taste spain from tokyo

東京から味わう、
スペイン

東京から、スペインの食とワインを見つめます。東京だからこそ感じ取れるスペインの現在地と、その先につづく物語。その味わいをあなたと一緒に味わっていけたらと思います。

旅と食と、人。日本橋・小伝馬町「麹と野菜とワインの小さな台所 Mino みーの」を訪ねて

旅と食と、人。日本橋・小伝馬町「麹と野菜とワインの小さな台所 Mino みーの」を訪ねて


その日、筆者が訪れたのは、オリーブオイルの専門家たちが集う場に参加するためでした。

完全予約制。旅する店主が料理をつくる店、日本橋・小伝馬町にある「麹と野菜とワインの小さな台所 Mino みーの」。

そう聞くと、まずは料理を味わう場所を想像するかもしれません。けれど、実際に足を運んでみると、この店にはもうひとつの顔があることに気づきます。
オリーブオイルはもちろん、ワイン、日本酒、味噌づくり。
食にまつわる魅力的な講座や学びの場も、ここでは開かれています。

 

 

 

店の軸にあるのは麹と野菜。さらに食材だけでなく、塩、油などの調味料にも店主みのりさんがこだわりぬいた選択があります。
ひとことでお伝えするなら「創作料理を味わう店」。しかしこの店を訪れる理由は、料理のジャンルだけではあまりにも説明しきれないのです。

 


 

店主みのりさんは、自分の足で外へ出る

みのりさんは、時間をつくっては、国内にとどまらず海外にも向かいます。現地で食べ、飲み、その土地の空気のなかで食文化にグッと触れるのです。気に入った器なども日本も海外も関係なく、ご自身で選び購入されます。

そして、その経験が店に戻ってきます。

旅先で見つけたものを、そのまま再現するのではありません。みのりさん自身が実際に体験し、体感したことが、みのりさんのフィルターをとおして皿の上の料理へと移されていきます。だから訪れた方々は、料理を食べるというだけでなく、みのりさんが外の世界で受けとってきた味わいや感覚に触れることになるのです。

「発信」という言葉を聞くと、SNSを思い浮かべる方が少なくありません。
しかし「発信は画面の向こうだけで行われるものではない」と、こちらへ伺うといつも筆者は感じます。なぜならこの店では、味わいから発信されるから。
みのりさんが見つけ、確かめ、もち帰ったものが、料理を通じてお客さまへ渡されていく。その意味で、この小伝馬町の店そのものが、まさに一つの発信基地になっています。

 


 

いつも少し早く、外へ向かう

みのりさんには、世間の流れより少し早く反応するアンテナがあるとしか思えません。
「流行を追う」というより、ご自身が気になったものがあればすぐに現場に飛ぶ。その行動が、いつもとても早いのです。

この行動力は、料理の背景として無視できません。それは店で出される味わいが、厨房のなかだけで考えられたものではないから。みのりさんが移動した距離、現地で得た体験、その前後にかかった時間までもが、料理の構成に加わっています。

だからお店では定番の味わいを楽しみつつ、いつも新しい発見があります。
最初は「おいしい食事をしよう」、「みのりさんにお会いできるのが嬉しい」と思って訪れます。しかし食べ進めるうちに、知らなかった食材や味の組み合わせ、旅先の文化に触れる機会が生まれます。だからその日の食事が、味の記憶だけで終わらないのです。

ここでは食事をしながら、まるで広い世界を覗くような感覚になります。自分の知見までもが少しずつ広がっていくような、そんな気持ちにすらなるから不思議です。

 


 

麹と野菜を中心に据える理由

この店の料理は麹と野菜を中心に組み立てられています。ただし「野菜料理だから軽い」というシンプルな話ではありません。
料理の随所につかわれている麹はもちろん、調味料にもこだわりの選択があり、つかい分けも幅広く意識が向けられていることがわかるはずです。

食べる側として印象に残るのは、しっかり食べたあとのこと。料理とワインを楽しみ、その素晴らしさに気がつけば普段以上に食べてしまいます。それでも一度だって食後に胃もたれを感じたことがないのです。

そして何度か伺ううち、ここでの食事が美味しいだけの時間ではなくなっていることに気づいていきます。
その理由をひとつに断定することは難しいです。しかしみのりさんが食材や調味料、油を選び、麹を料理に取り入れていることは、この食後感と切り離せない大きな要素だと感じています。だから「おいしかった」という感想だけでは、ここで起きていることを説明できないのです。しかし帰宅したとき、自分の身体の状態から理解できます。

 


 

ひとりでつくり、ひとりで動く

みのりさんは、基本的にひとりで立ち仕事をこなし、料理をつくり、店を運営されています。その一方で、店の外へ出る時間もつくる。その行動は以前お聞きした「健康」というテーマともつながっているように見えます。

健康とは。
みのりさんの場合、日々の立ち仕事を続けながら店を営み、時間をつくって旅へ出る身体と行動そのものが、その言葉に具体性を与えていると感じます。

食べることを仕事にしている人の健康は、必ずしも料理だけで証明されるものではないです。どのように働き、動き、外の世界と接するか。

みのりさんの姿を見ていると、店で提供される料理と、ご自身の生活が別々に存在しているわけではないことがわかります。

 



「健康になってもらいたい」ということ

みのりさんの料理には、「ここへ来た人に、本当の意味で健康になってもらいたい。」という想いが根底にあります。とてもシンプルでまっすぐな想い。しかし、それを料理として表現し続けることは簡単ではないはずです。

季節の野菜や食材を選び、調味料を選び、油を選び、麹をつかう。
自分自身で外へ出て、新しいものに触れ、その経験を店へ持ち帰る。
ひとりで料理をつくり、お客さまに出す。

こうした行動の積み重ねがあるから、「健康になってもらいたい」という言葉が、店の説明文としてではなく、実際の食事のなかで受け取る方が少なくないのだと思います。

みのりさんはご自身が実際に体験していないものを、ただ情報として料理にしません。そういうリアリティは、この店の料理を支えているはずです。

 


 

食べ終えたあとに残るもの

知らなかった味、旅先から持ち帰られた食文化、初めて見る柄の器。
そして店を出るころには、休息したというより、少し力が戻っているのがわかります。みのりさん自身に会えば、この店の料理がなぜこうした方向へ向かうのか、理解しやすいのかもしれません。

 

 

みのりさんがピンときて訪れた国内外のこと。そこで得たものを、また小伝馬町へ持ち帰り、みのりさんのフィルターを通した料理として登場します。
定番の味わい、そして新しい味わいも、その繰り返しのなかで、店の料理はこれからも変化していくのだと思います。
ここでは料理を食べて終わりません。
食事を終えたあと、たとえその日の料理名をすべて覚えていなくても。

それは、味覚はもちろん、身体が忘れないから。

 

麹と野菜とワインの小さな台所 Minoみーの 店主みのりさん
@Minoみーの

 

 

 

スペインワインと食協会( @spainwinefood_japan)とは

スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。

スペインワインと食大学運営:スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤 スペインオフィス/原田)

WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org

 

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Ikumi Harada

Tomoko Kato 加藤智子
 Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer

福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、インポーター業は17年目を迎える。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府、企業団体や生産者からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに参加するほか、取材、イベント企画を行う。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。GPEスペイン・ワイン・テロワール・ディプロマ、オリーブオイルソムリエ®、Spanish Pantry(ICEX公認)。

@ tomoko_kato_lapasion