今回、初めて記事をご覧になる方は、ぜひアーモンド・キャラメリゼの記事を読んでここに戻ってきていただければ流れがスムーズです。
以前の記事でご紹介した、この夏の「スペイン産ラルゲタアーモンド・キャラメリゼ」。
その経緯はこちら。
記事:「幻の3年を超えて。100箱のキャラメリゼに込めた手仕事と再会の物語」
とはいえ、みなさんお忙しいと思いますので、
こちらに加筆・修正した形で新商品「スペイン産ラルゲタアーモンド・ショコラ」の記事をご紹介します。
1. かつての人気菓子。そして、終わりと始まり。
2020年から2023年までの3年間、
「ラルゲタアーモンドのショコラとキャラメリゼ」は、当時の販売元が企画・製造・販売してくださっていて、それはそれは多くのファンをもつ人気商品でした。
私は、その素材、つまり「ラルゲタアーモンド」を輸入する立場で、その人気を陰から見守らせていただいていたのです。

当時のラルゲタアーモンド・ショコラ
“幻の3年”とも言えるその時期、多くのファンを魅了しながらも、やがて製造は終了。しかし、その味を忘れられないという声は、ずっと絶えませんでした。
終売から2年が過ぎても、アーモンド販売の時期には「もう一度、あの味を」という声を必ずいただくのです。今年の春も、また。
そして私は初めて思いました。
「あの味は、輸入元の私が形にしなければ、もう2度と味わえないんだな・・・」と。

左側・小さな袋は120g、右側・大きな袋は1Kg業務用
2. 10年越しのご縁と“その時”のひらめき。
2025年の春。
年が明けて、ようやく届いた新物のラルゲタアーモンド。
例年であれば冬の入荷ですが、気候変動の影響で、今年はそのタイミングさえも変わってしまったのです。「今季の味を、一日でも早く届けたい」と、私は120g入りの一袋を、大阪でパティスリーを営む加奈代さんに送りました。
加奈代さんとのご縁は、もう10年以上前にさかのぼります。
きっかけは、まだ「グリフォイオイル」として展開する前の「カミロケオイル」。
オリーブオイルを通して出会い、大阪から東京のイベントに駆けつけてくださったり、関西のマルシェで販売してくださったりと、“応援者”という言葉では足りないほど、温かく支えてきてくださった方です。ちなみに、ふたりともドリカムファンという共通点もあって(笑)

2016年夏、大阪にて販売元主催によるオリーブオイルのイベント
乾杯の挨拶をしてくださった加奈代さん

2016年夏、大阪イベントにて(加奈代さん・中央列左から二番目、筆者・中央列右側)

2022年秋、スペインワインと食協会後援のワインイベント@東京に駆けつけてくださった加奈代さん(左から2番目)
アーモンドショコラ終売の後、加奈代さんがパティスリーをオープンされたのを知ったとき、ふと「いつか、このラルゲタアーモンドでショコラ菓子を一緒に作れたら」そんな未来が思い浮かんだことがありました。
そして今回。
新物のアーモンドを購入くださる方々から「もう一度、あの味を」という声が次々と届き、私は思わず加奈代さんに連絡を入れてしまったのです。
本当に、衝動のように。
3. たった120gから生まれた、感動のひと口。
すると、数日後。信じられないことが起こりました。
なんと加奈代さんから2種類のアーモンドショコラが届いたのです。
だってお送りしたのは、たった120gの一袋のアーモンド。
きっと数粒だけを味わい、残りのすべてを試作に使ってくださったのだと思います。
そういうところに、加奈代さんのお人柄と、カフェオーナーとしての覚悟がにじんでいますよね。
味に対する敬意、素材に対する愛、そして“想いに応える人”という誠実さ。
「ラルゲタアーモンド・ショコラ」という形になって届いたその味。

一粒食べて、胸が高鳴りました。その香り、味わい・・・。
「これ、私だけしか知らないなんて絶対にダメだ!」と、勝手な使命感のような衝動に駆られ、家族にも試食してもらいました。
それはもう・・・、大絶賛。
「どこのブランドなのか?」、「これ、もっとたくさん食べたいからまた買ってきて!!」と、この味わいの背景を知らず、まだ忖度もない小学生たちも、やっぱり目をまんまるにして聞いてきます。
やっぱり、この味、間違いない。
気がつくと私は、加奈代さんに伝えていました。
「“いつか”じゃなく、“今季”のアーモンドで、作りたいです」
とはいえ、6月の時点であれだけ暑い日が続いていたので、ショコラではなく、まずはキャラメリゼからスタートすることになりました。

加奈代さんのお店で試作され、送ってくださったアーモンド・ショコラ
4. 製造の現場にあった、覚悟と喜び。
そこからは、加奈代さんと何度もやりとりを重ねました。
アーモンドキャラメリゼのレシピ、味のバランス、パッケージ提案、レシピの再構築・・・。
一つひとつを丁寧にご連絡をくださり、試作をお送りくださいました。
お互いギリギリの条件で、採算を度外視してでも“届けたい味”として、形にしていきました。

実際の制作の様子
加奈代さんは、こう話してくださいました。
「本来なら商品開発費やパッケージ提案費が発生するところなんですが、
智子さんとこんな楽しいお仕事ができるなら、私はそれだけで嬉しいんです。
機械も入れようかと一瞬思いましたが、今回はすべて手作業でやらせていただきます。」

さらに、こうもおっしゃっていました。
「実はかなり、体力が要る作業なんです。1キロを2回に分けて仕込むので、時間もかかって…。
それでも、こうして商品に関われるのが嬉しいんです。でも、やっぱりちゃんと“商品”として出す以上、適正な価格をつけることも、作り手にとって大切なんですよね。」そう伝えてくださる言葉のひとつひとつが、私に響いてきました。これからも継続していきたい。まだ販売していないのに、私はそう思っていました。
彼女の手がける味わいの背景には、信頼するパティシエたちの手仕事があります。
そんな人たちが手がけたものを、どうしても私のお客さまに食べてもらいたい。思いは募るばかりです。

大阪にある加奈代さんのパティスリー:patisserie &cafe canon(カノン)
5. 味も見た目も、“新しい”キャラメリゼ。
前回のキャラメリゼは、かつての幻の商品とは見た目も味もまったく異なります。
同じラルゲタアーモンドでも、作り手がちがえば、ここまで印象も変わるのかと驚かされるほど。
パッケージも一新しました。パッケージのプロフェッショナルとしても活躍されている加奈代さんが、パッケージはもちろん、中袋の素材までこだわって探して選んでくださいました。
以前の商品が“温かみある懐かしさ”なら、今回は“優しいのに忘れられない存在感”。それぞれが、まるで物語の別の章のように違う魅力を持っています。

当初はアーモンド・ショコラとして形にする予定でしたが、今年の異例ともいえる猛暑を考え、まずは“キャラメリゼ”からスタートしました。
夏のキャラメリゼは、味と品質を妥協せず仕上げた結果、通常販売していたラルゲタアーモンドより、賞味期限が2週間以上短くなりました。
つまり販売期限が減ったということです。本来なら販売者からするとデメリットでしかありません。
今だから言えますが、販売期間が短いことは不安しかありませんでした。けれど味わいを追求した結果だったので、そこだけを信じて販売スタートするしかありません。しかし蓋を開けてみると、キャラメリゼはおかげさまで大好評のうちに完売できたのです。
6. ついに、アーモンド・ショコラ。
日本にアーモンド菓子はたくさんありますが、スペイン・カタルーニャのラルゲタ種で作ると、まったく違う風味が生まれます。
その繊細な甘みと、クセになる食感、ふわりと鼻に抜けるあの香ばしい余韻。“ナッツが主役”の、素通りできない説得力があるからです。
この冬、ようやく「ラルゲタアーモンド・ショコラ」をお届けできることになりました。

以前のアーモンド・ショコラがあった時から、世界も日本もいろいろなことが変化し、デパートでもスーパーでも値上がりが止まりません。もちろんチョコレートの価格も同じくです。当時の3倍を超えています。
そんな中「アーモンド・ショコラ」に加工する意味があるのかなと考えたこともありますが、出来上がった一粒を試食したら、一瞬迷ったことなど吹っ飛びました。「この味わいを待っている人が必ずいる!」と、確信したからです。

原材料は、ラルゲタアーモンド、ミアメール、グラニュー糖、ココアのみ。ラベルには使われた材料が多い順に記載されますが、アーモンドの次にチョコレートがたっぷり入っています。アーモンドをキャラメリゼしてあるので、食感とほろ苦いココアの味わいと濃厚なチョコレートが最高のコンビネーションを奏でます。

アーモンド・ショコラの断面
いまだにブランド名はありません。
最初のキャラメリゼ100袋を手に取ってくだったかたも、今回のショコラをぜひ味わってみてください。そして、この味を一緒に育てていきたいです。
これからあなたと始める、小さなお菓子の物語です。

この冬しか出会えない味。
まだ名前のないお菓子に、あなたの記憶を重ねていただけたら嬉しいです。
このアーモンド・ショコラには、3色の可愛いパッケージがあります。
それぞれ異なる動物がモチーフとなっており、見た目の楽しさも人気の理由のひとつです。
どのカラーでも中身はすべて同じ「ラルゲタアーモンドのキャラメリゼ」です。
見て楽しい、食べて嬉しい、そんな色とりどりの小さな物語をどうぞお楽しみください。
■ 購入はこちらから
販売期間:2025年11月6日〜14日 12:59まで(商品がなくなり次第終了)
【冬季限定】ラルゲタアーモンド・ショコラ
職人の手で、少しだけ。
寒い季節にしか出会えない「アーモンドショコラ」。
ご案内できる数は限られております。どうぞお見逃しなく。
https://lohaspain.spainwinefood.org/collections/almond/products/8almond
パティスリー:patisserie &cafe canon(カノン)
Instagram:@patisserie_canon

Tomoko Kato 加藤智子
Editor-in-chief
福岡県出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年から様々なレストランにて調理やワイン販売などの経験を積み、リストランテ「アクアパッツァ」にて広報・PRとして従事。2009年、スペイン産オリーブオイルに一目惚れし「LA PASION」を立ち上げ、今年で16年目を迎えるインポーターとして多くの顧客に恵まれている。2011年に「スペインワインと食協会」を設立。企画運営している「スペインワインと食大学」は人気講座に成長を遂げ、企業や行政からオファーが相次ぐ。取材・執筆では、スペイン・アンダルシア州政府より日本代表として現地スペインに正式招聘されるなど、企業や州政府からの取材依頼が絶え間なく続いている。Webマガジン「LOHASPAIN」の編集長として、スペイン食文化やワインの魅力を国内外に発信中。
@ tomoko_kato_lapasion