「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」

「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」

「Esencia – 海の向こうの、日常の少し先にある場所」

 

旅とは、計画された非日常ではなく、日常の延長にふと現れるもの。


この連載「Esencia(エセンシア)」は、「スペインの紀行文をシリーズ化して欲しい」というひとりの読者の声がきっかけで生まれました。私自身が仕事で年に数回だけ訪れるスペインの街や村を舞台に、“ほんの少し先のリアル”をすくい取って綴ります。

 

 

オリーブ畑、ワイナリーの丘、そして世界の食のプロたちが集う展示会。

限られた時間のなかでも、現地の生産者、職人、文化人や料理人たちと出会うたび、彼らの生き方や選択をそっと垣間見てしまいます。彼らの言葉には、土地とともに生きる者だけが知る哲学があって、日本にいるだけでは考えもしなかった視点が、不意に開かれる瞬間があるから。

 


そして取材の合間に訪れる小さなレストランや、午後の光が美しい路地裏のカフェ、なぜかワクワクしてくる市場の一角──それらは、観光ガイドには載っていない場所ばかりとは限りません。

時には有名な観光地や定番スポットにも足を運びますが、その場所をどう見て、どの時間に訪れ、誰と言葉を交わすかで、景色はまるで異なる表情を見せてくれます。

 

私はスペインに住んでいるわけではありません。だからこそ、訪れるたびに新鮮で、驚きがある。
しかし同時に、年に数回というリズムは、“旅人”とは異なる視点を育ててくれる。観察者であり、少しだけ関係者でもあるような、絶妙な距離感。

 

 

この連載では、スペインという国の「生活」に触れながら、「楽しく、豊かに生きるとは何か?」というテーマをゆるやかに問いかけていけたらと考えています。
都市と地方、伝統と革新、偶然と選択。その間にあるものが、「スペイン食文化」の豊かさであり、ラグジュアリーの本質なのかもしれません。

 

 

「Esencia」は、スペイン語で「本質」や「香り」を意味する言葉。
オリーブ畑で感じた風、グラスの縁に残ったオレンジピールの香り、シェフの手に刻まれた時間。
いつかあなたがその土地を訪れるとき、この連載で描いた風景が、そっと背中を押してくれるような存在になればと願っています。

Esencia」── それは、スペインという国の「本質」と「香り」をめぐる旅の記録。
次の旅への小さなきっかけとなりますように。



 


Ikumi Harada

Tomoko Kato 加藤智子
Editor-in-chief 

福岡県出身のフードジャーナリスト、インポーター。1997年から様々なレストランにて調理やワイン販売などの経験を積み、リストランテ「アクアパッツァ」にて広報・PRとして従事。2009年、スペイン産オリーブオイルに一目惚れし「LA PASION」を立ち上げ、今年で16年目を迎えるインポーターとして多くの顧客に恵まれている。2011年に「スペインワインと食協会」を設立。企画運営している「スペインワインと食大学」は人気講座に成長を遂げ、企業や行政からオファーが相次ぐ。取材・執筆では、スペイン・アンダルシア州政府より日本代表として現地スペインに正式招聘されるなど、企業や州政府からの取材依頼が絶え間なく続いている。Webマガジン「LOHASPAIN」の編集長として、スペイン食文化やワインの魅力を国内外に発信中。
@ tomoko_kato_lapasion