スペイン産チーズはどこにある?

スペイン産チーズはどこにある?

暑すぎた夏が遠い昔のように思えるほど、落ち着いた気温、金木犀の香り、と、秋真っ盛りな東京です。

さて東京の街で、思わず心が踊るような“スペインの香り”に出会いました。

日本ではまだ珍しいスペイン産チーズ。都内23区で見つけた専門店を訪ね、厳選のチーズ6種をテイスティング。

じつはサッと購入して、レポート提出する予定が、ここに来るまでに少し時間がかかりました。というのも、スペインのチーズは流通量が少なく、取り扱いがある実店舗は限られてくるのですね。

最近の「スペイン産チーズ事情」として、経緯からご紹介します。

 

 

スペイン産チーズはどこにある?

 

つい先日、とある課題のためにスペイン産チーズ5種盛りをつくる必要がありました。

チーズ専門店にお伺いすると、スペイン産は2種だけ!多くのチーズが所狭しと並ぶなか、その日はまさかの2種に驚きを隠せませんでした。

その場でスペイン産を入手するには、本格的に探さなければならないことを悟った筆者は、この日はまず最近の人気どころ味わおうと「スタッフさんのおすすめ」を購入させていただくことに。

フランス産とオランダ産のチーズ、それに合わせたワイン、さらにチーズ製品をいくつか(小麦粉なしのチーズケーキなど)を購入しました。

ちなみにワイン仲間が教えてくれたこちらの専門店は、スペイン産以外のチーズをお探しのときには心からおすすめできます。好みのタイプを理解し、良い状態のチーズを教えてくださる詳しいスタッフさんがいらっしゃいます。

スペイン産以外であっても、現在、日本で売れている人気の味わいを実際に味わってみることも、とても勉強になりますね。

 

やっと見つけた!スペイン産チーズ専門店

 

その後、いろいろ調べた結果、分かったこと。

日本ではまだ珍しいスペイン産チーズ。種類も限られ、実店舗でフランス産のように揃う場所はほとんどありません。

そんななかスペインチーズの専門店を探し、ネットで見つけた「QUESO(ケソ)チーズ工房」さんにお伺いしてきました。

店の前に行くとまさかのクローズ。お店が開いていません。その場で電話をおかけすると卸販売専門だったそうです。(初めてのお店にお伺いするときは、電話で確認するのが間違いないと改めて学びました、汗)

しかし、お店の方が電話口でとても親切に、都内でスペインチーズをおろしてらっしゃる店舗さんをいくつか教えてくださいました。

その後の問い合わせで、神楽坂のアルパージュさんに5種のスペイン産があると確認できたのです。

店舗にてこちらも多くのフランスチーズが並ぶ中、6種のスペイン産チーズに出会えました!

 

 

スペイン産チーズ6種盛り合わせ

 

今週入手できたスペイン産チーズ6種類をご紹介します。(お店に並ぶラインナップは変わる可能性があります)

画像の干し柿の手前から、食べやすいと思う順で並べました。

*同じお店で購入していても、チーズの熟成加減、その個体差による味わいの繊細な違いがあります。食べる順は都度、ご自身で状態を確かめることをおすすめします。

 

・エル トフィオ(クラード)(El Tofio)

カナリア諸島 フエルテベントゥーラ島

山羊乳をつかったチーズ

60日熟成

外皮:パプリカで覆われています

 

・ケソ・デ・ムルシア・アル・ピノD.O.P.(Queso de Murcia al Vino)

ムルシア州

ムルシア種の山羊乳をつかったウォッシュタイプの圧縮チーズ

赤ワインに漬けて熟成させます。

大きなサイズ1kg以上:最低45日熟成

小さなサイズ300g~400g:最低30日熟成

外皮:なめらかで赤ワインが濃くなった色


・イディアサバルD.O.P.(Idiazabal

バスク州、ナバラ州

羊乳をつかった圧縮タイプのセミハードからハードタイプのスモークチーズ

最低60日間熟成させます

外皮:固く滑らか

 

・アル ロメロ (Al Romero)

カスティーリャ・ラ・マンチャ州

羊乳をつかったハードチーズ

3ヶ月の熟成

外皮:ラードとローズマリー(この外皮は外して食べるのがおすすめ)

 

・ケソ・マンチェゴ12ヶ月(Queso Manchego)

カスティーリャ・ラ・マンチャ州

マンチェガ種の羊乳をつかった圧縮タイプのチーズ

重さ1.5kg以上:最低30日熟成

それ以上の重さ:最低60日~最高で2年まで熟成

外皮:外して食べるのがおすすめ


・サン・シモン・ダ・コスタD.O.P.(San Simón da Costa D.O.P.) 

ガリシア州

牛乳をつかったハードタイプのスモークチーズ

最低30日間の熟成

外皮:白樺の樹(アベドゥール)でスモークされています

 

筆者がチーズに合わせるパンは、バケットや、パンドゥミタイプのパン、極薄タイプのクラッカーなどです。

チーズはそのままでも存在感のある味わいです。

「6種のなかでいちばんおすすめは?」なんて聞かれたら困ってしまいます。

なぜならそれぞれ、味わいと風味にしっかりとした個性があって、

「このワインもいいけど、あのワインもいいかも?」
「いや、あのワインならやっぱりこっちかな?」

なんて、嬉しい考え事がとまらないくらいだからです。

最初はそのまま、ふた口目以降は、干し柿やドライイチジクなどのドライフルーツ類、桃のジャム、ハチミツなどとあれこれ組み合わせて、違いを楽しみました。

 

・最後に

ちょうど昨年、スペイン・トレドでチーズ工場にご招待いただいた際、多くのケソ・マンチェゴを味わう機会がありました。熟成期間が違うもの、外皮をアレンジした(オリーブオイルが違ったりハーブを使った)ものなど。

もちろん「違いがあるだろうな〜」と、想定はしていました。が、しかし、実際に食べ比べると、こんなに変化があるのかと、それは驚いたものです。ケソ・マンチェゴの場合は、1種のチーズであっても、さまざまなバリエーションができ、わかりやすくチーズの奥深い世界をみせてくれることにワクワクしたものです。

スペインのチーズは、現地には100種類を超えるほどあります。原料も牛、羊、山羊、混合乳など、さまざま。つくられる場所で、色も形も刻印も違い、個性豊かに味わえます。

まるでスペインワインやオリーブオイルと同じです。その土地の気候や文化を反映していて、生産者が手がける希少な味わいなんですね。

とはいえ、日本では、常時10種以上が入手できるところが少ないのが現状です。都内でも1種か、2種のスペイン産チーズが常時ある店舗はすべてではありません。とても残念なことだと思います。

だからこそ今回は、アルパージュさんでは、5種どころか6種のスペインチーズを購入できたことは本当に嬉しく思いました。もし、新たにスペインチーズを見つけたら、またご紹介します。

現地へ行けば、簡単に味わうことができますが、ほとんど日本にいる私たちには、フランス産、イタリア産のように、スペイン産ももっと手に入ると最高ですね。

スペインワインとチーズのマリアージュイベントなどができたら楽しそうだなと思っているところです。

もしまだスペインチーズを味わったことがなければ、ぜひ見つけたら、味わってみてください。


 

・神楽坂アルパージュ

アルパージュさんは25周年を迎える神楽坂の人気店です。

筆者が伺った際も、お客さんに丁寧に説明をされているのが聞こえてきて、とてもプロフェッショナルで誠実な方々だと思いながら順番待ちをしました。

実際に担当してくださった方は、チーズのことはもちろん何でも教えてくださるのですが、スペインに訪問したことがあり、J.S.A.ワインエキスパートもお持ちでした。ワイン好きには、合わせるワインのこともわかってくださるのも嬉しいですね。

 

Fromagerie Alpage
チーズ専門店 アルパージュ

〒162-0825
東京都新宿区神楽坂6-22
tel  03-5225-3315
fax  03-5225-3314
E-mail cheese@alpage.co.jp

営業時間 11:00 ~ 18:00(日~水)
     11:00 ~ 19:00(木・金・土)
定休日 なし(年末・年始のみ休み)

 

 

 

 


Ikumi Harada

Tomoko Kato 加藤智子
Editor-in-chief 

福岡県出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年から様々なレストランにて調理やワイン販売などの経験を積み、リストランテ「アクアパッツァ」にて広報・PRとして従事。2009年、スペイン産オリーブオイルに一目惚れし「LA PASION」を立ち上げ、今年で16年目を迎えるインポーターとして多くの顧客に恵まれている。2011年に「スペインワインと食協会」を設立。企画運営している「スペインワインと食大学」は人気講座に成長を遂げ、企業や行政からオファーが相次ぐ。取材・執筆では、スペイン・アンダルシア州政府より日本代表として現地スペインに正式招聘されるなど、企業や州政府からの取材依頼が絶え間なく続いている。Webマガジン「LOHASPAIN」の編集長として、スペイン食文化やワインの魅力を国内外に発信中。
@ tomoko_kato_lapasion