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Aromas〜アロマス〜
香りで綴る、スペインのワインとガストロノミー

アフリカに近いのに涼しい島──テネリフェ島、スペインの意外な避暑地

アフリカに近いのに涼しい島──テネリフェ島、スペインの意外な避暑地

ヨーロッパを襲う熱波により、スペイン各地でも厳しい夏が続いています。連日30℃、40℃を超える気温が報じられ、各地では山火事も発生しています。

そんな暑い夏だからこそ、心地よい風と豊かな自然を求めて、避暑地へ旅に出たくなります。


スペインの避暑地と聞けば、多くの人がバスク地方のサン・セバスティアン、カンタブリア海沿岸、そしてピレネー山脈を思い浮かべるでしょう。大西洋の涼しい風に恵まれたアストゥリアスやガリシアも、夏の休暇先としてスペイン人に長く愛されてきた地域です。

しかし、ワインを通してスペイン各地の風土に触れてきた中で、この夏の旅先のひとつとして、ぜひご紹介したい場所があります。

それが、カナリア諸島・テネリフェ島です。

アフリカ大陸に近く、「暑い島」という印象を持たれることもありますが、実際の夏の気候は大きく異なります。特に北部では、真夏でも20〜25℃前後の爽やかな日が多く、大西洋から吹く涼やかな風に包まれながら、快適に過ごすことができます。

その気候は、イベリア半島北部の避暑地にも通じる心地よさがあります。火山島ならではの雄大な自然と、標高差が生み出す多様な環境が、テネリフェ独自の夏の魅力を形づくっています。

2026年7月8日 最高気温比較:ガリシア31℃,サン・セバスティアン26℃,ボルドー35℃,ブルゴーニュ31℃, テネリフェ島は24℃


火山と大西洋が育む、テネリフェ北部のテロワール



スペイン本土・マドリードから飛行機で約3時間、バルセロナからは約3時間30分〜45分。モロッコ西岸から約300km、大西洋に浮かぶテネリフェ島は、「常春の島」とも称される穏やかな気候に恵まれています。

その背景にあるのが、大西洋を流れるカナリア海流、北東から吹く貿易風(アリシオ)、そして標高3,718mを誇るテイデ山が生み出す多様な地形です。

なかでもワイン愛好家に訪れていただきたいのが、島の北部です。

貿易風がもたらす湿潤な空気と、火山活動によって形成されたミネラル豊かな土壌。この独特のテロワールが、カナリア諸島ならではの個性豊かなワインを育んでいます。

火山が育んだ黒い大地、樹齢100年を超える自根のブドウ樹、そして大西洋から届く涼やかな風。真夏でも爽やかな空気の中で畑を歩き、その土地の料理とともに味わうワインは、テネリフェでしか得られない特別な体験です。

避暑地とは、単に気温の低い場所ではありません。その土地の風土、食文化、そして自然に心地よく身を委ねられる場所。


テネリフェ北部には、真夏でも25℃前後の爽やかな日が多く、まるで春のような穏やかな時間が流れています。厳しい冬を迎える北欧の人々にとって、カナリア諸島は太陽と温暖な気候を求めて訪れる「大西洋の楽園」として、長く愛されてきました。

そして今、夏の暑さから離れ、ワインと食、自然をゆっくり味わう旅先としても、テネリフェ島は新たな魅力を放っています。

テネリフェ島で訪れたいワイナリー Viñátigo(ビニャティゴ)


テネリフェ北部のワイン文化を語る上で、欠かすことのできない存在が、ラ・グアンチャを拠点とするワイナリー、Viñátigo(ビニャティゴ)です。

1990年、テネリフェのブドウ栽培の伝統を受け継ぐフアン・ヘスス・メンデス氏によって設立されたビニャティゴは、カナリア諸島に受け継がれてきた在来品種の保存と復活を牽引してきた生産者のひとつです。

フィロキセラの被害を免れたカナリア諸島には、現在も希少な自根のブドウ樹が残されています。ビニャティゴは、リスタン・ブランコ、マルマフエロ、グアル、ビハリエゴ・ブランコ、バボソ・ネグロなど、この土地に根付いた品種の個性を引き出しながら、テネリフェのテロワールを表現するワインを生み出しています。


火山島特有の土壌、大西洋から吹く湿潤な風、そして標高差に富んだ畑。こうした恵まれた環境が、ワインに伸びやかな酸、豊かな香り、塩味を思わせるミネラル感、そして複雑な余韻をもたらします。




暑さを忘れさせる爽やかな気候の中で味わう一杯には、大西洋の風、火山の大地、そして島に受け継がれてきた歴史が映し出されています。

Viñátigoを訪れる旅は、単にワインを味わうだけではありません。失われかけた品種を未来へつなぐ生産者の情熱に触れ、一本のボトルを通してテネリフェという島の記憶を感じる、特別なワインの旅となるでしょう。


【 Winery Information】
Bodegas Viñátigo(ビニャティコ゚)
住所:Travesía Juandana, sin número La Guancha
Tenerife, Islas Canarias España
@bodegasvinatigo


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Ikumi Harada

Ikumi Harada 原田郁美
Journalist & Creative Director

スペインワインとガストロノミーを専門とするジャーナリスト。広告代理店でデザイナーとして経験を積み、クリエイティブな視点と戦略的思考を身につける。2005年のスペイン留学を機にワインと食文化に魅了され、以来その研究と発信に力を注いでいる。2009年から日本およびアジア市場におけるスペインワインの輸出・プロモーションに携わり、2011年「スペインワインと食協会」を設立し普及と市場発展に努めている。2012年よりプリオラートでワイン造りに取り組み、2024年に自らの初ヴィンテージを発表。2025年からバルセロナの国際ワインコンクール「Barcelona Wine Test」の運営メンバーとして活動。WSET® Level 3、Spanish Wine Specialist(ICEX認定)。山口県出身。
@ikumiharada