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LOHASPAIN by スペインワインと食協会 LOHASPAIN by スペインワインと食協会

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      LOHASPAIN

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      by KatoTomoko8月,01,2025

      2025年夏季休業のお知らせ

      2025年夏季休業のお知らせ   *夏季休業のお知らせ*     誠に勝手ながら、2025年8月4日(月)から16日(金曜)まで、夏季休業とさせていただきます。 お客様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。   【オフィス休業期間】  2025年8月4日(月)~8月16日(金)   【商品のお届けについて】 ・2025年8月3日(土)までのご注文→ 8月4日(月)までに発送 ・2025年8月4日(月)~16日(金)までのご注文→ 8/18(月)から順次発送   【Storeのご注文について】 インターネットは24時間注文受付しております。   【お問い合わせについて】 8月2日(土)12時以降及び、休業期間中のお問い合わせにつきましては、 お電話、メールともに8月18日(月)12時以降、順次折り返しのご返答となります。予めご了承いただきますようお願い申し上げます。   撮影:Tomoko Kato   運営管理:LOHASPAIN(ロハスペイン) 株式会社LA PASION

      by KatoTomoko7月,25,2025

      【レポート】「アクアパッツア」季節を語る一皿と、オリーブオイル

      6月中旬、雨の気配すら忘れるような暑さの平日。 都会のど真ん中にもかかわらず大通りを曲がるとすぐにグリーンが溢れる空間に佇むレストラン「アクアパッツア」にお伺いしました。 この日いただいたのは、季節のスペシャルコースです。前菜からデザートまで、コンセプトが貫かれた構成、そしてペアリングされたワインとともに深く魅了されました。皿に盛られる素材のひとつひとつは、全国各地の信頼できる生産者から届く珠玉の食材ばかり。中には、名前を聞くのも初めてのものや、百貨店の棚ではまず出会えないような、希少で個性的なものも少なくありません。「これほど忙しい日々の中で、どうやって見つけてくるのだろう?」と、つい私は、何度も考えてしまったほどです。 今季のオイルのティスティングのとき(4月)   料理人の目と舌、そして人とのつながりがなければ辿り着けないはず。まさにプロの料理人だけが出会える選ばれし素材たちが、何度も登場しました。 花ズッキーニの儚さ、乳清で和えられた冷製フェデリーニの清涼感、鱧の旨味が際立つサルサヴェルデ。すべてが「いま、この瞬間」を最大限にときめかせてくれます。そして確かな共通点に気がつきました。それはエキストラバージン・オリーブオイルの存在を大切にしてらっしゃること。     テーブルに運ばれた一皿一皿には、私たちの通販サイトでご紹介している各種オイルが丁寧につかわれていました。オイルが料理をまとめたり、時には前に出て主張したり、はたまた素材を引き立てる影の演出者として機能していたり。 川合シェフの温かなご配慮で、各料理につかわれたオリーブオイルのボトルを、ソムリエの方が毎回テーブルまで運んでくださいました。実は、オイルのボトルと料理を一緒に撮影したいという希望は、私だけのもの。他のお客様にはその必要がない中で、わざわざその都度、ボトルを添え、私が一瞬で写真を撮り終えるのを待ち、すぐにキッチンへと戻る。この静かで美しい動作を、ソムリエは何度も繰り返してくださいました。頼んでもいないのに、ここまでしてくださることがただただ嬉しくて、心がほどけるような思いでした。   「こうしたら、きっと喜んでくれるだろう」と、誰かが気づいた小さな期待をそっと先回りして形にする。そういう方達だと知っていましたが、そんな気づきと優しさにあふれたレストランチームの姿勢に、改めて深く胸を打たれました。 チームの細やかな連携と、食に真摯に向き合う姿勢がにじんでいて、今も心に強く残っています。       1皿目 花ズッキーニのフリットと空っ風生ハム、サラミ サクッとした衣の中に、夏の余韻がいっぱいの花ズッキーニ。生ハムとサラミの塩気が、心地よく口内を引き締める。スプマンテとともに食欲をスタートさせてくれた。     2皿目 吉田牧場の乳清で和えた冷製フェデリーニ アオリイカとウイキョウ添え おだやかな塩気と乳清のミルキーさが絶妙なバランスで絡む冷製パスタ。シャクっとしたアオリイカ、香りがたまらないウイキョウ。繊細な風味に合わせた白ワインの透明感が、料理の構造を一層引き立てる。オイルの香りも静かに溶け込んでいる。   3皿目 天草産鱧のフリット サルサヴェルデ 揚げ物でありながら、驚くほどふんわり軽やか。サルサヴェルデの酸味と鱧の旨味がオイルと見事に調和。ここでもワインが、魚のニュアンスと完璧に寄り添う。   4皿目 トリッパ、ガツ、豚ハラミの煮込み スカマルツァアフミカートのオーブン焼き 上品な野性味と複雑な旨味が絡み合う皿。燻製チーズの香ばしさと煮込みの深みが、滑らかで上品ながらタンニンのある赤ワインと絶妙なコントラストを描く。重厚な余韻に、オリーブオイルが丸みと広がりを添える。   5皿目 駿河湾の赤海老とジロールのタリアテッレ 濃密な甲殻の旨味、香りたかいジロール茸。季節が色濃く現れる一皿にも、先ほどのIDDAロッソの赤ワインがよく合う。オイルが、素材同士をつなぐ潤滑油のように機能しているのが印象的。   6皿目 キンメダイのアクアパッツァ 名物のアクアパッツア。目の前で鮮やかにデクパージュ(お魚の取り分け)してくださる。スプーンとフォークだけで、骨まで取り、箸を使う以上のテクニックは、毎回のように見入ってしまう。ふっくらと火が入ったキンメダイに、滋味深いスープ。ここで用いられたオイルは、魚介の香りと複雑に絡み、まさに“命を吹き込む役割”を果たしていた。合わせたワインもブロンドのような品格で、素材の声をグッと引き出してくれた。 7皿目 青森県産銀鴨 胸ともものロースト 鴨の脂が持つ旨み、香ばしさ、そしてしっとりした肉の質感が最大限に感じられるような火入れ加減に感激した。さらにオイルの使い方にシェフの配慮が光る。赤ワインとともに、このランチのクライマックスをしっかりと締めくくった。   デザート チーズケーキと夏香...

      by KatoTomoko7月,18,2025

      「幻の3年を超えて。100箱のキャラメリゼに込めた手仕事と再会の物語」

      1. かつての人気菓子。そして、終わりと始まり。 2020年から2023年までの3年間、 「ラルゲタアーモンドのショコラとキャラメリゼ」は、当時の販売元が企画・製造・販売してくださっていて、それはそれは多くのファンをもつ人気商品でした。 私は、その素材、つまり「ラルゲタアーモンド」を輸入する立場で、その人気を陰から見守らせていただいていたのです。   当時のラルゲタアーモンド・ショコラ     “幻の3年”とも言えるその時期、多くのファンを魅了しながらも、やがて製造は終了。しかし、その味を忘れられないという声は、ずっと絶えませんでした。 終売から2年が過ぎても、アーモンド販売の時期には「もう一度、あの味を」という声を必ずいただくのです。今年の春も、また。 そして私は初めて思いました。「あの味は、輸入元の私が形にしなければ、もう2度と味わえないんだな・・・」と。   左側・小さな袋は120g、右側・大きな袋は1Kg業務用   2. 10年越しのご縁と“その時”のひらめき。 2025年の春。年が明けて、ようやく届いた新物のラルゲタアーモンド。例年であれば冬の入荷ですが、気候変動の影響で、今年はそのタイミングさえも変わってしまったのです。「今季の味を、一日でも早く届けたい」と、私は120g入りの一袋を、大阪でパティスリーを営む加奈代さんに送りました。 加奈代さんとのご縁は、もう10年以上前にさかのぼります。きっかけは、まだ「グリフォイオイル」として展開する前の「カミロケオイル」。オリーブオイルを通して出会い、大阪から東京のイベントに駆けつけてくださったり、関西のマルシェで販売してくださったりと、“応援者”という言葉では足りないほど、温かく支えてきてくださった方です。ちなみに、ふたりともドリカムファンという共通点もあって(笑)   2016年夏、大阪にて販売元主催によるオリーブオイルのイベント乾杯の挨拶をしてくださった加奈代さん   2016年夏、大阪イベントにて(加奈代さん・中央列左から二番目、筆者・中央列右側)   2022年秋、スペインワインと食協会後援のワインイベント@東京に駆けつけてくださった加奈代さん(左から2番目)   アーモンドショコラ終売の後、加奈代さんがパティスリーをオープンされたのを知ったとき、ふと「いつか、このラルゲタアーモンドでショコラ菓子を一緒に作れたら」そんな未来が思い浮かんだことがありました。 そして今回。新物のアーモンドを購入くださる方々から「もう一度、あの味を」という声が次々と届き、私は思わず加奈代さんに連絡を入れてしまったのです。本当に、衝動のように。   3. たった120gから生まれた、感動のひと口。   すると、数日後。信じられないことが起こりました。 なんと加奈代さんから2種類のアーモンドショコラが届いたのです。だってお送りしたのは、たった120gの一袋のアーモンド。きっと数粒だけを味わい、残りのすべてを試作に使ってくださったのだと思います。 そういうところに、加奈代さんのお人柄と、カフェオーナーとしての覚悟がにじんでいますよね。味に対する敬意、素材に対する愛、そして“想いに応える人”という誠実さ。 「ラルゲタアーモンド・ショコラ」という形になって届いたその味。     一粒食べて、胸が高鳴りました。その香り、味わい・・・。 「これ、私だけしか知らないなんて絶対にダメだ!」と、勝手な使命感のような衝動に駆られ、家族にも試食してもらいました。 それはもう・・・、大絶賛。 「どこのブランドなのか?」、「これ、もっとたくさん食べたいからまた買ってきて!!」と、この味わいの背景を知らず、まだ忖度もない小学生たちも、やっぱり目をまんまるにして聞いてきます。 やっぱり、この味、間違いない。 気がつくと私は、加奈代さんに伝えていました。「“いつか”じゃなく、“今季”のアーモンドで、作りたいです」 とはいえ、6月の時点であれだけ暑い日が続いていたので、ショコラではなく、まずはキャラメリゼからスタートすることになりました。 加奈代さんのお店で試作され、送ってくださったアーモンド・ショコラ   割れたアーモンドをロシェにしてくださったもの    ...

      by KatoTomoko4月,04,2025

      「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」

      「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」 旅とは、計画された非日常ではなく、日常の延長にふと現れるもの。この連載「Esencia(エセンシア)」は、「スペインの紀行文をまとめて読めるようにして欲しい」というひとりの読者の声がきっかけで生まれました。私自身が仕事で年に数回だけ訪れるスペインの街や村を舞台に、“ほんの少し先のリアル”をすくい取って綴ります。 この連載では、スペインという国の「生活」に触れながら、「楽しく、豊かに生きるとは何か?」というテーマをゆるやかに問いかけていけたらと考えています。都市と地方、伝統と革新、偶然と選択。そのあわいにあるものが、「スペイン食文化」の豊かさであり、ラグジュアリーの本質なのかもしれません。 「Esencia」は、スペイン語で「本質」や「香り」を意味する言葉。オリーブ畑で感じた風、グラスの縁に残ったオレンジピールの香り、シェフの手に刻まれた時間。いつかあなたがその土地を訪れるとき、この連載で描いた風景が、そっと背中を押してくれるような存在になればと願っています。

      by KatoTomoko4月,04,2025

      スペイン出張に伴う臨時休業とゴールデンウイーク休業のお知らせ

      日頃から、オンラインショップLOHASPAIN「Store」をご愛顧いただき誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、4月17日(木)~5月6日(火)までスペイン出張とゴールデンウィーク休業のため、不在とさせていただきます。 オンラインショップの配送も臨時休業となります。4/16(水)以降にご注文を頂きましたお客様には大変申し訳ございませんが、5月7日(水)以降の発送となります。   ・休業期間:4月17日(木)〜5月6日(火) ・営業開始日:5月7日(水)  *休業期間中は電話受付もすべて休止いたします。 トップ画とともに、昨年11月に訪問したマドリッド・サラマンカ地区にあるMallorca     休業期間中に頂きましたお問い合わせにつきましては、5月7日(水)以降に、順次行ってまいります。ご返答までに少しお時間をいただく場合がございますことを予めご了承下さい。 ご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。    LOHASPAIN 加藤智子      

      by KatoTomoko2月,21,2025

      8年連続、世界最多受賞──アルマグロのオリーブオイルが日本へ パラシオ・デ・ロス・オリーボス(Palacio de los Olivos)

      スペイン・アルマグロの名門農園から、待望のオリーブオイルが届きます。   世界のコンテストで8年連続トップ受賞。星付きレストランのシェフたちも愛用する、まさに"本物の一滴"。   その香りの豊かさ、奥行きのある味わいは、まさに"飲む香水"。バゲットやサラダにひとさじ垂らせば、その違いは一口でわかります。   この特別なオイルを、空輸&数量限定でお届けします。   さらに第二弾として今回は、5日間の早期予約期間限定で、特別価格をご用意しました。   世界が認めたオイルを、最高の鮮度で味わうチャンス。   この機会を、どうぞお見逃しなく。  

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      Spanish Lifestyle

      by IkumiHarada

      バルセロナ「Cadaqués(カダケス)」で味わう、至福の薪火パエリア

      「Cadaqués(カダケス)」は、バルセロナとマドリード、どちらの店舗も都会にありながら、まるで本物のカダケスの町を訪れたような、地中海の自然を感じられるゆったりとした空間です。 薪火の香りに包まれながら、こだわり旬の素材を味わう─そんなしあわせなひとときを提供してくれるレストラン。 カタルーニャ北東部、まるで絵本から抜け出したような美しい町「カダケス」の風景や文化の豊かさ、そして、薪火パエリアの美味しさに触れたい方は、ぜひ一度足を運んでいただきたいレストランです。

      by IkumiHarada

      ガスパチョの歴史、味わいのルーツを辿る

      夏にぴったりのスペイン伝統スープ「ガスパチョ」 スペインの夏を代表する冷製スープ「ガスパチョ」は、その爽やかな酸味と野菜の豊かな風味で、暑い季節に体をすっきりとリフレッシュしてくれます。単なるトマトスープと思われがちですが、実は長い歴史と地域ごとの多様なバリエーションがあり、古代ローマ時代から続く伝統料理です。 本場スペインでは、パンやアーモンド、さまざまな野菜を使ったレシピがあり、夏の栄養補給として愛されてきました。現代では、ビタミンたっぷりのヘルシーな冷静スープとしても、世界中で楽しまれています。

      by IkumiHarada

      バルセロナ初、バスク式魚介専門炭火焼きレストラン「Kresala(クレサラ)」

      バルセロナの魅力を語るとき、地中海の存在は欠かせません。その青い海を臨む港のひとつ、オリンピック港(Port Olímpic)が昨年、新たな息吹とともに生まれ変わったことをご存知でしょうか。かつては観光地特有の素朴さと雑多な空気が漂っていたこのエリアが、いまや「Balcó Gastronòmic(グルメ・バルコニー)」として、洗練された美食の舞台へと進化を遂げています。 潮風がやさしく吹き抜けるテラス席、目の前に広がる美しいビーチ。そして、炭火に香ばしく焼かれる魚介の香り―そんな五感を満たす時間を叶えてくれる、こだわりのバスク料理店をご紹介します。 バスク語で"潮の香り"を意味する「Kresala(クレサラ)」 店名 “Kresala(クレサラ)” は、バスク語で「潮風」や「潮の香り」を意味する言葉。その名のとおり、海と火の出会いが生むバスクの食文化を象徴するレストランです。 手がけたのは、世界各地でバスク料理を展開する【サガルディグループ】。ナバーラの名店「Bidea 2」の炭火焼き職人グレゴリオ・トローサ氏と、グループ創設者であるミケル&イニャキ・ロペス・デ・ビニャスプレ兄弟がタッグを組み、伝統と革新を融合させた「バスク式魚介炭火焼き」の真髄を、ここバルセロナで表現しています。バルセロナのニュースポット「Balcó Gastronòmic(グルメ・バルコニー)」に、2024年9月オープン。地元カタルーニャを代表する新聞『El Periódico(エル・ペリオディコ)』にて、「2024年にバルセロナで新規開業したレストランの中で最も優れた店」に選ばれるなど、その実力は早くも高く評価されています。 バスクの魂を、バルセロナ、世界に伝える親善大使 左から、「Spanish Lifestyle」でお馴染みのフアン先生、筆者、そして、サガルディグループの創設者であり、シェフでもあるイニャキ氏 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 
 「クレサラ」をはじめとした、サガルディグループの創設者であり、シェフでもあるイニャキ・ロペス・デ・ビニャスプレ氏は、バスク地方出身。1981年にバルセロナ大学で人類学を専攻し、その文化的背景への深い理解をベースに、1995年、弟のミケル氏とともに、バルセロナでバスク料理店「IRATI(イラティ)」を開店しました。 実は筆者が2005年に語学留学でバルセロナに滞在していた当時、初めて「ピンチョス」やバスク料理に触れたのがこの店でした。今回の取材を通じてその記憶がよみがえり、深い感慨に包まれました。 「バスク料理を、バスク以外の場所で正しく伝えること」。この理念こそが、サガルディグループの成長と信頼の礎です。現在、バルセロナをはじめ、マドリード、ポルト、ロンドン、アムステルダム、ブエノスアイレス、バレンシアなど、世界各地に29店舗を展開。そのすべてがイニャキ&ミケル兄弟の直営店であることにも、品質へのこだわりと責任感が表れています。 さらにスペイン国内には、グループ専用の自社農園を5カ所所有。漁師をはじめとする信頼のおける生産者たちと直接やりとりを行い、食材の鮮度と品質を徹底的に追求しています。インタビューを通して感じたのは、「本物のバスクの食文化を世界に届けたい」というイニャキ氏の揺るぎない情熱。その想いは、店づくりから料理、コンセプト、サービスの細部に至るまで、確かに息づいていました。 バスクやガリシアから新鮮厳選された、最高の魚介 「クレサラ」で味わえるのは、オンダリビアやガリシア、バルセロネータ、ロセスなど各地の港で水揚げされた旬の魚介類です。カンタブリア海やガリシアから届く魚介は、夜のうちにトラックでバルセロナへ運ばれ、翌朝には新鮮なまま店に届きます。大西洋側の海は地中海とは異なり波が荒く水温も低いため、魚の身が引き締まっているのが特徴です。魚の旨味を最大限に引き出すために、1〜2日間じっくりと逆さに吊るしてから、バスク伝統の直火焼台(parrilla)で炭火焼きにされます。バスク伝統の“パリージャ”で、炭火で焼き上げた真鯛地中海の絶品赤海老は、濃厚なミソと甘みが特徴ガリシア産マテ貝の生仕立て キャビア香る至福の一品 幻の高級甲殻類「サンティアギーニョ」に出会う 前列左から赤海老、そして二番目の黒くずんぐりとした甲殻類は、幻の海の珍味「サンティアギーニョ」 訪問時、イニャキ氏が「今日はガリシアからサンティアギーニョが届いたんです」と紹介してくださいました。7〜10cmほどの小さな甲殻類で、見た目はハサミのないロブスターのようですが、はるかに小ぶり。スコップ状に広がる触角と、甲羅の縁に走る濃赤色のトゲが特徴です。 茹で上がると、その背に「サンティアゴの十字架(クルス・デ・サンティアゴ)」が浮かび上がるという、神秘的な姿を見せる希少な甲殻類。ガリシア沿岸の岩場に生息し、漁期がごく限られているため、市場に出回ることは稀です。現存する最古の甲殻類とも言われ、その味わいと価値の高さから、“海の宝石”と称されるにふさわしい存在だと、フアン先生は語ってくれました。こんな希少な魚介と出会えるのも、「クレサラ」ならではの特別な醍醐味です。デザートは、炎のベイクド・アラスカ。香ばしく焼き上げたメレンゲに包まれたアイスケーキを、目の前でフランベ。立ちのぼる炎とともに、最後のひと皿まで“火”の演出で魅せてくれました。 豊富なワインセレクション ワインリストは200種以上を誇り、中には市場にほとんど出回らない希少ボトルも。 イニャキ氏が最初の一杯に選んでくれたのは、バスク原産のブドウ品種・オンダラビ・スリを使用した、シャンパーニュ製法のスパークリング・チャコリ「Artadi Izar-Leku」。キレのある酸と繊細な泡立ちが絶妙で、魚介の旨みと寄り添いながら、美しく共鳴していました。次に登場したのは、味わいはもちろん、アーティスティックなエチケットでも印象に残る「OXER WINES」のチャコリ。使用品種は、オンダラビ・スリとオンダラビ・スリ・セラティア。豊富なミネラル感とキリッとした酸に加え、ふくよかな広がりがあり、潮風を思わせる余韻が静かに続きます。バルセロナの美しい海を眺めながら、バスク伝統のParrilla(パリージャ)文化を堪能できる「クレサラ」。火と海が織りなす極上の美食体験ができる、フーディー必見の新たな注目スポットです。炭火の香りに包まれた新鮮な食材が、バスクの食文化の奥深さを物語ります。バルセロナでその息吹を、ぜひ体感してみられてはいかがでしょう。ーーーーーーKresala(クレサラ)住所: Port Olímpic, Moll de Gregal, local 1, Sant Martí, 08005 BarcelonaTeléfono:...

      by IkumiHarada

      【バルセロナ・ゴシック地区】歴史とアートに包まれた、至福の美食体験
「El Cercle(エル・セルクレ)」


      バルセロナ・ゴシック地区の歴史的宮殿をリノベーションした「El Cercle(エル・セルクレ)」。人気のテラス席と、地元に愛される本格カタルーニャ料理と、バルセロナで人気の日本料理、豊富なワインが楽しめる贅沢な空間です。歴史と芸術に包まれた、至福の美食体験をお届けします。

      by IkumiHarada

      【創業1872年・バルセロナ】地元客が通う、クラシックなカタルーニャレストラン「ラ・クララ(La Clara)」

      バルセロナで出会う、本物のカタルーニャ料理 「バルセロナで、伝統的なカタルーニャ料理に出会うのって、難しいですね」スペインとワインに精通し、大阪でワインショップを営むある方のこの言葉が、ずっと心に残っています。 たしかに、世界有数の観光都市であるバルセロナの中心部には、「パエリア」や「サングリア」といった観光客向けの定番メニューを掲げたレストランが軒を連ねています。一方で、2024年の「世界ベストレストラン50」で1位に輝いたミシュラン三つ星の「ディスフルタール」をはじめ、スタイリッシュな空間で独創的なコース料理を提供するガストロノミック・レストランも年々増えています。しかし、“クラシックなカタルーニャ料理”を味わえる店は、意外にも限られているのが現実です。 筆者自身、「本当においしいカタルーニャ料理は、家庭にある」と感じています。なかでも、お母さんやおばあちゃんの世代がつくる料理には、“愛情と栄養”がたっぷり詰まっていて、何ものにも代えがたい味わいがあります。 それでも、バルセロナの中心地からほんの少し足を伸ばせば、昔ながらの味と空気感を大切に守り続け、今なお地元の人々に親しまれているクラシックなレストランに出会うことができます。今回ご紹介する「La Clara(ラ・クララ)」も、そんな一軒です。 1872年創業、常連客が通う、カタルーニャレストラン バルセロナのグラン・ビア沿い、サン・アントニ地区に佇むレストラン「ラ・クララ(La Clara)」は、1872年からずっと、この場所、この建物で、カタルーニャ料理が提供されてきました。150年の歴史を持ちながらも、現代の感性を取り入れた空間で、今も地元客が通い、愛され続けています。 エントラスのカウンターでは、気軽にお酒やタパスを楽しめるカジュアルなバル、中に進むと、白いテーブルクロスが整然と並ぶエレガントなダイニングエリア、広々とした個室もあり、空間ごとに食体験の表情が変わります。 ワイン愛好家にとっての“聖地” 圧巻は、約1300種類を誇るワインセラー。スペイン各地はもちろん、世界の銘醸ワインが丁寧に保管されており、そのワインリストは、カタルーニャのワインアワード「CartaVi」を2度も受賞するほどの充実ぶり。垂直ヴィンテージも豊富に揃い、まさに“ワインの聖地”と呼ぶにふさわしい場所です。 CartaVi コンテストの表彰状:Associació Vinícola Catalana主催 スペイン最優秀ソムリエの栄冠に輝いたこともあるフアン先生も、そのセレクションに深く感銘を受けられていました。まさに、ワイン愛好家にとっては夢のような一本と出会える場所です。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos 料理は、バルセロナの市場から届く新鮮な食材を使った、王道のカタルーニャ料理。写真左は、25年にわたり「ラ・クララ」の厨房を支え続けてきたフアン・シェフ。そして筆者の右隣のカルロス氏は、現在この店のディレクターを務める人物であり、実はフアン先生の教え子のお一人。 これまでも、スペインを代表するシェフやワイン関係者をフアン先生からご紹介いただき、「Spanish Lifestyle」で取材やインタビューを重ねてきましたが、世界各地で活躍する1万人を超える教え子たちが、こうしてレストランやワイナリーの最前線で活躍する姿に出会えるのは、本当に感慨深いことです。フアン先生とともに、筆者自身も「Spanish Lifestyle」を通じて、スペインのワインと食の世界をこれからも応援していきたいと、改めて感じました。 2007年には、「生粋のカタルーニャ料理を提供するレストラン」として、ニューヨーク・タイムズ紙にも紹介され、その記事はいまも店内に大切に飾られています。「まずはこれを」とカルロスがすすめてくれた、「塩だらのブニュエロ(Buñuelos de Bacalao)」。ふんわり軽やかに揚がった一皿は、絶妙な塩加減と食感が魅力。家庭では出せない、プロの洗練が伝わる逸品です。   「カンタブリア産アンチョビとエスカリバーダのティンバル風盛り合わせ」じっくりと炭火で焼き上げた香ばしいエスカリバーダ(焼き野菜のマリネ)と、旨味たっぷりのアンチョビが織りなす絶妙なハーモニー。 カタルーニャのソウルフード「パン・コン・トマテ」に生ハムをのせて。「スズキのタルタル(Tartar de lubina)」。こんなモダンな一皿も。 カタルーニャ伝統の味わいを楽しめるラ・クララ自慢の「カネロン(canelons)」。赤ワインで4時間じっくり煮込んだ牛と豚の肩肉がとろけるように旨みを放ち、クリーミーなソースと絶妙に調和した一皿。カルロスのおすすめのもう一皿は、「野菜とキノコのアロス(Arroz de  Verduritas y Setas)」。野菜とキノコの旨みがじっくり染み込んだご飯は、硬さも味わいも絶妙です。お米料理ながら軽やかで、ワインが進むのもうれしいポイント。後味も爽やかで、あっという間に平らげてしまいました。 観光地の喧騒を離れた“本物”の一軒 リラックスした雰囲気の中で、地元の人々と肩を並べて食事が楽しめる「ラ・クララ」。ショッピングや観光の合間はもちろん、ビジネスの会食や、グループディナーにも幅広く対応できる個室も備えた、まさに“使い勝手の良い”名店です。 観光客にはまだ知られていない貴重な穴場であり、地元バルセロナの人々にとっては欠かせない、落ち着ける安定のレストランです。クラシックなカタルーニャ料理の真髄と厳選されたワインを心ゆくまで味わいたい方に、ぜひ訪れていただきたい一軒。次のバルセロナ訪問では、ぜひ足を運び、地元の温かさと味わい深い料理の世界に浸ってみられてはいかがでしょう? ーーーーーーーーーーーーーーーLa Clara Restaurant住所: Gran Via...

      by IkumiHarada

      旅先で出会う、心に残る一杯【高標高ワイン】カスティーリャ・イ・レオン

      北ブルゴスのワイナリー Pagos de Anguix (パゴス・デ・アンギス) 【文】フアン・ムニョス【訳・写真】原田郁美  「Spanish Lifestyle」では、今回、「高標高のワイン」にフォーカスします。ご紹介するのは、北ブルゴスの高原地帯「エル・パラモ(El Páramo)」で育まれた、フアン先生おすすめの1本、Prado Lobo(プラド・ロボ)です。 筆者がこのワインと出会ったのは、カスティーリャ・イ・レオン州の小さな町、アレバロ(Arévalo)を訪れたときのこと。中世の面影を残す石造りの街並みに囲まれながら、地元の人々に長年愛されてきたAsador Las Cubas(アサドール・ラス・クバス)でのランチの席で出会った赤ワインがPrado Loboでした。 その印象深い出会いの舞台となったアサドールや、ブルゴスの旅の写真、そしてワイナリーの風景とともに、このワインの魅力を紐解いていきます。ページをめくるごとに、皆さまの旅への想いが広がりますように。  ブルゴスのシンボルともいえるブルゴス大聖堂   北ブルゴス、高原の風が育む、涼やかな果実の余韻 Prado Lobo(プラド・ロボ) 熟成とエレガンスの、最も純粋なかたちWinery: Pagos de Anguix  Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos ワインを「標高の高さ」で語るとき、私たちはつい数字だけを見てしまいがちです。しかし、1,000メートルといっても、それがアンダルシアの太陽の下と、ブルゴス北部の冷涼な高地とでは、意味合いがまったく異なります。 ここブルゴスの北、高原地帯「エル・パラモ」では、夏は短く、冬は長く厳しい冷え込みが続きます。そんな環境下では、葡萄の成熟はゆっくりと進み、果粒は小さく、皮は厚く育ちます。この自然の摂理こそが、色調の濃い赤紫、凝縮感のある香り、爽やかな酸、そしてしなやかな口当たりを兼ね備えた唯一無二のワインを生み出すのです。 「Pagos de Anguix – Prado Lobo」は、この厳しくも美しい環境で育ったティンタ・フィナ種を用い、フレンチオークで20か月間熟成。果実味を損なうことなく、香りには野性味あるブルーベリーやスミレ、ブラックベリー、そして微かなスパイスが顔をのぞかせます。口に含むと、骨格のある味わいの中にエレガントな滑らかさがあり、果実と標高、そして樽が見事に調和しています。 アビラの小さな町アレバロにある Asador Las Cubas (アサドール・ラス・クバス) おすすめのペアリングは、やはり本場カスティーリャの伝統に倣って、子羊のローストや仔山羊のグリル、あるいは赤身の牛肉。和牛のような旨味の強い肉とも相性がよく、それぞれの素材が持つ美味しさを引き立て合います。 サーブ温度は16℃、グラスはボルドー型の大ぶりなものがおすすめです。時間にゆとりがあれば、デキャンタージュすることでより一層その魅力が花開きます。 高地の冷気と、果実の息吹、そして人の手が織りなすこの1本。愛情とともに、どうぞゆったりとお楽しみください。 SALUD Y AMOR…..MUCHO AMORフアン・ムニョス –...

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      【バルセロナ】旅の途中に寄りたい名店 "ラ・タベルナ・デル・クリニック"

      スペインで常にランキングの一位に輝く人気都市バルセロナ。サグラダ・ファミリアやグエル公園など、ガウディ建築に代表される芸術的な見どころにあふれ、街歩きやバル巡り、サッカー観戦と、楽しみ方も多彩です。そんな魅力的な街で「おすすめのレストランは?」と聞かれたときに、自信を持って紹介したい一軒があります。それが「La Taverna del Clínic(ラ・タベルナ・デル・クリニック)」です。バルセロナ地下鉄・オスピタル・クリニック駅からすぐ、利便性の高いロケーションに佇むレストラン。駅前の喧騒を背に、一歩店内へと足を踏み入れれば、空気がふっと変わります。落ち着いた静寂とラグジュアリーな雰囲気が広がり、ワインや生ハム、チーズ、スピリッツなどが美しく陳列されたガラス張りのセラーが通路を彩ります。これから始まる食体験に、自然と胸が高鳴ります。 実はこのレストラン、Spanish Lifestyleのフアン先生が「バルセロナで本当におすすめしたい一軒」と太鼓判を押す、特別な存在なのです。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。 @juanmunozramos オーナーシェフのトニ・シモエス氏は、かつてフアン先生が教鞭を執っていたバルセロナのホスピタリティ専門学校で料理の基礎を学び、その後、スペイン料理界の巨匠・故サンティ・サンタマリア氏(三つ星レストランのシェフ)のもとで修業を重ねた実力派。ミシュランのビブグルマンやレプソルガイド(Guia Repsol )でも高く評価され、2014年には「カタルーニャ州最優秀若手料理人」にも選ばれています。 通路を抜けた先には、磨き上げられたキッチンが静かに広がっていました。2006年以降、トニ・シモエスシェフが二代目として、ご両親の営んでいたカウンターだけの小さなバルを、同じ場所で少しずつ進化させ、十数年かけて今のスタイルのレストランへと育ててきたのだそうです。 実は10年以上前に一度訪れたことがあるのですが、その頃はまさに“タベルナ(食堂)”といった雰囲気で、今のようなラグジュアリーで個室も備えた、ゆったりとした空間になるとは想像していませんでした。それだけに今回、フアン先生の強いおすすめで再訪し、その変貌ぶりに驚きと感動を覚えました。 「自分の理想のレストランにしたかったんです」と語るトニの目はまっすぐで、そのまなざしの先には、さらに進化し続ける未来のレストランの姿があるように感じられました。 最初に供されたのは、エストレマドゥーラ州産の上質なイベリコ・ベジョータの生ハムに、パン・コン・トマテ。このひと皿に、フアン先生は思わず「10点中10点!」と声をあげました。「ベジョータと呼ばれる最高級のイベリコ豚は、どんぐりをたっぷり食べて育つんです。そのおかげで、脂にはオリーブオイルと同じオレイン酸が豊富に含まれ、とろけるような食感と、独特の旨味が生まれます。そして実は、脂が溶ける融点も他の生ハムより低くて、22度ほど。だから室温でも自然に脂が溶けはじめて、香りも味わいも、より引き立つんですよ」と、フアン先生。 その言葉の通り、しっとりと艶を帯びた生ハムは、口に含むとやさしく溶け、芳醇な香りが広がりました。La Siberia Cava Gran Reserva Brut Nature : JUVE & CAMPSこのキュヴェをひと言で表すなら “絹のようなエレガンス”→→フアン先生のテイスティングノートはこちらからトニ・シモエスシェフ自ら運んできてくださったのは、この店を象徴するひと皿。伝統を現代的に昇華させた、新しいスタイルの「パタタス・ブラバス」です。ひと口かじると、なかからピリッと辛みの効いたブラバスソースがとろりとあふれ出します。10年前、初めていただいたときの、あの驚きと感動がふたたびよみがえりました。 旬の厳選素材を、極上のひと皿に 料理は、クラシックなフランス料理をベースにしつつ、現代的な感性と地元カタルーニャのエッセンスが融合した地中海料理。素材選びにも一切の妥協がなく、ご両親のルーツであるガリシア産の魚介をはじめ、高品質な食材を最大限に活かしたメニュー構成となっています。 この日は、トニ・シモエスシェフのお任せコースを体験しましたが、アラカルトでも十分にその実力を堪能できます。軽めのランチから、じっくりと味わいたいフルコースまで、ゲストの時間やスタイルに合わせて柔軟に対応してくれるのも魅力です。 こちらは、ふわりと軽いブリオッシュの上に、エビとキャビアが贅沢にあしらわれています。エビの上品な甘みとキャビアの塩味、それを受け止めるブリオッシュの香ばしさが見事に調和し、ひと口ごとに幸せが広がります。 圧巻のワインセレクションで、食体験に深みを ガラス張りのモダンなワインセラーの壁一面にずらりと並ぶのは、450種以上のワイン。圧巻の光景です。スペイン各地のD.O.(原産地呼称)を中心に、フランス、ドイツ、アルゼンチン、南アフリカなど、世界各国の銘醸ワインが揃っています。しかも、価格は通常のレストランよりも良心的。ワイン好きの間では、スペイン国外からもこのレストランに足を運ぶ価値があると評されるほどだとか。産地やヴィンテージはもちろん、料理とのペアリングに応じた一本を提案してもらえるのも魅力です。 【バルセロナ】旅の途中に立ち寄りたい、とっておきの一軒 バルセロナには魅力的なレストランが数多くありますが、観光名所で溢れるこの街では、「できるだけ多くを見て回りたいから、食事は手早く済ませたい」という旅行者の声も少なくありません。だからこそ、限られた時間の中でも、ひと皿からでも本格的な美食体験が叶う店の存在は貴重です。「La Taverna del Clínic」は、そんな旅の合間にさっと立ち寄って楽しむ一皿から、ワインペアリングを含むコースでじっくり味わう贅沢な時間まで、多彩な楽しみ方を提供してくれます。美食にこだわる地元の常連客はもちろん、遠方から訪れるグルメな旅行者たちにも愛される、特別なレストランです。ーーーーーーーーーーーーーーーLa Taverna del Clínic住所: Carrer del Rosselló, 155, Eixample, 08036 Barcelona@latavernadelclinic...

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      【ビルバオ美食ツアー】チャコリと薪火料理が刻む、心に残る一日

      「パリのついでに寄ったスペインに恋をした」それは、大学の卒業旅行で初めてスペインを訪れたときの、思いがけない本音でした。当時の私はフランスに夢中で、パリへの憧れを胸に旅に出ました。スペインは、あくまで“ついで”のはずだったのに─。豊かな食文化、深い歴史と自然、澄みわたる青空、そして、ほどよい距離感であたたかく迎えてくれる人々。 気づけば、スペインにすっかり心を奪われていたのです。 その後、バルセロナへの留学を経て、2011年に「スペインワインと食協会」を設立して以来、スペインワインと食の魅力を日本に伝えることをライフワークとして活動してきました。 2025年は103日間で12ヵ国・18の寄港地を巡る世界一周クルーズの航海中にある豪華客船「飛鳥Ⅱ」 だからこそ、このたび、飛鳥Ⅱ 世界一周クルーズの寄港地ビルバオで「美食×チャコリワイナリーツアー」のコーディネートと通訳ガイドをさせていただけたことは、私にとって大きな喜びでした。どれほど写真や映像を眺めても、現地での感動にはかないません。世界的にも美食の地として知られるスペイン・バスク地方の魅力を、五感で味わい、皆さまと分かち合う─。そんな体験を通して、数ある国々の中から「またスペインに戻ってきたい」と思っていただけたなら。そんな願いを込めて、ツアー当日を迎えました。 進化する美食都市、ビルバオ グッゲンハイム美術館 建築家フランク・ゲーリー スペイン北部、カンタブリア海に面した中都市ビルバオ。かつては鉄鋼業や造船で栄えた工業都市でしたが、1980年代の産業衰退を機に、大胆な都市再生に乗り出しました。その象徴が、1997年に開館したグッゲンハイム美術館です。建築家フランク・ゲーリーによる前衛的な建築は、世界中から観光客を惹きつけ、街のイメージを一新しました。以降、磯崎新氏による「イソザキ・アテア(磯崎ゲート)」など、現代建築が次々と誕生し、ビルバオはアートとクリエイティブの街へと生まれ変わりました。 ビルバオ旧市街にあるバル。バスク名物「ピンチョス」 同時に、美食の街としても進化を遂げています。2000年代以降はミシュラン星付きレストランが続々と登場し、今や世界のフーディーたちが注目する存在に。私自身、2005年から毎年のように美食を求めてサン・セバスティアンを訪れていましたが、ビルバオは素通りしていました。しかし近年、洗練された料理と進化したチャコリの魅力に加え、良心的な価格帯、過度に観光地化されていない落ち着いた雰囲気、そして国際空港を擁する利便性が相まって、ビルバオの人気はより高まっています。 ツアーのはじまりは、アルチャンダの丘から。眼下には、再生されたビルバオのモダンな街並みが広がります。現地ガイドのクリスティーナさんから、かつてこの街が重工業の煙に包まれていた時代の話をうかがい、「この丘に登って初めて深呼吸ができた」という言葉が心に残りました。「ビルバオ効果」と呼ばれる都市再生を象徴する景色とともに、この街が歩んできた歴史とその変貌がより鮮明に感じられた瞬間でした。 Gorka Izagirre(ゴルカ・イサギレ)ブドウ畑&チャコリワイナリーツアー 次に訪れたのは、D.O.チャコリ・デ・ビスカヤを代表するワイナリー、「Gorka Izagirre(ゴルカ・イサギレ)」です。現地では醸造家のホセ・ラモン氏にご案内いただき、ぶどう畑を歩きながら、チャコリ造りへの想いや、バスクの土地と文化に根ざした哲学をうかがいました。 チャコリに使われる代表的な品種は、白ぶどうのオンダラビ・スリ(Ondarrabi Zuri)ですが、このワイナリーではもう一つの稀少品種、黒ぶどうのオンダラビ・ベルツァ(Ondarrabi Beltza)にも力を入れています。「ベルツァ」はバスク語で「黒」を意味し、酸が強く、ロゼや赤ワインに個性的な風味を加えてくれます。この品種はかつて絶滅の危機にありましたが、ゴルカ・イサギレではバスク政府と協力し、クローンや接ぎ木によって畑への復活を実現しました。 バスク地方の希少黒ブドウ品種オンダラビ・ベルツァを、元からあったオンダラビ・スリの台木にメキシコ人職人が接ぎ木した畑について、ユーモアを交え説明する醸造家ホセ・ラモン氏と通訳の筆者 ワイナリーに併設されたレストラン「アスルメンディ」は、シェフのエネコ・アチャ氏が手がける名店で、2012年からミシュラン三ツ星を獲得しています。東京に「エネコ東京」があるのは知っていましたが、お客様から「エネコシェフのレストランは、軽井沢にもあるんですよ」と教えていただきました。世界各地に展開するシェフのレストランでは、ゴルカ・イサギレのチャコリが提供されています。 なお、エネコシェフはワイナリー創業者であるベルトル・イサギレ氏の従兄弟にあたるそうです。バスクという土地と家族のつながりが、料理とワインを通して自然に表現されていることが印象的でした。 テイスティングでは、4種類のチャコリを、バスクの定番ピンチョスであるヒルダ(オリーブやピクルスの串刺し)、ハモン・イベリコ、イディアサバルチーズとともにいただきました。チャコリは今やバスクの郷土色を越え、美食とともに世界へ羽ばたいている─そんなことを実感したひとときでした。 大自然の中で味わう、前田哲郎シェフの薪火料理:Txispa(チスパ) ワイナリーの後に向かったのは、人口わずか200人の小さな村アシュペ。ここにあるミシュラン一つ星レストラン「Txispa(チスパ)」は、バスクの伝統家屋「カセリオ」を改装し、2023年5月に開業したばかりながら、すでに世界の美食家たちの注目を集めています。 オーナーシェフは、薪火料理の名店「アサドール・エチェバリ※」で10年にわたりスーシェフを務めた、前田哲郎氏。地元の食材を生かした料理と火入れの妙技で、開業からわずか半年足らずでミシュランの星を獲得した実力派です。 ※「世界のベストレストラン50」2024年版で、アサドール・エチェバリはバルセロナのディスフルタールに次ぐ第2位に選出。 当日は快晴に恵まれ、どんぐりの木陰でアペリティフからスタート。眼前には雄大な岩山、足元には自家菜園が広がり、グラスにはカタルーニャの名門「レカレド」によるコルピナットの泡が美しく立ち上ります。緑の自然に囲まれ、澄んだ空気のなかで、ゲストの皆さまの表情にも至福の笑みがこぼれていました。 続いて、築400年を超える石造りのカセリオへ。高い天井と開放感のある空間の奥には薪火の香るオープンキッチン。前田シェフが笑顔で迎えててくださり、料理が生まれる瞬間を、間近で体験できるひとときが始まりました。 フィンガーフードを手に、薪火の音や香りを感じながら、素材の持つ力強さに触れるひととき。キッチンには、心地よい緊張感と食欲をかき立てる匂いと音が満ちていました。 前田シェフの料理の核となるのは、火入れの技術です。薪火は炭火よりも温度が低いため、じっくりと食材に火を通すことができ、素材の水分を逃さずに旨味を閉じ込めることができるのだそう。なるほど、その丁寧な技術が一皿一皿にしっかりと生きていました。 料理のテーマは、日本の食文化のルーツとバスクの地元食材の融合。その日、庭で採れたばかりの新鮮な野菜が主役となり、バスクの山と海の恵みに、日本料理の繊細さが見事に調和していました。 ワインペアリングは、アペリティフのコルピナットに続き、「イチャスメンディ」のチャコリ(マグナムボトル)。地産地消の食材と和のニュアンスが光るお料理との相性も抜群でした。 初夏のこの時期しか食べられない「なみだ豆」は、畑のキャビアと言われる。プチプチとした初めての食感に、食通の皆さまからも驚きの声が 赤ワインは、リオハ「ボデガス・ベンジャミン・ド・ロートシルト」と「ベガ・シシリア」の共同プロジェクト「Macán(マカン)」2019。芳醇な果実味が豊かに広がり、なめらかなタンニンが優しく溶け込む、リオハの真髄を体現した一本。 締めくくりは、アストゥリアス州の「Valverán 20 Manzanas(バルベラン 20 マンサナス)」。20個のリンゴからたった1本しか造られないという贅沢なアイスシードルで、とろけるような甘さと豊かな酸が調和し、なんともしあわせな気持ちにしてくれました。 最後に 港へ向かう道すがら、ゲストの皆さまと一日の余韻を分かち合い、この体験が「またスペインに来たい」と思っていただけるきっかけとなればと願いました。このたびは、ご参加いただいた飛鳥IIのクルーズの皆さま、そして特別なツアーを採用・ご支援くださった郵船クルーズの担当者の方々に、心より感謝申し上げます。感謝の気持ちを込めてレポートにまとめさせていただきました。 今後もスペインワインと食協会では、現地ならではの食体験や、造り手の想いに触れる特別なワイナリーツアーを通して、そして連載中の Spanish Lifestyle では、インタビューや記事を通じて、スペインワインと食の情報をお届けしてまいります。皆さまにとって、スペインを訪れるきっかけとなれば、これ以上の喜びはありません。 ーーーーーーーーーーーーーーー飛鳥クルーズ(飛鳥Ⅱ・飛鳥Ⅲ) 公式 Bodega Gorka...

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      スペインの食卓を変えたシェフ、カルロス・アルギニャーノが挑んだ究極のチャコリ造り「K5」

      スペインで“知らない人はいない”と言われる国民的スターシェフ、カルロス・アルギニャーノ氏。36年以上にわたりテレビ番組でジョークを交えながら健康的な家庭料理を紹介し、多くの家庭の食卓を明るくしてきた、まさに「主婦の味方」のような存在です。私もレシピ本を愛読する大ファンのひとり。そんなアルギニャーノ氏に今回、独占インタビューが叶いました。機会をつくってくださったのは、この連載「Spanish Lifestyle」を共に執筆しているマスターソムリエ、フアン・ムニョス先生。感謝の気持ちでいっぱいです。 545 recetas para triunfar Karlos Arguiñano著スペインやラテンアメリカでのテレビで最も親しまれ、愛されているベテランシェフ、カルロス・アルギニャーノ氏による実用レシピ集。誰でも手に入る食材で、家庭でも手軽に美味しく作れる545のレシピを収録。 ビルバオでレンタカーを借り、向かったのはアルギニャーノ氏が手がけるチャコリのワイナリー「Bodega K5(K5ワイナリー)」。スペイン北部、フランス国境に近いバスク地方のサラウツ近郊の丘陵地にあります。プロジェクトは2005年、「バスクの地で最高のワインを造りたい」と願うアルギニャーノ氏と4人の仲間によって始まりました。 K5ワイナリーのあるアイア村の年間降水量は1000-1500mm サン・セバスティアン方面へ向かい、高速道路をおよそ1時間走ると、車窓には一面の深い緑が広がっています。バスク地方は“グリーン・スペイン”とも呼ばれるほど雨が多く、豊かな自然に恵まれた地域です。 高速道路を降りてバスクの小さな村 Aia(アイア)へと続く山道に入ると、道の両脇には放牧された牛たちがのんびりと草を食む姿が見られ、地中海沿岸とはまったく異なる風景が広がっていました。険しく曲がりくねった坂道に「本当にこの先で合っているのか」と不安になりながらも、「K5ワイナリー」と書かれた小さな看板を頼りに進んでいくと、やがてブドウ畑に囲まれたモダンな醸造所が静かに姿を現しました。 自然と調和するワイナリーは、2010年に完成。設計はカタルーニャの著名な建築家、Alonso & Balaguerによるもの。ワイナリーを案内してくれたのは、アルギニャーノ氏の末娘アマイアさん。「K5ワイナリー」で働く彼女の兄たちは、サラウツの海沿いにある父のホテル・レストランHotel-restaurante de Karlos Arguiñanoでシェフとして活躍しています。 15ヘクタールの自社畑が、シャトースタイルでワイナリーを取り囲むように広がっている。 標高約300m、チョルア山の南向き斜面に広がる15ヘクタールの畑では、バスク固有の白ブドウ品種オンダラビ・スリが栽培されています。ブナやナラの森に囲まれ、ビスケー湾から吹き込む大西洋の冷たい湿った風を受けながら、1株あたり2.5〜3.5kgに収量を抑え、丁寧に育てられていました。 アルギニャーノシェフの末娘のアマイアさん。畑は水はけの良い粘板岩土壌。 粘板岩や石灰岩を含む土壌が、ミネラル感と凝縮感を兼ね備えた高品質なブドウを育みます。設立以来、「K5ワイナリー」のワインは、その洗練された味わいで高く評価されてきました。醸造を手がけるのは、著名な醸造家ローレン・ロシーリョ氏。伝統と革新を融合させ、長期熟成にも耐える、エレガントで美食に寄り添う新たなスタイルのチャコリを完成させています。 カルロス・アルギニャーノシェフ、独占インタビュー 左からアマイアさん、アルギニャーノシェフ、シェフの最新レシピ本と筆者。 【原田(筆者)】アルギニャーノシェフは、いつもテレビで明るくエネルギッシュな姿を見せてくださって、見ているこちらまで元気をもらえます。その元気の源は、いったい何なのでしょうか? 【アルギニャーノ】実は特別な秘訣なんてないんですよ。私はもともとこういう性格なんです。自分の仕事が大好きですし、料理を教えたり、アイデアを紹介したりするのが楽しいんです。それに、番組でも遊び心や楽しさを大事にしています。そうした要素をすべて番組に持ち込んでいるので、自然と良い結果につながっているのだと思います。 【原田】テレビでこれまでに1万を超えるレシピを紹介されてきたとのことですが、どのようにしてアイデアを枯らさずに、常に新しいレシピを生み出していらっしゃるのでしょうか? 【アルギニャーノ】実はですね、何度か同じレシピを紹介することもあるんです。なぜなら、それが料理の基本を身につけるためにとても大切だと考えているからです。そのうえで、食材や調理法の組み合わせを変えていけば、新しいレシピはいくらでも生まれるんですよ。 【原田】現在スペインでも社会問題になっている子どもの肥満について、どのような対策が必要だとお考えでしょうか? 【アルギニャーノ】この問題には、家庭と学校の両面から取り組む必要があると思います。まず、子どもの食生活について責任を持つのは親ですから、家庭ではバランスの取れた多様な食事を用意することが大切です。そして教育現場でも、子どもたちに基本的な栄養の知識を教えると同時に、料理の授業などを取り入れれば、楽しく学べるのではないでしょうか。 【原田】バスク地方にとって、そしてアルギニャーノシェフご自身にとって、チャコリとはどういう存在でしょうか? この日試飲したチャコリ。右から2本目の「KAIAREN」は2016年ヴィンテージ。4年間瓶内でじっくり熟成され、深みと複雑さが増した特別な一本※下記に、フアン先生による詳しいテイスティングコメントを掲載しています。 【アルギニャーノ】チャコリは私たちの文化に深く根づいた飲み物です。昔はバスクの農家で自家消費用に手づくりされていました。私自身もチャコリが好きですが、以前から「もう少し酸味が穏やかで丸みのあるチャコリがあってもいいのでは」と感じていたんです。そんな話を友人たちとしていたときに、半分冗談のようなノリで「それなら自分たちで作ってみようか」と盛り上がりまして。土地を購入し、整備してブドウを植え、収穫して、ついに自分たちのチャコリを作ることになったんです。 最初は「K5」から始め、現在は「Kpilota」「Kaiaren」「K5 Vendimia Tardía」「Kilima」と、5種類のチャコリを手がけています。私たちの取り組みをとても誇りに思っています。 【原田】ある予測によると、2040年にはスペインが世界で最も長寿の国になるとも言われています。アルギニャーノシェフのレシピは「おいしくて健康的」だと評判ですが、バスクの食文化が人々の健康や長寿にどのように貢献していると思われますか? 【アルギニャーノ】私はいつも「健康的な食事には多様性が大切」と言っています。食卓にいろいろな色が並んでいるほどいいですね。そして、脂肪分や塩分、糖分の摂りすぎには注意することです。 【原田】近年、スペイン料理は「The World's 50 Best Restaurants」などでも高く評価されていますが、それでもイタリア料理やフランス料理ほど海外のホテルやレストランでは見かけません。これはなぜだと思われますか? 【アルギニャーノ】イタリア料理もフランス料理も、本当に素晴らしいものですし、それぞれが上手に世界へ発信してきた結果だと思います。ただ、スペイン料理もきっとこれからです。焦らず、着実に前に進んでいきましょう。 【原田】最近では、スペインの家庭でも調理済み食品が増えているようですが、今後の家庭料理の未来についてはどのようにご覧になっていますか? 【アルギニャーノ】確かに、スーパーなどでは出来合いの食品が増えています。でも、私は楽観的です。料理は楽しいですし、自分で作ることで健康的な食生活も保てます。私はこれからも、家庭で料理をすることの楽しさを伝え続けていきたいですね。 バカラオ・アル・ピル・ピル。バスク地方の伝統料理で、干しタラをオリーブオイルでじっくり煮込んだ一品。写真は、ワイナリーから車で約15分の海辺にある、カルロス・アルギニャーノが手がけるホテル・レストランの一皿。 【原田】最後に、日本やアジアでスペイン料理、そしてチャコリをはじめとするスペインワインの魅力をより広く伝えていくためには、どのような取り組みが効果的だとお考えでしょうか? 【アルギニャーノ】やはり、両国が協力して、料理とワインを一体で紹介・プロモーションしていくことが鍵になると思います。食とワインは切っても切れない関係ですから、一緒に楽しんでもらうことで、それぞれの魅力がより深く、自然に伝わります。そうした取り組みこそが、スペインの味をより多くの人に届ける一番の近道ではないでしょうか。【原田】...

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      チャコリ 進化し続けるワイン

      ボデガ・チャコリ・レサバルのオーナーご夫妻とチャコリで乾杯。 【文】フアン・ムニョス【訳・写真】原田郁美  今回のSpanish Lifestyleでは、これからの季節にぴったりな爽やかなワイン「チャコリ」にフォーカス。バスク地方のビルバオとサン・セバスティアンを訪れるにあたり、スペインのマスターソムリエ、フアン先生がチャコリの魅力と進化について特別レクチャーをしてくださいました。 Juan Muñoz フアン・ムニョスMaster Sommelier ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。@juanmunozramos バスク地方(エウスカディ)を訪れるのはいつでも喜びに満ちた体験ですが、そこに“ワイン”という目的が加われば、その喜びは何倍にも膨らみます。ぶどう畑と森、古い石造りの農家(カセリオ)が点在する丘陵地帯が、青く荒々しい海に向かって傾斜しながら続いている—そんな風景に出会った瞬間、自分が絵葉書の中に入り込んでしまったかのような感覚に陥ります。そして、グラスを手にワインを味わうとき、もしも固定観念を捨てて心を開いて向き合えば、そこにはガス入りの軽い白ワインというイメージを超えた、偉大な白ワインの世界が広がっているのです。チャコリは、かつてバルでヒルダやピンチョスに合わせてグラスの中で弾けるように飲まれていた“酸っぱいフレッシュなワイン”から、個性・風土・品質を兼ね備えた、真に優れた白ワインとして高く評価されるようになってきました。熟成によって超熟タイプも増え、ワイン愛好家たちの注目を集めています。 特別な注ぎ方「エスカンシア」ワインを高いところからグラスに注ぐことで、高い酸をまろやかにする。 もちろん、若々しく軽快なスタイルのチャコリも大切な存在です。アペリティフとして親しまれるバルのチャコリに反対しているわけではありません。むしろ、多様なスタイルが共存しながら、チャコリ全体の世界が豊かになっているのです。シュール・リー熟成、長期瓶内熟成、樽醗酵・樽熟成、遅摘みぶどう(VT – ベンディミア・タルディア )による甘美な酸味のあるタイプ、さらにはスパークリングまで、今やチャコリの進化はとどまるところを知りません。 「気候・ぶどう・土壌・人」—この四位一体の要素が見事に調和した結果、チャコリは国内外で高く評価される白ワインとなったのです。 チャコリの産地とぶどう畑 カンタブリア海を見下ろす、ボデガ・チャコリ・レサバルのブドウ畑。 バスク地方のワインの独自性は、その自然環境に深く根ざしています。海に近い丘陵地で、ぶどうの栽培には千年以上の歴史があります。土壌は水はけの良いシリカ質(ケイ酸質)、粘板岩質、ゆるい砂質で、500メートル以上の高地に80年を超える古木が残る区画もあり、斜面の傾斜が30%を超える場所での栽培も珍しくありません。テラス状に広がる畑や点在する小さな区画は、この地の地形の複雑さを物語っています。 チャコリの語源のひとつは「Etxeko egin(家で造った)」——つまり「自家消費のために造るワイン」。1975年に出版された『スペインのぶどう畑』という書物でも「売るためではなく、自分たちの喜びのために造られるワイン」として記されています。 チャコリの歴史 美食の街サンセバスティアンから西へ20kmに位置する漁村ゲタリアのワイナリー チョミンエチャニス。 バスク大学のウベルト・アスティビア教授によれば、“チャコリ(Chacolí(スペイン語)/Txakoli(バスク語))”とはバスクのみならず、フランスのイルレギ(Irouléguy)やカンタブリア東部(現在のIGPコスタ・デ・カンタブリア)などにもかつて広く使われていた名称で、気候的にもワインスタイル的にも連続性があります。 ナバーラ州のパンプローナ盆地には「チャコリンゴリ(Txacolingorri)」という呼び名があり、さらにミランダ・デ・エブロやブルゴス県のメナ渓谷(チャコリ・デル・バジェ・デ・メナ)まで広がっていました。これら後者の地域はより地中海気候に属するため、よりカスティーリャ的な気候に適したガルナッチャやテンプラニーリョといったブドウ品種が用いられていました。こうして、川や盆地に沿って大西洋気候が内陸へと入り込んでいたのです。 これは誰かを否定する意図ではまったくなく、むしろ「チャコリ」は、大西洋に面したブドウ畑や川がカンタブリア海〜大西洋へと注ぐような地域で、「大西洋的なワイン」として理解されやすい、ということを示しているのです。もちろん、それぞれの土地の土壌・気候・品種・人の手が異なるため、スタイルも実に多様です。1877年の『マドリード・ワイン博覧会記録』には、ビスカヤにおいてフランス系の白ぶどうが主要品種であり、新しい植栽のほとんどを占めていたことが記されています。赤ワイン用品種としては、バルトルメサ、グラシアナ、プリエタ、セーニャ、ベルデハなどが挙げられ、アルビージャス(Albillas)は主に食用とされていました。同書によれば、当時のギプスコアではぶどう栽培の規模が非常に小さく、ほとんど熟さない質の低いぶどうしかなかったとも記されています。 チャコリの伝統と現代 チョミンエチャニス。フレンチオークで14ヶ月ほど樽熟成したチャコリ。 昔のチャコリは、10月中旬(ピラール祭の頃)に収穫され、古い木樽(クペラやボコイ)で発酵されました。沈殿した澱が自然に落ち着き、ワインが澄んできたところで濾過せず瓶詰めされ、瓶内でマロラクティック発酵や二次発酵を起こすこともあり、自然な微発泡をともなっていました。これがチャコリの“ガス感”の起源であり、酪農とともにあったこの地の生活文化を反映しています。 現代のチャコリは、大西洋の冷涼な風土と鮮烈な酸を活かしたスタイルで、日々進化を遂げています。収量を厳しく制限し、区画ごとのブドウを選別、シュール・リーや樽熟成、フードルやアンフォラ、セメントタンク、さらにはフロール(産膜酵母)下での熟成など、多彩な醸造法が取り入れられています。スパークリングや甘口などのスタイルも登場し、まさに品質と多様性を兼ね備えたワインへと進化を遂げています。また、チャコリは海を越え、バスク系移民によってチリでも歴史的に造られており、近年再評価が進んでいます。 3つのDOと多様性 D.O. Getariako Txakolina(D.O.チャコリ・デ・ゲタリア)D.O. Bizkaiko Txakolina(D.O.チャコリ・デ・ビスカヤ)D.O. Arabako Txakolina(D.O.チャコリ・デ・アラバ) 3つある原産地呼称(DO)の中でも、ゲタリアのチャコリは“最も純粋なチャコリ”として知られています。一方で、ビスカヤやアラバのDOは、それぞれに新しい個性を打ち出し、スタイルの幅を広げています。内陸部にあるオラベリア村のベンゴエチェなどは、降水量が少なく、ナバーラからの冷たい夜風が入りやすいなど、ユニークな気候条件を持っています。 ビスカヤの代表的な産地は、海沿いのバキオや内陸のバルマセダ。イチャスメンディなどの造り手は、レイオアやエランディオといった沿岸地域から、モルガやドゥランゴの高地にかけて、約1ヶ月も収穫時期に差が出るという繊細なマイクロクライメイトを丁寧に活かしています。 ギプスコアでは、伝統的にシドラ(りんご酒)とチャコリが共存し、地元の風土や文化を象徴してきました。 バスクではシドラ(シードル)とワインが共存し、いずれも民俗文化の一部として発展してきました。低アルコール(9.5~10度)のブドウを10月に収穫し、古樽で発酵。ワインが自然に澄んでから瓶詰めされるため、瓶内には澱が残ることもありました。このような素朴で自然な造りが、バスクの風土とともに今も大切にされています。 かつてのチャコリは、発酵を終えたばかり、あるいは瓶内でマロラクティック発酵を行っており、特有の発泡感(炭酸ガス)を伴っていました。そしてこの発泡が強ければ強いほど人気があり、高値で取引されていたのです。つまり、伝統的なチャコリは、炭酸を持ち、できるだけ早く(その年内に)飲まれるワインだったのです。。しかし現在、その状況は大きく変わりました。チャコリは高品質な白ワインの選択肢としての地位を確立し、多彩なスタイルが生まれています。 中でも注目すべきはチャコリのスパークリングワインです。その代表が《イサル・レク(Izar-Leku)》。この地域において、低アルコールで高い酸を備える土地の特性が、スパークリングワインに理想的な条件となっています。 また、樽を使用したチャコリも見逃せません。発酵や熟成に大樽を用いた伝統的なスタイルは、クリーミーな質感と生き生きとした酸、そして際立つバランスによって、熟成によるポテンシャルを感じさせてくれます。特に小樽よりも大樽で仕上げたものは、木樽の主張が控えめで、ワインの本質がより豊かに表現されます。 甘口チャコリ(遅摘み)もまた魅力的な存在です。糖と酸のバランスは、若いうちも熟成後も人を惹きつける魅力を持ち、デザートやブルーチーズとの相性も抜群です。 さらに、驚くべきは赤のチャコリ。特に伝統品種《オンダリビ・ベルツァ(Hondarribi Beltza)》を用いたものは、初めはやや酸やタンニンが際立つものの、それこそがこのワインの個性であり、青魚との相性は格別です。近年では《ロサード(オホ・デ・ペルディス)》タイプも登場し、タパスやピンチョスに最適、あるいは夕陽を眺めながらゆっくりと一杯楽しむのにもぴったりなスタイルとして人気を集めています。...

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      【世界が注目】火山島ワイン、テネリフェ「ビニャティゴ」来日セミナー「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」

      4月23日(水)、東京・北参道のワインショップ「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」にて、スペイン・カナリア諸島テネリフェ島を代表するワイナリー「ビニャティゴ」のオーナーファミリーを迎えた特別テイスティングセミナーが開催されました。 左から醸造家マリア・エレナ・バティスタ・エレラ氏、ビニャティゴ創設者であり科学者、醸造家のフアン・ヘスス・メンデス・シベリオ氏(父)、ブドウ栽培家で特選区画シリーズ醸造家ホルヘ・メンデス・ディアス氏(息子) 「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」は、国内外に42店舗※の洗練されたレストランを展開する株式会社HUGEが手がけるワインショップで、そのラインナップは“日常を上質に彩る”というコンセプトのもと、世界各国から厳選された銘醸ワインが取り揃えられています。本イベントには、告知と同時に多数のお申し込みが寄せられ、早々に満席となりました。急遽、17時からの第一部と19時からの第二部の二部制に拡大され、両回ともキャンセル待ちが出るほどの盛況となりました。 (※合計42店舗 国内レストラン:39店舗、海外(ハワイ)レストラン:1店舗、国内物販店舗:2店舗)   テイスティングセミナー第一部の様子。「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」では、人気レストランのワインリスト作成の経験を活かし、「日常を上質に彩るワイン」をコンセプトに、世界中から厳選されたこだわりのワインが並びます。   セミナーには、ビニャティゴのオーナーファミリー3名が登壇しました。創業者であるフアン・ヘスス・メンデス氏は、1990年にワイナリーを設立し、カナリア諸島に固有の土着品種の復興と保存に長年取り組んできた人物です。 妻のマリア・エレナ氏は工業化学の博士号を持ち、マドリード工科大学にてブドウ栽培・醸造学の修士号を取得。1998年よりビニャティゴに参画し、品質管理、製造プロセス、研究開発(R&D)を担当。2025年のENOMAQコンクールでは、世界の醸造家の中から選ばれる「ベスト醸造家賞(Premio Enólogo)」を受賞しました。 息子のホルヘ氏は、ラ・ラグーナ大学で農業および農村環境工学を専攻し、マドリード工科大学にてブドウ栽培・醸造学の修士号を取得。世界各地の銘醸地で経験を積み、現在は父のプロジェクトを継ぐ2代目にして、メンデス家5代目。2024年にはバスク・クリナリー・センターによる「ガストロノミー界の若き才能100人」に選出され、国際的なワインカンファレンスでも登壇し、国内外で注目を集めています。 偉大な父フアン・ヘスス氏(右)を尊敬し、嬉しそうに肩を組む息子ホルヘ氏(左)。テネリフェ島には、富士山とほぼ同じ標高のテイデ火山が(標高3,718m、スペイン最高峰の活火山)そびえ立ち、ワイン造りにも多大な恩恵をもたらしています。 テネリフェ島は、スペイン本土・マドリードから飛行機で約3時間、アフリカ大陸北西沖、モロッコの西方約300キロメートルに位置します。島の北部に広がるビニャティゴのブドウ畑は、火山性土壌と大西洋から吹き込む湿潤な貿易風の影響を受ける、きわめて特異なテロワールを形成しています。ビニャティゴのワインは、カナリア諸島の土着品種とこの土地固有の個性を最大限に引き出すことを目指して造られており、世界的にも高い評価を得ています。 後半のテイスティングでは、ビニャティコ゚の代表的なワイン4種類のテイスティングが行われ、豊かな個性を湛えた味わいを通じて、テネリフェ島の魅力を存分に感じられるひとときとなりました。 株式会社HUGEのコーポレートソムリエとして、約40店舗のワインリストを作成。LE BISTRO(北参道)のリストは、Star Wine List of the Year 2025でシルバーを獲得。さらに2024年フランス農事功労章を受章された石田博ソムリエ。 テイスティングコメントは、HUGEグループのコーポレートソムリエであり、第10回世界最優秀ソムリエコンクール第3位をはじめ、数々の国際コンクールでの受賞歴を誇る石田博氏。石田ソムリエは昨年テネリフェ島を実際に訪れ、ビニャティコ゚の畑に立ち、そのワイン造りの現場を肌で感じられたご縁から、今回のセミナーが実現しました。ご自身の体験に基づいた言葉には説得力があり、参加者の皆さまも大きくうなずきながら耳を傾けていらっしゃいました。「テネリフェ島は遠いけれど、まるで楽園のような場所。荒波にもまれて身の引き締まった地魚もとても美味しく、風光明媚。正直、帰りたくないと思ったほどです」と話し、ワインの魅力についても丁寧に語ってくださいました。 テイスティングでは、以下のワインが紹介されました。 ■ Viñátigo リスタン・ブランコ今人気の土着品種の個性を持つ。ニュートラルだけど、ミネラル、質が高い、繊細さ上品さが感じられる白ワイン。■ Viñátigo アッサンブラージュブレンドしたほうが明らかにテロワールの個性が出る。スモーキーさ、スパイシーさ、品種の味わいとエネルギーを感じさせる。ここちがよく余韻が長い。 ■ Viñátigo マイペ・デ・タガナナ石田ソムリエが30年以上ブドウ畑を周られてきて、経験したことがないほど驚いたのが「マイペ」というブドウ畑。落石で潰されても、そこから力強く這い上がってきた自根のブドウから生まれた一本。石の下に潰されてもそこから這い上がってきたエネルギーと、力強さ、生命力が詰まった唯一無二の白ワイン。品種はリスタン・ブランコ。【関連記事】カナリア諸島・テネリフェ島 唯一無二の畑─マイペ・デ・タガナナ ■ ネグラモールネッビオーロや熟成ピノ・ノワールを想起させる、スパイシーでグリップ感のある味わい。ジューシーさも感じさせる秀逸な赤ワイン。 石田ソムリエは、「実感されたと思いますが、こちらの4本は、味わい、つくりが素晴らしくよくて、どのワインも個性があり、行き過ぎたところもない」と、そのバランスの良さを高く評価されていました。 料理との相性については、「スペインだからシャルキュトリは有名ですが、野菜や、魚介、素揚げした地魚などにも合います。島、海、楽園をイメージするなら、とても良いラインナップではないでしょうか」と、現地を訪れたからこそのペアリングを提案してくださいました。 また、造り手である親子について「ワイナリーで、こんなに仲の良い親子(父と息子)はなかなかいないですよ」と話されると、会場はあたたかな笑顔に包まれました。 テイスティングセミナー終了後、ワインの購入もできる「LA GALERIE(ラ ギャルリィ)」は、一体感と高揚感に包まれ、「いつかテネリフェ島を訪れてみたい」という声があちこちから聞かれました。 ビニャティゴ輸入元である株式会社サラ・コーポレーション代表・内海紗良さんが通訳を担当。造り手の言葉と情熱が、ダイレクトに皆さまへと届けられる貴重な機会となりました。 ビニャティゴファミリーを囲む、株式会社HUGEのスパニッシュ、La Pesquera MARISQUERIAの高野店長(右)と、「ビニャティゴのリスタンブランコのファンでレストランでも沢山ご紹介しています」、と語るラジュさん(左)...

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      地中海ワインの未来を語る国際シンポジウム、カタルーニャで初開催【レポート】

      3月24日、スペイン北東部のワイナリー・Perelada(ペララダ)で「第1回 地中海ワイン・シンポジウム」が開催されました。会場にはマスター・オブ・ワインやトップソムリエ、ジャーナリストなど、世界中から200名を超えるワイン関係者が集結。地中海沿岸の20のワイナリーが参加し、試飲や講演を通じて、地中海が気候・文化・食・ワイン・観光が融合するユニークなワイン産地であることを発信しました。 修道院跡「カルメル会教会」で幕を開けた本会では、「共有する遺産を守る」という理念のもと、「地中海のワイン文化」「伝統と革新」「気候変動とアルコール規制」といった現代的テーマを軸に、地中海地域が共有する課題と可能性について活発な議論が展開。実行委員長のフアンチョ・アセンホ氏のもと、地中海ワインの魅力と将来への展望を多角的に掘り下げた意義深い一日となりました。 歴史・気候・風土から紐解く 地中海ワインの本質  ジョセップ・ロカ氏、地中海ワインの本質を語る — シンポジウム開幕講演 カタルーニャ州ジローナの三つ星レストランで、世界のベストレストラン50で二度一位に輝き殿堂入りした名店『エル・セレール・デ・カン・ロカ』のソムリエであり共同経営者でもあるジョセップ・ロカ氏が、今年のシンポジウムで開幕講演を務めました。近年注目が高まる「低アルコールワイン」や「ノンアルコールワイン」について触れつつ、ロカ氏はあらためて“本物”の地中海ワインの価値を強調しました。 「アルコールもまた、ワインの伝統の一部です」と語るロカ氏は、健康志向の高まりがワイン文化の本質を見失わせかねないと警鐘を鳴らします。土壌や風土が映し出されたワインこそが地中海の精神を体現しているとし、「“健康ブーム”という名の思考停止が、ワインの本質を奪ってしまう」と訴えました。 ノンアルコールワインに関しても、「人工的にアルコールを除去したものより、私はむしろ、ブドウ本来の味わいが息づくモスト(葡萄果汁)を選びたい」と語った言葉が印象的でした。 革新的な料理やワインペアリング、ホスピタリティで世界の注目を集め続けるジョセップ・ロカ氏ですが、その根底にあるのは、カタルーニャの風土と地中海文化への揺るぎない敬意です。「革新とは、伝統の延長線上にあるもの」と語り、地中海ワインに宿る“太陽の恵みと力強さ”を守ることの大切さを静かに、しかし力強く伝えていました。 「軽やかな白ワインも素晴らしいですが、それだけでは地中海の個性は語れません」と語るロカ氏。豊潤で存在感のあるワインの魅力を見直し、地中海ワインの多様性と本質に、あらためて目を向ける必要があると呼びかけました。【関連記事】三つ星レストランが拓く、ジローナの美食革命 El Celler de Can Roca完全予約制で実施された人気テイスティング。Celler Pereladaのデルフィ・サナウハ氏が、「気候・テロワール・品種・地域性・人間性」という5つの価値観を、5種のワイン、5品種、5ヴィンテージで表現しました。 気候変動がもたらす、地中海ワインの岐路 モハメド5世大学(モロッコ)の教授であり、国際的な気候研究の第一人者であるマリア・スヌーシ氏 地中海ワインの未来について、スヌーシ氏は決して楽観的ではありません。「このまま温室効果ガスの排出が続けば、2100年には地球の平均気温が現在より4〜6℃も上昇し、ブドウ畑は今の場所では育たなくなり、約1,000kmも北へ移動せざるを得なくなるかもしれません」と警鐘を鳴らします。そうなれば、今のような地中海のブドウ畑は将来姿を消してしまう可能性もある―氏はそんな危機感を強く訴えました。 近年続く干ばつも、その兆しのひとつにすぎません。「今後は極端な気象現象がますます増えていくでしょう」と語り、豪雨や雹、さらには異常な降雪など、これまで想像もできなかったような天候が地中海沿岸のブドウ畑を襲う可能性があると指摘しました。フランス国立農業・食品・環境研究所(INRAE)の研究技師で、気候変動とブドウ栽培の適応研究を牽引するナタリー・オラ氏 「手を打つなら、いまです」。オラ氏は、気候変動がもたらす地中海ワインへの影響に対して、今こそ行動が必要だと訴えかけます。気候への適応や生物多様性の維持、新たな栽培地の開発、サステナブルな醸造技術、そしてテロワールの保護——これらはすべて、未来の地中海ワインを守るための重要な柱であると強調します。 「構造的な変革を起こすには、もうあまり時間が残されていません。まだ間に合うけれど、その扉は急速に閉じつつあるのです」。科学的なデータに裏打ちされたその言葉は、決して大げさではありません。地中海という豊かな土地で育まれてきたワイン文化を次の世代へと受け継ぐために生産者だけでなく、私たち消費者もまた、その未来に責任を持ち、行動を起こす時が来ています。 地中海を表現するワイナリー20社がペララダに集結 会場中央のショールームは、主催ワイナリーであるペララダ(スペイン)を中心に、注目の造り手たちが集結しました。スペインからは、4キロス、カサ・グラン・デ・シウラナ、グティエレス・デ・ラ・ベガ、ビクトリア・オルドニェス。
イタリアからは、マッセリア・リ・ヴェリ、ペトラ、プラネタ、サン・サルヴァトーレ1988。ギリシャからは、アルテミス・カラモレゴス、リララキス、ミクラ・ティラ、トルピス・ワイナリー。フランスからは、シャトー・デュ・ピバルノンとマ・ザミエル。
そしてその他にも、ドメーヌ・ヴィコント・ド・ヌー・マリニック(スロベニア)、シャトー・ムサール(レバノン)、シャトー・ロスラン(モロッコ)、コルヴス(トルコ)、ヴーニ・パナイア(キプロス)、ズラタン・オトク(クロアチア)と、各国を代表する生産者が参加しました。 次回はトスカーナで開催予定 初開催ながら、地中海ワインの現在と未来を語る場として確固たる地位を築いた本シンポジウム。閉会式では、ペララダのボルハ・スケ氏が、第2回開催地としてイタリア・トスカーナの名門ペトラ社を発表し、MWのアンドレア・ロナルディ氏に開催のバトンを託しました。   フアン先生オススメのワイン AIRES DE GARBET(アイレス・デ・ガルベット)── 地中海のエッセンスを映す赤ワイン Winery: Celler Perelada   真に“地中海ワイン”と呼ばれるためには、いくつかの条件が必要です。ひとつは、ブドウ畑が地中海性気候にあること。アイレス・デ・ガルベットに使われるブドウは、カタルーニャ北東部、カプ・ダ・クレウス自然公園内の地中海の陽光をたっぷり浴びる畑で育ちます。もうひとつの要素は土壌。このワインの畑は、スレート(粘板岩)土壌です。そして、灌漑を行わない“乾地栽培”であることも大切な条件のひとつ。土地と太陽の力だけで育ったブドウは、この内海とその大地の力強さを映し出します。 使用されるブドウ品種は、地中海の典型ともいえるガルナッチャ・ネグラ(黒ガルナッチャ)。色調、香り、なめらかさ、いわゆる“旨味”に富んだ、地中海らしさを体現する品種です。 このワインは、まさに太陽と乾いた大地の恵みそのもの。アルコール感は非常に純粋で、果実味もやさしく広がります。皮ごとじっくりマセラシオン(醸し)した後、300Lのフレンチオーク(トロンセ産)樽で15ヶ月熟成。さらに瓶内での静かな熟成を経て完成します。 外観は深く鮮やかな紫。香りは赤い果実の完熟したアロマが広がり、地中海の花々やバルサミコのようなニュアンスが重なります。口に含むとフレッシュでボディがあり、成熟したタンニンが感じられ、余韻も長く、今飲んでも、熟成させても楽しめる赤ワインです。 長期熟成にも向きますが、個人的には夏の暑さが訪れる前に楽しむのがおすすめ。赤身肉やジビエ(野兎など)との相性は抜群ですし、肉の旨味を引き立てるミートソースのパスタとも好相性。熟成感のある羊や山羊のチーズはもちろん、ジローナ産の水牛チーズ、サモーラ産の「ブレサ・デ・ブーラ」などの硬質チーズとも素晴らしいマリアージュを見せます。 締めくくりには、カカオ90%のダークチョコレートにエキストラヴァージン・オリーブオイル(AOVE)と塩の結晶をひとつまみ──そんな大胆な組み合わせにも、このワインはしっかりと応えてくれるはずです。地中海の魅力を一杯に詰め込んだ1本を、ぜひ。 SALUD Y AMOR…..MUCHO AMORフアン・ムニョス –...

      Esencia

      カタルーニャカタルーニャ料理ジローナスペイン産オリーブオイル
      by KatoTomoko5月,16,2025

      Esencia ジローナの夜に、香りの本質と出会った。

      旅のなかで舌が慣れはじめた3日目、完食の歓びと、記憶に残る香りに包まれて・・・。 「Esencia ─ 本質をめぐる旅」では、食を通して感じられる価値観の“少し先”に出会う瞬間を綴っています。 今回の舞台は、カタルーニャ地方の美しい町·ジローナから。 プレスツアーにて連日のガストロノミーなフルコースの中、驚くほど自然に、心と体に馴染んでいったディナーがありました。 ■ 体と心に、ちょうどいい料理たち プレスツアーが始まってから、毎食がフルスケールの美食体験。 ありがたいことにスペインらしい豪快なポーションと味の奥行きに魅了されながらも、完食できたのは初日だけでした。私達は一般の方々より強靭な胃袋をもつメンバーであるにも関わらず。 しかし3日目の夜、ジローナのレストランでは、たしかに何かが違いました。 ジローナで21時。店の外観   まずは前菜2品。 サラダ パテ   サラダ、パテと、それぞれ素材の生かし方、調味料の加減、香りの立たせ方が実に繊細。 口にした瞬間に「これは最後まで行ける」と直感しました。   野菜のグラタンは、とろけるように優しく、野菜だけということが信じられないほど旨みがあります。 野菜のグラタン   魚料理は、皮の火入れも塩加減も絶妙。身もふっくらジューシーな仕上がりです。   肉料理では思わず「これぞ、体が受け入れるボリューム」と感じたほど。付け合わせのジャガイモまでしっとりホクホクしていました。 肉料理     そしてデザートにたどり着いた時、ふと気づいたのです。 誰一人、途中でフォークを置いていない!笑       ■ プロとしての直感が震えた、オリーブオイルとの出会い この夜、料理の背景にある“香りの本質”に心から感動したのは、実は、あるエキストラバージン·オリーブオイルでした。 私は職業柄、というより幼い頃から香りにとても敏感です。 とくにオリーブオイルについては、オリーブオイルソムリエの勉強をしたこともあり、わずかなニュアンスにも反応してしまいます。それは、おそらく一般的には気づかれないような香りの奥に隠れている香り。ごくごく微細なネガティブ要素、たとえば保存環境による変化にまで反応してしまう、少し“やっかいな”嗅覚ともいえます。 スペイン産はもちろん、スペイン産でなくとも上質なオイルが存在するのは理解しているし、実際に食べて理解しています。その味わいには、心から信頼できるものがたくさんあります。わざわざ書くまでもありませんが、自分が輸入しているオイルだけが良い、というつもりはまったくありません。 実際、レストランで100%ネガティブ要素を感じることがないオイルに出会うことも、何度かありました。 ただ正直なところ、やはりそれは稀です。私にとっては。 スペインでも日本と変わらず、レストランに入るたび、必ずオリーブオイルをテイスティングします。ほんの一滴で、その日のテンションが決まることもあるほど。プロの視点から「これは間違いない」と、心から思えるオイルに出会える機会は、数多くのレストランを回っていても、そうそうあるものではありません。 だからこそ、このジローナのレストランで出会ったオイルには、本当に驚きました。ひと口含んだ瞬間に、背筋がすっと伸びてくるような感覚になり、座り直して、もう一度、全集中して味わったほどです。(全集中とはいえ、周りの方がそこまで気づかない程度に。笑)     澄んだグリーン、マイルドでフルーティーな味わい。心地よくポリフェノールが追いかけてくるような後味。そして何よりも“透明感”のある香り。 これは、誰かを持ち上げるためでも、比較するためでもなく、ただ「素晴らしいものに出会った」という純粋な驚きと喜びとして、残しておきたい記録です。 とにかく、あったのです。 この夜、このレストランに。...

      ジローナマドリッド
      by KatoTomoko5月,10,2025

      Esencia 特別編 プレスツアーの余白に〜マドリッドとジローナ、2時間の街歩き

      「Esencia ─ 本質をめぐる旅」は、旅と日常のはざまにある風景や出会いを綴る連載です。 今回の記事は、プレスツアーの合間にほんの少しだけ生まれた、2つの街での“余白の時間”の記録。 ■ マドリッド 喧騒の中の静けさ、2時間の歴史散策 バラハス空港からお迎えのバスでホテルまで30分。 5ヶ月ぶりの街に降り立ったその日、午後の光は驚くほど柔らかかったことを覚えています。 目に入る風景が、一瞬で幸せな気分にしてくれました。 短い時間であっても、身体がこの街の空気に順応していくのを感じます。 この日は風が少し冷たく、でも空が澄んでいてどこまでも青かったです。 何度訪れても、マドリッドには「また歩きたくなる通り」があります。歴史的な重みと、日常の軽やかさ。そのどちらもが同居しているこの街の魅力に、またひとつ、心を奪われました。 スペインの中でも、ここは特に“歴史”が街に溶け込んでいて、観光地でありながら遠い過去、確実にここにいたであろう彼らの「日常の延長線」に足を踏み入れたような気持ちになれました。    ■ ジローナ 物語と香りに満ちた、サン·ジョルディの日の街 ジローナにあるノエルアリメンタリア(Noel Alimentaria)の取材からバスに揺られて約一時間。18時から21時までジローナの中心地を観光しました。 ジローナの旧市街を歩いたこの日、4月23日はカタルーニャの人々にとって特別な祝日「サン·ジョルディの日」。バラと本を贈り合うこの伝統的な祭りは、街のあちこちにささやかな物語の気配を運んできます。石畳の通りには、バラの花束を手にした人々が行き交い、本屋や露店が広場にまで並びます。誰かのために選ばれた一冊や、一輪の赤いバラが、街をやさしく彩っていました。     中世の街並みに溶け込むようにして行われるこの祭りには、騒がしさではなく、静かな祝福のような空気が流れています。知らずに訪れた街の、その日だけの表情。ほんの2時間の滞在でも、その特別な空気を肌で感じられたことが、何よりの贈り物になりました。   ■ 「旅」と「余白」 プレスツアーはどうしてもスケジュールが詰まりがちだけれど、こうした余白の2時間が、 むしろ旅の本質を浮かび上がらせてくれることがあります。 効率よく「何を見るか」ではなく、どんなふうに感じたかを記録する。 それが「Esencia」の目指す旅のかたちです。 いつか誰かが、マドリッドやジローナを肌で感じたくなった時、 このエッセイが小さな手がかりになりますように。     Tomoko KatoEditor-in-chief  福岡県出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年からシェフやワイン販売などの経験を積み、調理師免許を取得。青山の老舗レストランではワインのトップセールスとして活躍し、その後リストランテ「アクアパッツァ」にて広報・PRを担当。2009年、スペイン産オリーブオイルに一目惚れして「LA PASION」を立ち上げ、今年で16年目を迎えるインポーターとして多くの顧客に恵まれている。2011年には「スペインワインと食協会」を設立し、30回以上のプロモーションを手がける。スペイン・アンダルシア州政府から、世界一のオリーブオイル展示会にプレスとして正式招聘され、取材・執筆を担当。特に「スペインワインと食大学」は告知と同時に満席になる人気講座として好評を博している。現在はWebマガジン「LOHASPAIN」の編集長として、スペイン食文化やワインの魅力を国内外に発信中。  

      by KatoTomoko5月,02,2025

      Esencia 特別編:マドリッド、ジローナ、バルセロナで出会った、いま注目のレストラン8選

      旅のようでいて、どこか日常の延長にも感じられる時間を綴る連載「Esencia ─ 本質をめぐる旅」。スペインの食と文化の中に息づく“静かなラグジュアリー”を追いかけながら、都市と地方をめぐって気づいたことを記していきます。 今回はその特別編として──スペインのマドリッド、バルセロナ、トレドで出会った注目のレストラン8軒をご紹介します。現地の食材と技術を活かした料理、それぞれの場所からの持続可能な取り組み。個性豊かなコンセプトをもつこれらのレストランは、スペインの食の最前線を感じさせてくれました。

      esencia
      by KatoTomoko2月,06,2025

      Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.1】──ハティバの街を歩く プロローグ:歴史が息づく、美しい街への招待

      Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.1】──ハティバの街を歩く プロローグ:歴史が息づく、美しい街への招待

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      by KatoTomoko1月,31,2025

      Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.3】:レストラン トレドの隠れた名店──スペインの伝統と今を体験できる一皿

      スペイン・トレドの田舎町に、知る人ぞ知るレストランがあります。地元の人々に愛され、遠くからの訪問者をも魅了する、その店。派手な看板はもちろん、華やかな装飾もありません。けれど、ここには確かな料理と、シェフやスタッフたちの情熱があるのです。   わたしがこの店を知ったのは、トレドを訪問した際にマンチェゴチーズの生産者が連れて行ってくれたからです。「自慢のマンチェゴでつくられていて、すごい賞を受賞したスイーツがあるよ」と。車でオリーブ畑が広がる大自然を抜けて、トレドの田舎道を進んでいきます。緩やかな丘陵地帯を抜け、素朴な風景の中にぽつんと現れたのは、一軒のレストランです。   

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      by KatoTomoko1月,24,2025

      Esencia – 本質をめぐる旅【Chapter.2】:心に響く風景と食の旅」トレド - 夕暮れとともに心を満たす、特別なひととき

      スペイン、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の中心に広がる歴史と文化の宝庫、トレド(Toledo)。そこは、歴史の中でキリスト教、イスラム教、ユダヤ教が交錯し、独特の文化を育んできた場所です。古い街並みが残るトレドの丘の上に立てば、まるで時空を超えた旅に出たかのような感覚に包まれることでしょう。そんなトレドへの訪問は、私にとって予想外のギフトのようなものだったのです。     2024年11月。その日は朝から、わたしはカスティーリャ・ラ・マンチャ地方の広大な農園を訪れていました。オリーブ畑や搾油所をまわり、地元の豊かな恵みを味わいながら生産者たちと深い話をしていました。会食では想像以上にクオリティが高く、プレゼンテーションも素敵なレストランだったことや、オリーブオイルの専門家としてスペインで活躍する方がわざわざ駆けつけてくださって、時間は思ったよりも早く過ぎていきます。ですがそのとき生産者が、こう言ってくれたのです。   「少しの時間でも構わない。トレドの景色を智子に見せたい。」       その言葉に込められた温かさと優しさに、わたしは胸が熱くなりました。そしてオリーブオイルの専門家と生産者が考えて選んでくれたのが、トレドの街を一望できる「パラドール・デ・トレド(Parador de Toledo)」。     パラドールとは、スペイン各地の歴史的建築物などに建てられた国営ホテル。もともとは古い城や修道院などの建物を改装して利用しているので、スペインの伝統と歴史を感じられる空間です。しかもここはただの宿泊施設ではありません。その土地の物語に触れるための、まさに「文化の扉」のような存在なのです。トレド市街の喧騒から少し離れたこの場所は、訪問者にこの街の全景をプレゼントしてくれるような絶好のスポットでした。     夕方、限られた時間の中、私たちはパラドールのカフェへと駆け込みました。ここにはオリジナルのカフェ・コン・レチェ(スペイン風カフェオレ)があり、迷わずオーダー。濃厚で滑らかなその一杯は、トレドの夕暮れとともに、わたしの心に染み渡る味でした。丘の向こうに広がる空と建物。カテドラル(Catedral)やアルカサル(Alcázar)その風景を眺めながら、大好きで尊敬している生産者と専門家たちとの温かなコーヒーの香りに包まれるひととき。それはまるで時が止まったようでした。         時間がタイトだったからこそ、出会えた奇跡のような光景がありました。赤茶色の屋根が広がるトレドの街並みが、夕陽に照らされて黄金色に輝きはじめたのです。その景色が刻一刻とうつろい、やがて空は薄紫から濃紺へと染まっていきました。そしてトレドの街がライトアップされると、闇の中に浮かび上がる幻想的な姿が現れました。その美しいグラデーションに息を呑む瞬間、わたしたちは言葉を失い、ただその景色を見つめ続けました。   (暗くなるときの美しいグラデーションは動画で撮影しました。インスタでご紹介しますね。写真がないのは、撮っておくことを忘れてしまうほどの景色だったからです。苦笑)   帰る際に気づいたのは、パラドールのホールの素晴らしさです。トレドが生んだ巨匠エル・グレコの作品のレプリカが飾られており、この街が長い歴史の中で育んできた芸術と文化の深さを感じさせてくれるのです。今回、トレドをゆっくり歩く時間はなかったけれど、この場所から眺めた景色には、この街のすべてが凝縮されているように思えました。     はじめて訪れたトレド。地元の人々の優しさに導かれ、夕暮れから夜へと移り変わる瞬間に立ち会えたこと。それは旅のハイライトとなり、ずっと心に残る思い出となりました。次回訪れるときには、この街の小さな石畳の道を歩いてみたいです。     最後の2枚は、トレドの駅の写真。 --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- Tomoko KatoEditor-in-chief    福岡出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年シェフやワイン販売からキャリアを積み、「アクアパッツァ」にて広報・PRを担当後、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立。2011年「スペインワインと食協会」も創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に、数々のプロモーションイベントや講座をプロデュース。特に「スペインワインと食大学」は、ワインペアリングの人気プログラムへ成長。オリーブオイルソムリエ®、食育講師として、生産者、インポーター、レストラン、消費者をつなぐ役割を担う。  アンダルシア州政府の招聘を受け、スペインにてプレス取材を担当後、複数の州や生産者からオファーが相次ぎ現地取材が続いている。Webマガジン「LOHASPAIN」の編集長も務め、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。

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