畑の境界まで見て、オリーブを育てる〜Grifoll Oil〜
以前、スペイン・プリオラートにあるエルモラール村の畑を訪れて、印象に残ったのはオリーブの木だけではありませんでした。 畑のことをスタッフに聞いていると、こんな話が出てきました。ワイナリーの当主は、自分たちの畑の端まで草を刈るのだそうです。 自分たちの畑では農薬を使わないのは当たり前。それでも畑の周りにある公共の道に雑草が多くなると農薬が撒かれてしまい、畑の外の農薬が雨で流れてくる可能性がある。だから畑の境界まで気を配るというのです。 自然を守るからといって何もしないわけではないし、人間の都合で自然を動かそうとするわけでもない。そのときに必要なことをしっかりと見て、考えて、判断する。 この話を聞いてから、グリフォイオイルを「特別」だという人が少なくないのか、グリフォイオイルの在り方がなぜ素敵なのか、つくられ方のこだわりがあるのか、筆者の中で少しずつ、つながってきたことを覚えています。 5代続くグリフォイワイナリーの畑には、ブドウの木が見える場所に、アーモンドの木やオリーブの木があります。 オリーブの木は、樹齢を正確に数えることも難しいほど古い木もありました。 グリフォイオイルとなるオリーブの収穫は、一度ではありません。 10月には緑色の実。11月には緑から赤へ色づき始めた実。12月には、完熟した黒い実。3回に分けて収穫し、それぞれ別々に搾ったオイルを最後にブレンドします。 早摘みの実からはフレッシュさを。完熟した実からは、穏やかな苦味とまろやかさを。その間をつなぐのが中間の収穫です。 一度で収穫するより手間はおよそ3倍。それでもこの方法を続けています。理由は、彼ら自身が毎日食べたいと思うオイルの味わいだから。 現地では、4人世帯がひと月に使うオリーブオイルは平均5Lほど。パンにつけ、サラダにかけ、マヨネーズをつくり、焼く、煮る、揚げる。オリーブオイルは、特別な料理のためだけにあるものではありません。 グリフォイオイルは、日常の料理に使うことを前提につくられています。 100%アルベキーナ種。 バターのようなコクがあり、熟したバナナやナッツを思わせる香り。苦味や辛味はやわらかく、後味はすっと消えていきます。低温で搾るのも、効率より品質を優先するため。 畑では収穫の時期を分け、搾油では温度を抑える。手間のかかる方法を選ぶのは、自分たちが毎日食べたいと思う味にするためです。これは、ワイナリーで語られている「何をするか」だけでなく「何をしないか」も判断する、という考え方にもつながっています。畑の状態を見て、必要なところだけ手を入れる。 日本でオリーブオイルを選ぶとき、品種や産地を見ることはあっても、その木がどんな場所で育っているのかまで考える機会は、そう多くありません。けれどこの畑を歩いて、話を聞いてからボトルを見ると少し見え方が変わります。 古いオリーブの木。3回に分けた収穫。低温での搾油。そして、畑の境界まで気を配るという仕事。まずは、いつものパンやサラダに。 どんな季節にも毎日の料理に使いながら、グリフォイオイルがどんな場所から届いたオイルなのかを知っていく。 味わえば、味わうほど、春、夏、秋、冬とどの季節にも寄り添ってくれる味わいだと気が付きます。 シンプルなガーリックトースト、魚介、そしてお肉も、どんな食材も引き立ててくれる。 そんな楽しみ方が、このオイルには合っていると思います。 Tomoko Kato 加藤智子 Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer 福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、インポーター業は17年目を迎える。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府、企業団体や生産者からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに参加するほか、取材、イベント企画を行う。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。GPE スペイン・ワイン・テロワール・ディプロマ|Spanish Wine Specialist・Spanish Pantry(ICEX公認)|オリーブオイルソムリエ® @...