店を訪ね、厳選のチーズ6種をテイスティング。 じつはサッと購入して、レポート提出する予定が、ここに来るまでに少し時間がかかりました。というのも、スペインのチーズは流通量が少なく、取り扱いがある実店舗は限られてくるのですね。 最近の「スペイン産チーズ事情」として、経緯からご紹介します。     スペイン産チーズはどこにある?   つい先日、とある課題のためにスペイン産チーズ5種盛りをつくる必要がありました。 チーズ専門店にお伺いすると、スペイン産は2種だけ!多くのチーズが所狭しと並ぶなか、その日はまさかの2種に驚きを隠せませんでした。 その場でスペイン産を入手するには、本格的に探さなければならないことを悟った筆者は、この日はまず最近の人気どころ味わおうと「スタッフさんのおすすめ」を購入させていただくことに。 フランス産とオランダ産のチーズ、それに合わせたワイン、さらにチーズ製品をいくつか(小麦粉なしのチーズケーキなど)を購入しました。 ちなみにワイン仲間が教えてくれたこちらの専門店は、スペイン産以外のチーズをお探しのときには心からおすすめできます。好みのタイプを理解し、良い状態のチーズを教えてくださる詳しいスタッフさんがいらっしゃいます。 スペイン産以外であっても、現在、日本で売れている人気の味わいを実際に味わってみることも、とても勉強になりますね。   やっと見つけた!スペイン産チーズ専門店   その後、いろいろ調べた結果、分かったこと。 日本ではまだ珍しいスペイン産チーズ。種類も限られ、実店舗でフランス産のように揃う場所はほとんどありません。 そんななかスペインチーズの専門店を探し、ネットで見つけた「QUESO(ケソ)チーズ工房」さんにお伺いしてきました。 店の前に行くとまさかのクローズ。お店が開いていません。その場で電話をおかけすると卸販売専門だったそうです。(初めてのお店にお伺いするときは、電話で確認するのが間違いないと改めて学びました、汗) しかし、お店の方が電話口でとても親切に、都内でスペインチーズをおろしてらっしゃる店舗さんをいくつか教えてくださいました。 その後の問い合わせで、神楽坂のアルパージュさんに5種のスペイン産があると確認できたのです。 店舗にてこちらも多くのフランスチーズが並ぶ中、6種のスペイン産チーズに出会えました!     スペイン産チーズ6種盛り合わせ   今週入手できたスペイン産チーズ6種類をご紹介します。(お店に並ぶラインナップは変わる可能性があります) 画像の干し柿の手前から、食べやすいと思う順で並べました。 *同じお店で購入していても、チーズの熟成加減、その個体差による味わいの繊細な違いがあります。食べる順は都度、ご自身で状態を確かめることをおすすめします。   ・エル トフィオ(クラード)(El Tofio) カナリア諸島 フエルテベントゥーラ島 山羊乳をつかったチーズ 60日熟成 外皮:パプリカで覆われています   ・ケソ・デ・ムルシア・アル・ピノD.O.P.(Queso de Murcia al Vino) ムルシア州 ムルシア種の山羊乳をつかったウォッシュタイプの圧縮チーズ 赤ワインに漬けて熟成させます。 大きなサイズ1kg以上:最低45日熟成...

2025年夏季休業のお知らせ
by KatoTomoko8月,01,2025

2025年夏季休業のお知らせ

2025年夏季休業のお知らせ   *夏季休業のお知らせ*     誠に勝手ながら、2025年8月4日(月)から16日(金曜)まで、夏季休業とさせていただきます。 お客様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。   【オフィス休業期間】  2025年8月4日(月)~8月16日(金)   【商品のお届けについて】 ・2025年8月3日(土)までのご注文→ 8月4日(月)までに発送 ・2025年8月4日(月)~16日(金)までのご注文→ 8/18(月)から順次発送   【Storeのご注文について】 インターネットは24時間注文受付しております。   【お問い合わせについて】 8月2日(土)12時以降及び、休業期間中のお問い合わせにつきましては、 お電話、メールともに8月18日(月)12時以降、順次折り返しのご返答となります。予めご了承いただきますようお願い申し上げます。   撮影:Tomoko Kato   運営管理:LOHASPAIN(ロハスペイン) 株式会社LA PASION

【レポート】「アクアパッツア」季節を語る一皿と、オリーブオイル
by KatoTomoko7月,25,2025

【レポート】「アクアパッツア」季節を語る一皿と、オリーブオイル

6月中旬、雨の気配すら忘れるような暑さの平日。 都会のど真ん中にもかかわらず大通りを曲がるとすぐにグリーンが溢れる空間に佇むレストラン「アクアパッツア」にお伺いしました。 この日いただいたのは、季節のスペシャルコースです。前菜からデザートまで、コンセプトが貫かれた構成、そしてペアリングされたワインとともに深く魅了されました。皿に盛られる素材のひとつひとつは、全国各地の信頼できる生産者から届く珠玉の食材ばかり。中には、名前を聞くのも初めてのものや、百貨店の棚ではまず出会えないような、希少で個性的なものも少なくありません。「これほど忙しい日々の中で、どうやって見つけてくるのだろう?」と、つい私は、何度も考えてしまったほどです。 今季のオイルのティスティングのとき(4月)   料理人の目と舌、そして人とのつながりがなければ辿り着けないはず。まさにプロの料理人だけが出会える選ばれし素材たちが、何度も登場しました。 花ズッキーニの儚さ、乳清で和えられた冷製フェデリーニの清涼感、鱧の旨味が際立つサルサヴェルデ。すべてが「いま、この瞬間」を最大限にときめかせてくれます。そして確かな共通点に気がつきました。それはエキストラバージン・オリーブオイルの存在を大切にしてらっしゃること。     テーブルに運ばれた一皿一皿には、私たちの通販サイトでご紹介している各種オイルが丁寧につかわれていました。オイルが料理をまとめたり、時には前に出て主張したり、はたまた素材を引き立てる影の演出者として機能していたり。 川合シェフの温かなご配慮で、各料理につかわれたオリーブオイルのボトルを、ソムリエの方が毎回テーブルまで運んでくださいました。実は、オイルのボトルと料理を一緒に撮影したいという希望は、私だけのもの。他のお客様にはその必要がない中で、わざわざその都度、ボトルを添え、私が一瞬で写真を撮り終えるのを待ち、すぐにキッチンへと戻る。この静かで美しい動作を、ソムリエは何度も繰り返してくださいました。頼んでもいないのに、ここまでしてくださることがただただ嬉しくて、心がほどけるような思いでした。   「こうしたら、きっと喜んでくれるだろう」と、誰かが気づいた小さな期待をそっと先回りして形にする。そういう方達だと知っていましたが、そんな気づきと優しさにあふれたレストランチームの姿勢に、改めて深く胸を打たれました。 チームの細やかな連携と、食に真摯に向き合う姿勢がにじんでいて、今も心に強く残っています。       1皿目 花ズッキーニのフリットと空っ風生ハム、サラミ サクッとした衣の中に、夏の余韻がいっぱいの花ズッキーニ。生ハムとサラミの塩気が、心地よく口内を引き締める。スプマンテとともに食欲をスタートさせてくれた。     2皿目 吉田牧場の乳清で和えた冷製フェデリーニ アオリイカとウイキョウ添え おだやかな塩気と乳清のミルキーさが絶妙なバランスで絡む冷製パスタ。シャクっとしたアオリイカ、香りがたまらないウイキョウ。繊細な風味に合わせた白ワインの透明感が、料理の構造を一層引き立てる。オイルの香りも静かに溶け込んでいる。   3皿目 天草産鱧のフリット サルサヴェルデ 揚げ物でありながら、驚くほどふんわり軽やか。サルサヴェルデの酸味と鱧の旨味がオイルと見事に調和。ここでもワインが、魚のニュアンスと完璧に寄り添う。   4皿目 トリッパ、ガツ、豚ハラミの煮込み スカマルツァアフミカートのオーブン焼き 上品な野性味と複雑な旨味が絡み合う皿。燻製チーズの香ばしさと煮込みの深みが、滑らかで上品ながらタンニンのある赤ワインと絶妙なコントラストを描く。重厚な余韻に、オリーブオイルが丸みと広がりを添える。   5皿目 駿河湾の赤海老とジロールのタリアテッレ 濃密な甲殻の旨味、香りたかいジロール茸。季節が色濃く現れる一皿にも、先ほどのIDDAロッソの赤ワインがよく合う。オイルが、素材同士をつなぐ潤滑油のように機能しているのが印象的。   6皿目 キンメダイのアクアパッツァ 名物のアクアパッツア。目の前で鮮やかにデクパージュ(お魚の取り分け)してくださる。スプーンとフォークだけで、骨まで取り、箸を使う以上のテクニックは、毎回のように見入ってしまう。ふっくらと火が入ったキンメダイに、滋味深いスープ。ここで用いられたオイルは、魚介の香りと複雑に絡み、まさに“命を吹き込む役割”を果たしていた。合わせたワインもブロンドのような品格で、素材の声をグッと引き出してくれた。 7皿目 青森県産銀鴨 胸ともものロースト 鴨の脂が持つ旨み、香ばしさ、そしてしっとりした肉の質感が最大限に感じられるような火入れ加減に感激した。さらにオイルの使い方にシェフの配慮が光る。赤ワインとともに、このランチのクライマックスをしっかりと締めくくった。   デザート チーズケーキと夏香...

「幻の3年を超えて。100箱のキャラメリゼに込めた手仕事と再会の物語」
by KatoTomoko7月,18,2025

「幻の3年を超えて。100箱のキャラメリゼに込めた手仕事と再会の物語」

1. かつての人気菓子。そして、終わりと始まり。 2020年から2023年までの3年間、 「ラルゲタアーモンドのショコラとキャラメリゼ」は、当時の販売元が企画・製造・販売してくださっていて、それはそれは多くのファンをもつ人気商品でした。 私は、その素材、つまり「ラルゲタアーモンド」を輸入する立場で、その人気を陰から見守らせていただいていたのです。   当時のラルゲタアーモンド・ショコラ     “幻の3年”とも言えるその時期、多くのファンを魅了しながらも、やがて製造は終了。しかし、その味を忘れられないという声は、ずっと絶えませんでした。 終売から2年が過ぎても、アーモンド販売の時期には「もう一度、あの味を」という声を必ずいただくのです。今年の春も、また。 そして私は初めて思いました。「あの味は、輸入元の私が形にしなければ、もう2度と味わえないんだな・・・」と。   左側・小さな袋は120g、右側・大きな袋は1Kg業務用   2. 10年越しのご縁と“その時”のひらめき。 2025年の春。年が明けて、ようやく届いた新物のラルゲタアーモンド。例年であれば冬の入荷ですが、気候変動の影響で、今年はそのタイミングさえも変わってしまったのです。「今季の味を、一日でも早く届けたい」と、私は120g入りの一袋を、大阪でパティスリーを営む加奈代さんに送りました。 加奈代さんとのご縁は、もう10年以上前にさかのぼります。きっかけは、まだ「グリフォイオイル」として展開する前の「カミロケオイル」。オリーブオイルを通して出会い、大阪から東京のイベントに駆けつけてくださったり、関西のマルシェで販売してくださったりと、“応援者”という言葉では足りないほど、温かく支えてきてくださった方です。ちなみに、ふたりともドリカムファンという共通点もあって(笑)   2016年夏、大阪にて販売元主催によるオリーブオイルのイベント乾杯の挨拶をしてくださった加奈代さん   2016年夏、大阪イベントにて(加奈代さん・中央列左から二番目、筆者・中央列右側)   2022年秋、スペインワインと食協会後援のワインイベント@東京に駆けつけてくださった加奈代さん(左から2番目)   アーモンドショコラ終売の後、加奈代さんがパティスリーをオープンされたのを知ったとき、ふと「いつか、このラルゲタアーモンドでショコラ菓子を一緒に作れたら」そんな未来が思い浮かんだことがありました。 そして今回。新物のアーモンドを購入くださる方々から「もう一度、あの味を」という声が次々と届き、私は思わず加奈代さんに連絡を入れてしまったのです。本当に、衝動のように。   3. たった120gから生まれた、感動のひと口。   すると、数日後。信じられないことが起こりました。 なんと加奈代さんから2種類のアーモンドショコラが届いたのです。だってお送りしたのは、たった120gの一袋のアーモンド。きっと数粒だけを味わい、残りのすべてを試作に使ってくださったのだと思います。 そういうところに、加奈代さんのお人柄と、カフェオーナーとしての覚悟がにじんでいますよね。味に対する敬意、素材に対する愛、そして“想いに応える人”という誠実さ。 「ラルゲタアーモンド・ショコラ」という形になって届いたその味。     一粒食べて、胸が高鳴りました。その香り、味わい・・・。 「これ、私だけしか知らないなんて絶対にダメだ!」と、勝手な使命感のような衝動に駆られ、家族にも試食してもらいました。 それはもう・・・、大絶賛。 「どこのブランドなのか?」、「これ、もっとたくさん食べたいからまた買ってきて!!」と、この味わいの背景を知らず、まだ忖度もない小学生たちも、やっぱり目をまんまるにして聞いてきます。 やっぱり、この味、間違いない。 気がつくと私は、加奈代さんに伝えていました。「“いつか”じゃなく、“今季”のアーモンドで、作りたいです」 とはいえ、6月の時点であれだけ暑い日が続いていたので、ショコラではなく、まずはキャラメリゼからスタートすることになりました。 加奈代さんのお店で試作され、送ってくださったアーモンド・ショコラ   割れたアーモンドをロシェにしてくださったもの    ...

「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」
by KatoTomoko4月,04,2025

「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」

「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」 旅とは、計画された非日常ではなく、日常の延長にふと現れるもの。この連載「Esencia(エセンシア)」は、「スペインの紀行文をまとめて読めるようにして欲しい」というひとりの読者の声がきっかけで生まれました。私自身が仕事で年に数回だけ訪れるスペインの街や村を舞台に、“ほんの少し先のリアル”をすくい取って綴ります。 この連載では、スペインという国の「生活」に触れながら、「楽しく、豊かに生きるとは何か?」というテーマをゆるやかに問いかけていけたらと考えています。都市と地方、伝統と革新、偶然と選択。そのあわいにあるものが、「スペイン食文化」の豊かさであり、ラグジュアリーの本質なのかもしれません。 「Esencia」は、スペイン語で「本質」や「香り」を意味する言葉。オリーブ畑で感じた風、グラスの縁に残ったオレンジピールの香り、シェフの手に刻まれた時間。いつかあなたがその土地を訪れるとき、この連載で描いた風景が、そっと背中を押してくれるような存在になればと願っています。

スペイン出張に伴う臨時休業とゴールデンウイーク休業のお知らせ
by KatoTomoko4月,04,2025

スペイン出張に伴う臨時休業とゴールデンウイーク休業のお知らせ

日頃から、オンラインショップLOHASPAIN「Store」をご愛顧いただき誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、4月17日(木)~5月6日(火)までスペイン出張とゴールデンウィーク休業のため、不在とさせていただきます。 オンラインショップの配送も臨時休業となります。4/16(水)以降にご注文を頂きましたお客様には大変申し訳ございませんが、5月7日(水)以降の発送となります。   ・休業期間:4月17日(木)〜5月6日(火) ・営業開始日:5月7日(水)  *休業期間中は電話受付もすべて休止いたします。 トップ画とともに、昨年11月に訪問したマドリッド・サラマンカ地区にあるMallorca     休業期間中に頂きましたお問い合わせにつきましては、5月7日(水)以降に、順次行ってまいります。ご返答までに少しお時間をいただく場合がございますことを予めご了承下さい。 ご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。    LOHASPAIN 加藤智子      

8年連続、世界最多受賞──アルマグロのオリーブオイル パラシオ・デ・ロス・オリーボス(Palacio de los Olivos)
by KatoTomoko2月,21,2025

8年連続、世界最多受賞──アルマグロのオリーブオイル パラシオ・デ・ロス・オリーボス(Palacio de los Olivos)

スペイン・アルマグロの名門農園から、待望のオリーブオイルが届きます。   世界のコンテストで8年連続トップ受賞。星付きレストランのシェフたちも愛用する、まさに"本物の一滴"。   その香りの豊かさ、奥行きのある味わいは、まさに"飲む香水"。バゲットやサラダにひとさじ垂らせば、その違いは一口でわかります。   この特別なオイルを、空輸&数量限定でお届けします。   さらに第二弾として今回は、5日間の早期予約期間限定で、特別価格をご用意しました。   世界が認めたオイルを、最高の鮮度で味わうチャンス。   この機会を、どうぞお見逃しなく。  

まだまだ続く、スペインのクリスマス<後編>
by IkumiHarada1月,02,2025

まだまだ続く、スペインのクリスマス

新年、明けましておめでとうございます!三が日真っ只中、日本はお正月ムード一色に包まれていることと思います。 昨年のクリスマス・イヴの直前にお届けした「スペインのクリスマス<前編>」では、12月24日から26日までのスペインのクリスマスについて、カタルーニャの伝統料理と共にご紹介しました。今回はその続編として、年が明けた2025年1月3日現在も続くスペインのクリスマスの様子をお伝えします。   スペインでは、年が明けても、街のクリスマスイルミネーションも家庭のツリーやデコレーションもまだそのままです。なぜなら、スペインのクリスマスは1月6日の「東方の三賢者の日(Día de los Reyes)」まで続くからです。この日を境に、クリスマスシーズンがようやく幕を閉じます。 スペインの子どもたちは1月6日まで冬休みが続き、大人たちも年末年始に長期休暇を取るのが一般的です。1月1日は祝日ですが、2日から5日までは通常営業の会社もあり、祝日の1月6日「東方の三賢者の日(Día de los Reyes)」を迎えるまで街にはクリスマスムードが漂っています。 スペインの大晦日(Nochevieja)は、家族や友人と大いに盛り上がる一夜ですが、"お正月"は、意外と控えめです。それでは、スペインの長いクリスマスシーズンに欠かせない伝統料理や風習〜後編〜としてお届けします。   ・12月31日  大晦日Nochevieja/Nit de cap d'any スペインの大晦日は、友人たちとレストランに集まったり、ホームパーティーを開いたりと、にぎやかに過ごすのが一般的です。夕食を楽しみながらカウントダウンの時刻を待ち、午前0時には「12粒のぶどう」を食べるというユニークな伝統があります。 12回の鐘の音に合わせて1粒ずつぶどうを食べますが、鐘のペースは早く、飲み込む暇もなく次の鐘が鳴るため、最後の鐘が鳴り終わる頃には口の中がぶどうでいっぱいに。記念すべき新年の幕開けとともに、無言のままスパークリングワインやCAVAで乾杯するという、どこかシュールな瞬間が訪れます。 成功させるポイント: 種無しブドウを購入し、12粒を器に盛りつけておく。 スペイン各地では盛大なカウントダウンイベントが行われ、花火が夜空を彩ります。深夜まで飲んで踊り、食べて楽しみながら、新年の到来をお祝いします。   ・1月1日 新年Año Nuevo / Cap d'any 多くのスペイン人は、大晦日の夜遅くまで飲んだり食べたりして新年を祝うため、日本のように初日の出を見に行くという習慣を話すと、驚かれます。元旦は、それぞれのスタイルで過ごすのが一般的です。家族全員で食卓を囲む人もいれば、レストランでスペシャルメニューを楽しむ人もいます。 とはいえ、ご馳走が続くこの時期になると、胃腸の疲れや体重増加を気にし始める人も少なくありません。   ・1月6日 東方の三賢者の日 (ディア・デ・ロス・レジェス)Dia de los Reyes Magos / Dia dels Reis Mags   スペインのクリスマスを締めくくる、最も象徴的なお祝いが「東方の三賢者の日」です。その前夜、1月5日には、全国各地で三賢者の到来を祝う盛大なパレードが開催されます。この日、街の通りは東方から訪れる三賢者メルキオール、ガスパール、バルタザールの登場を心待ちにする子どもたちで賑わいます。 三賢者たちは色とりどりのキャンディーを投げ、子どもたちだけでなく大人も夢中で拾い集めます。この光景は、幼い頃故郷で体験した「餅まき」を思い起こさせ、どこか懐かしいほっこりした気分にさせてくれます。 バルセロナのような大都市では、シルク・ド・ソレイユを思わせる豪華絢爛なパレードが行われ、通りには大勢の見物客が押し寄せます。一方、小さな村やワイン産地では、三賢者がトラクターに乗って登場するなど、手作り感あふれる素朴なパレードが繰り広げられます。どちらのパレードも、それぞれの地域の特色が反映されており、大人も童心に帰れる心温まるひとときとなります。 この夜は、パレードを楽しんだ後、子どもたちは、翌日のプレゼントに胸を躍らせながら眠りにつく、温かさと喜びに満ちた特別な時間です。 1月6日、再び家族一同集結し、前菜からワインと共にランチをいただきます。この日の主役はデザートで、王冠の形をした菓子パン「ロスコン デ レジェス(Roscón...

スペインのクリスマス<前編>
by IkumiHarada12月,13,2024

スペインのクリスマス

スペインのクリスマス スペインの街々は、クリスマスが近づくと煌びやかなイルミネーションに彩られ、冬の夜を一層美しく演出します。12月24日のクリスマス・イヴ(Noche Buena)から始まるスペインの長いクリスマスシーズンは、新年をまたいで1月6日の東方三賢者の日(Día de los Reyes Magos)まで続きます。日本のようにクリスマスが終わるとすぐにお正月ムードに切り替わる慌ただしさはなく、街のクリスマスイルミネーションや祝祭の雰囲気は、お正月を過ぎても続きます。 バルセロナの街のクリスマスネオンに溶け込む、アントニ・ガウディの建築カサ・バトリョ(カタルーニャ語:Casa Batlló)世界遺産     スペインのクリスマス料理〈カタルーニャ地方〉   ・12月24日 クリスマス・イヴNochebuena(スペイン語) / Nit de Nadal(カタルーニャ語)  カタルーニャ地方では、スペインの他の地方とは異なり、この日は家族一同集まるクリスマ・イヴのディナーはありません。そのかわり、というわけではありませんが、独特な風習があります。クリスマスが近づくと子供のいる家庭のサロンには、サンタのような赤い帽子をかぶり笑みを浮かべた丸太人形(ティオ・デ・ナダル/Tió de Nadal)が出現します。その丸太の人形は、通称「カガティオ」と呼ばれ、”排便する丸太”という意味があります。 ティオ・デ・ナダル(Tió de Nadal)クリスマス・イブに、子どもたちは「カガティオ〜♪」と丸太人形を棒でたたきながら謳い、マントをめくると、なんと「ティオ・デ・ナダル」のお尻のあたりにお菓子やキャンディのプレゼントが!子供たちにとって、最初のクリスマスプレゼントです。     グローバル化の影響もあり、12月24日の夜、サンタクロース(カタルーニャ語:Pare Noel)人気が高まっているとか。というのも、1月6日の東方の三賢者の日 (ディア・デ・ロス・レジェス)の夜、東方の三賢者たちがプレゼントを持ってくるのがスペインの伝統なのですが、冬休み中に子どもたちがオモチャで遊べるように、12月25日に渡すケースが増えてきているそうです。   ・12月25日 クリスマスNavidad/Nadal 家族一同集まって、家でクリスマスランチをいただきます。乾杯はワインで。日本のクリスマスは恋人と過ごすロマンチックな日、というイメージですが、スペインのクリスマスはみんな家族と家で過ごします。数年前までは、バルセロナのような都会でも、休業のお店が多く、街中はコーヒーを飲むのも難しいほど閑散とした雰囲気に包まれていたものですが、近年では、観光スポットには外国人の行列ができ、レストランでクリスマスコースを食べる地元の人たちも増えているようで、時代の移り変わりを感じます。   【前菜(Aperitivo/Aperitiu)】 ボガバンテ(オマール海老)、アングーラ(うなぎの稚魚)などの高級食材をはじめ、フォアグラやサーモンのカナッペ、定番のハモン・イベリコ(生ハム)や、ロンガニサやチョリソなどの腸詰め、ムール貝、エビなどが食卓に並びます。 【一皿目(Primer plato/Primer plat)】 カタルーニャのクリスマス料理といえば、エスクデーリャ・イ・カルン・ダリャ(Escudella i carn d'olla) 。4種類の肉 (豚、牛、鶏肉、子羊)と7種類の野菜を入れて煮込んだエスクデーリャのスープに、ピロータ(ミートボール))やガレッツ(貝の形のショートパスタ)をたっぷり入れていただきます。体の芯から温まるカタルーニャの冬の定番スープです。       【ニ皿目(Segundo plato /Segon plat)】...

年末年始のご注文、配送についてのお知らせ
by KatoTomoko12月,06,2024

年末年始のご注文、配送についてのお知らせ

お客様各位   日頃より「LOHASPAIN」をご利用いただきまして、ありがとうございます。 誠に勝手ながら年末年始の間、下記のとおり休業させていただきます。   【年末年始休業日】 2024年12月27日(金)~2024年1月5日(日)   年内最終出荷:2023年12月25日(水)まで(25日のご注文は、23:59受付分まで26日に出荷いたします) 年明け後出荷:2024年1月6日(月)より順次出荷いたします。   【Storeのご注文について】 ご注文は、年末年始の休業日にかかわらず、24時間365日受け付けております。   【お問い合わせについて】 休業期間中のお問合わせや、商品到着指定日の変更・キャンセル等は、ご返信・ご対応を致しかねます。予めご了承いただきますようお願い申し上げます。   年末年始は、荷物の遅配が発生しやすくなりますので、時間に余裕を持ってご注文いただきますよう、お願いいたします。また、時間帯指定をご利用された場合も、ご希望の時間帯にお届けできない可能性もありますので、 予めご了承いただきますようお願い申し上げます。   運営管理:LOHASPAIN(ロハスペイン) 株式会社LA PASION      

心に残るクリスマスを。スペイン産オリーブオイル+ミニボトルの特別企画
by KatoTomoko11月,22,2024

心に残るクリスマスを。スペイン産オリーブオイル+ミニボトルの特別企画

 スペイン産オリーブオイルで彩る、特別なクリスマス  日々の暮らしにほんの少し贅沢を。それがこのキャンペーンの趣旨です。 LOHASPAINでは、クリスマスまでの期間限定で、スペイン産オリーブオイルをご注文いただいたすべてのお客様に、大人気カシータス・デ・ウアルド ミニボトル(25ml)を1本、心を込めてプレゼントいたします。      ミニボトルとは? スペイン・トレドの大自然が豊かなオリーブ農園で、元気に育ったオリーブから搾られたエキストラバージンオリーブオイル。最高品質のオイルを小さなボトルに詰めました。 今年の収穫の様子 スペインだけでなく、世界でも著名なオリーブオイル生産者「Casas de Hualdo(カサス・デ・ウアルド)」が手掛ける大人気の味わいです。  先日訪れた際に撮影した Casas de Hualdo(カサス・デ・ウアルドの入口   1回の料理にちょうどいいサイズ。 朝のパンにひとかけ。 夕食のサラダにふわりと香りを添えて。 その日その日のお料理が、少しだけ豊かに変わる魔法です。 名だたる世界のコンテストはもちろん、OLIVE JAPAN®︎においても、金賞と特別賞を受賞。(25mlのミニボトルも250mlボトルと中身は同じ) キャンペーン概要 期間2024年11月22日(金)~12月25日(水) 対象スペイン産オリーブオイルをご注文いただいたお客様。 プレゼント内容 ミニボトル(25ml)を1本、1回のご注文につきプレゼント。※ 無くなり次第終了となりますので、お早めにどうぞ。  プレゼント用のカシータス・デ・ウアルド ミニボトル(25ml) は、2023年秋に収穫したものです。     なぜオリーブオイル? オリーブオイルは「地中海の黄金」と呼ばれるほど、人々に愛されています。その魅力は健康的な成分とおいしさにあります。 ビタミンEが豊富で、お肌にうれしい。 良質な脂肪が、身体に負担をかけません。   今月、搾りたてのエキストラバージン・オリーブオイル(アルベキーナ種)を現地でテイスティングしてきました。       このクリスマスは、大切な家族や友人と一緒に、健康的で美味しい食卓を囲んでみませんか?  今年のオリーブ畑(筆者撮影) ご注文方法 以下のボタンから公式サイトへ。 お気に入りのオリーブオイルを選ぶだけで、自動的にミニボトルがついてきます。 👉 公式サイトLOHASPAIN「Store」はこちらから...

スペイン出張に伴う臨時休業のお知らせ
by KatoTomoko10月,11,2024

スペイン出張に伴う臨時休業のお知らせ

 スペイン出張に伴う臨時休業のお知らせ   日頃から、オンラインショップLOHASPAIN「Store」をご愛顧いただき誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、10月25日(金)~11月10日(日)までスペイン出張のため、不在とさせていただきます。 オンラインショップの配送も臨時休業となります。10/24(木)以降にご注文を頂きましたお客様には大変申し訳ございませんが、11月11日(月)以降の発送となります。   ・休業期間:10月25日(木)〜11月10日(日) ・営業開始日:11月11日(月)  *休業期間中は電話受付もすべて休止いたします。   休業期間中に頂きましたお問い合わせにつきましては、11月11日(月)以降に、順次行ってまいります。ご返答までに少しお時間をいただく場合がございますことを予めご了承下さい。 ご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。    LOHASPAIN 加藤智子  

10月イベントスケジュール〜マルシェはお祭り〜
by KatoTomoko10月,04,2024

10月イベントスケジュール〜マルシェはお祭り〜

 みなさんこんにちは、加藤です。 10月がスタートしました。     HARUMIFLUGマルシェ       さて、今月のイベント情報をお届けします。 マルシェでは、オンラインショップ「Store」の実店舗として、LOHASPAINの味わいを実際に試食していただけます。 私はオリーブオイルソムリエなので、オリーブオイルに関する質問もぜひ。 こちらはお申し込みの必要もありませんから、ふらっとお散歩がてらにいかがでしょうか。 お待ちしていますので、ぜひお買い物にいらしてくださいね!        ⚪︎太陽のマルシェ@勝どき 太陽のマルシェは9月から開催時間が10時から16時と1時間短くなりました。 お好きなタイミングでいらしてください。       ・開催日程 10月12日(土曜)13日(日曜)10:00〜16:00 ・開催場所 月島第二児童公園(中央区勝どき1-9-8) ・アクセス 都営地下鉄大江戸線『勝どき』駅下車 A4a出口、A4b出口すぐ           マルシェなのに、ギフトセットもご用意しています。 ご自宅用だけでなく、急な手土産や、プレゼントとしてお役に立てているようで何よりです。 ハロウィンもありますから、シーズナルなラッピングもご用意しています。 それぞれのサイズでギフトの雰囲気も変わるので、好評で嬉しい限りです。 大人気のグリフォイオイルと合わせて、ワインのように色々とティスティングしてみてください。 この機会に、あなた好みの味わいに出会えてもらえたら嬉しいです。                     「マルシェはお祭り」だと教えてもらいました。 トップ画は、「太陽のマルシェ」ならではのショットです。 ご一緒したのは大人気のアクセサリーMARCOさん(右)と、MARCOさんの常連さん(中央)スペイン産オリーブオイルと相性抜群のゴールデンマスタードさんのオリジナルTシャツと、MARCOさんのピアスをお揃いに。  ...

瞬く間に完売!世界を魅了するパラシオオイルの秘密
by KatoTomoko9月,13,2024

瞬く間に完売!世界を魅了するパラシオオイルの秘密

パラシオオイルとは?   パラシオオイルの正式名称は、パラシオ・デ・ロス・オリーボス。スペイン産の高品質エキストラバージン・オリーブオイルで、ピクアル種100%とアルベキーナ種100%、アルボサナ種100%の3つがあります。最初にリリースされたピクアル種は、世界中で「ピクアル単一品種のオリーブオイル」として多くの賞を受賞し続けており、その人気はますばかり。この記事では、パラシオオイルの魅力とその品質の高さ、そしてなぜ完売するほどの人気を誇るのかについてフォーカスしてみます。         パラシオオイルの人気の秘密     1. 世界トップクラスの豊かな風味と香り   パラシオオイルは、その香りと味わいが多くのプロフェッショナルからも評価されています。フレッシュでクリーンなアロマは、口に入れると爽やかで心地よい苦味と辛味、さらにほのかな渋みが絶妙なバランスで広がります。上品でマイルドな後味が一度味わうと忘れられない印象を与えるため、世界中で高く評価されています。まるでワインのテイスティングのように、複雑な風味が幾重にも重なり合い、その深い味わいが多くの人々を魅了します。 2. 健康成分が豊富   パラシオオイルは健康にも良いオリーブオイルとして注目されています。とくにオレオカンタールというポリフェノールは、認知症予防や抗がん作用があるとされ、これがパラシオオイルに豊富に含まれています。また、オレウロペインという成分も血中コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に効果があるとされています。これらの健康効果が、パラシオオイルの人気をさらに高めています。     3. 調味料としての万能性   パラシオオイルは、料理につかうとその一皿を格段に引き立てる力があります。スペイン料理や地中海料理だけでなく、実は和食にも相性抜群なのです。たとえば刺身やカルパッチョといった生の魚介類に使うと、その旨味を引き立てつつ、微かな臭みさえも消してくれる効果もあります。さらに、高温での調理にも耐えるため、炒め物や揚げ物につかうとプロのように外はカリッと中はジューシーに仕上がり驚かれます。このような万能性も、多くの料理愛好家やシェフたちから支持されている理由の一つです。     パラシオオイルが上質な理由   1. 厳選されたオリーブの実   パラシオオイルは、厳選されたオリーブの実だけを使った「早摘みオイル」です。完熟したオリーブではなく、若い実を収穫することで、フレッシュな味わいを持つオイルが生まれます。しかし、10月にはじめる早摘みは収穫量が少なく、手間もかかるため、より高い技術が必要です。それでも、生産者たちはその手間ひまを惜しまず、オリーブの最適な収穫時期を見極めることで、最高品質のオイルを生み出し続けています。     2. スピード重視の収穫と搾油   オリーブの実は収穫後、すぐに搾油しなければ品質が落ちてしまいます。パラシオオイルは、収穫された実を2時間以内(実際には90分以内)に搾油することを目標にしています。そのため、大型トラックではなく小型トラックを使い、頻繁に農園と搾油所を往復するなど、徹底したスピード管理が行われています。この素早いプロセスが、オイルの酸化を最小限に抑え、フレッシュな味わいを保つ鍵となっているのです。     3. 徹底した品質管理   パラシオオイルの製造過程では、最新の技術と熟練した専門家たちが品質管理にあたっています。パラシオのオーナーであるラウルは、オリーブオイルの講師としても活動しており、その技術を惜しみなく次世代に伝えています。また、営業担当のルイスはスペイン国内の鑑定士コンテストで3位に入賞するほどの実力者です。このようなプロフェッショナルたちが揃ったチームによって、パラシオオイルの高い品質が維持されているのです。     4: 完売の理由   パラシオオイルがすぐに完売してしまう理由は、その高い品質と多くの賞を受賞していることだけではありません。世界中のグルメや健康志向の消費者たちが、パラシオオイルの風味と健康効果を実感し、リピーターとなり、さらに毎年、新しいお客様が増えていくからです。需要が供給を上回ってしまうため、手に入れることが難しくなるのです。...

【オリーブオイルをもっと快適に使うために】  ~キャップの悩みを解決する簡単な方法~
by KatoTomoko9月,06,2024

【オリーブオイルをもっと快適に使うために】 ~キャップの悩みを解決する簡単な方法~

【オリーブオイルをもっと快適に使うために】  ~キャップの悩みを解決する簡単な方法~読者の皆さん、こんにちは。 今回はオリーブオイルをもっと快適に楽しむためのちょっとした工夫をご紹介します。まず最初に、ご紹介するグリフォイオイルのオリーブオイル自体にはまったく問題がないことをお伝えしておきます。 おかげさまで今年も多くのシェフやお客様からも、他にはないリッチでマイルドな味わいがとても好評です。しかし、「オイルが出にくい」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。実は、これにはコロナ禍の影響が関係しているのです。 コロナのパンデミック後、資材不足によりキャップなどに不良品が多く発生しました。そのため、通常より使いにくいキャップが一部に出回ってしまったのです。このキャップ、もともとは「注ぎ足し防止」のために作られており、不正なオイルの混入を防ぐためにオイルが少しずつしか出ない仕組みになっています。 もし、お持ちのボトルのキャップが使いづらいと感じた時、無理にキャップを取ろうとしても難しいのですが代わりに、もっとスマートな方法を発見しました。それは、ワインオープナーを使うことです。   オイルの生産者は、5代続くワイナリーです。身近なワインをヒントに改善策を思いついてくれました!やり方はとても簡単です。 ワインオープナーのスクリュー(ねじ部分)の先端を使って、キャップの注ぎ口の中央に小さな穴を開けるだけ。 わかりづらいかもしれませんが、穴をあける前のキャップ画像です   画像のように中心部に、スクリューを差し込みます。 この画像もわかりづらいと思いますが、先端に穴が空いた状態です。   画像では、スクリューを差し込んだ穴がわかりづらいと思います。しかしこれで、オリーブオイルがスムーズに出るようになります。ほんのひと手間で、ストレスなくお使いいただけるようになりますよ。 ワインオープナーをお持ちでない方は、アイスピックやペティナイフのような先が尖ったものを代用していただければ幸いです。お怪我のないよう、十分に注意していただければ幸いです。   もちろん、次回の生産分ではこの問題を解消するためにキャップ自体を改良していく予定です。それまでの間、ご不便をおかけすることをお詫び申し上げますが、オリーブオイルの中身は最高の品質ですので、ぜひこの機会にお試しください。     ただいま、干ばつによる収量減少、輸送コストの増加、そして円安の影響で値上がりしたオリーブオイルを、特別価格でご提供する還元セール開催中。これらの厳しい環境下でも、皆様にお得にお届けできる機会ですので、ぜひこの機会にご利用ください。 【還元SALE20%OFF】 https://lohaspain.spainwinefood.org/products/grifolloil-500     いつもの食材をグッと格上げしてくれるグリフォイオオイルで、さらに豊かな食卓をお楽しみいただければ幸いです。

才能が繋がる瞬間 ー グリフォイオイルと出会った丹野シェフと渡邉シェフの物語
by KatoTomoko8月,20,2024

才能が繋がる瞬間 ー グリフォイオイルと出会った丹野シェフと渡邉シェフの物語

今日は、グリフォイオイルを通じて出会った丹野シェフ、そのきっかけとなる渡邉シェフについてご紹介します。   リストランテ「アクアパッツァ」が広尾にあったころ、グループの広報を務めていたわたしが、スーシェフとして活躍する渡邉さんに初めて出会ったのは姉妹店「アクアヴィーノ」でした。渡邉さんは真摯な姿勢で、どんな食材も最高の一皿に仕上げることに情熱を注いでいました。その後、レストラン「レフェルヴェソンス」にて、さらなる成長を遂げていきます。そこで卓越した料理人である丹野シェフと出会ったのです。丹野シェフは渡邉さんの才能を見抜き、成長を見守り続けました。     時が経ち、お二人は別々のレストランでシェフとして迎えられます。六本木のレストランでシェフに就任した渡邉さんから連絡をいただきました。「グリフォイオイルに興味があります」と。 「自分が好きな食材を選べるようになったら、このオイルを使いたいです」と、おっしゃっていた渡邊さんの言葉が現実となったのです。テイスティング後、その味わいに感動され、すぐに料理に取り入れてくださることに。     一方、丹野シェフもこのオイルに強い興味を抱いてくださり、渡邉さんに紹介を依頼してくださったのです。丹野シェフが迎えられた鎌倉のフレンチレストランでも、試食後には、その場でグリフォイオイルのお取り扱いがスタートしました。   渡邉さんが今年6月からシェフを務める「ENRICO」でも、グリフォイオイルは欠かせない存在となり、そのオイルが使われた料理は多くの客を魅了しています。 同様に、丹野シェフも今年4月からヘッドシェフとして迎えられた「nôl(ノル)」は、ミシュラングリーンスターレストランとしても注目されています。最近では、コルドバの三つ星レストラン「noor(ヌール)」から、パコ氏とパオラ氏が来日し、コラボディナーが開催されました。これから、グリフォイオイルを用いたメニューが誕生します。     丹野シェフと渡邉シェフのような才能ある料理人がグリフォイオイルを選び続ける理由、それは、品質と味わいが彼らの料理哲学に深く共鳴しているからだといいます。オリーブオイルを単なる調味料としてではなく、料理の中で輝くひとつの素材として扱っています。グリフォイオイルは、その期待に応え、料理に奥行きと豊かな風味をもたらしています。   二人の料理人が異なる道を歩みながらも、同じオイルを選び続けることで証明されたのは、このオイルがもつ力と魅力です。これからも、丹野シェフと渡邉シェフが創り出す料理の中で、グリフォイオイルは大切な役割を果たし続けることでしょう。     この物語は、グリフォイオイルが単なる調味料以上の存在であることを示しています。それはつまり、「料理人の想いと技術を引き立て、創造力を支えるパートナー」と言えるのではないでしょうか。これからも多くの料理人に選ばれ続けることは間違いありません。     グリフォイオイルのご購入はこちらから https://lohaspain.spainwinefood.org/products/grifolloil-500               GRIFOLL OIL お取扱い MICHELIN★RESTAURANT nôl 2021年4月に日本橋馬喰町「DDD HOTEL」1階にオープンしたnôlは、”normalize”をテーマに「これからの ”ふつう”」を提案するレストラン。社会や自然環境が目まぐるしく変化する現代において、調和のとれた新たな「美味しさ」を日々追求しています。同店は、2022年より3年連続で『ミシュランガイド東京』一つ星(現代風料理)を獲得し、2024年に初となるミシュラングリーンスターにも選出。 GRIFOLL OIL RECOMMENDED CHEF 丹野 貴士Takashi Tanno 1988年山形県生まれ。「ラ・ロシェル南青山」で石井義昭氏からフランス料理の基礎を学ぶ。修行後、渡仏。「Restaurant KEI」にて研鑽を積む。帰国後、銀座フレンチの「エスキス」、外苑前の「アビス」、「ミシュランガイド東京2024」三つ星レストランでもある「レフェルヴェソンス」で素材を生かしたフランス料理を学ぶ。2021年4月 「Restaurant...

地中海の恵み満点サラダ『シャトー』の極みレシピ
by IkumiHarada8月,02,2024

地中海の恵み満点サラダ『シャトー』の極みレシピ

カタルーニャの伝統的なサラダ シャトー(Xató)  シャトー(Xató) または シャトナダ(Xatonada) は、カタルーニャの伝統的なサラダで、特にペネデスとガラフの地域で親しまれています。この料理の発祥地については、シッチェス(Sitges)、ビラノバ・イ・ラ・ジャルトル(Vilanova i la Geltrú)、エル・ベンドレール(El Vendrell)、ビラフランカ・デル・ペネデス(Vilafranca del Penedés)の間で論争があり、各地域によってレシピには様々なバリエーションがあります。   シャトー(Xató) の特徴は、その味を決定づけるソースです。このソースは、アーモンドやヘーゼルナッツ、ニンニク、そしてニョラ(乾燥赤ピーマン)が主役で、タラゴナのカルソッツ(calçots)と共に提供されるロメスコソースに似ていますが、少し異なります。レシピはシンプルでありながら、とっても美味しく仕上がります。塩抜きしたバカラオ(塩鱈)とこの特製ソースを用意すれば、あとは盛り付けるだけ。ヘルシーで栄養満点な一皿が、野菜、お魚、ドライフルーツ、オリーブオイルの味わいをバランス良く楽しませてくれます。   地中海の恵み満点サラダ『シャトー』の極みレシピ  材料(2人分)   エスカローラ(葉野菜 / エンダイブ):適量 アンチョビ:4枚 ツナ(オイル漬け):75g オリーブ:6個 塩抜きしたバカラオ(塩鱈)のロース:100g エクストラバージンオリーブオイル 適量   (ソース)   ニョラ(乾燥赤ピーマン):4個 ニンニク:2片 アーモンド:100g ヘーゼルナッツ:100g パン:1枚 ビネガー エクストラバージンオリーブオイル 塩 作り方 まず、バカラオ(干し塩鱈)の塩抜きを始めます。バカラオをたっぷりの水に浸し、一日に3〜4回水を交換します。 次に、ソースを作ります。フライパンにエクストラバージンオリーブオイルを熱し、パンをきつね色になるまで揚げます。パンを油から取り出し、ビネガーの入ったボウルに浸します。 Ñora(パプリカの一種)を熱い水で5分ほど湯通しし、実を開いてからスプーンで中身を取り出します。 ヘーゼルナッツ、アーモンド、ニンニク、揚げたパンを粉状になるまでミキサーで攪拌します。次に、ニョラの果肉を加え、すべての材料がよく混ざり合いペースト状になるまでさらに攪拌します。 ソースがクリーミーなテクスチャーになるまで、エクストラバージンオリーブオイルを少しずつ垂らしながら混ぜ合わせます。塩で味を調整し、必要であれば冷蔵庫で保存しておきます。  いざサラダを作る際には、塩鱈の皮や骨を取り除き、縦に切るか、サイコロ状に切ります。エスカローラを切り、お皿に盛り、その上にソースをかけます。 次に、ツナ、アンチョビ、ブラックオリーブ、塩鱈を加えます。 最後にエクストラバージンオリーブオイルを回しかけてできあがり!       シャトーにお勧めのオリーブ品種は? カタルーニャ州発祥のシャトーソースには、やはりカタルーニャ原産のオリーブ品種「アルベキーナ」が最適です。アルベキーナのエキストラバージンオリーブオイルは、完熟りんごのようにフルーティな香りと、まろやかで甘い風味、マイルドな味わいが特徴。これにより、ソースのリッチで芳醇な味わいを優しく引き立て、バランスよく仕上げてくれます。風味や苦みが強すぎるオリーブオイルでは、ソースの味が圧倒されてしまいますが、アルベキーナなら、素材本来の味を豊かに引き出し、絶妙なハーモニーを実現しいてくれます。...

「注文が止まらない!カシータス・デ・ウアルドの受賞理由とは?」〜CASITAS ha recibido el TOSHIYA TADA SPECIAL OLIVE OIL SOMMELIER AWARD en OLIVE JAPAN®
by KatoTomoko7月,19,2024

「注文が止まらない!カシータス・デ・ウアルドの受賞理由とは?」〜CASITAS ha recibido el TOSHIYA TADA SPECIAL OLIVE OIL SOMMELIER AWARD en OLIVE JAPAN®

 【受賞2024】カシータス・デ・ウアルド~多田俊哉オリーブオイルソムリエ特別賞 〜CASITAS ha recibido el TOSHIYA TADA SPECIAL OLIVE OIL SOMMELIER AWARD en OLIVE JAPAN®      OLIVE JAPAN® SHOW 2024 のまとめ 6月28日(金)と29日(土)に東京のコートヤードマリオット銀座東武ホテルで開催されたOLIVE JAPAN® SHOW 2024は、多くのオリーブオイルファンや専門家を魅了しました。今回、フォーカスするのは、スペインのトレドを代表する上質なオリーブオイル「カシータス・デ・ウアルド」が、多田俊哉オリーブオイルソムリエ特別賞を受賞したことです。その素晴らしさと影響について詳しくご紹介します。   1: イベントの概要 OLIVE JAPAN®は、日本において最大の「オリーブオイル」をテーマにしたイベントです。毎年4月から5月にかけて開催される国際的なオリーブオイルコンテストが中心となります。世界有数のテイスターたちが来日し、審査員として参加します。前年に搾油されたばかりのオリーブオイルが世界中からエントリーされ、「品質のみを重視したコンテスト」として、厳正に審査されます。       2: 2024年のオリーブオイルコンテスト 2024年のコンテストでは、766品ものエントリーがあり、その中から多田俊哉オリーブオイルソムリエ特別賞を含む数々の賞が発表されました。 最優秀賞: 8品 多田俊哉オリーブオイルソムリエ特別賞: 10品 金賞: 318品 銀賞: 207品 各国ベスト賞   多田俊哉オリーブオイルソムリエ特別賞    ...

7月イベントスケジュール
by KatoTomoko6月,28,2024

7月イベントスケジュール

7月イベントスケジュール   みなさんこんにちは、加藤です。 トップ画像のご紹介 OLIVE JAPANR国際オリーブオイルコンテストにおいて、カシータス@Casas de Hualdoが、「多田俊哉特別オリーブオイルソムリエ賞」を受賞しました! 「OLIVE JAPAN SHOW 2024 まるしぇ」 (@コートヤードマリオット銀座東武ホテル2階)第一日目の授賞式での写真です。 明日も10時から18時までまるしぇが開催されます。私も行きますので、会場で見かけたらお声掛けいただけたら嬉しいです。     さて、6月もイベントを通して多くの方々にお会いできて本当に充実した一ヶ月でした。 7月のイベント情報をお届けします。 マルシェでは、オンラインショップ「Store」の実店舗として、LOHASPAINの味わいを実際に試食していただけます。 私はオリーブオイルソムリエなので、オリーブオイルに関する質問もぜひ。 こちらはお申し込みの必要もありませんから、ふらっとお散歩がてらにいかがでしょうか。 お待ちしていますので、ぜひお買い物にいらしてくださいね!   ⚪︎いそご丘の上マルシェ  いそご丘の上マルシェに出店します。          ・開催日程 7月7日(日)10:00〜15:00 ・開催場所 神奈川県横浜市磯子区磯子3-13-2 ブリリアシティ       横浜磯子内ヒルトップスクエア ・アクセス JR根岸線 磯子駅 磯子駅より徒歩8分       ⚪︎太陽のマルシェ@勝どき 太陽のマルシェは4月から開催時間が10時から17時と1時間長くなっています。 お好きなタイミングでいらしてください。       ・開催日程 7月13日(土曜)14日(日曜)10:00〜17:00 ・開催場所 月島第二児童公園(中央区勝どき1-9-8) ・アクセス 都営地下鉄大江戸線『勝どき』駅下車 A4a出口、A4b出口すぐ          いそご丘の上マルシェでは、ゴールデンマスタードもお持ちます!...

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Spanish Lifestyle

ワインの未来はここから動き出す─次世代へつなぐ、バルセロナワインテスト2025
by IkumiHarada

ワインの未来はここから動き出す─次世代へつなぐ、バルセロナワインテスト2025

先月「Spanish Lifestyle」でご紹介した「バルセロナワインテスト・アーバン2025」は、多くの皆さまのご協力のもと、無事に幕を閉じました。バルセロナ初の一般参加型ワインコンクールとなった本イベントには、150名の参加者が集い、200種類以上のワインをブラインドでテイスティング。会場は熱気に包まれ、ワイン文化の新たな可能性を象徴する場となりました。 バルセロナワインテストCEOのロジェール・グリフォイ・デクララをはじめ、「Spanish Lifestyle」でもおなじみのテクニカルディレクターのフアン・ムニョス先生、そして筆者自身もチームメンバーとして運営に携わり、約1年にわたり準備を重ねてきました。正直、これまでで最も忙しく大変な1年でした。しかし、若き審査員たちが「また来年も絶対に参加したい!」「ワインがもっと身近な飲み物になった!」と目を輝かせる姿を目にした瞬間、苦労はすべて報われたと感じました。 今回は、現地で紹介された内容を基に、イベントの模様を日本語でお届けします。 バルセロナ・ワインテスト・アーバン2025、大きな成功150名の若者が200種以上のワインをブラインドで体験!バルセロナ 11月7日金曜日、バルセロナのホテル・インターコンチネンタルにて、第1回となる「バルセロナワインテスト・アーバン2025(Barcelona Wine Test Urban 2025)」が開催されました。本イベントは、消費者が本当に好むワインを明らかにすることを目的に設計された、新しいスタイルのワインコンテストです。期待を大きく上回る結果となり、150名の参加者が集まり、さまざまな産地・スタイル・価格帯の200種類以上のワインをブラインドで評価しました。 この呼びかけには特に若い層を中心とした多様な参加者が集まり、来場者は男性55%、女性45%という構成。ワイン愛好家や、新しい銘柄を発見したいと願う一般のワインファンが多数参加しました。応募希望者が定員を大きく上回り、多くの方の参加をお断りせざるを得ないほどでした。これは、テイスティング体験型イベントへの関心の高まりと、消費者の声を重視するワイン業界の新たな動きを象徴しています。 試飲セッションでは、各参加者に15杯のワインがラウンド形式で提供されました。ワインごとに、参加者はボトルのQRコードを読み取り、スマートフォン上の簡易テイスティングシートで「香り」「味わい」「バランス」「好感度」を評価します。ブランド名や原産地、価格は一切知らせず、参加者は独立した秩序ある環境で、完全にブラインドの評価を行いました。 「アマチュアの参加者が15種類ものワインを評価するという挑戦には、少し不安もありましたが、結果はまさに“満点”でした」と、本大会のチームメンバーでありソムリエ養成講師でもあるフアン・ムニョス氏は語ります。「参加者たちは、一つひとつのワインをしっかり味わい、比較し評価していました。その姿は本当に模範的で、頼もしく感じました。」 一方、同チームのロジェール・グリフォイ・デクララ氏は、この規模のテストにおける技術的挑戦について次のように述べています。「初回ということもあり、技術面と物流面の完璧な運営を優先するため、出品ワインを200本に限定しました。評価はすべてリアルタイムでスマートフォンから行われるため、数十件の同時投票には大きな技術的負荷がかかります。まずは体験の質を確実に保証することを最優先にしました。その結果、すべてが完璧に機能しました。」 事前の参加者インタビューでは、多くの若者が「ワインは遠い存在」と感じていることが分かりました。しかし、今回のような動的で参加型、さらにガイド付きのテイスティング体験を通じて、ワインに親しみを感じるきっかけになったことが確認されました。これは、新しい世代との接点を模索するワイン業界にとって、大変意義のある成果と言えます。 テイスティング後には、コンテストに出品した一部のワイナリーの代表者が参加するショールームが開かれ、参加者が生産者と直接会話しながらワインを再度試飲する交流の場となりました。この空間は、造り手と消費者が出会い、品種や地域、スタイル、トレンドについて自由に語り合える貴重な場となりました。 第1回大会の成功により、「バルセロナワインテスト・アーバン2025」は、従来のコンテストに代わる新しいモデルとして、革新的な一歩を踏み出しました。消費者の意見を中心に据えたハイブリッドな試みとして、「味わう」「学ぶ」「共有する」という体験を通じて、人々をつなぐ新しいワイン文化の形を提示したことも、大きな成果です。 主催者は今後、消費者による総合評価と、来場者が最も高く評価したワインの最終ランキングを発表する予定です。また、審査結果や受賞ワインの詳細は、来年2月に開催される「バルセロナワインウィーク(Barcelona Wine Week)」で発表されます。 さらに、次回はプロフェッショナル部門「バルセロナワインテスト・プロフェッショナル2026」が、2026年1月27日にバルセロナで開催されます。こちらは、バイヤー、ソムリエ、ジャーナリスト、ワインコミュニケーターなど業界の専門家が集い、100点満点方式のブラインド・テイスティングを実施。参加ワイナリーにはメダルおよび品質認証が授与される予定です。 最後に 「バルセロナワインテスト・アーバン」を通じて、若い世代がワインに触れ、味わい、学び、共有する場が生まれたことを実感しました。この試みは、次世代の嗜好や考え方を尊重しながら、ワイン文化を新たな形で広げていく可能性を示しています。ワイン業界にとっても、若い世代との接点を深める貴重な機会となりました。 「バルセロナワインテスト・アーバン」は、次世代にワイン文化を継承し、業界全体を活性化するプラットフォームとしての役割を掲げています。参加者と造り手、地域社会をつなぐ架け橋として、ワインを通じた新しい体験の場を創出することを目指しています。来年はさらに国際的な広がりも視野に入れ、より多くの皆さまに感動的で楽しい体験をお届けできるよう、準備を丁寧に重ねてまいります。 【関連記事】バルセロナ発ワインコンクール ― バルセロナワインテスト (Barcelona Wine Test)【バルセロナワインテスト・アーバン2025 メディア掲載まとめ事】・VineturEl Barcelona Wine Test Urban 2025 reúne a 150 jóvenes en una cata a ciegas de más de 200...

近藤佑哉ソムリエに聞く― 大西洋とテイデが織りなす、テネリフェ島の魅力
by IkumiHarada

近藤佑哉ソムリエに聞く― 大西洋とテイデが織りなす、テネリフェ島の魅力

名門「銀座レカン」のCBO兼ビバリッジディレクターとして、レカングループの経営と飲料を統括する日本を代表する若手トップソムリエの一人、近藤佑哉さん。大学卒業後に銀座レカンに見習いとして入社。その後、ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン東京」で研鑽を積まれ、2019年にソムリエとして銀座レカンに復帰。2020年に同レストランのシェフ・ソムリエに就任され、2021年にはグループ全体の飲料統括マネージャー、2025年からはCBO(Chief Brand Officer)として活躍されている近藤さん。数々のソムリエコンクールでの受賞歴もあり、日本を代表する若手ソムリエとして注目されています。 そんな近藤さんと、10月にスペイン・カナリア諸島のテネリフェ島を訪れました。近藤さんにとって初めてのスペインが、大西洋に浮かぶ常春の島、テネリフェという、かなりレアな体験。島独自の土着品種やテロワール、海と山が織りなす風土を実際に体感された経験について、最終日にお話を伺いました。 現場で学び、世界で磨かれたソムリエ道 原田近藤さんが、今はソムリエだけでなく、老舗フレンチレストラングループの経営にも従事されていることにとても興味を持ちました。どのような道のりで今のポジションにたどり着かれたのでしょうか。 近藤大学では経営を学びましたが、飲食業に興味がありフランス料理の世界に入りました。レストランマネジメントを理解するために、まずは現場で経験を積みたいと思い、洗い場やサービスマンとして働く中でソムリエの機会をいただきました。 ワインの魅力に惹かれ、勉強を重ねるうちにコンクールにも参加しました。世界各地のワイン産地で出会う仲間や文化に触れる中で、この道を深めたいと強く思うようになりました。現在は銀座レカンの経営責任者として働きながら、グループ全体のワインや飲料の管理も担当しています。 テネリフェ島で感じた土着品種の魅力 原田滞在中、地元の方々や文化との交流で印象的だったことはありますか。 近藤テネリフェの人々は島を心から愛しており、ワインはもちろん食材や文化を深く尊重しています。その姿勢がワイン作りにも反映されていて、自然や伝統を大切にする文化を肌で感じることができました。 原田これまでに訪れたヨーロッパや世界のワイン産地と比べて、テネリフェの特徴はいかがでしたか。 近藤フランス、イタリア、ベルギー、アメリカ、オーストラリアなども訪れましたが、テネリフェは独特です。海に面した立地から急斜面の畑が広がり、海と山の両方の影響を受ける非常に特徴的なテロワールを持っています。世界的にも珍しい地形だと感じました。 ビニャディゴで見た、テロワール重視のワイン作り 原田ビニャディゴを訪問された際、オーナーや醸造家、スタッフとの交流で印象に残ったことはありますか。 近藤まず驚いたのは生産量の少なさです。土着品種を大切にし、その個性を最大限に引き出すワイン作りをされていました。利益よりもテロワールを重視する姿勢が非常に印象的でした。 原田試飲されたワインで特に印象的だったものは。 近藤シングルビンヤードのシリーズです。単一品種畑ごとの個性が表現されており、同じリスタン・ブランコでも畑ごとに味わいが異なります。テネリフェのテロワールの魅力を最大限に感じられるシリーズです。 火山性土壌と海風が生む個性 原田火山性土壌がワインに与える影響はいかがでしたか。 近藤火山性土壌由来のミネラル感は白・赤ワインに共通して感じられます。さらに海の影響で塩味のようなミネラルも加わり、両者が絶妙に融合しています。こうした特徴は日本の食材とも合わせやすく、ペアリングの幅を広げてくれます。 原田日本市場におけるカナリア諸島ワインの魅力はどこにあると思われますか。 近藤土着品種のユニークさと、テロワールを反映したエレガントなスタイルです。日本の豊かな食文化や気候にも合うワインだと思います。白ワインならシーフード、滑らかな赤や白はオリーブオイルを使った料理との相性も良いと思います。 原田今後、日本での普及には何が必要でしょうか。 近藤この魅力をより多くの方に知ってもらう機会を作ることが大切です。生産量が少なく貴重なワインですが、ビニャディゴのようにテロワールを見事に表現しているワインを、日本でも多くの方々に届けていきたいです。 最後に テネリフェ島では、Tim Atkin MWから「カナリーワインのレジェンド」と称えられるビニャディゴの創立者で醸造家のフアン・ヘスス氏とともに、島の人々に人気の伝統料理レストランや市場、ディープな食体験を楽しむことができました。最終日には自宅でプロ顔負けのパエリアまでご馳走してくださり、近藤さんは何度も「スペインは食事が美味しい」と感嘆されていました。 近藤さんのテイスティングコメントひとつひとつから、その鋭い感性とセンスを感じました。老舗「銀座レカン」の伝統を守りながら、新しい挑戦を果敢に行う姿勢。感度の高い若者の心を掴む力が、会話を通じてひしひしと伝わってきました。 近藤さんがCBOを務めるレカングループは、フレンチの名店「銀座レカン」のほか、ビストロやワインショップなどを展開し、その成功ノウハウを生かした飲食店へのコンサルティングも行っています。新しい感性と視点を持つ近藤さんのこれからに、ますます目が離せません。ーーーーーー銀座レカン📍 〒104-0061 東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビルB1The Arts Fusion by L'écrin📍 〒110-0005 東京都台東区上野7-1-1 アトレ上野レトロ館1F 1020【関連記事】【テネリフェ島レポート】火山性土壌がもたらす香り—ビニャティゴの視点【カナリア諸島のワイン】世界の注目と、フィロキセラへの挑戦ビニャティゴ~カナリア諸島の固有品種を絶滅の危機から救ったワイナリー【世界が注目】火山島ワイン、テネリフェ「ビニャティゴ」来日セミナー「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム Ikumi Harada 原田郁美Journalist & Creative Director スペインワインとガストロノミー専門ジャーナリスト。大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして、クリエイティブな視点と戦略的思考を培う。2005年から留学を機にスペイン食文化に魅了され、その研究に人生を捧げる。2009年から日本・アジア市場でスペインワインの輸出とプロモーションに従事。2011年に「スペインワインと食協会」を創設、スペイン食文化の普及と市場拡大に寄与している。2012年、プリオラートでワイン造りを始め、2024年に自らの初ヴィンテージをリリース。2025年より、バルセロナにて国際ワインコンクール「Barcelona...

森本美雪ソムリエに聞く─火山島テネリフェの魅力とワインペアリング
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森本美雪ソムリエに聞く─火山島テネリフェの魅力とワインペアリング

スペイン最高峰のテイデ火山が生んだ大地、大西洋から貿易風(アリシオス)が吹き抜ける急斜面のブドウ畑──カナリア諸島・テネリフェ島には、ここでしか味わえないワインの個性があります。10月18日、コンラッド東京のエグゼクティブソムリエで、日本を代表する若手ソムリエの森本美雪さんとこの島を訪れました。森本さんとブドウ畑や醸造の現場を巡りながら、その土地とワインの魅力、そして森本さんならではの視点をじっくりと伺いました。 森本美雪(もりもと・みゆき)さんプロフィールコンラッド東京 エグゼクティブソムリエ 神奈川県生まれ。ホスピタリティ専門学校でレストラン専攻後、フレンチレストランで研鑽を積み、2014年にコンラッド東京のソムリエチームに加わる。その後、オーストラリアとニュージーランドでの勤務を経て、2019年に再びコンラッド東京へ復帰。2023年より、ホテル全体のビバレッジオペレーションを統括する。2022年には、マスター・ソムリエ(MS)およびマスター・オブ・ワイン(MW)受験者のために世界でわずか4名に授与される「ドン ペリニヨン・ゴールデン・ヴァインズ・マスター・オブ・ワイン&マスター・ソムリエ・スカラシップ」を獲得。翌2023年には、卓越した技能者に贈られる令和5年東京都優秀技能者(東京マイスター)を受賞。2025年、ASIアジア・パシフィック最優秀ソムリエコンクールに日本代表として出場。コンラッド東京エグゼクティブソムリエとして、国内外で日本のソムリエ界を代表する存在として活躍している。 テネリフェ島の人と大地──自然体で生まれるワインと食 森本さんにとって、スペインを訪れるのは今回で三度目。しかしカナリア諸島、そしてテネリフェ島は初めての訪問でした。 ―地元の方々との交流で、特に印象に残ったことはありますか? 「これまでで最も地元の方々との結びつきを感じました。食文化も日本に近く、素材の持ち味を生かした調理法が多いので、日本の方にもとても馴染みやすい土地だと思いました」と森本さん。 テネリフェ島では、海風に吹かれる畑や活気ある市場を歩きながら、島の人々の暮らしや食への愛情が自然と伝わってきたそうです。スペイン本土のクラシックな料理とはまた違う、素材を大切にする繊細さが、ワインと料理の魅力をより身近に感じさせる、と森本さんは語ります。 2025年は特別なヴィンテージに─家族の絆と情熱のワイナリー 訪れたのは、カナリア諸島を代表するワイナリーのひとつ、ボデガス・ビニャティゴ。 「オーナーのフアン・ヘススさんと醸造家である奥様のエレナさん、スタッフの皆さんが一丸となってワイン造りに取り組んでいて、本当にアットホームな雰囲気でした。世界的に有名なワイナリーでありながら、『特別なことをしている』という意識はなく、日常の延長として良いものを生み出す。その姿勢に心を打たれました」と森本さん。 訪問の最中には、ワインの仕込み作業に参加させてもらえる機会もありました。 「ソムリエになって10年以上になりますが、仕込みを手伝わせていただくのは初めての経験です。2025年は自分にとって特別な“ヴィンテージ”になりそうです」と、森本さんはうれしそうに微笑みました。 火山性土壌が生む、白ワインの透明感と奥行き 「訪問前から、テネリフェの白ワインは特にクオリティが高いと感じていました。でも、現地で実際にテイスティングすると、その完成度は想像を大きく超えていました」と森本さん。 溶岩が流れた跡地や標高差によって生まれる多様なテロワールは、ワインに複雑で繊細な奥行きをもたらします。「1100万年以上前の古い土壌の個性が、味わいのひとつひとつにしっかりと映し出されていました。どのワインも、この土地ならではのテロワールの魅力が際立っています」と森本さんは語ります。   ラデラス・デ・テノが映す火山性土壌の個性 森本さん、ビニャティコ゚のフアン・ヘスス氏、銀座レカンの近藤さんテノの急斜面の畑にて 中でも森本さんの印象に残ったのは、ビニャティゴのシングルビニヤードシリーズ。その中で唯一の赤ワイン、「ラデラス・デ・テノ」の畑について、森本さんは目を輝かせながら語ります「テノの畑は標高が高く、火山岩や山の影響を強く受けた場所です。テラス状の畑の一番下に植えられたビハリエゴ・ネグロから、一番上のバボソ・ネグロまでの標高差や、1100万年以上前の古い土壌の個性がワインに見事に反映されていて、世界のどこに出しても、ワインに携わる方はもちろん、一般の方でも驚きを覚えるようなワインだと思います。」 ―火山性土壌はワインにどのような影響を与えると感じられましたか? 「これまでも火山性土壌は、特に白ワインでその個性をはっきり映し出すと感じていました。今回、シングルヴィンヤードシリーズのひとつ、リスタン・ブランコの「カミノ・デ・ラ・ペニャ」など"カミノ・デ・ラ・ペニャ"など若い土壌(160万年前のもの)のワインをテイスティングし、改めてその力を実感しました。ファーストノートだけでなく、余韻まで続くマッチを擦ったような香り、心地よいスパイス感、太めのストラクチャを感じさせる酸の出方が、本当に長い余韻を生み出しています。他の石灰岩の土壌と比べても、火山性土壌の恩恵がここまでワインに反映されているのは特にビニャティゴのワインの特徴だと思います。」   カナリア諸島のワイン─日本で広がる可能性とは 「やはり生産量が少ないため、世界中でアンテナを張るソムリエたちの間で取り合いになってしまうと思います。せっかく素晴らしいワインで、多くの人に知ってほしいと思っても、日本で紹介できる機会は限られてしまいます。 まずは、お客様に安定して提供できる環境を整えることが大切です。そのうえで、この産地はストーリーテリングが豊かで、世界でも珍しい魅力を持っています。ですから、まずはソムリエやワインショップのスタッフなど、ワインを本当に愛する人たちがしっかり学び、その魅力を伝えていくことが重要だと思います。そうすることで、人々が「行ってみたい」「飲んでみたい」と思える下地を作ることができるのです。生産量の安定と、この下地作りが、日本市場で広がるためのポイントになると考えます。」 森本美雪さんに聞く、コンラッド東京のレストランとビニャティゴのワインのお勧めのペアリング 「中華ですと、シングルヴィンヤードシリーズ、棚仕立てのリスタン・ブランコ “カミノス・デ・ラ・ペニャ”もそうですし、シングルヴィンヤードシリーズ唯一の赤、”ラデラス・デ・テノ”は鴨肉との相性がすぐに思い浮かびます」と森本さん。「コンラッド東京の中国料理『チャイナブルー』では、一般的な北京ダックではなく、鴨のコンフィを使ったシグネチャーディッシュ“東京ダック”がありまして、鴨のコンフィにパイナップルと揚げ湯葉を合わせ、自家製のクレープで手巻き寿司のようにいただく一皿です。甘味噌やピスタチオの食感が加わることで、クリスピーさやクランチーさとともに、鴨のフレーバーが”ラデラス・デ・テノ”の持つ血液的なニュアンスや豊かな酸と見事に調和します」と、目を輝かせながらおすすめの料理を教えてくださいました。「日本食でしたら、今の季節はカツオがとても美味しいですね。シンプルに藁焼きにしたカツオは、わずかにいぶした香りがあって、ビニャティゴのワインが映し出す火山性土壌のスモーキーな印象─まるでマッチを擦ったような香ばしさ─と非常によく馴染みます。さらに、コンラッド東京の寿司職人が瞬間燻製してくれるマグロを少しだけスモークして合わせても、素晴らしい相性になると思います。」 最後に カナリア諸島には、なんと80種類以上もの固有品種が存在すると言われています。世界でもここにしかないブドウ品種がいくつもあり、プロでさえ初めて耳にする品種に出会える─常識を覆すような多様性に満ちたこの土地は、世界中の専門家や科学者たちから、熱い視線が注がれています。 森本さんは、それらの難解なブドウ品種の名前をまるでスポンジが水を吸い込むように吸収し、豊富な経験に裏打ちされた確かな感性で、印象的なテイスティングコメントや緻密なペアリング提案を次々と聞かせてくださいました。そのひとつひとつの言葉から、新しい気づきと学びをいただきました。 火山と海に抱かれた島で、人々は自然とともに生き、誠実にワインを造り続けています。その姿勢に深い敬意を示し、温かな眼差しで語る森本さんの姿から、この島の新たな魅力を見つけることができました。 常春の楽園、カナリア諸島の火山島で生まれたワインが、日本のレストランや食卓に新しい風を運んでくれる日を、心から楽しみにしています。筆者自身も、コンラッド東京「チャイナブルー」の“東京ダック”を、このワインとともに味わいたくて、今から待ちきれません。 ぜひ、森本美雪ソムリエがいらっしゃるコンラッド東京で、テネリフェ島のワインとお料理が織りなす、特別な出会いを体験してみてはいかがでしょう。 ーーーーーーコンラッド東京📍 105-7337 東京都港区東新橋1丁目9−1中国料理チャイナブルー【関連記事】【テネリフェ島レポート】火山性土壌がもたらす香り—ビニャティゴの視点【カナリア諸島のワイン】世界の注目と、フィロキセラへの挑戦ビニャティゴ~カナリア諸島の固有品種を絶滅の危機から救ったワイナリー【世界が注目】火山島ワイン、テネリフェ「ビニャティゴ」来日セミナー「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム Ikumi Harada 原田郁美Journalist & Creative Director スペインワインとガストロノミー専門ジャーナリスト。大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして、クリエイティブな視点と戦略的思考を培う。2005年から留学を機にスペイン食文化に魅了され、その研究に人生を捧げる。2009年から日本・アジア市場でスペインワインの輸出とプロモーションに従事。2011年に「スペインワインと食協会」を創設、スペイン食文化の普及と市場拡大に寄与している。2012年、プリオラートでワイン造りを始め、2024年に自らの初ヴィンテージをリリース。2025年より、バルセロナにて国際ワインコンクール「Barcelona Wine Test」を主催予定。WSET® Level...

【テネリフェ島レポート】火山性土壌がもたらす香り—ビニャティゴの視点
by IkumiHarada

【テネリフェ島レポート】火山性土壌がもたらす香り—ビニャティゴの視点

日本を代表する若きソムリエ、コンラッド東京 エグゼクティヴソムリエの森本美雪さん、そしてレカングループ総支配人兼エグゼクティヴソムリエの近藤佑哉さん。お二人がカナリア諸島・テネリフェ島の実力派ワイナリー「ビニャティゴ(Viñátigo)」を訪問される機会に、ご縁をつなぐ形で同行させていただきました。 筆者は、2022年に初めてビニャティゴのワインに出会って以来、カナリア諸島という唯一無二のワインの世界に魅了され、今回が3度目のテネリフェ訪問となりました。今回の旅では、お二人のソムリエがそれぞれのプロフェッショナルな視点から語る見解やテイスティングコメントに耳を傾けながら、改めてこの島のワインの奥深さを感じました。 左からフアン・ヘスス・メンデス氏、森本美雪さん、近藤佑哉さん。大西洋と自社畑を見渡せる、ビニャティコ゚のワイナリー内にあるテイスティングルームにて。 Tim Atkin MWによるカナリア諸島レポートで「ワイン醸造界のレジェンド」に選ばれた、ビニャティコ゚創設者でありDOP Islas Canarias会長、そしてスペインワインと食協会の心強いコラボレーターでもあるフアン・ヘスス氏とともに、テネリフェ島北部に点在するビニャティゴのブドウ畑を巡る中で、標高差や湿ったアリシオス(貿易風)、仕立ての違い、多様な火山性土壌、そしてそれぞれの環境に適したブドウが織りなす島の個性を実感し、ビニャティゴのワインの魅力を改めて深く感じる貴重な体験となりました。 テイスティングの中で、両ソムリエが特に関心を寄せていたのが、「火山性土壌がもたらす香り」についてでした。火山性のワインに感じられる独特の香りは、しばしば“還元香”と混同されることがあります。この点について、フアン・ヘスス氏と、その息子でブドウ栽培家、そしてすでに著名なソムリエたちから“ライジングスター”と称されるホルヘ・メンデス氏の見解をまとめました。 カナリア諸島、テネリフェ島の火山性土壌について カナリア諸島の火山性土壌は非常に若く、平均でおよそ800万年前に形成されました。これは大陸の土壌と比べても、際立って新しい土壌といえます。もっとも、すべての土壌がこの平均に収まるわけではありません。テネリフェ島の北西部、北東部では、粘土やシルト分を多く含む、浸食の進んだ古い土壌でもブドウが栽培されており、その形成時期は約1,100万年前にまでさかのぼります。 一方で、粘土分をほとんど含まない、石や砂、シルトが主体の非常に若い火山性堆積物の土壌でもブドウを栽培しています。どちらのタイプの土壌も世界の他の地域と比べると非常に若く、土壌中に存在するミネラル分や有機物は、植物が容易に吸収できる形ではほとんど存在していません。 このような背景から、発酵前のモスト(果汁)に含まれる窒素(N / nitrógeno)の量は非常に低くなります。健全な発酵を始めるには通常、150〜200mg/L程度のNFA(酵母が容易に吸収できる窒素)が必要とされますが、カナリア諸島ではわずか30mg/L程度しかないケースもあります。つまり、発酵の段階からすでに還元的な環境が生まれているのです。 そのため、ビニャティゴでは「還元的(reductivo)」ではなく、あえて酸化的なアプローチを重視した醸造を行っています。過度に還元的な環境で醸造を進めると、硫黄化合物の生成が促され、水素と結合して硫化水素(SH₂)が生じ、いわゆる卵の腐ったような“還元臭”が現れてしまうからです。 一方で、適度なエアレーションを行い、酵母の活動を健全に保つことで還元環境を回避できれば、ワインの中で感じられる“ミネラリティ”は、別の要素―リン(P / fósforo)由来の成分によって形づくられます。リンに由来する香りは、火打ち石、火薬、あるいはマッチを擦った時の香りのようなニュアンスをもち、まさに火山性土壌に由来するワインを象徴する個性といえるでしょう。 また、有機栽培では土壌中の窒素量が高まることもあるため、その恩恵を最大限に引き出すとともに、サスティナブルな観点から原風景や地域の農業遺産を守るため、ビニャティゴでは徹底して自然に敬意を払った有機栽培を実践しています。土地の個性を尊重しながら、データに基づいた科学的アプローチに則って伝統と未来をつなぐ─まさにこの姿勢こそが、ビニャティゴのワイン作りの根幹を成している、と改めて実感しました。 ビニャティゴの単一畑シリーズーリスタン・ブランコ 写真右からLOMO DE LA ERA(Paraje de la Cruz Santa)、CAMINO DE LA PEÑA(Paraje de la Peña)、そして、MAIPE(Parcela Maipe)。 テネリフェ島の北東から北西へとブドウ畑を巡り、その旅の締めくくりにビニャティゴの単一畑シリーズ3種をテイスティングしました。いずれも接ぎ木をしていない古樹のリスタン・ブランコですが、その個性の違いには目を見張るものがありました。 ソムリエの森本さんと近藤さんのコメントが印象的でした。繊細で伸びやかな酸を湛える「ロモ・デ・ラ・エラ」にはフレンチや和食を、対して、骨格のある酸が魅力の「カミノ・デ・ラ・ペニャ」には中華やタイ料理など、スパイスを効かせた料理がよく合うとのこと。聞けば聞くほど納得です。 そして「マイペ」は、まるで生命力そのものがグラスの中で輝きを放つような一本でした。それぞれの畑を形づくる要素の違いが、どう味わいに現れるのか─フアン・ヘススが一つひとつの畑の個性を丁寧に語ってくれました。 1. ロモ・デ・ラ・エラ/LOMO DE LA ERA(Paraje de la Cruz Santa)仕立て:コルドントレンサード(三つ編み仕立て)、標高:500m、リスタンブランコ土壌:オロタバ渓谷を形成する火山性土壌は、多様性に富んでいます。渓谷西部のクルス・サンタ地区では、東部に比べて土壌が若く、砂やシルト(細かい砂状の土)が多く、粘土は少なめで、玄武岩の小石も多く見られます。こうした土壌は、水はけが良く、根の発達を促す条件を備えています。2. カミノ・デ・ラ・ペニャ/...

バルセロナ発ワインコンクール ― バルセロナワインテスト (Barcelona Wine Test)
by IkumiHarada

バルセロナ発ワインコンクール ― バルセロナワインテスト (Barcelona Wine Test)

カタルーニャ州バルセロナで、全く新しいワインコンクール「バルセロナワインテスト(Barcelona Wine Test)」が誕生しました。 近年、世界的に若者のアルコール消費は変化していますが、地中海諸国ではワインは昔から人々の暮らしに寄り添う特別な存在。食卓を彩り、人と人との絆をつなぐひとときを育んできました。バルセロナワインテストは、このワイン文化の魅力と価値を未来につなぎ、次世代に受け継ぐため、ワインを楽しむ文化の継承と業界全体の発展を目指す有志が集結して誕生しました。 バルセロナが舞台の理由 バルセロナはワインとトレンドが息づく街であり、国際的にも高く評価されています。ここでは伝統、ガストロノミー、観光、そして地中海文化が調和し、革新と創造性が自然に共存しています。さらに、スペインワインの国際見本市として、年々その存在感を高める「Barcelona Wine Week(BWW)」も、バルセロナをワインの都市として後押ししています。 そのバルセロナから、新しいワインコンクールが誕生しました。生産者、コミュニケーション、マーケティング、テクノロジーのプロフェッショナル、そしてソムリエで教育者でもあるフアン・ムニョス先生と、筆者自身を含む多様なメンバーが力を合わせて立ち上げた―「バルセロナワインテスト(Barcelona Wine Test)」です。このコンクールは、単にワインを評価する場ではありません。生産者を応援し、業界を盛り上げ、そしてワインの未来をともに築いていく―そんな新しい挑戦の舞台です。バルセロナから始まるこの試みが、次世代へとその価値をつなぐ小さな一歩となることを願っています。 バルセロナワインテスト ―  3つの国際コンクール 「バルセロナワインテスト」は、ワインおよびワイン由来製品部門、さらに発酵飲料・蒸留飲料部門を対象とした3つの国際コンクールで構成されています。そのうち2つはワインとその派生製品に焦点を当て、残る1つは発酵飲料と蒸留飲料に特化しています。 1. バルセロナワインテスト・アーバン 2025(ワイン&ワイン由来部門)2025年11月7日開催 バルセロナの消費者と感度の高い若者が審査する、世界初のブラインドテイスティング形式ワインコンクール。 コンクール当日、Showroomで、消費者と業界関係者に直接PR 受賞ワインは「Barcelona Wine Week 2026」で国際発表 バルセロナの厳選したワイン専門店で試飲販売プロモーション(Barceloma Wine WeekのLike the cityの一貫として) 長期サポートでブランド価値を持続(オプション) 2.バルセロナワインテスト・プロフェッショナル2026(ワイン&ワイン由来部門)2026年1月27日開催 世界的に活躍する一流ソムリエやバイヤー、ワインジャーナリストによる厳正なブラインドテイスティングで、ワインの品質と市場での競争力を客観的に分析。 メダル受賞は品質と信頼性の証となり、輸出や販路開拓の戦略的機会を提供 バルセロナという国際ブランドの影響力により、受賞ワインは欧州および世界市場で高い注目を獲得 専門家による評価データを体系的にまとめた詳細レポートが、戦略立案やブランド価値向上の重要な指針に 販売・輸出支援やコンサルティングを含むサポートプログラム(オプション) 3.バルセロナワインテスト・プロフェッショナル2026 Fermented & Distilled(発酵・蒸留飲料部門)2026年1月28日開催 世界各国の優れた発酵・蒸留飲料を、国際的な専門家がブラインドテイスティングで評価。 審査員はソムリエ、バー関係者、ジャーナリスト、流通のプロフェッショナルで構成 日本酒、シードル、ミードなどの伝統的発酵飲料から、ジン、ウイスキー、ブランデー、テキーラまで幅広く対象 低アルコール・ノンアルコール(0.0%)飲料など、最新トレンドも評価 バルセロナ開催により、受賞は「国際的ブランド都市」の信頼を背景に世界市場で高い注目を獲得 小規模生産者や地域プロジェクトの認知向上、国際的なプロモーション支援にもつながる 輸出と国際展開への扉を開く、新たなチャンスに 最後に 今日ご紹介したバルセロナ初のワインコンクール、「バルセロナワインテスト」は、“Spanish Lifestyle”のコンセプトを表現する場でもあります。ワインだけでなく、発酵・蒸留文化の未来を見つめ、造り手と飲み手、業界と消費者、そして地域社会と世界をつなぐ架け橋となることを目指しています。このコンクールを通じて、参加者一人ひとりが互いの文化や価値観に触れ合い、新しい発見や学びを得ることができます。また、受賞ワインは専門店や国際市場での販路拡大、輸出の機会へとつながるなど、産業としての成長も後押しします。バルセロナワインテストは、単なるワインコンクールではなく、業界全体を盛り上げ、次世代にワイン文化をに継承していくためのプラットフォームなのです。バルセロナは、多様な文化を受け入れ、創造性を育む土壌を持つ街。ここでは、日本文化や日本食が長年にわたり高い人気を得ており、それに伴い、日本酒やジャパニーズウイスキー、さらには日本ワインへの関心も高まっています。...

【モンテレイ】ガリシアで最も小さく、最も若いDO(原産地呼称) / DOモンテレイ試飲会レポート、バルセロナより
by IkumiHarada

【モンテレイ】ガリシアで最も小さく、最も若いDO(原産地呼称) / DOモンテレイ試飲会レポート、バルセロナより

ガリシア州オウレンセ県、ポルトガル国境に広がるD.O.モンテレイは、ガリシアで最も小さく、そして最も若い原産地呼称です。タメガ川とドウロ川流域という特異な気候条件が生む多彩なブドウ品種と、世代を超えて受け継がれる伝統が、モンテレイのワインに独自の個性を与えています。いま注目されるゴデーリョやメンシアはもちろん、パロミノやドーニャ・ブランカを使ったブレンドにも、この土地ならではの奥深い味わいが息づいています。

修道院の歴史と、ミネラルが息づく大地 ― DOCaプリオラート
by IkumiHarada

修道院の歴史と、ミネラルが息づく大地 ― DOCaプリオラート

【文】フアン・ムニョス 【構成・訳・収穫レポート・写真】原田郁美 今回の Spanish Lifestyle では、35年以上にわたりスペインワインの第一線で活躍し、トップソムリエとして、また教育者として多くのプロフェッショナルを育ててきたフアン先生による「プリオラートのワイン」をご紹介します。収穫で活気に満ちる現地から、今年のブドウの出来や生産者の声も交えてお届けします。どうぞ記事を通して、プリオラートを感じていただければ幸いです。 目次 ※目次の各項目をクリック(またはタップ)すると、該当する本文のセクションへジャンプします。 1.修道院の歴史と、ミネラルが息づく大地 ― DOCaプリオラート 2.2025年、プリオラートの収穫について 1.修道院の歴史と、ミネラルが息づく大地 ― DOCaプリオラート ワインの”ミネラル感”をめぐる論争 プリオラートのスレート土壌「リコレリャ」 「ミネラリーなワイン」と呼ばれるものについては、常に議論がつきまといます。存在そのものを疑問視する人もいれば、むしろ大きな影響を与える要素だと考える人もいる。実際のところ、ワインのミネラリティを捉えるのは容易ではありません。 もっとも分かりやすい例としては、以下のようなものが挙げられます。 石灰質土壌(アルバリサ、チョーク、白い砂利など):塩味や旨味(サピディティ) 火打石や花崗岩:スモーキーさと塩味的ミネラル感 火山性土壌:酸味や灰、ゴムのようなニュアンス スレート(リコレリャ):鉄分を含んだ乾いた石の印象 こうした要素を手がかりに「ワインのミネラル感」を語り始めるわけですが、もちろんそこに気候や標高の影響が加わります。 修道院の文化と、山のブドウ畑が育む個性 プリオラートはまさに「山のワイン」の産地。大陸性気候の厳しさとリコレリャ(スレート)の存在が、その大きな特徴を形づくっています。急斜面の畑、段々畑(コステルス)で育つブドウは手間がかかりますが、1990年代に「クロス」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げた先駆者たちのおかげで地域は再び脚光を浴びました。若い世代は自らの土地を信じ、親の畑を守りながら、世界最高峰のワインと肩を並べる銘酒を生み出すようになったのです。 エスカラデイ修道院跡 修道院文化に端を発する小さなワイン産地プリオラートは、どこかルネサンス的な精神をも宿しています。多様なクローンのガルナッチャや、1902年以前に植えられた古木のカリニェナが残され、1940年代にはベルムントの鉱山で働いていたアンダルシア移民が持ち込んだペドロ・ヒメネスも定着しました。これらは地元のガルナッチャ・ブランカとともに、個性豊かな白ワインを生み出しています。それは、過剰なトロピカル香やハーブ香に寄りがちな新世界ワインとは一線を画す、「本物のワイン」といえるでしょう。 世界が認めた銘醸地 世界的に認められたDOCaプリオラートは、特にアメリカ市場で高く評価されたため、価格も上昇しています。フランスやアメリカのワインが1,000ユーロ、2,000ユーロ、あるいは3,000ユーロを超えるのなら、スペインのワインも同様に市場が評価する価格をつけて然るべきです。 とはいえ、プリオラートは小さな産地。むやみに拡大することなく、品質と価格のバランスを保ち続けることが重要です。 プリオラートのワイン――DOQ全域のワインから村名ワイン(Vi de Vila)、区画ワイン(Paratge)、単一畑の格付けワイン(Gran Vinya Classificada、グラン・クリュに相当)まで――はいずれも唯一無二の存在です。そこに込められているのは歴史、個性、そして厳しい大陸性気候やエブロ川流域の自然条件、さらにはミストラルの風がもたらす恩恵といった背景です。 現代のプリオラートを形づくったのは、アルバロ・パラシオス、ダフネ・グロリアン、ペレス家(サラ・ペレスと両親)、ルネ・バルビエ、カルレス・パストラナ、フェルナンド・グラシアらの先駆者たち。その後もフェレール=ボベ、トーレス、ペレラーダ、そして、ワイン評論家からも「気鋭の造り手」と称されるロジェール・グリフォイ・デクララをはじめ、新しい世代の造り手たちが次々と登場し、それぞれの個性と高い品質を追求したワインを生み出しています。 結局のところ、ワインを選ぶ基準は「産地」「品質」「個性」です。プリオラートのワインを選ぶということは、歴史と独自性、そして品質を選ぶことにほかなりません。 「歴史と個性、品質を飲む。それとも凡庸さとブランドを飲むか。選ぶのは自由であり、それぞれが尊重されるべきものです。」 ―Salud, Priorat…そしてもちろんMucho Amor.フアン・ムニョス – あなたのソムリエ Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 2. 2025年、プリオラートの収穫について 2022年から3年にわたり続いた干ばつ。2024年は、エル・ヨアール村で発生した山火事の際、村の貯水ダムが干上がっていたため消火が遅れ、ブドウ畑が炎にさらされるという痛ましい出来事もありました。さらに、土地に根を張り続けてきた古木のカリニェナが枯死したニュースは、多くの人々に衝撃を与えました。では2025年は、どのような年となったのでしょうか。プリオラートのエル・モラール村で1736年からブドウ栽培を営む、ファミリーワイナリー「グリフォイ・デクララ」のオーナー兼醸造家、ロジェール・グリフォイ・デクララ氏に話を聞きました。昨年は干ばつの影響で75〜80%もの収量減に見舞われましたが、2025年は通常の80%まで回復。病害もなく、健全なブドウが育ちました。ただし、3年間の極端な干ばつの影響もあり、今年は「畑にどれだけ真摯に向き合ってきたか」で収量や品質に大きな差が出た年でもあるといえます。...

「IKOYA」ミシュラン★松久シェフが贈る、バルセロナの新IZAKAYA
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「IKOYA」ミシュラン★松久シェフが贈る、バルセロナの新IZAKAYA

バルセロナに根づく日本食文化 スペインの中でも特に日本食人気が高いのは、国際的な港町バルセロナです。寿司はもちろん、ラーメンも若い世代なら誰もが知る日本食となりました。2005年に筆者がバルセロナに留学していた頃も、すでに意識の高い人たちの間では日本食ブームが起きていました。当時ベルギー人のクラスメイトが連れていってくれた回転寿司店では、マグロやサーモンの寿司と、餃子だけが回っていて、ショックを受けたのを今でも覚えています。その当時大半の日本食店は、中国人が経営していました。その後、日本好きのグルメなラトビア人の友人に連れて行ってもらったのが「Shunka(旬香)」。2001年に松久秀樹シェフがオープンした店で、当時の和食店とは一線を画す存在でした。 スペインで最も有名な日本人シェフ 松久秀樹シェフ 松久シェフは1972年愛知県豊田市生まれ。寿司職人である父のもとで育ち、1997年にスペインに渡ります。地中海食材の多様さと質に魅了され、日本の伝統技法との融合を目指しました。2009年には「Koy Shunka」をオープン。カウンターを囲むオープンキッチンという当時まだ珍しいスタイルと、松久シェフが手掛ける緻密で本格的な日本料理が大きな話題を呼び、国内外のセレブリティたちも訪れる人気店となりました。2012年、スペインで初めて日本人シェフとしてミシュラン一つ星を獲得。筆者は2016年に「Koy Shunka」を訪れましたが、その頃には、松久シェフは、テレビCMや料理番組にも登場するスターシェフでした。現在はバルセロナに4店舗、スペイン国内に6店舗を展開し、約90人のスタッフを率いる経営者としても注目の存在です。 バルセロナの街に捧げる「IKOYA」 2021年、パンデミックの最中にオープンしたのが「IKOYA」です。松久シェフはこの店についてこう語ります。「これは、自分自身とバルセロナへの贈り物です。30年近く料理をしてきた、この街との関係への感謝の気持ちを込めて。」 シェフが、東京で親しんだ居酒屋文化を、バルセロナに再現したのが「IKOYA」です。賑やかさと煙、日本酒や焼酎が飛び交うカウンターに、精緻な日本料理がカジュアルで楽しい表情を見せる。天井が高く、広く開放的な店内には、炭火焼きのカウンターが象徴的に設えられ、特注の鱈のランプやアートが、日本的な雰囲気をまとった未来感のあるモダンな世界観を作り上げています。立地は、サンタ・カテリーナ市場の向かい、カテドラルからもほど近い便利な場所。バルセロナの街並みに自然に溶け込む居酒屋です。 一皿から伝わる松久シェフの哲学 最初に供されたのは、枝豆の炭火焼き。居酒屋の定番ともいえる枝豆が、ここではガストロノミックな一皿として登場します。 刺身や握り、細巻き、ラーメン、肉や魚の炉端焼き…。どの料理からも、新鮮な素材の確かさと丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。さらに、日本の居酒屋料理にガストロノミックなひねりを加えた、やや濃いめの味付けが、現地のお客さんの胃袋をしっかりつかむことに深く共感しました。お酒やワインも進み、店内はいつの間にか活気にあふれていました。 日本ならではの持ち味を存分に活かしつつ、スペイン人の好みにも寄り添いながら、居酒屋らしく、ワイワイとカジュアルに、シェアして楽しめるのが、「IKOYA」の大きな魅力だと感じました。 そして料理を引き立てるのは、44種類におよぶ職人仕込みの日本酒のセレクションです。 「ゲストを喜ばせるための料理でなければ意味がない」松久シェフの信念が、一皿一皿に込められています。 バルセロナで広がる「IZAKAYA」 和食の伝統を礎にしながらも、こだわりを押し付けるのではなく、現地の人々の心に響く料理を生み出す。その結果「IKOYA」は、バルセロナの人々に愛され、日本人にとっても新鮮な発見をもたらす唯一無二の居酒屋となりました。 近年、スペインの美食家の間で「OMAKASE」という言葉が浸透したように、いま「IZAKAYA」という日本語が「IKOYA」を通じてバルセロナに広がりつつあります。地中海の恵みと日本料理が交わる場所から、新しい食文化が芽吹いているのです。ーーーーーーIKOYA📍  Av. Francesc Cambó, 23, BarcelonaWeb:https://ikoyaizakaya.com/Instagram:@ikoyaizakaya Ikumi Harada 原田郁美Journalist & Creative Director スペインワインとガストロノミー専門ジャーナリスト。大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして、クリエイティブな視点と戦略的思考を培う。2005年から留学を機にスペイン食文化に魅了され、その研究に人生を捧げる。2009年から日本・アジア市場でスペインワインの輸出とプロモーションに従事。2011年に「スペインワインと食協会(AGE)」を創設し、クリエイティブディレクションや執筆を通じてスペイン食文化の普及と市場拡大に寄与している。2012年、プリオラートでワイン造りを始め、2024年に自らの初ヴィンテージをリリース。2025年より、フアン・ムニョス氏と共同企画「Spanish Lifestyle」連載開始。WSET® Level 3, Spanish Wine Specialist(ICEX認定)。山口県出身。 @ikumiharada Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 


【カナリア諸島のワイン】世界の注目と、フィロキセラへの挑戦
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【カナリア諸島のワイン】世界の注目と、フィロキセラへの挑戦

世界中のワイン専門家や愛好家から注目され、日本でも人気が高まっている「カナリア諸島のワイン(Canary Wine)」。カナリア諸島は、スペイン領の群島で、大西洋上、アフリカ大陸の北西沿岸に近い位置にあります。火山活動によって生まれた島々で、グラン・カナリア島、テネリフェ島、フエルテベントゥーラ島、ランサローテ島、ラ・パルマ島、ラ・ゴメラ島、エル・イエロ島から成り立っています。 テネリフェ島にある、スペイン領内最高峰のテイデ火山標高3718m。海底からの高さはおよそ7500mカナリア諸島のブドウ栽培は、15世紀にヨーロッパの植民者たちによってもたらされました。しかし、この地のブドウは火山性の環境に適応し、500年以上にわたり人々が最適な品種を選びながら自然と共に進化してきました。世界的なフィロキセラ禍を免れたブドウたちは、唯一無二の進化の過程を示す標本として、長い間、世界の研究者たちの注目を集めてきました。 そんな中、8月上旬、収穫が始まった直後に届いたのが、これまで被害のなかったテネリフェ島で初めてフィロキセラが確認されたというニュースでした。そこで、テネリフェ島を代表するワイナリーのひとつViñátigo(ビニャティゴ)で醸造を担い、ブドウ栽培にも精通するホルヘ・メンデス氏に話を聞きました。ホルヘ氏はラ・ラグーナ大学で農業・農村環境工学を学び、マドリード工科大学でブドウ栽培・醸造学の修士号を取得。世界各地の銘醸地で経験を積んだのち、父フアン・ヘスス氏のワイナリーをいずれ継ぐ2代目として、またメンデス家5代目としてワイナリーを担っています。国際的なワインカンファレンスでも登壇し、ブドウ栽培家としても国内外から注目を集める存在です。「フィロキセラの問題は複雑ですが、現時点ではコントロールされています」 とのこと。発生は島の北東部、バジェ・デ・ゲラ、テヒナ、タコロンテの町々に限られており、放棄された畑や稼働中の畑の両方で検査が行われています。他の地域では新たな発生は確認されていません。 カナリア諸島には83品種の土着品種が存在し、そのうち40〜50%は固有品種です。100年以上の自根のブドウ畑も多く残っており、500年にわたる伝統を守る貴重な遺産となっています。 8月22日『カナリア諸島官報(BOC)』では、テネリフェ島で局所的に発生が確認されたフィロキセラ(学名:Daktulosphaira vitifoliae Fitch)の存在が正式に宣言され、拡散を防ぐための緊急防除・管理措置が定められました。   Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos フアン先生のフィロキセラについてのレクチャーと見解 フィロキセラは1800年代末に世界中で被害をもたらし、多くのブドウが接ぎ木に切り替わる原因となったブドウネアブラムシです。しかし、チリやカナリア諸島、一部の砂地の畑ではこの害虫は生きられませんでした。数年前にカリフォルニアで突然変異が発生し、現在ではカナリア諸島でも同様の事例が報告されているとのことです。火山性の土壌では害虫に影響されませんが、砂の割合が少なく他の土壌と混ざった畑では発生する可能性があります。これはあくまで事例として限定的であり、広範囲に拡大しているわけではありません。(8月29日現在) 世界でも類を見ない三つ編み仕立てコルドントレンサード カナリア諸島の原風景を守るために コルドントレンザード(三つ編み仕立て) テネリフェ島のラ・オロタバでは、枝を編み込んで水平に伸ばす「コルドントレンザード(三つ編み仕立て)」という、世界でも稀有な栽培方法が受け継がれてきました。本来はマルヴァジア栽培のために生み出されたものです。50〜60年前までは、島の人々が生活の糧を得るため、ブドウの下で穀物やジャガイモを育てる二毛作も行われていました。■詳細はこちらから↓<ビニャティゴ>特別講義:テネリフェ島でコルドントレンサードが生まれた理由  Vol.2-第12回スペインワインと食大学 テネリフェ島、そしてカナリア諸島の土着品種やワイン文化遺産、この地ならではの原風景を守るために、いま島の造り手たちは力を結集しています。その歩みに寄り添い、少しでも力になれるよう、心からの敬意とエールを送りたいと思います。筆者自身もまもなく現地を訪れ、この大切な時期を共に感じながら、造り手たちの声を皆さまへお伝えしていくつもりです。 【関連記事】ビニャティゴ~カナリア諸島の固有品種を絶滅の危機から救ったワイナリー【世界が注目】火山島ワイン、テネリフェ「ビニャティゴ」来日セミナー「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム Ikumi Harada 原田郁美Journalist & Creative Director スペインワインとガストロノミー専門ジャーナリスト。大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして、クリエイティブな視点と戦略的思考を培う。2005年から留学を機にスペイン食文化に魅了され、その研究に人生を捧げる。2009年から日本・アジア市場でスペインワインの輸出とプロモーションに従事。2011年に「スペインワインと食協会(AGE)」を創設し、クリエイティブディレクションや執筆を通じてスペイン食文化の普及と市場拡大に寄与している。2012年、プリオラートでワイン造りを始め、2024年に自らの初ヴィンテージをリリース。2025年より、フアン・ムニョス氏と共同企画「Spanish Lifestyle」連載開始。WSET® Level 3, Spanish Wine Specialist(ICEX認定)。山口県出身。 @ikumiharada

バルセロナ「Cadaqués(カダケス)」で味わう、至福の薪火パエリア
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バルセロナ「Cadaqués(カダケス)」で味わう、至福の薪火パエリア

「Cadaqués(カダケス)」は、バルセロナとマドリード、どちらの店舗も都会にありながら、まるで本物のカダケスの町を訪れたような、地中海の自然を感じられるゆったりとした空間です。 薪火の香りに包まれながら、こだわり旬の素材を味わう─そんなしあわせなひとときを提供してくれるレストラン。 カタルーニャ北東部、まるで絵本から抜け出したような美しい町「カダケス」の風景や文化の豊かさ、そして、薪火パエリアの美味しさに触れたい方は、ぜひ一度足を運んでいただきたいレストランです。

ガスパチョの歴史、味わいのルーツを辿る
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ガスパチョの歴史、味わいのルーツを辿る

夏にぴったりのスペイン伝統スープ「ガスパチョ」 スペインの夏を代表する冷製スープ「ガスパチョ」は、その爽やかな酸味と野菜の豊かな風味で、暑い季節に体をすっきりとリフレッシュしてくれます。単なるトマトスープと思われがちですが、実は長い歴史と地域ごとの多様なバリエーションがあり、古代ローマ時代から続く伝統料理です。 本場スペインでは、パンやアーモンド、さまざまな野菜を使ったレシピがあり、夏の栄養補給として愛されてきました。現代では、ビタミンたっぷりのヘルシーな冷静スープとしても、世界中で楽しまれています。

バルセロナ初、バスク式魚介専門炭火焼きレストラン「Kresala(クレサラ)」
by IkumiHarada

バルセロナ初、バスク式魚介専門炭火焼きレストラン「Kresala(クレサラ)」

バルセロナの魅力を語るとき、地中海の存在は欠かせません。その青い海を臨む港のひとつ、オリンピック港(Port Olímpic)が昨年、新たな息吹とともに生まれ変わったことをご存知でしょうか。かつては観光地特有の素朴さと雑多な空気が漂っていたこのエリアが、いまや「Balcó Gastronòmic(グルメ・バルコニー)」として、洗練された美食の舞台へと進化を遂げています。 潮風がやさしく吹き抜けるテラス席、目の前に広がる美しいビーチ。そして、炭火に香ばしく焼かれる魚介の香り―そんな五感を満たす時間を叶えてくれる、こだわりのバスク料理店をご紹介します。 バスク語で"潮の香り"を意味する「Kresala(クレサラ)」 店名 “Kresala(クレサラ)” は、バスク語で「潮風」や「潮の香り」を意味する言葉。その名のとおり、海と火の出会いが生むバスクの食文化を象徴するレストランです。 手がけたのは、世界各地でバスク料理を展開する【サガルディグループ】。ナバーラの名店「Bidea 2」の炭火焼き職人グレゴリオ・トローサ氏と、グループ創設者であるミケル&イニャキ・ロペス・デ・ビニャスプレ兄弟がタッグを組み、伝統と革新を融合させた「バスク式魚介炭火焼き」の真髄を、ここバルセロナで表現しています。バルセロナのニュースポット「Balcó Gastronòmic(グルメ・バルコニー)」に、2024年9月オープン。地元カタルーニャを代表する新聞『El Periódico(エル・ペリオディコ)』にて、「2024年にバルセロナで新規開業したレストランの中で最も優れた店」に選ばれるなど、その実力は早くも高く評価されています。 バスクの魂を、バルセロナ、世界に伝える親善大使 左から、「Spanish Lifestyle」でお馴染みのフアン先生、筆者、そして、サガルディグループの創設者であり、シェフでもあるイニャキ氏 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 
 「クレサラ」をはじめとした、サガルディグループの創設者であり、シェフでもあるイニャキ・ロペス・デ・ビニャスプレ氏は、バスク地方出身。1981年にバルセロナ大学で人類学を専攻し、その文化的背景への深い理解をベースに、1995年、弟のミケル氏とともに、バルセロナでバスク料理店「IRATI(イラティ)」を開店しました。 実は筆者が2005年に語学留学でバルセロナに滞在していた当時、初めて「ピンチョス」やバスク料理に触れたのがこの店でした。今回の取材を通じてその記憶がよみがえり、深い感慨に包まれました。 「バスク料理を、バスク以外の場所で正しく伝えること」。この理念こそが、サガルディグループの成長と信頼の礎です。現在、バルセロナをはじめ、マドリード、ポルト、ロンドン、アムステルダム、ブエノスアイレス、バレンシアなど、世界各地に29店舗を展開。そのすべてがイニャキ&ミケル兄弟の直営店であることにも、品質へのこだわりと責任感が表れています。 さらにスペイン国内には、グループ専用の自社農園を5カ所所有。漁師をはじめとする信頼のおける生産者たちと直接やりとりを行い、食材の鮮度と品質を徹底的に追求しています。インタビューを通して感じたのは、「本物のバスクの食文化を世界に届けたい」というイニャキ氏の揺るぎない情熱。その想いは、店づくりから料理、コンセプト、サービスの細部に至るまで、確かに息づいていました。 バスクやガリシアから新鮮厳選された、最高の魚介 「クレサラ」で味わえるのは、オンダリビアやガリシア、バルセロネータ、ロセスなど各地の港で水揚げされた旬の魚介類です。カンタブリア海やガリシアから届く魚介は、夜のうちにトラックでバルセロナへ運ばれ、翌朝には新鮮なまま店に届きます。大西洋側の海は地中海とは異なり波が荒く水温も低いため、魚の身が引き締まっているのが特徴です。魚の旨味を最大限に引き出すために、1〜2日間じっくりと逆さに吊るしてから、バスク伝統の直火焼台(parrilla)で炭火焼きにされます。バスク伝統の“パリージャ”で、炭火で焼き上げた真鯛地中海の絶品赤海老は、濃厚なミソと甘みが特徴ガリシア産マテ貝の生仕立て キャビア香る至福の一品 幻の高級甲殻類「サンティアギーニョ」に出会う 前列左から赤海老、そして二番目の黒くずんぐりとした甲殻類は、幻の海の珍味「サンティアギーニョ」 訪問時、イニャキ氏が「今日はガリシアからサンティアギーニョが届いたんです」と紹介してくださいました。7〜10cmほどの小さな甲殻類で、見た目はハサミのないロブスターのようですが、はるかに小ぶり。スコップ状に広がる触角と、甲羅の縁に走る濃赤色のトゲが特徴です。 茹で上がると、その背に「サンティアゴの十字架(クルス・デ・サンティアゴ)」が浮かび上がるという、神秘的な姿を見せる希少な甲殻類。ガリシア沿岸の岩場に生息し、漁期がごく限られているため、市場に出回ることは稀です。現存する最古の甲殻類とも言われ、その味わいと価値の高さから、“海の宝石”と称されるにふさわしい存在だと、フアン先生は語ってくれました。こんな希少な魚介と出会えるのも、「クレサラ」ならではの特別な醍醐味です。デザートは、炎のベイクド・アラスカ。香ばしく焼き上げたメレンゲに包まれたアイスケーキを、目の前でフランベ。立ちのぼる炎とともに、最後のひと皿まで“火”の演出で魅せてくれました。 豊富なワインセレクション ワインリストは200種以上を誇り、中には市場にほとんど出回らない希少ボトルも。 イニャキ氏が最初の一杯に選んでくれたのは、バスク原産のブドウ品種・オンダラビ・スリを使用した、シャンパーニュ製法のスパークリング・チャコリ「Artadi Izar-Leku」。キレのある酸と繊細な泡立ちが絶妙で、魚介の旨みと寄り添いながら、美しく共鳴していました。次に登場したのは、味わいはもちろん、アーティスティックなエチケットでも印象に残る「OXER WINES」のチャコリ。使用品種は、オンダラビ・スリとオンダラビ・スリ・セラティア。豊富なミネラル感とキリッとした酸に加え、ふくよかな広がりがあり、潮風を思わせる余韻が静かに続きます。バルセロナの美しい海を眺めながら、バスク伝統のParrilla(パリージャ)文化を堪能できる「クレサラ」。火と海が織りなす極上の美食体験ができる、フーディー必見の新たな注目スポットです。炭火の香りに包まれた新鮮な食材が、バスクの食文化の奥深さを物語ります。バルセロナでその息吹を、ぜひ体感してみられてはいかがでしょう。ーーーーーーKresala(クレサラ)住所: Port Olímpic, Moll de Gregal, local 1, Sant Martí, 08005 BarcelonaTeléfono:...

【バルセロナ・ゴシック地区】歴史とアートに包まれた、至福の美食体験
「El Cercle(エル・セルクレ)」

by IkumiHarada

【バルセロナ・ゴシック地区】歴史とアートに包まれた、至福の美食体験
「El Cercle(エル・セルクレ)」


バルセロナ・ゴシック地区の歴史的宮殿をリノベーションした「El Cercle(エル・セルクレ)」。人気のテラス席と、地元に愛される本格カタルーニャ料理と、バルセロナで人気の日本料理、豊富なワインが楽しめる贅沢な空間です。歴史と芸術に包まれた、至福の美食体験をお届けします。

【創業1872年・バルセロナ】地元客が通う、クラシックなカタルーニャレストラン「ラ・クララ(La Clara)」
by IkumiHarada

【創業1872年・バルセロナ】地元客が通う、クラシックなカタルーニャレストラン「ラ・クララ(La Clara)」

バルセロナで出会う、本物のカタルーニャ料理 「バルセロナで、伝統的なカタルーニャ料理に出会うのって、難しいですね」スペインとワインに精通し、大阪でワインショップを営むある方のこの言葉が、ずっと心に残っています。 たしかに、世界有数の観光都市であるバルセロナの中心部には、「パエリア」や「サングリア」といった観光客向けの定番メニューを掲げたレストランが軒を連ねています。一方で、2024年の「世界ベストレストラン50」で1位に輝いたミシュラン三つ星の「ディスフルタール」をはじめ、スタイリッシュな空間で独創的なコース料理を提供するガストロノミック・レストランも年々増えています。しかし、“クラシックなカタルーニャ料理”を味わえる店は、意外にも限られているのが現実です。 筆者自身、「本当においしいカタルーニャ料理は、家庭にある」と感じています。なかでも、お母さんやおばあちゃんの世代がつくる料理には、“愛情と栄養”がたっぷり詰まっていて、何ものにも代えがたい味わいがあります。 それでも、バルセロナの中心地からほんの少し足を伸ばせば、昔ながらの味と空気感を大切に守り続け、今なお地元の人々に親しまれているクラシックなレストランに出会うことができます。今回ご紹介する「La Clara(ラ・クララ)」も、そんな一軒です。 1872年創業、常連客が通う、カタルーニャレストラン バルセロナのグラン・ビア沿い、サン・アントニ地区に佇むレストラン「ラ・クララ(La Clara)」は、1872年からずっと、この場所、この建物で、カタルーニャ料理が提供されてきました。150年の歴史を持ちながらも、現代の感性を取り入れた空間で、今も地元客が通い、愛され続けています。 エントラスのカウンターでは、気軽にお酒やタパスを楽しめるカジュアルなバル、中に進むと、白いテーブルクロスが整然と並ぶエレガントなダイニングエリア、広々とした個室もあり、空間ごとに食体験の表情が変わります。 ワイン愛好家にとっての“聖地” 圧巻は、約1300種類を誇るワインセラー。スペイン各地はもちろん、世界の銘醸ワインが丁寧に保管されており、そのワインリストは、カタルーニャのワインアワード「CartaVi」を2度も受賞するほどの充実ぶり。垂直ヴィンテージも豊富に揃い、まさに“ワインの聖地”と呼ぶにふさわしい場所です。 CartaVi コンテストの表彰状:Associació Vinícola Catalana主催 スペイン最優秀ソムリエの栄冠に輝いたこともあるフアン先生も、そのセレクションに深く感銘を受けられていました。まさに、ワイン愛好家にとっては夢のような一本と出会える場所です。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 料理は、バルセロナの市場から届く新鮮な食材を使った、王道のカタルーニャ料理。写真左は、25年にわたり「ラ・クララ」の厨房を支え続けてきたフアン・シェフ。そして筆者の右隣のカルロス氏は、現在この店のディレクターを務める人物であり、実はフアン先生の教え子のお一人。 これまでも、スペインを代表するシェフやワイン関係者をフアン先生からご紹介いただき、「Spanish Lifestyle」で取材やインタビューを重ねてきましたが、世界各地で活躍する1万人を超える教え子たちが、こうしてレストランやワイナリーの最前線で活躍する姿に出会えるのは、本当に感慨深いことです。フアン先生とともに、筆者自身も「Spanish Lifestyle」を通じて、スペインのワインと食の世界をこれからも応援していきたいと、改めて感じました。 2007年には、「生粋のカタルーニャ料理を提供するレストラン」として、ニューヨーク・タイムズ紙にも紹介され、その記事はいまも店内に大切に飾られています。「まずはこれを」とカルロスがすすめてくれた、「塩だらのブニュエロ(Buñuelos de Bacalao)」。ふんわり軽やかに揚がった一皿は、絶妙な塩加減と食感が魅力。家庭では出せない、プロの洗練が伝わる逸品です。   「カンタブリア産アンチョビとエスカリバーダのティンバル風盛り合わせ」じっくりと炭火で焼き上げた香ばしいエスカリバーダ(焼き野菜のマリネ)と、旨味たっぷりのアンチョビが織りなす絶妙なハーモニー。 カタルーニャのソウルフード「パン・コン・トマテ」に生ハムをのせて。「スズキのタルタル(Tartar de lubina)」。こんなモダンな一皿も。 カタルーニャ伝統の味わいを楽しめるラ・クララ自慢の「カネロン(canelons)」。赤ワインで4時間じっくり煮込んだ牛と豚の肩肉がとろけるように旨みを放ち、クリーミーなソースと絶妙に調和した一皿。カルロスのおすすめのもう一皿は、「野菜とキノコのアロス(Arroz de  Verduritas y Setas)」。野菜とキノコの旨みがじっくり染み込んだご飯は、硬さも味わいも絶妙です。お米料理ながら軽やかで、ワインが進むのもうれしいポイント。後味も爽やかで、あっという間に平らげてしまいました。 観光地の喧騒を離れた“本物”の一軒 リラックスした雰囲気の中で、地元の人々と肩を並べて食事が楽しめる「ラ・クララ」。ショッピングや観光の合間はもちろん、ビジネスの会食や、グループディナーにも幅広く対応できる個室も備えた、まさに“使い勝手の良い”名店です。 観光客にはまだ知られていない貴重な穴場であり、地元バルセロナの人々にとっては欠かせない、落ち着ける安定のレストランです。クラシックなカタルーニャ料理の真髄と厳選されたワインを心ゆくまで味わいたい方に、ぜひ訪れていただきたい一軒。次のバルセロナ訪問では、ぜひ足を運び、地元の温かさと味わい深い料理の世界に浸ってみられてはいかがでしょう? ーーーーーーーーーーーーーーーLa Clara Restaurant住所: Gran Via...

旅先で出会う、心に残る一杯【高標高ワイン】カスティーリャ・イ・レオン
by IkumiHarada

旅先で出会う、心に残る一杯【高標高ワイン】カスティーリャ・イ・レオン

北ブルゴスのワイナリー Pagos de Anguix (パゴス・デ・アンギス) 【文】フアン・ムニョス【訳・写真】原田郁美  「Spanish Lifestyle」では、今回、「高標高のワイン」にフォーカスします。ご紹介するのは、北ブルゴスの高原地帯「エル・パラモ(El Páramo)」で育まれた、フアン先生おすすめの1本、Prado Lobo(プラド・ロボ)です。 筆者がこのワインと出会ったのは、カスティーリャ・イ・レオン州の小さな町、アレバロ(Arévalo)を訪れたときのこと。中世の面影を残す石造りの街並みに囲まれながら、地元の人々に長年愛されてきたAsador Las Cubas(アサドール・ラス・クバス)でのランチの席で出会った赤ワインがPrado Loboでした。 その印象深い出会いの舞台となったアサドールや、ブルゴスの旅の写真、そしてワイナリーの風景とともに、このワインの魅力を紐解いていきます。ページをめくるごとに、皆さまの旅への想いが広がりますように。  ブルゴスのシンボルともいえるブルゴス大聖堂   北ブルゴス、高原の風が育む、涼やかな果実の余韻 Prado Lobo(プラド・ロボ) 熟成とエレガンスの、最も純粋なかたちWinery: Pagos de Anguix  Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos ワインを「標高の高さ」で語るとき、私たちはつい数字だけを見てしまいがちです。しかし、1,000メートルといっても、それがアンダルシアの太陽の下と、ブルゴス北部の冷涼な高地とでは、意味合いがまったく異なります。 ここブルゴスの北、高原地帯「エル・パラモ」では、夏は短く、冬は長く厳しい冷え込みが続きます。そんな環境下では、葡萄の成熟はゆっくりと進み、果粒は小さく、皮は厚く育ちます。この自然の摂理こそが、色調の濃い赤紫、凝縮感のある香り、爽やかな酸、そしてしなやかな口当たりを兼ね備えた唯一無二のワインを生み出すのです。 「Pagos de Anguix – Prado Lobo」は、この厳しくも美しい環境で育ったティンタ・フィナ種を用い、フレンチオークで20か月間熟成。果実味を損なうことなく、香りには野性味あるブルーベリーやスミレ、ブラックベリー、そして微かなスパイスが顔をのぞかせます。口に含むと、骨格のある味わいの中にエレガントな滑らかさがあり、果実と標高、そして樽が見事に調和しています。 アビラの小さな町アレバロにある Asador Las Cubas (アサドール・ラス・クバス) おすすめのペアリングは、やはり本場カスティーリャの伝統に倣って、子羊のローストや仔山羊のグリル、あるいは赤身の牛肉。和牛のような旨味の強い肉とも相性がよく、それぞれの素材が持つ美味しさを引き立て合います。 サーブ温度は16℃、グラスはボルドー型の大ぶりなものがおすすめです。時間にゆとりがあれば、デキャンタージュすることでより一層その魅力が花開きます。 高地の冷気と、果実の息吹、そして人の手が織りなすこの1本。愛情とともに、どうぞゆったりとお楽しみください。 SALUD Y AMOR…..MUCHO AMORフアン・ムニョス –...

【バルセロナ】旅の途中に寄りたい名店 "ラ・タベルナ・デル・クリニック"
by IkumiHarada

【バルセロナ】旅の途中に寄りたい名店 "ラ・タベルナ・デル・クリニック"

スペインで常にランキングの一位に輝く人気都市バルセロナ。サグラダ・ファミリアやグエル公園など、ガウディ建築に代表される芸術的な見どころにあふれ、街歩きやバル巡り、サッカー観戦と、楽しみ方も多彩です。そんな魅力的な街で「おすすめのレストランは?」と聞かれたときに、自信を持って紹介したい一軒があります。それが「La Taverna del Clínic(ラ・タベルナ・デル・クリニック)」です。バルセロナ地下鉄・オスピタル・クリニック駅からすぐ、利便性の高いロケーションに佇むレストラン。駅前の喧騒を背に、一歩店内へと足を踏み入れれば、空気がふっと変わります。落ち着いた静寂とラグジュアリーな雰囲気が広がり、ワインや生ハム、チーズ、スピリッツなどが美しく陳列されたガラス張りのセラーが通路を彩ります。これから始まる食体験に、自然と胸が高鳴ります。 実はこのレストラン、Spanish Lifestyleのフアン先生が「バルセロナで本当におすすめしたい一軒」と太鼓判を押す、特別な存在なのです。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos オーナーシェフのトニ・シモエス氏は、かつてフアン先生が教鞭を執っていたバルセロナのホスピタリティ専門学校で料理の基礎を学び、その後、スペイン料理界の巨匠・故サンティ・サンタマリア氏(三つ星レストランのシェフ)のもとで修業を重ねた実力派。ミシュランのビブグルマンやレプソルガイド(Guia Repsol )でも高く評価され、2014年には「カタルーニャ州最優秀若手料理人」にも選ばれています。 通路を抜けた先には、磨き上げられたキッチンが静かに広がっていました。2006年以降、トニ・シモエスシェフが二代目として、ご両親の営んでいたカウンターだけの小さなバルを、同じ場所で少しずつ進化させ、十数年かけて今のスタイルのレストランへと育ててきたのだそうです。 実は10年以上前に一度訪れたことがあるのですが、その頃はまさに“タベルナ(食堂)”といった雰囲気で、今のようなラグジュアリーで個室も備えた、ゆったりとした空間になるとは想像していませんでした。それだけに今回、フアン先生の強いおすすめで再訪し、その変貌ぶりに驚きと感動を覚えました。 「自分の理想のレストランにしたかったんです」と語るトニの目はまっすぐで、そのまなざしの先には、さらに進化し続ける未来のレストランの姿があるように感じられました。 最初に供されたのは、エストレマドゥーラ州産の上質なイベリコ・ベジョータの生ハムに、パン・コン・トマテ。このひと皿に、フアン先生は思わず「10点中10点!」と声をあげました。「ベジョータと呼ばれる最高級のイベリコ豚は、どんぐりをたっぷり食べて育つんです。そのおかげで、脂にはオリーブオイルと同じオレイン酸が豊富に含まれ、とろけるような食感と、独特の旨味が生まれます。そして実は、脂が溶ける融点も他の生ハムより低くて、22度ほど。だから室温でも自然に脂が溶けはじめて、香りも味わいも、より引き立つんですよ」と、フアン先生。 その言葉の通り、しっとりと艶を帯びた生ハムは、口に含むとやさしく溶け、芳醇な香りが広がりました。La Siberia Cava Gran Reserva Brut Nature : JUVE & CAMPSこのキュヴェをひと言で表すなら “絹のようなエレガンス”→→フアン先生のテイスティングノートはこちらからトニ・シモエスシェフ自ら運んできてくださったのは、この店を象徴するひと皿。伝統を現代的に昇華させた、新しいスタイルの「パタタス・ブラバス」です。ひと口かじると、なかからピリッと辛みの効いたブラバスソースがとろりとあふれ出します。10年前、初めていただいたときの、あの驚きと感動がふたたびよみがえりました。 旬の厳選素材を、極上のひと皿に 料理は、クラシックなフランス料理をベースにしつつ、現代的な感性と地元カタルーニャのエッセンスが融合した地中海料理。素材選びにも一切の妥協がなく、ご両親のルーツであるガリシア産の魚介をはじめ、高品質な食材を最大限に活かしたメニュー構成となっています。 この日は、トニ・シモエスシェフのお任せコースを体験しましたが、アラカルトでも十分にその実力を堪能できます。軽めのランチから、じっくりと味わいたいフルコースまで、ゲストの時間やスタイルに合わせて柔軟に対応してくれるのも魅力です。 こちらは、ふわりと軽いブリオッシュの上に、エビとキャビアが贅沢にあしらわれています。エビの上品な甘みとキャビアの塩味、それを受け止めるブリオッシュの香ばしさが見事に調和し、ひと口ごとに幸せが広がります。 圧巻のワインセレクションで、食体験に深みを ガラス張りのモダンなワインセラーの壁一面にずらりと並ぶのは、450種以上のワイン。圧巻の光景です。スペイン各地のD.O.(原産地呼称)を中心に、フランス、ドイツ、アルゼンチン、南アフリカなど、世界各国の銘醸ワインが揃っています。しかも、価格は通常のレストランよりも良心的。ワイン好きの間では、スペイン国外からもこのレストランに足を運ぶ価値があると評されるほどだとか。産地やヴィンテージはもちろん、料理とのペアリングに応じた一本を提案してもらえるのも魅力です。 【バルセロナ】旅の途中に立ち寄りたい、とっておきの一軒 バルセロナには魅力的なレストランが数多くありますが、観光名所で溢れるこの街では、「できるだけ多くを見て回りたいから、食事は手早く済ませたい」という旅行者の声も少なくありません。だからこそ、限られた時間の中でも、ひと皿からでも本格的な美食体験が叶う店の存在は貴重です。「La Taverna del Clínic」は、そんな旅の合間にさっと立ち寄って楽しむ一皿から、ワインペアリングを含むコースでじっくり味わう贅沢な時間まで、多彩な楽しみ方を提供してくれます。美食にこだわる地元の常連客はもちろん、遠方から訪れるグルメな旅行者たちにも愛される、特別なレストランです。ーーーーーーーーーーーーーーーLa Taverna del Clínic住所: Carrer del Rosselló, 155, Eixample, 08036 Barcelona@latavernadelclinic...

【ビルバオ美食ツアー】チャコリと薪火料理が刻む、心に残る一日
by IkumiHarada

【ビルバオ美食ツアー】チャコリと薪火料理が刻む、心に残る一日

「パリのついでに寄ったスペインに恋をした」それは、大学の卒業旅行で初めてスペインを訪れたときの、思いがけない本音でした。当時の私はフランスに夢中で、パリへの憧れを胸に旅に出ました。スペインは、あくまで“ついで”のはずだったのに─。豊かな食文化、深い歴史と自然、澄みわたる青空、そして、ほどよい距離感であたたかく迎えてくれる人々。 気づけば、スペインにすっかり心を奪われていたのです。 その後、バルセロナへの留学を経て、2011年に「スペインワインと食協会」を設立して以来、スペインワインと食の魅力を日本に伝えることをライフワークとして活動してきました。 2025年は103日間で12ヵ国・18の寄港地を巡る世界一周クルーズの航海中にある豪華客船「飛鳥Ⅱ」 だからこそ、このたび、飛鳥Ⅱ 世界一周クルーズの寄港地ビルバオで「美食×チャコリワイナリーツアー」のコーディネートと通訳ガイドをさせていただけたことは、私にとって大きな喜びでした。どれほど写真や映像を眺めても、現地での感動にはかないません。世界的にも美食の地として知られるスペイン・バスク地方の魅力を、五感で味わい、皆さまと分かち合う─。そんな体験を通して、数ある国々の中から「またスペインに戻ってきたい」と思っていただけたなら。そんな願いを込めて、ツアー当日を迎えました。 進化する美食都市、ビルバオ グッゲンハイム美術館 建築家フランク・ゲーリー スペイン北部、カンタブリア海に面した中都市ビルバオ。かつては鉄鋼業や造船で栄えた工業都市でしたが、1980年代の産業衰退を機に、大胆な都市再生に乗り出しました。その象徴が、1997年に開館したグッゲンハイム美術館です。建築家フランク・ゲーリーによる前衛的な建築は、世界中から観光客を惹きつけ、街のイメージを一新しました。以降、磯崎新氏による「イソザキ・アテア(磯崎ゲート)」など、現代建築が次々と誕生し、ビルバオはアートとクリエイティブの街へと生まれ変わりました。 ビルバオ旧市街にあるバル。バスク名物「ピンチョス」 同時に、美食の街としても進化を遂げています。2000年代以降はミシュラン星付きレストランが続々と登場し、今や世界のフーディーたちが注目する存在に。私自身、2005年から毎年のように美食を求めてサン・セバスティアンを訪れていましたが、ビルバオは素通りしていました。しかし近年、洗練された料理と進化したチャコリの魅力に加え、良心的な価格帯、過度に観光地化されていない落ち着いた雰囲気、そして国際空港を擁する利便性が相まって、ビルバオの人気はより高まっています。 ツアーのはじまりは、アルチャンダの丘から。眼下には、再生されたビルバオのモダンな街並みが広がります。現地ガイドのクリスティーナさんから、かつてこの街が重工業の煙に包まれていた時代の話をうかがい、「この丘に登って初めて深呼吸ができた」という言葉が心に残りました。「ビルバオ効果」と呼ばれる都市再生を象徴する景色とともに、この街が歩んできた歴史とその変貌がより鮮明に感じられた瞬間でした。 Gorka Izagirre(ゴルカ・イサギレ)ブドウ畑&チャコリワイナリーツアー 次に訪れたのは、D.O.チャコリ・デ・ビスカヤを代表するワイナリー、「Gorka Izagirre(ゴルカ・イサギレ)」です。現地では醸造家のホセ・ラモン氏にご案内いただき、ぶどう畑を歩きながら、チャコリ造りへの想いや、バスクの土地と文化に根ざした哲学をうかがいました。 チャコリに使われる代表的な品種は、白ぶどうのオンダラビ・スリ(Ondarrabi Zuri)ですが、このワイナリーではもう一つの稀少品種、黒ぶどうのオンダラビ・ベルツァ(Ondarrabi Beltza)にも力を入れています。「ベルツァ」はバスク語で「黒」を意味し、酸が強く、ロゼや赤ワインに個性的な風味を加えてくれます。この品種はかつて絶滅の危機にありましたが、ゴルカ・イサギレではバスク政府と協力し、クローンや接ぎ木によって畑への復活を実現しました。 バスク地方の希少黒ブドウ品種オンダラビ・ベルツァを、元からあったオンダラビ・スリの台木にメキシコ人職人が接ぎ木した畑について、ユーモアを交え説明する醸造家ホセ・ラモン氏と通訳の筆者 ワイナリーに併設されたレストラン「アスルメンディ」は、シェフのエネコ・アチャ氏が手がける名店で、2012年からミシュラン三ツ星を獲得しています。東京に「エネコ東京」があるのは知っていましたが、お客様から「エネコシェフのレストランは、軽井沢にもあるんですよ」と教えていただきました。世界各地に展開するシェフのレストランでは、ゴルカ・イサギレのチャコリが提供されています。 なお、エネコシェフはワイナリー創業者であるベルトル・イサギレ氏の従兄弟にあたるそうです。バスクという土地と家族のつながりが、料理とワインを通して自然に表現されていることが印象的でした。 テイスティングでは、4種類のチャコリを、バスクの定番ピンチョスであるヒルダ(オリーブやピクルスの串刺し)、ハモン・イベリコ、イディアサバルチーズとともにいただきました。チャコリは今やバスクの郷土色を越え、美食とともに世界へ羽ばたいている─そんなことを実感したひとときでした。 大自然の中で味わう、前田哲郎シェフの薪火料理:Txispa(チスパ) ワイナリーの後に向かったのは、人口わずか200人の小さな村アシュペ。ここにあるミシュラン一つ星レストラン「Txispa(チスパ)」は、バスクの伝統家屋「カセリオ」を改装し、2023年5月に開業したばかりながら、すでに世界の美食家たちの注目を集めています。 オーナーシェフは、薪火料理の名店「アサドール・エチェバリ※」で10年にわたりスーシェフを務めた、前田哲郎氏。地元の食材を生かした料理と火入れの妙技で、開業からわずか半年足らずでミシュランの星を獲得した実力派です。 ※「世界のベストレストラン50」2024年版で、アサドール・エチェバリはバルセロナのディスフルタールに次ぐ第2位に選出。 当日は快晴に恵まれ、どんぐりの木陰でアペリティフからスタート。眼前には雄大な岩山、足元には自家菜園が広がり、グラスにはカタルーニャの名門「レカレド」によるコルピナットの泡が美しく立ち上ります。緑の自然に囲まれ、澄んだ空気のなかで、ゲストの皆さまの表情にも至福の笑みがこぼれていました。 続いて、築400年を超える石造りのカセリオへ。高い天井と開放感のある空間の奥には薪火の香るオープンキッチン。前田シェフが笑顔で迎えててくださり、料理が生まれる瞬間を、間近で体験できるひとときが始まりました。 フィンガーフードを手に、薪火の音や香りを感じながら、素材の持つ力強さに触れるひととき。キッチンには、心地よい緊張感と食欲をかき立てる匂いと音が満ちていました。 前田シェフの料理の核となるのは、火入れの技術です。薪火は炭火よりも温度が低いため、じっくりと食材に火を通すことができ、素材の水分を逃さずに旨味を閉じ込めることができるのだそう。なるほど、その丁寧な技術が一皿一皿にしっかりと生きていました。 料理のテーマは、日本の食文化のルーツとバスクの地元食材の融合。その日、庭で採れたばかりの新鮮な野菜が主役となり、バスクの山と海の恵みに、日本料理の繊細さが見事に調和していました。 ワインペアリングは、アペリティフのコルピナットに続き、「イチャスメンディ」のチャコリ(マグナムボトル)。地産地消の食材と和のニュアンスが光るお料理との相性も抜群でした。 初夏のこの時期しか食べられない「なみだ豆」は、畑のキャビアと言われる。プチプチとした初めての食感に、食通の皆さまからも驚きの声が 赤ワインは、リオハ「ボデガス・ベンジャミン・ド・ロートシルト」と「ベガ・シシリア」の共同プロジェクト「Macán(マカン)」2019。芳醇な果実味が豊かに広がり、なめらかなタンニンが優しく溶け込む、リオハの真髄を体現した一本。 締めくくりは、アストゥリアス州の「Valverán 20 Manzanas(バルベラン 20 マンサナス)」。20個のリンゴからたった1本しか造られないという贅沢なアイスシードルで、とろけるような甘さと豊かな酸が調和し、なんともしあわせな気持ちにしてくれました。 最後に 港へ向かう道すがら、ゲストの皆さまと一日の余韻を分かち合い、この体験が「またスペインに来たい」と思っていただけるきっかけとなればと願いました。このたびは、ご参加いただいた飛鳥IIのクルーズの皆さま、そして特別なツアーを採用・ご支援くださった郵船クルーズの担当者の方々に、心より感謝申し上げます。感謝の気持ちを込めてレポートにまとめさせていただきました。 今後もスペインワインと食協会では、現地ならではの食体験や、造り手の想いに触れる特別なワイナリーツアーを通して、そして連載中の Spanish Lifestyle では、インタビューや記事を通じて、スペインワインと食の情報をお届けしてまいります。皆さまにとって、スペインを訪れるきっかけとなれば、これ以上の喜びはありません。 ーーーーーーーーーーーーーーー飛鳥クルーズ(飛鳥Ⅱ・飛鳥Ⅲ) 公式 Bodega Gorka...

スペインの食卓を変えたシェフ、カルロス・アルギニャーノが挑んだ究極のチャコリ造り「K5」
by IkumiHarada

スペインの食卓を変えたシェフ、カルロス・アルギニャーノが挑んだ究極のチャコリ造り「K5」

スペインで“知らない人はいない”と言われる国民的スターシェフ、カルロス・アルギニャーノ氏。36年以上にわたりテレビ番組でジョークを交えながら健康的な家庭料理を紹介し、多くの家庭の食卓を明るくしてきた、まさに「主婦の味方」のような存在です。私もレシピ本を愛読する大ファンのひとり。そんなアルギニャーノ氏に今回、独占インタビューが叶いました。機会をつくってくださったのは、この連載「Spanish Lifestyle」を共に執筆しているマスターソムリエ、フアン・ムニョス先生。感謝の気持ちでいっぱいです。 545 recetas para triunfar Karlos Arguiñano著スペインやラテンアメリカでのテレビで最も親しまれ、愛されているベテランシェフ、カルロス・アルギニャーノ氏による実用レシピ集。誰でも手に入る食材で、家庭でも手軽に美味しく作れる545のレシピを収録。 ビルバオでレンタカーを借り、向かったのはアルギニャーノ氏が手がけるチャコリのワイナリー「Bodega K5(K5ワイナリー)」。スペイン北部、フランス国境に近いバスク地方のサラウツ近郊の丘陵地にあります。プロジェクトは2005年、「バスクの地で最高のワインを造りたい」と願うアルギニャーノ氏と4人の仲間によって始まりました。 K5ワイナリーのあるアイア村の年間降水量は1000-1500mm サン・セバスティアン方面へ向かい、高速道路をおよそ1時間走ると、車窓には一面の深い緑が広がっています。バスク地方は“グリーン・スペイン”とも呼ばれるほど雨が多く、豊かな自然に恵まれた地域です。 高速道路を降りてバスクの小さな村 Aia(アイア)へと続く山道に入ると、道の両脇には放牧された牛たちがのんびりと草を食む姿が見られ、地中海沿岸とはまったく異なる風景が広がっていました。険しく曲がりくねった坂道に「本当にこの先で合っているのか」と不安になりながらも、「K5ワイナリー」と書かれた小さな看板を頼りに進んでいくと、やがてブドウ畑に囲まれたモダンな醸造所が静かに姿を現しました。 自然と調和するワイナリーは、2010年に完成。設計はカタルーニャの著名な建築家、Alonso & Balaguerによるもの。ワイナリーを案内してくれたのは、アルギニャーノ氏の末娘アマイアさん。「K5ワイナリー」で働く彼女の兄たちは、サラウツの海沿いにある父のホテル・レストランHotel-restaurante de Karlos Arguiñanoでシェフとして活躍しています。 15ヘクタールの自社畑が、シャトースタイルでワイナリーを取り囲むように広がっている。 標高約300m、チョルア山の南向き斜面に広がる15ヘクタールの畑では、バスク固有の白ブドウ品種オンダラビ・スリが栽培されています。ブナやナラの森に囲まれ、ビスケー湾から吹き込む大西洋の冷たい湿った風を受けながら、1株あたり2.5〜3.5kgに収量を抑え、丁寧に育てられていました。 アルギニャーノシェフの末娘のアマイアさん。畑は水はけの良い粘板岩土壌。 粘板岩や石灰岩を含む土壌が、ミネラル感と凝縮感を兼ね備えた高品質なブドウを育みます。設立以来、「K5ワイナリー」のワインは、その洗練された味わいで高く評価されてきました。醸造を手がけるのは、著名な醸造家ローレン・ロシーリョ氏。伝統と革新を融合させ、長期熟成にも耐える、エレガントで美食に寄り添う新たなスタイルのチャコリを完成させています。 カルロス・アルギニャーノシェフ、独占インタビュー 左からアマイアさん、アルギニャーノシェフ、シェフの最新レシピ本と筆者。 【原田(筆者)】アルギニャーノシェフは、いつもテレビで明るくエネルギッシュな姿を見せてくださって、見ているこちらまで元気をもらえます。その元気の源は、いったい何なのでしょうか? 【アルギニャーノ】実は特別な秘訣なんてないんですよ。私はもともとこういう性格なんです。自分の仕事が大好きですし、料理を教えたり、アイデアを紹介したりするのが楽しいんです。それに、番組でも遊び心や楽しさを大事にしています。そうした要素をすべて番組に持ち込んでいるので、自然と良い結果につながっているのだと思います。 【原田】テレビでこれまでに1万を超えるレシピを紹介されてきたとのことですが、どのようにしてアイデアを枯らさずに、常に新しいレシピを生み出していらっしゃるのでしょうか? 【アルギニャーノ】実はですね、何度か同じレシピを紹介することもあるんです。なぜなら、それが料理の基本を身につけるためにとても大切だと考えているからです。そのうえで、食材や調理法の組み合わせを変えていけば、新しいレシピはいくらでも生まれるんですよ。 【原田】現在スペインでも社会問題になっている子どもの肥満について、どのような対策が必要だとお考えでしょうか? 【アルギニャーノ】この問題には、家庭と学校の両面から取り組む必要があると思います。まず、子どもの食生活について責任を持つのは親ですから、家庭ではバランスの取れた多様な食事を用意することが大切です。そして教育現場でも、子どもたちに基本的な栄養の知識を教えると同時に、料理の授業などを取り入れれば、楽しく学べるのではないでしょうか。 【原田】バスク地方にとって、そしてアルギニャーノシェフご自身にとって、チャコリとはどういう存在でしょうか? この日試飲したチャコリ。右から2本目の「KAIAREN」は2016年ヴィンテージ。4年間瓶内でじっくり熟成され、深みと複雑さが増した特別な一本※下記に、フアン先生による詳しいテイスティングコメントを掲載しています。 【アルギニャーノ】チャコリは私たちの文化に深く根づいた飲み物です。昔はバスクの農家で自家消費用に手づくりされていました。私自身もチャコリが好きですが、以前から「もう少し酸味が穏やかで丸みのあるチャコリがあってもいいのでは」と感じていたんです。そんな話を友人たちとしていたときに、半分冗談のようなノリで「それなら自分たちで作ってみようか」と盛り上がりまして。土地を購入し、整備してブドウを植え、収穫して、ついに自分たちのチャコリを作ることになったんです。 最初は「K5」から始め、現在は「Kpilota」「Kaiaren」「K5 Vendimia Tardía」「Kilima」と、5種類のチャコリを手がけています。私たちの取り組みをとても誇りに思っています。 【原田】ある予測によると、2040年にはスペインが世界で最も長寿の国になるとも言われています。アルギニャーノシェフのレシピは「おいしくて健康的」だと評判ですが、バスクの食文化が人々の健康や長寿にどのように貢献していると思われますか? 【アルギニャーノ】私はいつも「健康的な食事には多様性が大切」と言っています。食卓にいろいろな色が並んでいるほどいいですね。そして、脂肪分や塩分、糖分の摂りすぎには注意することです。 【原田】近年、スペイン料理は「The World's 50 Best Restaurants」などでも高く評価されていますが、それでもイタリア料理やフランス料理ほど海外のホテルやレストランでは見かけません。これはなぜだと思われますか? 【アルギニャーノ】イタリア料理もフランス料理も、本当に素晴らしいものですし、それぞれが上手に世界へ発信してきた結果だと思います。ただ、スペイン料理もきっとこれからです。焦らず、着実に前に進んでいきましょう。 【原田】最近では、スペインの家庭でも調理済み食品が増えているようですが、今後の家庭料理の未来についてはどのようにご覧になっていますか? 【アルギニャーノ】確かに、スーパーなどでは出来合いの食品が増えています。でも、私は楽観的です。料理は楽しいですし、自分で作ることで健康的な食生活も保てます。私はこれからも、家庭で料理をすることの楽しさを伝え続けていきたいですね。 バカラオ・アル・ピル・ピル。バスク地方の伝統料理で、干しタラをオリーブオイルでじっくり煮込んだ一品。写真は、ワイナリーから車で約15分の海辺にある、カルロス・アルギニャーノが手がけるホテル・レストランの一皿。 【原田】最後に、日本やアジアでスペイン料理、そしてチャコリをはじめとするスペインワインの魅力をより広く伝えていくためには、どのような取り組みが効果的だとお考えでしょうか? 【アルギニャーノ】やはり、両国が協力して、料理とワインを一体で紹介・プロモーションしていくことが鍵になると思います。食とワインは切っても切れない関係ですから、一緒に楽しんでもらうことで、それぞれの魅力がより深く、自然に伝わります。そうした取り組みこそが、スペインの味をより多くの人に届ける一番の近道ではないでしょうか。【原田】...

チャコリ 進化し続けるワイン
by IkumiHarada

チャコリ 進化し続けるワイン

ボデガ・チャコリ・レサバルのオーナーご夫妻とチャコリで乾杯。 【文】フアン・ムニョス【訳・写真】原田郁美  今回のSpanish Lifestyleでは、これからの季節にぴったりな爽やかなワイン「チャコリ」にフォーカス。バスク地方のビルバオとサン・セバスティアンを訪れるにあたり、スペインのマスターソムリエ、フアン先生がチャコリの魅力と進化について特別レクチャーをしてくださいました。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。@juanmunozramos バスク地方(エウスカディ)を訪れるのはいつでも喜びに満ちた体験ですが、そこに“ワイン”という目的が加われば、その喜びは何倍にも膨らみます。ぶどう畑と森、古い石造りの農家(カセリオ)が点在する丘陵地帯が、青く荒々しい海に向かって傾斜しながら続いている—そんな風景に出会った瞬間、自分が絵葉書の中に入り込んでしまったかのような感覚に陥ります。そして、グラスを手にワインを味わうとき、もしも固定観念を捨てて心を開いて向き合えば、そこにはガス入りの軽い白ワインというイメージを超えた、偉大な白ワインの世界が広がっているのです。チャコリは、かつてバルでヒルダやピンチョスに合わせてグラスの中で弾けるように飲まれていた“酸っぱいフレッシュなワイン”から、個性・風土・品質を兼ね備えた、真に優れた白ワインとして高く評価されるようになってきました。熟成によって超熟タイプも増え、ワイン愛好家たちの注目を集めています。 特別な注ぎ方「エスカンシア」ワインを高いところからグラスに注ぐことで、高い酸をまろやかにする。 もちろん、若々しく軽快なスタイルのチャコリも大切な存在です。アペリティフとして親しまれるバルのチャコリに反対しているわけではありません。むしろ、多様なスタイルが共存しながら、チャコリ全体の世界が豊かになっているのです。シュール・リー熟成、長期瓶内熟成、樽醗酵・樽熟成、遅摘みぶどう(VT – ベンディミア・タルディア )による甘美な酸味のあるタイプ、さらにはスパークリングまで、今やチャコリの進化はとどまるところを知りません。 「気候・ぶどう・土壌・人」—この四位一体の要素が見事に調和した結果、チャコリは国内外で高く評価される白ワインとなったのです。 チャコリの産地とぶどう畑 カンタブリア海を見下ろす、ボデガ・チャコリ・レサバルのブドウ畑。 バスク地方のワインの独自性は、その自然環境に深く根ざしています。海に近い丘陵地で、ぶどうの栽培には千年以上の歴史があります。土壌は水はけの良いシリカ質(ケイ酸質)、粘板岩質、ゆるい砂質で、500メートル以上の高地に80年を超える古木が残る区画もあり、斜面の傾斜が30%を超える場所での栽培も珍しくありません。テラス状に広がる畑や点在する小さな区画は、この地の地形の複雑さを物語っています。 チャコリの語源のひとつは「Etxeko egin(家で造った)」——つまり「自家消費のために造るワイン」。1975年に出版された『スペインのぶどう畑』という書物でも「売るためではなく、自分たちの喜びのために造られるワイン」として記されています。 チャコリの歴史 美食の街サンセバスティアンから西へ20kmに位置する漁村ゲタリアのワイナリー チョミンエチャニス。 バスク大学のウベルト・アスティビア教授によれば、“チャコリ(Chacolí(スペイン語)/Txakoli(バスク語))”とはバスクのみならず、フランスのイルレギ(Irouléguy)やカンタブリア東部(現在のIGPコスタ・デ・カンタブリア)などにもかつて広く使われていた名称で、気候的にもワインスタイル的にも連続性があります。 ナバーラ州のパンプローナ盆地には「チャコリンゴリ(Txacolingorri)」という呼び名があり、さらにミランダ・デ・エブロやブルゴス県のメナ渓谷(チャコリ・デル・バジェ・デ・メナ)まで広がっていました。これら後者の地域はより地中海気候に属するため、よりカスティーリャ的な気候に適したガルナッチャやテンプラニーリョといったブドウ品種が用いられていました。こうして、川や盆地に沿って大西洋気候が内陸へと入り込んでいたのです。 これは誰かを否定する意図ではまったくなく、むしろ「チャコリ」は、大西洋に面したブドウ畑や川がカンタブリア海〜大西洋へと注ぐような地域で、「大西洋的なワイン」として理解されやすい、ということを示しているのです。もちろん、それぞれの土地の土壌・気候・品種・人の手が異なるため、スタイルも実に多様です。1877年の『マドリード・ワイン博覧会記録』には、ビスカヤにおいてフランス系の白ぶどうが主要品種であり、新しい植栽のほとんどを占めていたことが記されています。赤ワイン用品種としては、バルトルメサ、グラシアナ、プリエタ、セーニャ、ベルデハなどが挙げられ、アルビージャス(Albillas)は主に食用とされていました。同書によれば、当時のギプスコアではぶどう栽培の規模が非常に小さく、ほとんど熟さない質の低いぶどうしかなかったとも記されています。 チャコリの伝統と現代 チョミンエチャニス。フレンチオークで14ヶ月ほど樽熟成したチャコリ。 昔のチャコリは、10月中旬(ピラール祭の頃)に収穫され、古い木樽(クペラやボコイ)で発酵されました。沈殿した澱が自然に落ち着き、ワインが澄んできたところで濾過せず瓶詰めされ、瓶内でマロラクティック発酵や二次発酵を起こすこともあり、自然な微発泡をともなっていました。これがチャコリの“ガス感”の起源であり、酪農とともにあったこの地の生活文化を反映しています。 現代のチャコリは、大西洋の冷涼な風土と鮮烈な酸を活かしたスタイルで、日々進化を遂げています。収量を厳しく制限し、区画ごとのブドウを選別、シュール・リーや樽熟成、フードルやアンフォラ、セメントタンク、さらにはフロール(産膜酵母)下での熟成など、多彩な醸造法が取り入れられています。スパークリングや甘口などのスタイルも登場し、まさに品質と多様性を兼ね備えたワインへと進化を遂げています。また、チャコリは海を越え、バスク系移民によってチリでも歴史的に造られており、近年再評価が進んでいます。 3つのDOと多様性 D.O. Getariako Txakolina(D.O.チャコリ・デ・ゲタリア)D.O. Bizkaiko Txakolina(D.O.チャコリ・デ・ビスカヤ)D.O. Arabako Txakolina(D.O.チャコリ・デ・アラバ) 3つある原産地呼称(DO)の中でも、ゲタリアのチャコリは“最も純粋なチャコリ”として知られています。一方で、ビスカヤやアラバのDOは、それぞれに新しい個性を打ち出し、スタイルの幅を広げています。内陸部にあるオラベリア村のベンゴエチェなどは、降水量が少なく、ナバーラからの冷たい夜風が入りやすいなど、ユニークな気候条件を持っています。 ビスカヤの代表的な産地は、海沿いのバキオや内陸のバルマセダ。イチャスメンディなどの造り手は、レイオアやエランディオといった沿岸地域から、モルガやドゥランゴの高地にかけて、約1ヶ月も収穫時期に差が出るという繊細なマイクロクライメイトを丁寧に活かしています。 ギプスコアでは、伝統的にシドラ(りんご酒)とチャコリが共存し、地元の風土や文化を象徴してきました。 バスクではシドラ(シードル)とワインが共存し、いずれも民俗文化の一部として発展してきました。低アルコール(9.5~10度)のブドウを10月に収穫し、古樽で発酵。ワインが自然に澄んでから瓶詰めされるため、瓶内には澱が残ることもありました。このような素朴で自然な造りが、バスクの風土とともに今も大切にされています。 かつてのチャコリは、発酵を終えたばかり、あるいは瓶内でマロラクティック発酵を行っており、特有の発泡感(炭酸ガス)を伴っていました。そしてこの発泡が強ければ強いほど人気があり、高値で取引されていたのです。つまり、伝統的なチャコリは、炭酸を持ち、できるだけ早く(その年内に)飲まれるワインだったのです。。しかし現在、その状況は大きく変わりました。チャコリは高品質な白ワインの選択肢としての地位を確立し、多彩なスタイルが生まれています。 中でも注目すべきはチャコリのスパークリングワインです。その代表が《イサル・レク(Izar-Leku)》。この地域において、低アルコールで高い酸を備える土地の特性が、スパークリングワインに理想的な条件となっています。 また、樽を使用したチャコリも見逃せません。発酵や熟成に大樽を用いた伝統的なスタイルは、クリーミーな質感と生き生きとした酸、そして際立つバランスによって、熟成によるポテンシャルを感じさせてくれます。特に小樽よりも大樽で仕上げたものは、木樽の主張が控えめで、ワインの本質がより豊かに表現されます。 甘口チャコリ(遅摘み)もまた魅力的な存在です。糖と酸のバランスは、若いうちも熟成後も人を惹きつける魅力を持ち、デザートやブルーチーズとの相性も抜群です。 さらに、驚くべきは赤のチャコリ。特に伝統品種《オンダリビ・ベルツァ(Hondarribi Beltza)》を用いたものは、初めはやや酸やタンニンが際立つものの、それこそがこのワインの個性であり、青魚との相性は格別です。近年では《ロサード(オホ・デ・ペルディス)》タイプも登場し、タパスやピンチョスに最適、あるいは夕陽を眺めながらゆっくりと一杯楽しむのにもぴったりなスタイルとして人気を集めています。...

【世界が注目】火山島ワイン、テネリフェ「ビニャティゴ」来日セミナー「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」
by IkumiHarada

【世界が注目】火山島ワイン、テネリフェ「ビニャティゴ」来日セミナー「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」

4月23日(水)、東京・北参道のワインショップ「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」にて、スペイン・カナリア諸島テネリフェ島を代表するワイナリー「ビニャティゴ」のオーナーファミリーを迎えた特別テイスティングセミナーが開催されました。 左から醸造家マリア・エレナ・バティスタ・エレラ氏、ビニャティゴ創設者であり科学者、醸造家のフアン・ヘスス・メンデス・シベリオ氏(父)、ブドウ栽培家で特選区画シリーズ醸造家ホルヘ・メンデス・ディアス氏(息子) 「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」は、国内外に42店舗※の洗練されたレストランを展開する株式会社HUGEが手がけるワインショップで、そのラインナップは“日常を上質に彩る”というコンセプトのもと、世界各国から厳選された銘醸ワインが取り揃えられています。本イベントには、告知と同時に多数のお申し込みが寄せられ、早々に満席となりました。急遽、17時からの第一部と19時からの第二部の二部制に拡大され、両回ともキャンセル待ちが出るほどの盛況となりました。 (※合計42店舗 国内レストラン:39店舗、海外(ハワイ)レストラン:1店舗、国内物販店舗:2店舗)   テイスティングセミナー第一部の様子。「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」では、人気レストランのワインリスト作成の経験を活かし、「日常を上質に彩るワイン」をコンセプトに、世界中から厳選されたこだわりのワインが並びます。   セミナーには、ビニャティゴのオーナーファミリー3名が登壇しました。創業者であるフアン・ヘスス・メンデス氏は、1990年にワイナリーを設立し、カナリア諸島に固有の土着品種の復興と保存に長年取り組んできた人物です。 妻のマリア・エレナ氏は工業化学の博士号を持ち、マドリード工科大学にてブドウ栽培・醸造学の修士号を取得。1998年よりビニャティゴに参画し、品質管理、製造プロセス、研究開発(R&D)を担当。2025年のENOMAQコンクールでは、世界の醸造家の中から選ばれる「ベスト醸造家賞(Premio Enólogo)」を受賞しました。 息子のホルヘ氏は、ラ・ラグーナ大学で農業および農村環境工学を専攻し、マドリード工科大学にてブドウ栽培・醸造学の修士号を取得。世界各地の銘醸地で経験を積み、現在は父のプロジェクトを継ぐ2代目にして、メンデス家5代目。2024年にはバスク・クリナリー・センターによる「ガストロノミー界の若き才能100人」に選出され、国際的なワインカンファレンスでも登壇し、国内外で注目を集めています。 偉大な父フアン・ヘスス氏(右)を尊敬し、嬉しそうに肩を組む息子ホルヘ氏(左)。テネリフェ島には、富士山とほぼ同じ標高のテイデ火山が(標高3,718m、スペイン最高峰の活火山)そびえ立ち、ワイン造りにも多大な恩恵をもたらしています。 テネリフェ島は、スペイン本土・マドリードから飛行機で約3時間、アフリカ大陸北西沖、モロッコの西方約300キロメートルに位置します。島の北部に広がるビニャティゴのブドウ畑は、火山性土壌と大西洋から吹き込む湿潤な貿易風の影響を受ける、きわめて特異なテロワールを形成しています。ビニャティゴのワインは、カナリア諸島の土着品種とこの土地固有の個性を最大限に引き出すことを目指して造られており、世界的にも高い評価を得ています。 後半のテイスティングでは、ビニャティコ゚の代表的なワイン4種類のテイスティングが行われ、豊かな個性を湛えた味わいを通じて、テネリフェ島の魅力を存分に感じられるひとときとなりました。 株式会社HUGEのコーポレートソムリエとして、約40店舗のワインリストを作成。LE BISTRO(北参道)のリストは、Star Wine List of the Year 2025でシルバーを獲得。さらに2024年フランス農事功労章を受章された石田博ソムリエ。 テイスティングコメントは、HUGEグループのコーポレートソムリエであり、第10回世界最優秀ソムリエコンクール第3位をはじめ、数々の国際コンクールでの受賞歴を誇る石田博氏。石田ソムリエは昨年テネリフェ島を実際に訪れ、ビニャティコ゚の畑に立ち、そのワイン造りの現場を肌で感じられたご縁から、今回のセミナーが実現しました。ご自身の体験に基づいた言葉には説得力があり、参加者の皆さまも大きくうなずきながら耳を傾けていらっしゃいました。「テネリフェ島は遠いけれど、まるで楽園のような場所。荒波にもまれて身の引き締まった地魚もとても美味しく、風光明媚。正直、帰りたくないと思ったほどです」と話し、ワインの魅力についても丁寧に語ってくださいました。 テイスティングでは、以下のワインが紹介されました。 ■ Viñátigo リスタン・ブランコ今人気の土着品種の個性を持つ。ニュートラルだけど、ミネラル、質が高い、繊細さ上品さが感じられる白ワイン。■ Viñátigo アッサンブラージュブレンドしたほうが明らかにテロワールの個性が出る。スモーキーさ、スパイシーさ、品種の味わいとエネルギーを感じさせる。ここちがよく余韻が長い。 ■ Viñátigo マイペ・デ・タガナナ石田ソムリエが30年以上ブドウ畑を周られてきて、経験したことがないほど驚いたのが「マイペ」というブドウ畑。落石で潰されても、そこから力強く這い上がってきた自根のブドウから生まれた一本。石の下に潰されてもそこから這い上がってきたエネルギーと、力強さ、生命力が詰まった唯一無二の白ワイン。品種はリスタン・ブランコ。【関連記事】カナリア諸島・テネリフェ島 唯一無二の畑─マイペ・デ・タガナナ ■ ネグラモールネッビオーロや熟成ピノ・ノワールを想起させる、スパイシーでグリップ感のある味わい。ジューシーさも感じさせる秀逸な赤ワイン。 石田ソムリエは、「実感されたと思いますが、こちらの4本は、味わい、つくりが素晴らしくよくて、どのワインも個性があり、行き過ぎたところもない」と、そのバランスの良さを高く評価されていました。 料理との相性については、「スペインだからシャルキュトリは有名ですが、野菜や、魚介、素揚げした地魚などにも合います。島、海、楽園をイメージするなら、とても良いラインナップではないでしょうか」と、現地を訪れたからこそのペアリングを提案してくださいました。 また、造り手である親子について「ワイナリーで、こんなに仲の良い親子(父と息子)はなかなかいないですよ」と話されると、会場はあたたかな笑顔に包まれました。 テイスティングセミナー終了後、ワインの購入もできる「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」は、一体感と高揚感に包まれ、「いつかテネリフェ島を訪れてみたい」という声があちこちから聞かれました。 ビニャティゴ輸入元である株式会社サラ・コーポレーション代表・内海紗良さんが通訳を担当。造り手の言葉と情熱が、ダイレクトに皆さまへと届けられる貴重な機会となりました。 ビニャティゴファミリーを囲む、株式会社HUGEのスパニッシュ、La Pesquera MARISQUERIAの高野店長(右)と、「ビニャティゴのリスタンブランコのファンでレストランでも沢山ご紹介しています」、と語るラジュさん(左)...

Esencia

Esencia ジローナの夜に、香りの本質と出会った。
カタルーニャカタルーニャ料理ジローナスペイン産オリーブオイル
by KatoTomoko5月,16,2025

Esencia ジローナの夜に、香りの本質と出会った。

旅のなかで舌が慣れはじめた3日目、完食の歓びと、記憶に残る香りに包まれて・・・。 「Esencia ─ 本質をめぐる旅」では、食を通して感じられる価値観の“少し先”に出会う瞬間を綴っています。 今回の舞台は、カタルーニャ地方の美しい町·ジローナから。 プレスツアーにて連日のガストロノミーなフルコースの中、驚くほど自然に、心と体に馴染んでいったディナーがありました。 ■ 体と心に、ちょうどいい料理たち プレスツアーが始まってから、毎食がフルスケールの美食体験。 ありがたいことにスペインらしい豪快なポーションと味の奥行きに魅了されながらも、完食できたのは初日だけでした。私達は一般の方々より強靭な胃袋をもつメンバーであるにも関わらず。 しかし3日目の夜、ジローナのレストランでは、たしかに何かが違いました。 ジローナで21時。店の外観   まずは前菜2品。 サラダ パテ   サラダ、パテと、それぞれ素材の生かし方、調味料の加減、香りの立たせ方が実に繊細。 口にした瞬間に「これは最後まで行ける」と直感しました。   野菜のグラタンは、とろけるように優しく、野菜だけということが信じられないほど旨みがあります。 野菜のグラタン   魚料理は、皮の火入れも塩加減も絶妙。身もふっくらジューシーな仕上がりです。   肉料理では思わず「これぞ、体が受け入れるボリューム」と感じたほど。付け合わせのジャガイモまでしっとりホクホクしていました。 肉料理     そしてデザートにたどり着いた時、ふと気づいたのです。 誰一人、途中でフォークを置いていない!笑       ■ プロとしての直感が震えた、オリーブオイルとの出会い この夜、料理の背景にある“香りの本質”に心から感動したのは、実は、あるエキストラバージン·オリーブオイルでした。 私は職業柄、というより幼い頃から香りにとても敏感です。 とくにオリーブオイルについては、オリーブオイルソムリエの勉強をしたこともあり、わずかなニュアンスにも反応してしまいます。それは、おそらく一般的には気づかれないような香りの奥に隠れている香り。ごくごく微細なネガティブ要素、たとえば保存環境による変化にまで反応してしまう、少し“やっかいな”嗅覚ともいえます。 スペイン産はもちろん、スペイン産でなくとも上質なオイルが存在するのは理解しているし、実際に食べて理解しています。その味わいには、心から信頼できるものがたくさんあります。わざわざ書くまでもありませんが、自分が輸入しているオイルだけが良い、というつもりはまったくありません。 実際、レストランで100%ネガティブ要素を感じることがないオイルに出会うことも、何度かありました。 ただ正直なところ、やはりそれは稀です。私にとっては。 スペインでも日本と変わらず、レストランに入るたび、必ずオリーブオイルをテイスティングします。ほんの一滴で、その日のテンションが決まることもあるほど。プロの視点から「これは間違いない」と、心から思えるオイルに出会える機会は、数多くのレストランを回っていても、そうそうあるものではありません。 だからこそ、このジローナのレストランで出会ったオイルには、本当に驚きました。ひと口含んだ瞬間に、背筋がすっと伸びてくるような感覚になり、座り直して、もう一度、全集中して味わったほどです。(全集中とはいえ、周りの方がそこまで気づかない程度に。笑)     澄んだグリーン、マイルドでフルーティーな味わい。心地よくポリフェノールが追いかけてくるような後味。そして何よりも“透明感”のある香り。 これは、誰かを持ち上げるためでも、比較するためでもなく、ただ「素晴らしいものに出会った」という純粋な驚きと喜びとして、残しておきたい記録です。 とにかく、あったのです。 この夜、このレストランに。...

Esencia 特別編 プレスツアーの余白に〜マドリッドとジローナ、2時間の街歩き
ジローナマドリッド
by KatoTomoko5月,10,2025

Esencia 特別編 プレスツアーの余白に〜マドリッドとジローナ、2時間の街歩き

「Esencia ─ 本質をめぐる旅」は、旅と日常のはざまにある風景や出会いを綴る連載です。 今回の記事は、プレスツアーの合間にほんの少しだけ生まれた、2つの街での“余白の時間”の記録。 ■ マドリッド 喧騒の中の静けさ、2時間の歴史散策 バラハス空港からお迎えのバスでホテルまで30分。 5ヶ月ぶりの街に降り立ったその日、午後の光は驚くほど柔らかかったことを覚えています。 目に入る風景が、一瞬で幸せな気分にしてくれました。 短い時間であっても、身体がこの街の空気に順応していくのを感じます。 この日は風が少し冷たく、でも空が澄んでいてどこまでも青かったです。 何度訪れても、マドリッドには「また歩きたくなる通り」があります。歴史的な重みと、日常の軽やかさ。そのどちらもが同居しているこの街の魅力に、またひとつ、心を奪われました。 スペインの中でも、ここは特に“歴史”が街に溶け込んでいて、観光地でありながら遠い過去、確実にここにいたであろう彼らの「日常の延長線」に足を踏み入れたような気持ちになれました。    ■ ジローナ 物語と香りに満ちた、サン·ジョルディの日の街 ジローナにあるノエルアリメンタリア(Noel Alimentaria)の取材からバスに揺られて約一時間。18時から21時までジローナの中心地を観光しました。 ジローナの旧市街を歩いたこの日、4月23日はカタルーニャの人々にとって特別な祝日「サン·ジョルディの日」。バラと本を贈り合うこの伝統的な祭りは、街のあちこちにささやかな物語の気配を運んできます。石畳の通りには、バラの花束を手にした人々が行き交い、本屋や露店が広場にまで並びます。誰かのために選ばれた一冊や、一輪の赤いバラが、街をやさしく彩っていました。     中世の街並みに溶け込むようにして行われるこの祭りには、騒がしさではなく、静かな祝福のような空気が流れています。知らずに訪れた街の、その日だけの表情。ほんの2時間の滞在でも、その特別な空気を肌で感じられたことが、何よりの贈り物になりました。   ■ 「旅」と「余白」 プレスツアーはどうしてもスケジュールが詰まりがちだけれど、こうした余白の2時間が、 むしろ旅の本質を浮かび上がらせてくれることがあります。 効率よく「何を見るか」ではなく、どんなふうに感じたかを記録する。 それが「Esencia」の目指す旅のかたちです。 いつか誰かが、マドリッドやジローナを肌で感じたくなった時、 このエッセイが小さな手がかりになりますように。       Tomoko Kato 加藤智子Editor-in-chief  福岡県出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年から様々なレストランにて調理やワイン販売などの経験を積み、リストランテ「アクアパッツァ」にて広報・PRとして従事。2009年、スペイン産オリーブオイルに一目惚れし「LA PASION」を立ち上げ、今年で16年目を迎えるインポーターとして多くの顧客に恵まれている。2011年に「スペインワインと食協会」を設立。企画運営している「スペインワインと食大学」は人気講座に成長を遂げ、企業や行政からオファーが相次ぐ。取材・執筆では、スペイン・アンダルシア州政府より日本代表として現地スペインに正式招聘されるなど、企業や州政府からの取材依頼が絶え間なく続いている。Webマガジン「LOHASPAIN」の編集長として、スペイン食文化やワインの魅力を国内外に発信中。 @ tomoko_kato_lapasion

Esencia 特別編:マドリッド、ジローナ、バルセロナで出会った、いま注目のレストラン8選
by KatoTomoko5月,02,2025

Esencia 特別編:マドリッド、ジローナ、バルセロナで出会った、いま注目のレストラン8選

旅のようでいて、どこか日常の延長にも感じられる時間を綴る連載「Esencia ─ 本質をめぐる旅」。スペインの食と文化の中に息づく“静かなラグジュアリー”を追いかけながら、都市と地方をめぐって気づいたことを記していきます。 今回はその特別編として──スペインのマドリッド、バルセロナ、トレドで出会った注目のレストラン8軒をご紹介します。現地の食材と技術を活かした料理、それぞれの場所からの持続可能な取り組み。個性豊かなコンセプトをもつこれらのレストランは、スペインの食の最前線を感じさせてくれました。

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.1】──ハティバの街を歩く プロローグ:歴史が息づく、美しい街への招待
esencia
by KatoTomoko2月,06,2025

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.1】──ハティバの街を歩く プロローグ:歴史が息づく、美しい街への招待

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.1】──ハティバの街を歩く プロローグ:歴史が息づく、美しい街への招待

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.3】:レストラン トレドの隠れた名店──スペインの伝統と今を体験できる一皿
esencialos trujisrestaurantetoledotomoko katoスペインレストラン
by KatoTomoko1月,31,2025

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.3】:レストラン トレドの隠れた名店──スペインの伝統と今を体験できる一皿

スペイン・トレドの田舎町に、知る人ぞ知るレストランがあります。地元の人々に愛され、遠くからの訪問者をも魅了する、その店。派手な看板はもちろん、華やかな装飾もありません。けれど、ここには確かな料理と、シェフやスタッフたちの情熱があるのです。   わたしがこの店を知ったのは、トレドを訪問した際にマンチェゴチーズの生産者が連れて行ってくれたからです。「自慢のマンチェゴでつくられていて、すごい賞を受賞したスイーツがあるよ」と。車でオリーブ畑が広がる大自然を抜けて、トレドの田舎道を進んでいきます。緩やかな丘陵地帯を抜け、素朴な風景の中にぽつんと現れたのは、一軒のレストランです。   

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.2】:心に響く風景と食の旅」トレド - 夕暮れとともに心を満たす、特別なひととき
esenciatoledoスペイン紀行トレドパラドール
by KatoTomoko1月,24,2025

Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.2】:心に響く風景と食の旅」トレド - 夕暮れとともに心を満たす、特別なひととき

スペイン、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の中心に広がる歴史と文化の宝庫、トレド(Toledo)。そこは、歴史の中でキリスト教、イスラム教、ユダヤ教が交錯し、独特の文化を育んできた場所です。古い街並みが残るトレドの丘の上に立てば、まるで時空を超えた旅に出たかのような感覚に包まれることでしょう。そんなトレドへの訪問は、私にとって予想外のギフトのようなものだったのです。     2024年11月。その日は朝から、わたしはカスティーリャ・ラ・マンチャ地方の広大な農園を訪れていました。オリーブ畑や搾油所をまわり、地元の豊かな恵みを味わいながら生産者たちと深い話をしていました。会食では想像以上にクオリティが高く、プレゼンテーションも素敵なレストランだったことや、オリーブオイルの専門家としてスペインで活躍する方がわざわざ駆けつけてくださって、時間は思ったよりも早く過ぎていきます。ですがそのとき生産者が、こう言ってくれたのです。   「少しの時間でも構わない。トレドの景色を智子に見せたい。」       その言葉に込められた温かさと優しさに、わたしは胸が熱くなりました。そしてオリーブオイルの専門家と生産者が考えて選んでくれたのが、トレドの街を一望できる「パラドール・デ・トレド(Parador de Toledo)」。     パラドールとは、スペイン各地の歴史的建築物などに建てられた国営ホテル。もともとは古い城や修道院などの建物を改装して利用しているので、スペインの伝統と歴史を感じられる空間です。しかもここはただの宿泊施設ではありません。その土地の物語に触れるための、まさに「文化の扉」のような存在なのです。トレド市街の喧騒から少し離れたこの場所は、訪問者にこの街の全景をプレゼントしてくれるような絶好のスポットでした。     夕方、限られた時間の中、私たちはパラドールのカフェへと駆け込みました。ここにはオリジナルのカフェ・コン・レチェ(スペイン風カフェオレ)があり、迷わずオーダー。濃厚で滑らかなその一杯は、トレドの夕暮れとともに、わたしの心に染み渡る味でした。丘の向こうに広がる空と建物。カテドラル(Catedral)やアルカサル(Alcázar)その風景を眺めながら、大好きで尊敬している生産者と専門家たちとの温かなコーヒーの香りに包まれるひととき。それはまるで時が止まったようでした。         時間がタイトだったからこそ、出会えた奇跡のような光景がありました。赤茶色の屋根が広がるトレドの街並みが、夕陽に照らされて黄金色に輝きはじめたのです。その景色が刻一刻とうつろい、やがて空は薄紫から濃紺へと染まっていきました。そしてトレドの街がライトアップされると、闇の中に浮かび上がる幻想的な姿が現れました。その美しいグラデーションに息を呑む瞬間、わたしたちは言葉を失い、ただその景色を見つめ続けました。   (暗くなるときの美しいグラデーションは動画で撮影しました。インスタでご紹介しますね。写真がないのは、撮っておくことを忘れてしまうほどの景色だったからです。苦笑)   帰る際に気づいたのは、パラドールのホールの素晴らしさです。トレドが生んだ巨匠エル・グレコの作品のレプリカが飾られており、この街が長い歴史の中で育んできた芸術と文化の深さを感じさせてくれるのです。今回、トレドをゆっくり歩く時間はなかったけれど、この場所から眺めた景色には、この街のすべてが凝縮されているように思えました。     はじめて訪れたトレド。地元の人々の優しさに導かれ、夕暮れから夜へと移り変わる瞬間に立ち会えたこと。それは旅のハイライトとなり、ずっと心に残る思い出となりました。次回訪れるときには、この街の小さな石畳の道を歩いてみたいです。     最後の2枚は、トレドの駅の写真。   Tomoko Kato 加藤智子Editor-in-chief  福岡県出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年から様々なレストランにて調理やワイン販売などの経験を積み、リストランテ「アクアパッツァ」にて広報・PRとして従事。2009年、スペイン産オリーブオイルに一目惚れし「LA PASION」を立ち上げ、今年で16年目を迎えるインポーターとして多くの顧客に恵まれている。2011年に「スペインワインと食協会」を設立。企画運営している「スペインワインと食大学」は人気講座に成長を遂げ、企業や行政からオファーが相次ぐ。取材・執筆では、スペイン・アンダルシア州政府より世界一のオリーブオイル展示会にプレスとして正式招聘されるなど、企業や州政府からの取材依頼が絶え間なく続いている。Webマガジン「LOHASPAIN」の編集長として、スペイン食文化やワインの魅力を国内外に発信中。 @ tomoko_kato_lapasion

Recipe

「ビネガーで!スキル0秒、レストラン級」かけるだけ、整うごはん。Vol.5
かけるごはんエキストラバージン・オリーブオイルオリーブオイルビネガー海塩
by KatoTomoko10月,31,2025

「ビネガーで!スキル0秒、レストラン級」かけるだけ、整うごはん。Vol.5

 かけるだけ、整うごはん。Vol.5 「ビネガーで!スキル0秒、レストラン級」 「かけるだけ、整うごはん。」は、 エキストラバージン・オリーブオイルを主役にしたレシピ連載です。 今日のご紹介は、ホワイトアスパラガスのチーズグラタン。 もう、冬がすぐそばに。 あたたかい湯気にのせられた香りで、 お腹がもっと空いてしまう。   洗って皮を剥いて・・・と、冷たい水をつかわずに、瓶詰め野菜をつかって オイルとチーズで焼いて、香りのいいビネガーをひとさじかける。   それだけで、静かに満たされる。 “整える”って、難しくない。     材料 瓶詰めホワイトアスパラガス 適量 とろけるチーズ ひとつかみ エクストラバージンオリーブオイル 少々 フルール・ド・セル(または粗塩) ロリ・フェレール・バルサミコ・レセルバ・シェリービネガー 少々  作り方(調理時間:3分) 温めたフライパンにオリーブオイルを入れ、アスパラガスを焼いたらチーズをのせて溶かす。 完全にチーズが溶ける前に、ひっくり返し、チーズがカリカリになるまで焼く。 仕上げにシェリービネガーをまわしかけ、天日海塩をぱらりとちらす。   味わうための小さなコツ • 最後にまわしかけたエキストラバージン・オリーブオイルとシェリービネガーがお皿に余ると、バケットをつけて最後まで楽しめます • 黒胡椒を効かせるとワインにも合う一皿に  【今回使ったシェリービネガー】 ロリ・フェレール・バルサミコ・レセルバ(250ml) ・原料は、極上シェリー酒「ペドロ・ヒメネス」に使われる白ぶどう100%。   ・スペイン伝統の「ソレラ方式」で17年以上熟成されたその味は、バルサミコのようなコクと、   まるでワインのような滑らかな酸味を両立する、まさに“プロのための調味料”。   連載記事に登場したアイテムを、特別に。 「かけるだけ、整うごはん」に登場したシェリービネガーを、公式オンラインショップ「Store」にて、10月31日~11月14日(23:59まで)SETでお得な限定価格でご用意しました。 ◻︎ 【最大10%OFF】期間限定特別価格 ロリ・フェレール・バルサミコ・レセルバ 250ml   https://lohaspain.spainwinefood.org/collections/vinegar/products/loliferrer-bio12   ビネガーの記事 発酵のチカラ~シェリービネガー(酢)が私たちの体にもたらしてくれるもの〜    ...

「焼くだけ!手抜きで、舌だけうならせる。」〜かけるだけ、整うごはん。Vol.4
かけるだけオリーブオイルスペイン産オリーブオイル
by KatoTomoko10月,24,2025

「焼くだけ!手抜きで、舌だけうならせる。」〜かけるだけ、整うごはん。Vol.4

 かけるだけ、整うごはん。Vol.4 「焼くだけ!手抜きで、舌だけうならせる。」 ピリッとした寒さが増えてきた日々。 冬の訪れを感じるときだからこそ、 あたたかいものを、食べたくなる。 そんなとき手軽な缶詰をつかって、焼いて、 香りのいいオイルをひとさじかける。   それだけで、静かに満たされる。 “整える”って、難しくない。     材料 アンチョビのパテ 適量 とろけるチーズ ひとつかみ 市販のピザ生地(画像はカルディのもの)     あれば大葉 せん切り 少々 エクストラバージンオリーブオイル フルール・ド・セル(または粗塩)  作り方(調理時間:3分) 市販のピザ生地にアンチョビペーストを塗って、オリーブオイルをしいたフライパンで焼く。(ペーストを塗った方が上) ピザ生地を取り、フライパンにとろけるチーズを入れ、10秒後にピザ生地を被せる(ペーストを塗った方をチーズにつける) 仕上げにエクストラバージンオリーブオイルをまわしかける。大葉の千切りを乗せ、好みで天日海塩をふりかける。   味わうための小さなコツ • オイルは、アンチョビに合わせて味わいにハーブのニュアンスやインパクトのあるものを選ぶ(大葉がなくてもオイルがいい仕事をしてくれるから) • 黒胡椒を効かせるとワインにも合う一皿に    今回使ったオイル パラシオ・デ・ロス・オリーボス (500ml)   商品ページはこちら  → https://lohaspain.spainwinefood.org/collections/olive-oil/products/palacio-pic-250 • スペイン・ラ・マンチャ地方のピクアル種100%使用 • フレッシュな青い香りにエレガントな苦味と辛味が絶妙なバランス • ミシュランレストランのシェフからも選ばれているインパクトのある味わい   【レポート】「アクアパッツア」季節を語る一皿と、オリーブオイル https://lohaspain.spainwinefood.org/blogs/news-1/acquapazza     まるで、食材の“引き出し役”。 忙しい日ほど、こんな主役級のオイルに頼ってみてください。   「かけるだけ、整うごはん」をすぐに始めたい方へ...

「缶詰をつかってちゃんとした一皿に。」 〜かけるだけ、整うごはん。Vol.3
かけるだけパテ缶詰
by KatoTomoko10月,08,2025

「缶詰をつかってちゃんとした一皿に。」 〜かけるだけ、整うごはん。Vol.3

 かけるだけ、整うごはん。Vol.3 「火を使わないごちそう(時短×非加熱)」 やっと秋晴れに恵まれて過ごしやすくなってきた日々。 季節の変わり目だからこそ、 体にやさしいものを、ちゃんと食べたいと思う。 そんなとき手軽な缶詰をつかって 香りのいいオイルをひとさじかける。   それだけで、静かに満たされる。 “整える”って、難しくない。     材料 アンチョビのパテ 適量 北海道産クリームチーズ 100g 牛乳 30g パン(お好みのもの) 大葉 みじん切り 少々 エクストラバージンオリーブオイル フルール・ド・セル(または粗塩)  作り方(調理時間:3分) パンを軽くトーストする間に、北海道産クリームチーズに少量の牛乳を混ぜ、なめらかなクリーム状にする。 トーストにクリームを塗り、その上にアンチョビパテを重ね、みじん切りにした大葉をのせる。 エクストラバージンオリーブオイルを少量かけ、仕上げに塩をひとつまみふりかける。   味わうための小さなコツ • オイルは、アンチョビに合わせて味わいにハーブのニュアンスやインパクトのあるものを選ぶ • 黒胡椒を効かせるとワインにも合う一皿に    今回使ったオイル パラシオ・デ・ロス・オリーボス (500ml)   商品ページはこちら  → https://lohaspain.spainwinefood.org/collections/olive-oil/products/palacio-pic-250 • スペイン・ラ・マンチャ地方のピクアル種100%使用 • フレッシュな青い香りにエレガントな苦味と辛味が絶妙なバランス • ミシュランレストランのシェフからも選ばれているインパクトのある味わい   【レポート】「アクアパッツア」季節を語る一皿と、オリーブオイル https://lohaspain.spainwinefood.org/blogs/news-1/acquapazza       まるで、食材の“引き出し役”。 忙しい日ほど、こんな主役級のオイルに頼ってみてください。...

火を使わないごちそう(時短×非加熱)〜かけるだけ、整うごはん。Vol.2
by KatoTomoko9月,11,2025

火を使わないごちそう(時短×非加熱)〜かけるだけ、整うごはん。Vol.2

 かけるだけ、整うごはん。Vol.2 「火を使わないごちそう(時短×非加熱)」 なんとなく夏の疲れが残っている日。 台所に立つ気力もないけれど、 体にやさしいものを、ちゃんと食べたいと思う。 そんなとき、切った野菜に 香りのいいオイルをひとさじかける。   それだけで、静かに満たされる。 “整える”って、難しくない。      材料(1人分) • 白菜、おかひじき • エキストラバージン・オリーブオイル :ゆっくりたっぷりとひとまわし • 自然の塩(海塩) :ひとつまみ ・胡麻ドレッシング(市販のもの):大さじ1 • お好みで味変に:黒胡椒など  作り方(調理時間:1分) 1. 野菜を洗う。白菜は食べやすい厚さにスライスする。 2. 胡麻ドレッシングをかける。塩とオリーブオイルをやさしくかける 味わうための小さなコツ • オイルは、まろやかなものを選んで • 市販の胡麻ドレッシングを薄めるつもりでオイルをたっぷりかける • 黒胡椒を効かせるとワインにも合う一皿に    今回使ったオイル グリフォイ・デクララ・エキストラバージンオリーブオイル(500ml)   商品ページはこちら  →https://lohaspain.spainwinefood.org/collections/olive-oil/products/grifolloil • スペイン・カタルーニャのアルベキーナ種100%使用 • さらりとした口当たりと、やさしいアクセント • ミシュランレストランのシェフからも選ばれている万能な味わい   才能が繋がる瞬間 ー グリフォイオイルと出会った丹野シェフと渡邉シェフの物語...

「野菜にオイル。それだけで、豊かな前菜に。」 〜かけるだけ、整うごはん。Vol.1
by KatoTomoko9月,03,2025

「野菜にオイル。それだけで、豊かな前菜に。」 〜かけるだけ、整うごはん。Vol.1

 かけるだけ、整うごはん。Vol.1 「野菜にオイル。それだけで、豊かな前菜に。」 なんとなく夏の疲れが残っている日。 台所に立つ気力もないけれど、 体にやさしいものを、ちゃんと食べたいと思う。 そんなとき、切った野菜に 香りのいいオイルをひとさじかける。   それだけで、静かに満たされる。 “整える”って、難しくない。   今日のテーマ:夏野菜 トマトときゅうりは、手間をかけたくないときの味方。 けれど、旬のフルーツを少し添えてオイルをひとさじ足すだけで、食卓の主役になります。 口に入れた瞬間、いちじくのやさしい甘みが絡まったトマトやきゅうりが フレッシュなオリーブの香りがふわっと重なって、 静かな「ごちそう」に変わる。      材料(1人分) • トマト、きゅうり(あれば、いちじく、なし) • エキストラバージン・オリーブオイル :ゆっくりとひとまわし • 自然の塩(海塩) :ひとつまみ • お好みで味変に:黒胡椒など  作り方(調理時間:1分) 1. 野菜を洗って、ひと口に切る 2. 塩とオリーブオイルをやさしくかける 味わうための小さなコツ • オイルは、まろやかなものを選んで • トマトを一番先に切って塩を振っておく(塩を振ったトマトから出る水分も旨みになります) • 黒胡椒を効かせるとワインにも合う一皿に    今回使ったオイル グリフォイ・デクララ・エキストラバージンオリーブオイル(500ml)   商品ページはこちら  →https://lohaspain.spainwinefood.org/collections/olive-oil/products/grifolloil • スペイン・カタルーニャのアルベキーナ種100%使用...

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