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【バルセロナ・ゴシック地区】歴史とアートに包まれた、至福の美食体験
「El Cercle(エル・セルクレ)」


【バルセロナ・ゴシック地区】歴史とアートに包まれた、至福の美食体験
「El Cercle(エル・セルクレ)」


バルセロナの中心、歴史が色濃く残るゴシック地区に佇むレストラン「El Cercle(エル・セルクレ)」。16世紀に建てられた2つの隣接する宮殿の中に位置し、芸術と美食が見事に融合した特別な空間です。

筆者にとってもこの場所は馴染み深く、これまで何度か同じ建物内で開かれるアート展示を訪れるたびに、テラスには立ち寄っていました。そんな思い出の地で、今回ついに「エル・セルクレ」のレストランの扉を開き、五感で味わう上質なひとときを体験することができました。



石畳と中世の風景に包まれて、バルセロナを味わうテラス席

まず足を運びたいのが、「El Jardí(庭)」と名付けられたテラス席。石畳の通りや中世の建築が立ち並ぶゴシック地区のポルタル・ダル・アンヘル通りを見下ろすこのテラスは、まさに“バルセロナらしさ”が凝縮された特等席。予約不可のため、訪れた人が順番に案内されるこの空間には、時に1日850人ものゲストが訪れるそう。12時から深夜0時まで、年中無休で営業しており、カクテルやワイン、タパスを気軽に楽しめるのも、観光客にとって嬉しいポイントです。

「El Jardí(庭)」という名前の人気テラス

歴史とアートに包まれる美食空間

アペリティフにぴったりなテラスを満喫したあとは、いよいよ店内のレストランへ。内装を手がけたのは、プリオラートで自身のワイナリーも営む著名な建築家、アルフレッド・アリバス氏。歴史を物語る漆喰の壁や古典絵画、彫像の数々と、現代的なデザインが絶妙に調和しています。あえて元の姿を残したディテールが随所に活かされ、時の流れとともに歩んできた空間の息づかいが、まるで過去の世界に足を踏み入れたかのような感覚を呼び起こします。

レストランは「La Biblioteca(図書館)」「Les Quatre Estacions(四季)」「La Barra(カウンター)」という3つのエリアに分かれ、それぞれ異なるスタイルの料理を提供。伝統的なカタルーニャ料理、洗練された和食、そしてクラシックなタパスや小皿料理まで、多彩な味わいを楽しめるのも「エル・セルクレ」ならではの魅力です。

「La Biblioteca(図書館)」

「Les Quatre Estacions(四季)」



「La Barra(カウンター)」で、本格的な和食食べられるのも「エル・セルクレ」の特徴


左からディレクターのカルロス・ガルシア氏、日本食の料理人、筆者、そしてフアン先生


Juan Muñoz フアン・ムニョス

Juan Muñoz フアン・ムニョス
Master Sommelier

ワイン、飲料、グルメ食材の国際的な権威。スペイン、ラテンアメリカにソムリエ協会を設立し、各国の名門大学で教育に携わる。現在、アカデミー・オブ・サムリエ(ASMSE)会長兼、El Corte Inglésの専門学院で教鞭をとる。14冊の専門書を発表、「フランス農事功労賞」を授与されたスペイン唯一のソムリエ。カタルーニャ最優秀ソムリエ(1987年)、スペイン最優秀ソムリエ(1993年)、欧州最優秀ワイン・美食コミュニケーター(2007年、ロンドン)など、受賞歴多数。ブラジル世界大会ファイナリスト(1992年)。スペイン、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイなどでソムリエ育成を先駆け、世界のワイン文化発展に貢献している。
@juanmunozramos



地元にも愛される本格派の味わい

「La Biblioteca(図書館)」は、その名の通り壁一面に本が並び、天井が高く広々とした空間でゆったりとランチやディナーを楽しめます。バルセロナの人気観光エリア、ゴシック地区に位置しながらも、まるで別世界のような優雅な空間と時間が流れています。その日も、ビジネスランチでいらした、落ち着いたお客様が多い印象でした。

料理はカタルーニャの郷土料理をベースにした地中海料理が中心で、厳選された旬の食材の持ち味を最大限に引き出した一皿一皿に舌鼓。その丁寧で本格的な味わいは、多くの地元の常連客に支持されていることからも確かです。


素材の持ち味が際立つ、上品でモダンなヒルダ


夏のご褒美。ひんやり上品なサルモレホ


上質なバスク牛のステーキタルタルと、ポテトのミルフィーユ


カタルーニャ伝統の味、フリカンドもエレガントな仕上がり
ワインがすすみます!


時間をかけて丁寧に煮込まれた、濃厚でとろける牛テール(Rabo de buey)


繊細な香ばしさと軽やかな食感。控えめな甘さが心地よい、大人のミルフィーユ


スペイン、フランスなど、300種以上の銘醸ワインをソムリエがセレクト



なお、テラス席は観光客が約8割を占めるのに対し、レストランは9割が地元カタルーニャの常連客たちとのこと。こうしたことからも、エル・セルクレ」の料理が、地元に根付く本物の魅力を持つ証と言えるでしょう。

最後に

歴史と芸術に包まれながら、本格カタルーニャ料理、そして時には日本料理まで楽しめる特別な場所―それが「エル・セルクレ」です。バルセロナ観光の中心・ゴシック地区にありながら、喧騒を忘れさせてくれる上質なひとときがここにはあります。ポルタル・デ・ランヘル通りを見渡す人気のテラスでの一杯も素敵ですが、ぜひレストランの奥深い魅力も体感してみてください。カタルーニャの伝統と旬の恵みが織りなす一皿が、歴史と芸術の空気と相まって、心から幸せを感じさせてくれるはずです。新たなバルセロナの魅力に、きっと出会えることでしょう。

 


Ikumi Harada

Ikumi Harada 原田郁美
Journalist & Creative Director

スペインワインとガストロノミー専門ジャーナリスト。大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして、クリエイティブな視点と戦略的思考を培う。2005年から留学を機にスペイン食文化に魅了され、その研究に人生を捧げる。2009年から日本・アジア市場でスペインワインの輸出とプロモーションに従事。2011年に「スペインワインと食協会(AGE)」を創設し、クリエイティブディレクションや執筆を通じてスペイン食文化の普及と市場拡大に寄与している。2012年、プリオラートでワイン造りを始め、2024年に自らの初ヴィンテージをリリース。2025年より、フアン・ムニョス氏と共同企画「Spanish Lifestyle」連載開始。WSET® Level 3, Spanish Wine Specialist(ICEX認定)。山口県出身。
@ikumiharada