【1/31】第15回スペインワインと食大学
「スペイン産オリーブオイル」Vol.4
~オリーブオイルソムリエ 田川敬子さんとスペイン産オリーブオイルの世界を冒険しよう~

オリーブオイルが、食卓を変える。特別ペアリングイベント開催
スペインで昨年秋に搾油されたエキストラバージン・オリーブオイルと、八王子·多摩エリアで「知らない人はいない」と言われる老舗ブランドBASEL(バーゼル)豊田店で味わう特別なひととき。
23区から少し離れた豊田駅に降り立つと、空気がわずかにやわらぎます。いつもより長い移動時間そのものが、これから始まる体験の助走になるような、そんな感覚です。
今年で10周年を迎えた体験型イベント「スペインワインと食大学」の幕開けは、八王子を中心に多摩地区と湘南に展開するグループBASEL「豊田店」で開催しました。
スペイン・バレンシア在住のオリーブオイルソムリエ田川敬子さんを迎えての講座は今回で3回目。主催としての大学開催は、15回目という節目の回でもあります。

BASEL 豊田店 テラス席
■ なぜ郊外で開催したのか
これまで主に23区内で開催してきましたが、今回は初めて多摩地区。その理由は、豊田店に勤める秋山さんの存在がありました。
秋山さんは、これまでのスペインワインと食大学・オリーブオイルシリーズはもちろん、さらにスペインワインの生産者を招いた別企画にも何度も参加してくださっていた常連さま。“お客さま”として時間を共にしてきた方がこんなに大切にしている場所。ならば、きっと良い時間が生まれるはずだと考えました。
「今でもこの空間が大好きなんです」と、豊田店のことをおっしゃる秋山さんに感動し、「10周年の最初の回は、ぜひここでやりたい」そう感じたからです。
秋山さんが長くお勤めなのは知っていましたが、豊田店に23年も継続されていたことはこの時初めて知りました。50年以上にわたり、カフェ、ブラッセリーや洋菓子店として地域に愛され続けてきたBASELグループの中でも、豊田店が2番目に歴史ある人気店舗だということも。
この経緯を理解して、筆者の想いをあたたかく受け止め、後押ししてくださったのが豊田店スタッフの皆さまです。
BASEL 豊田店 入口に焼き菓子やケーキが並びます
とはいえ、23区からは少し距離があります。正直なところ、大学としても初めてのことですから集客への不安がなかったわけではありません。しかし、実際に豊田店でランチをいただいて、心震える素敵な空間であることを筆者自身が実感してしまいました。
「この雰囲気なら、移動時間も含めて豊かな体験になる場所に間違いない。開催してみたい。」その思いを止めることができませんでした。
結果として16席はすぐに満席に。ニュースレター配信からすぐにお申し込みくださった皆さん、秋山さんと豊田店の皆さんがご来店の方にもイベントのお声かけをしてくださったおかげです。
■ 昨年秋のオイルを味わうという体験
この日、講師がスペインからハンドキャリーでご用意くださったのは、2025年秋にスペイン現地で搾油されたばかりのオリーブオイルです。

青いトマトや若草を思わせる香り。フルーツやナッツを想像できる味わい。口に含んだ後、喉の奥に穏やかな辛味や刺激。この時期だからこそ体験できる希少な味わいです。

写真:12airs.主催 斎藤藍さん
講師は、毎回、スペインの最新のオリーブオイル事情を現地で撮影した画像や動画とともに紹介してくださいます。収穫の様子、搾油の現場、気候の変化、品種毎の出来栄え。どれも書籍や二次情報ではなかなか得ることがむずかしい、生きた一次情報です。

まさにスペインに暮らし、生産者と日常的に交流がある講師だからこそ伝えられる内容です。生産者から現場で直に聞き、一緒にオリーブ畑を歩いてきた講師。リアルに学び続け、これまでの知見も加えて、より分かりやすく翻訳された内容を教えてもらえるのですから。

オリーブオイルは農産物なので、イチゴやレタスと同じように、毎年ちがいがあります。そのちがいを知り、変化を味わい、理解を更新していく楽しさがあります。一度だってまったく同じ味わいがないのですから。
このような機会を積み重ねていくことが、まさに「オトナの豊かな学び」と言えるのではないでしょうか。

何度も参加されている方々はとくに、その意味を深く理解されているように感じます。「今年の内容、そして味わいはどんな感じだろう」と、毎年、確かめにいらしてくださるのですから。

知識を増やし、テイスティングを体験するたびに味覚はより繊細になります。しかも味覚が研ぎ澄まされるほど、視野も広がり、学びが面白くなる。いつでも学びは新鮮です。そんなひとときを皆さんと共有できる場であることを、改めて実感した時間でした。

別のご予定の合間を縫って参加してくださった石井さん(左)、丹澤さん(左から二番目)。
最後までいられなくとも、「この時間だけでも」と足を運んでくださったことに、深い感謝を覚えています。
BASEL渡辺社長(左から3番目)、12aires.主催 斎藤藍さん(右から3番目)、豊田店秋山さん(右から2番目)、筆者(右)
■ 理論から実践へ
講座が開始される前に、BASERグループの渡辺社長が会場に足を運び、ご挨拶をしてくださいました。
有限会社バーゼル洋菓子店 代表取締役 渡辺 純氏
多摩地区で初開催という大学の新たな試みを、組織として歓迎してくださっているのが渡辺社長の言葉からとても伝わりました。イベントの意味をご理解くださり「場づくり」ということを応援していただいた感覚があり、とても嬉しく思います。
講座の後には、マリアージュの時間です。
皆さまにお配りする途中から、会場のあちこちで歓声があがりました。視線が集まったのは、この日のために用意された特別な6種のワンプレートです。
料理ごとにオイルを合わせ、そのちがいを明確に体感していただきます。同じ野菜でもオイルが変わるだけで印象の変化があるなど、新しい発見がたまらない瞬間でもあります。講座の理解と体験が結びつき、テーブルごとに小さな感動が生まれていました。
このワンプレートの誕生秘話を少し。
実は、BASELグループの「バーゼルパブリックハウス」(都立大学南大沢キャンパス内)には、スペインでの経験をもつヒロシェフがいらっしゃいます。
大学開催を豊田店の店長さんを通じて知ったシェフの方から「オイルに合わせた料理をぜひ」と、メニュー考案を申し出てくださったのです。
写真:12airs.主催 斎藤藍さん
店舗は離れていますし、日常業務もある中、このイベントの趣旨を理解し、お声かけくださったのです。どんな品種のオイルをつかうのかなど確認して、この6種の鮮やかなタパスをご用意くださいました。

昨年10月、都立大学南大沢キャンパス内にオープンしたバーゼルパブリックハウス( BASEL Public House) にいらっしゃるヒロシェフ
それぞれを単体で完成させつつ、テイスティングしたばかりの搾りたてオイルをかけることでポテンシャルを発揮するという設計。オリーブオイルという主役を理解し「かけて完成する料理」という、構成です。

ヒロシェフ(左)、豊田店スタッフ秋山さん(中)と店長(右)
さらに印象的だったのは、器や備品に至るまで、シェフご自身が当日、会場へ運び込んでくださり、店長やスタッフの方々と仕上げてくださったこと。
この一皿を通じ、このレストラングループで働く方々の温かい連携、結束のようなものを垣間見させていただいた気がしています。

■ 十周年の祝杯
マリアージュが始まるとき、ワインで乾杯。10周年を祝うささやかな時間をいただきました。
スタッフ秋山さんが、スペインワインのイベントで購入されたOstatu白ワイン。講師が持参してくださった日本未入荷アルメリアの赤ワイン。
そしてもう一本。当協会の共同代表でありスペイン在住の原田郁美さんが、初めてリリースしたオレンジワイン。このワインは2024年秋に誕生し、世界で900本、日本では180本のみ流通という希少さ。筆者がずっと大切に保管していた1本をスペイン在住の郁美さんの分身としてお持ちしました。

16名と関係者で分け合うと、かなりわずかな量です。それでも皆さん、とても大切に味わってくださって。
「10周年、おめでとうございます」そう、何度も声をかけていただき、これまで積み重ねてきた時間、関わってくださった方々に改めて感謝の気持ちが湧いてきました。
同じ瞬間を共有し、同じ味わいを分かち合うからこそ、もっと特別になる。そのように思えた時間でした。

グリフォイ・デクララ トッサルス オレンジ
そしてもうひとつ、忘れがたい贈り物がありました。
参加者のおひとり12airs.主催 斎藤藍さんが、オリーブオイルをつかったコールドプロセス製法の石鹸を、16名全員分ご用意くださっていたのです。
大学10周年のお祝いと、多摩地区にて初開催を記念してのサプライズでした。
藍さんは、多摩の地で15年以上にわたりオリーブオイル石鹸を作り続けているプロフェッショナル。時間をかけて熟成させるコールドプロセス製法は、素材のもつ力を引き出す製法として知られています。
食卓で味わったオリーブオイルの生命力が、今度は肌に触れるかたちへと姿を変える。オリーブオイルが料理だけでなく、暮らしそのものへと広がっていく。まさにオリーブオイルのあるライフスタイルを象徴する贈り物でした。
多摩という土地で育まれてきた営みと、スペイン産オリーブオイルが出会ったのは、偶然ではなく、10年という時間が引き寄せた必然のようにも感じられました。
主催として場づくりをする立場ですが、期せずしてこの夜は何度も「受け取る側」になりました。10周年とは、続けてきた証であると同時に、支えてくださる方々の存在をこんな素敵な形で教えてくれる節目なのだと教えてもらいました。

12airs.主催 斎藤藍さん
■ もうひとつの祝福
実はこの日、参加者のおひとりのお誕生日でもありました。その方は秋山さんのご友人でもあります。
会場全体でのバースデーサプライズに、自然とあたたかい拍手と笑顔が広がりました。

まさに学びの場が、祝福の場へと変わる瞬間。おひとりで参加された方、初めての方もいらしたのに、まるで最初から全員が知り合いのように、笑顔で祝ってくださいました。
学び・料理・ワインを通して、人と人との関係が近くなっていきます。このようにして皆さんの体験が、より深く記憶に残るものになるのだと感じました。
■ 次の十年へ
今回、多摩地区のお店で生まれたこのひとときは、移動時間まで含めて、まるでひとつの物語のようでした。
「今まで何となく選んでいたオイルが、ぜんぜんちがうものに感じます」
「料理との組み合わせをもっと試したい」
「次回も必ず参加したい」
そんな声が自然とあふれ、隣同士、初対面だったはずなのに、気づけば笑い声が広がっていました。本場と直接つながり、知識と味覚を重ね、分かち合う。一本のオリーブオイルが、食卓の見え方を変えることを実感する時間となりました。
ご参加の皆さん、講師、会場の豊田店とBASELグループの皆さん、本当にありがとうございました。

そして物語は、すでに次の章へと進んでいます!
田川敬子さんによるオリーブオイル講座は、次回の帰国時にぜひ開催をと、すでにオファーをいただいています。一過性の企画ではなく、積み重ねてきた時間の結果として、このように信頼をいただけたこと。主催としてとてもありがたく思っています。

その前に、今年4月13日 19時から別の形で講師の田川敬子さんとご一緒します。スペインからオリーブオイル生産者を迎えての大学開催が決定しました。今回の講師、田川敬子さんが通訳を務め、プチテイスティングも担当てくださることになりました。
ワインでは知られるメーカーズディナーですが、「オリーブオイル生産者によるメーカーズディナー開催」は、国内でもかなり稀です。現地のつくり手の言葉を、その温度でお届けする貴重な機会となります。
また新たな味わいを皆さんとご一緒できることを、心より楽しみにしております。

スペインワインと食協会プロデュース「スペインワインと食大学」とは
企業と一般の人々のプラットホームとなるオトナの学び場「スペインワインと食協会(=スペ食大学)」を開催しています。
多くの人に知られていない「スペインワインと食」を見る、聞く、味わう、体験と、五感を使い楽しみながら、その業界の一流講師による貴重な講義を体験できます。ここでしか得られないリアルイベントならではの仲間との出会いは一生の宝物です。
スペインワインと食協会とは
スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。
スペインワインと食大学運営:スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤 スペインオフィス/原田)
WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org

Tomoko Kato 加藤智子
Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer
福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、17年にわたりインポーター業を継続。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府や企業団体からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに毎年参加するほか、行政機関や企業団体のイベント企画・発信も行っている。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を一貫して手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。オリーブオイルソムリエ®、Spanish Pantry(ICEX認定)。
@ tomoko_kato_lapasion