冬に負けない、カタルーニャの名物ネギ料理「カルソッツ」
スペインの長いクリスマスが終わると、カタルーニャ地方の野菜売り場に並び始めるのが「カルソッツ(カタルーニャ語calçots)」。生粋のカタルーニャ人は、「カルソッツを食べないと春は迎えられない」と思っているに違いありません。 そんな冬から春先にかけてのカタルーニャの風物詩「カルソッツ」について、その起源や食べ方、そして栄養効果について迫ります。 【関連記事】*スペインの長いクリスマスと伝統料理が深める、家族の絆 1.カルソッツとは カルソッツとは、カタルーニャ州タラゴナ県バイス発祥の、ネギの名前です。見た目は日本の長ネギに似ていますが、実はこれは特別な栽培法で育てられた玉ねぎです。’’カルソターダ’’(Calçotada)は、カルソッツ(calçots)を食べることを意味します。古来からワイン文化脈打つタラゴナ県では、 剪定した葡萄の枝で起こした炎でカルソッツを黒焦げに焼き、皮をズルリと剥いて 、中の白くて甘い部分に、ロメスコソースをたっぷりつけて宙を仰ぎながら豪快にいただきます。 カルソッツをみんなで堪能している間に、第二弾。炭火でブティファラ(カタルーニャ地方特産のソーセージ)やラム肉、鶏肉、パン・コン・トマテ用のパンなどを焼きます。 カルソッツの旬である1月最後の日曜日に、発祥の町バイスで行われる「カルソターダ祭り(Gran Festa de la Calçotada)」 は、毎年たくさんの人びとで賑わいます。 ◎カルソッツの歴史 ここ数十年で各地に広がったカルソッツ。冬の終わりから春先にかけて、カタルーニャ地方では、ほぼどこでも楽しむことができます。スペインの他の地方にあるカタルーニャレストランでも、カルソッツを季節メニューに掲げているレストランもあるようです。 カルソッツの起源についてはさまざまな言い伝えがありますが、一番有名なのは、19 世紀の終わりに、タラゴナ県バルスの農夫Xat de Benaigesによる、という説です。 ある日、農夫がタマネギの新芽を数本火にかけたところ、外側を焦がしてしまいました。捨てる代わりに、彼は焦げた外側の部分を剥がし、内側の白い部分を食べたところ、とても柔らかくておいしいことを発見しました。それが20世紀の初めには、この地方で一般的に食べられるようになったそうです。 2.カルソターダの影の主役ロメスコソース カルソターダの主役はカルソッツですが、料理の味を決めるのはなんと言ってもロメスコソースです。この栄養満点の伝統的なソースの出来にすべてかかっていることから、カルソターダの影の主役と言っても過言ではないでしょう。 ◎ロメスコソースの歴史 ロメスコソース(Salsa Romesco)は、カタルーニャ州タラゴナ県の海辺の地区セラーロ(El Serrallo)発祥のソースで、漁師たちが魚介につけて食べていたと言われています。タラゴナの農産物である、アーモンド、ヘーゼルナッツ、オリーブオイルと、大航海時代の16世紀に、南アメリカにたどり着いたスペイン人が持ち帰りヨーロッパに伝わったトマト(南米:アンデス山脈高原地帯)とパプリカがベースになっています。 カルソッツはもちろん、お肉やお魚、ポテトやサラダまでご馳走にしてくれる、リッチな味わいのカタルーニャの絶品ソースです。 3.カルソターダとのマリアージュ カルソッツを食べる時、フォークやナイフは使わず、豪快に指で黒焦げの皮をズルリとむき、ロメスコソースをたっぷりとつけて、空を仰いで食べるので、手も服も、100%の確率で汚れることを覚悟しておかないといけません。 レストランでは、使い捨ての手袋と紙エプロンがあらかじめ各テーブルに準備されています。もともとは、薪で火をおこして、バーベキューのようにワイワイと野外で食べる料理なので、赤ワインをポロンというデキャンターで 回し飲みするのが伝統的な楽しみ方です。 ポロンの注ぎ口に、口を直接つけてはいけません。葡萄畑や大人数での食事でも、持ち運びが便利な上に、ワイングラスがいらないのでとても機能的な上に、連帯感からか必ず笑顔が生まれます。ただ、酒量の調整が難しく、かなりの確率で...