7皿の料理と13社の展示から見る、食材の多彩な使い方
2026年10月15日、東京・日比谷パレスで「バレンシア州アグリフード マリアージュ・展示会 2026」が開催されました。
主催は、スペイン・バレンシア州政府商業支援室(IVACE+i)。バレンシア州の食品・飲料企業13社が参加し、地中海沿岸の食文化を支える多彩な食材や商品が紹介されました。
イベントの前半に行われたマリアージュでは、日比谷パレスの松本シェフがバレンシア州産の米やオリーブオイル、香辛料、はちみつ、チョコレートなどを日本の食材と組み合わせ、7品のフランス料理に仕立てました。2種類のプティパンと、バレンシア州産の白ワイン、赤ワインも提供されています。
会場の1階では、参加企業による商品展示会も開催。料理として味わい、商品として知るという二つの側面から、バレンシア州の食に触れる機会となりました。

地中海沿岸に育まれた、バレンシア州の食文化
スペイン東部、地中海に面するバレンシア州は、温暖な気候に恵まれ、米やオリーブ、柑橘類、ブドウなどの栽培が盛んな地域です。

とりわけ米は、バレンシア州の食文化を語るうえで欠かせない食材。世界各地で親しまれているパエリアもこの地方にルーツがあります。さらにさまざまな品種からつくられたオリーブオイル、ワイン、香辛料、はちみつやチョコレートなどにも、地域の食の幅広さが表れています。

今回のマリアージュには、こうした食材が取り入れられました。

バレンシアの食文化を知るシェフの解説とともに
今回のマリアージュでとくに貴重だったのは、バレンシアの食文化に精通したスペイン郷土料理「イレーネ」数井 理央シェフから、食材について直接解説を聞きながらテイスティングできたことです。

スペイン郷土料理「イレーネ」数井 理央シェフ
講師は、料理に使われた食材の特徴や現地での親しまれ方を紹介。産地の食文化や食材の背景を知ることで、目の前の料理への理解もぐっと深まります。現地の食を知る専門家の言葉と、実際の味わいを結びつけられる充実したひとときでした。

「日比谷パレス」松本 健二シェフ
料理そのものも、7皿の素晴らしい構成が印象に残っています。ひと皿ごとに味わいや食感の変化がありました。提供する順序、絶妙な量のポーションにも細やかな配慮が感じられました。最後のデザートまで飽きることなく、心地よく味わえる流れは、日比谷パレスの松本シェフが率いるチームの技術と感性を感じさせるものでした。
7皿で楽しむ、バレンシア州産食材の多彩な魅力
以下、当日配布された資料をもとに各料理の特徴と使用されたバレンシア州産食材をご紹介します。
1 マルメロとフロマージュのカナッペ

使用食材:Campomar Nature/オーガニックマルメロペースト
コースの始まりは、マルメロとフロマージュを組み合わせたカナッペです。
この料理には、Campomar Natureのオーガニックマルメロペーストを使用。
コクのあるチーズにスペイン産有機マルメロ(西洋かりん)のペーストを重ねた、素材の味わいを活かしたカナッペ。
2 白いんげん豆のヴルーテ
Velouté

使用食材:Beneolivas S. Coop. VL/オリーブオイル「SJRスムム」
Bras del Port/天然海塩フレーク
白いんげん豆を使ったヴルーテには、Beneolivasのオリーブオイルと、Bras del Portの天然海塩フレークが使用されました。
白インゲン豆のやさしい甘みと爽やかなオリーブオイルに、フレーク状の海塩の軽やかな食感と塩気が重なるスープです。
3 彩り野菜と米のサラダ
Entrée

使用食材:Arroz Dacsa/寿司用特選米(エクストラ等級)
El Avión/パプリカパウダー
Finca 9 Oliveres/オーガニックEVオリーブオイル 100%ブランケータ
Campomar Nature/オーガニックノンパレイユケッパー
彩り豊かな野菜と米を組み合わせたサラダです。
使用されたのは、Arroz Dacsaの寿司用特選米。短粒で粒同士がほどよくまとまる、ジャポニカ種の白米です。そこにEl Aviónのパプリカパウダー、Finca 9 Oliveresのブランケータ種100%のオリーブオイル、Campomar Natureのケッパーを組み合わせています。
日本では主食としておなじみの米ですが、野菜や調味料と合わせたサラダにすることで、新しい表情を見せます。米を日常的に食べる日本の読者にとっても興味深い使い方です。
4 天然真鯛のア・ラ・ナージュ 生姜とレモンのフレーバー
Poisson

使用食材:Azaconsa/インフュージョン「緑茶 生姜&レモンフレーバー」
Beneolivas S. Coop. VL/オリーブオイル「SJRレゼルバ・ファミリアール」
Bodega Las Virtudes/白ワイン「ラス ビルトゥデス フォルタレサ」
日本の天然真鯛を使った魚料理には、Azaconsaの緑茶、生姜、レモンの風味を持つインフュージョンが取り入れられました。今回はBeneolivasのオリーブオイルとBodega Las Virtudesの白ワインも使用。魚料理にインフュージョンを取り入れるという、飲料の新しい活用方法が示されました。
5 茨城県「つくば美豚」のスパイスロースト
Viande

使用食材:El Avión/サーモン&クロマグロ用シーズニング
Finca 9 Oliveres/オーガニックEVオリーブオイル 100%アルファファレンカ
Bodega Las Virtudes/赤ワイン「ヴィナロポ アリカンテ・ブーシェ」
Soc. Coop. Apicola de España/栗の花はちみつ
茨城県産「つくば美豚」のスパイスローストです。
この料理で目を引くのは、El Aviónのサーモン&クロマグロ用シーズニングを豚肉に使用していること。魚料理向けの調味料を肉料理に応用しています。さらにFinca 9 Oliveresのアルファファレンカ種100%のオリーブオイル、Bodega Las Virtudesの赤ワイン、Soc. Coop. Apicola de Españaの栗の花はちみつを使用。
日本の豚肉に、バレンシア州の香辛料やオリーブオイル、ワイン、はちみつを組み合わせた一皿です。
6 バレンシア原産地 エクストラ等級米のリゾット トリュフの香り
Risotto

使用食材:Fruits de la Terra/トリュフクリーム、黒トリュフ入りアーティチョークジャム
Arroz Dacsa/エクストラ等級米(バレンシア原産地呼称)
バレンシア州産の米を使ったリゾットです。
米は、バレンシア地方を代表するセニア種。原産地呼称の認証を受けたエクストラ等級米が使用されました。さらにFruits de la Terraのトリュフクリームと黒トリュフ入りアーティチョークジャムを組み合わせています。なめらかな口当たりでありながら、米の粒の食感もしっかりと感じられる仕上がりです。バレンシア州の食文化を代表する米が、トリュフを使ったフレンチのリゾットとして提供されました。
7 ショコラオランジェ 田野畑アイスクリーム
Dessert

使用食材:Azaconsa/インフュージョン「オレンジ&プロポリスはちみつのハーブ&フルーツティー」
Bras del Port/天然海塩
Señoríos de Relleu/EVオリーブオイル「デリケート・クパージュ」
Soc. Coop. Apicola de España/山野はちみつ
Utopick Chocolates/「ワイルドペッパー」、「レア シトラス(カナロネ)」
最後のデザートは、チョコレートとオレンジを組み合わせ田野畑アイスクリームを添えた一皿です。Azaconsaのオレンジとプロポリスはちみつの風味を持つインフュージョンをはじめ、Bras del Portの天然海塩、Señoríos de Relleuのオリーブオイル、Soc. Coop. Apicola de Españaの山野はちみつが使用されました。さらにUtopick Chocolatesの「ワイルドペッパー」と「レア シトラス(カナロネ)」という2種類のチョコレートも取り入れています。
柑橘やはちみつ、塩、オリーブオイルなど、甘味以外の要素も組み合わせたデザートです。バレンシア州産食材の用途が、前菜からデザートまで幅広いことを感じさせる締めくくりでした。
プティパン

使用食材:Señoríos de Relleu/EVバージンオリーブオイル「プレミアム収穫1日目」
料理とともに、2種類のプティパンも提供されました。
使用されたのは、Señoríos de Relleuのエクストラバージンオリーブオイル「プレミアム収穫1日目」です。
バレンシア州産の白ワインと赤ワイン
マリアージュでは、バレンシア州産の白ワインと赤ワインが提供されました。
料理にもつかわれた Bodega Las Virtudesの白ワイン「ラス ビルトゥデス フォルタレサ」(品種:ソービニョンブラン・シャルドネ・ビオニエ)と、赤ワイン「ヴィナロポ アリカンテ・ブーシェ」(品種:アリカンテ・ブーシェ)です。
バレンシア州は、米やオリーブオイルに加え、ワインの産地としても知られています。ワインを料理に取り入れる方法と、食事とともに楽しむ方法。その両方からバレンシア州のワインに親しめる構成です。

13社の食品・飲料を紹介する展示会
マリアージュに続き、日比谷パレスの1階では、バレンシア州の食品・飲料企業13社による展示会が開催されました。
会場には各社の商品が並び、製品資料の配布や商談の機会も設けられました。料理の中ではほかの食材と組み合わされていたものも、展示会では単体で味わえるのが興味深いところ。食材そのものの風味や個性を確かめることで、先ほどの料理への理解も深まります。
料理での使われ方を知り、展示会で素材そのものの特徴を確かめる。食材の選び方や活用方法について、具体的なイメージが広がる展示会でした。飲食店でのメニュー開発から食品の販売まで、日本でのさまざまな活用を考えるうえでも、意義のある機会です。

出展企業13社
BODEGA NTRA SRA DE VIRTUDES ボデガ・ラス・ビルトゥデス
BRAS DEL PORT, S.A. ブラス・デル・ポルト
CAMPOMAR NATURE, S.L. カンポマール・ネイチャー
FINCA 9 OLIVERES SL フィンカ・ノウ・オリベレス
FRUITS DE LA TERRA LA TRUFA S.L. フルッツ・デ・ラ・テラ・ラ・トゥルファ
JOSE GINES PONCE BADENES ホセ・ジネス・ポンセ・バデネス
JOSE MARIA GOMEZ MIRA, S.A. ホセ・マリア・ゴメス・ミラ
MAICERIAS ESPAÑOLAS, S.A. マイセリアス・エスパニョーラス
SEÑORIOS DE RELLEU SLU セニョリオス・デ・レイエウ
SOC. COOP, APICOLA DE ESPAÑA アピコラ・デ・エスパーニャ
UTOPICK CHOCOLATE S.L. ユートピック・チョコラテ
食材を知り、料理で味わう
バレンシア州の食材について専門家の解説を聞き、その特徴を料理で確かめ、展示会では商品そのものに触れる。今回のイベントでは、一つの食材を異なる角度から知ることができました。とくに印象的だったのは、講師の数井シェフによる解説が、テイスティングをより深い体験にしていたことです。現地の食文化を知る言葉が加わることで、料理の背景や食材の使い方まで理解が広がりました。
バレンシア州産食材の多彩さを、日本の食文化との組み合わせを通して紹介した「バレンシア州アグリフード マリアージュ・展示会 2026」。料理と展示の双方から、産地の食品・飲料を知る機会となりました。


Tomoko Kato 加藤智子
Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer
福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、インポーター業は17年目を迎える。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府、企業団体や生産者からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに参加するほか、取材、イベント企画を行う。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。
GPE スペイン・ワイン・テロワール・ディプロマ|Spanish Wine Specialist・Spanish Pantry(ICEX公認)|オリーブオイルソムリエ®