スペイン料理と聞いて、パエリアを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
日本でも親しまれている料理ですが、米の炊き加減や素材の旨味によって味わいは大きく変わります。なかでも興味深いのが火のつかい方です。
今回訪れたのは、虎ノ門エリアにある「薪火パエリア専門店 EL TRAGON(エルトラゴン)」。薪火で炊くパエージャを看板料理とするスペイン料理店です。

【写真:エルトラゴンの外観】
ご一緒したのは、スペイン語通訳者でソムリエ資格もお持ちのひろこさん。ランチコースを注文し、選べる前菜と肉料理はそれぞれ違うものにしました。
料理だけでなく、お店を支える方々の仕事ぶりも心に残るランチでした。

【写真:薪火で炊いているパエージャ】
バレンシアと日本をつなぐオーナー、栗原靖武さん
エルトラゴンのオーナーは栗原靖武さん。日本パエリア協会の事務局長として、パエージャの普及にも取り組んでいます。
2026年9月にも、パエージャ発祥の地であるスペイン・バレンシアへ。国際大会「World Paella Day Cup」に実行委員として同行されました。
日本代表は、6月の「パエリア・タパス祭り」で開催された日本予選を勝ち抜いた名古屋「El Jaldin」の六浦シェフ。世界大会では準優勝を果たしています。
六浦シェフの姿は、東京で開催された「Spain Food Nation Summit Japan 2026」でも拝見しました。この日は「Restaurants From Spain」「Colmados From Spain」の認定式も行われ、スペイン料理や食材の魅力を日本に伝えるレストランや販売店が紹介されました。

【写真:Spain Food Nation Summit Japan 2026の認定式】
写真キャプション:Spain Food Nation Summit Japan 2026の認定式にて。
中央右、黒いシェフコート姿が六浦シェフ。
認定式の様子は、Spain Food Nation Summit Japan 2026のレポートでも紹介されています。
栗原さんも現地バレンシアでの様子を
グランジャポンのサイトに掲載されたコラムに紹介されています。本場との交流を続けながら、日本でパエージャの魅力を伝えている方です。
さつまいものポタージュから始まるランチ

【店内】着席で40名、立食なら最大50名まで対応。グループでの食事やパーティーにも利用できます。
乾杯はスペイン・マドリード生まれのビール「Mahou(マオウ)」の樽生で。

【写真:Mahouの生ビール】
コースはさつまいものポタージュから始まりました。

【写真:さつまいものスープ】
前菜はイカのフリットとサクラマスの一皿を選択。温かいものと冷製のもの、二人で違う料理を選ぶことでコースの楽しみも広がります。


【写真:イカのフリット/サクラマスの前菜】
米料理はパエージャ・バレンシアーナにしました。
エルトラゴンでは、スープ仕立ての米料理「カルドッソ」や細いパスタを使った「フィデウア」も用意されています。
薪火で炊き上げるパエージャ・バレンシアーナ
厨房では薪が勢いよく燃えています。その炎を前に、大きなパエージャ鍋が置かれていました。
薪は燃え方によって火力が変わります。一定の火加減を保ちやすいガスとは違い、薪火を使いこなすには経験と技術が必要です。

【写真:薪火で炊いているパエージャ】
いただいたパエージャ・バレンシアーナは、素材の旨味が米にしっかりと行き渡った一皿。味の輪郭がはっきりしています。
食べ応えのあるボリュームでありながら、味のバランスが見事。ついもう一口と手が伸びるパエージャでした。


【写真:完成したパエージャ・バレンシアーナ/店長小林さんが取り分けてくださいました】
しっかりとした味わいなのに単調にならない。薪火で炊くパエージャの魅力を改めて感じました。
子羊と豚肉に感じた薪火の技術
肉料理は子羊と豚肉をそれぞれ選びました。
どちらも印象的だったのがやはり焼き加減です。火力が変化する薪火をつかいながら、それぞれの肉を見事に仕上げていました。

【写真:子羊の肉料理】
豚肉にはロメスコソースが添えられています。トマトやナッツなどを使うカタルーニャ地方のソースで薪火で焼いた肉に、相性抜群です。

【写真:豚肉の薪火焼き、ロメスコソース】
パエージャだけでなく肉料理でも、薪火を使いこなす小林シェフの技術を感じました。
個性の異なる2種類のスペインワイン
Mahouの後は白ワインを2種類いただきました。
一つはガリシア州D.O.モンテレイの「フラガ・ド・コルボ ゴデーリョ・ソブレ・リアス」。ゴデーリョを使った白ワインです。

【写真:フラガ・ド・コルボ ゴデーリョ・ソブレ・リアス】
もう一つはハビエル・ルイスの「ブランコ・デ・テンプラニーリョ」。こちらは黒ブドウのテンプラニーリョから造られた白ワインです。
黒ブドウから白ワインを造る「ブラン・ド・ノワール」という製法によるもの。白ブドウ品種のテンプラニーリョ・ブランコとは異なります。

【写真:ハビエル・ルイス ブランコ・デ・テンプラニーリョ】
品種も造り方も異なる2本。スペインワインの多様さを楽しめるセレクションでした。
店長・小林敦さんとシェフ・小林邦久さん。二人のプロフェショナルな連携
料理と同じくらい印象に残ったのが、店長の小林敦さんとシェフの小林邦久さんの仕事ぶりです。

【写真:店長・小林敦さんとシェフ・小林邦久さん】
オフィス街の虎ノ門らしく、ランチタイムにはお客様が次々と来店。10名ほどのグループから、お一人や二人連れまで。来店時間はそれぞれでも、注文は短い時間に集中します。
そんな忙しい時間帯にも、お二人の動きは実にスムーズ。互いの仕事が自然にかみ合い、料理とサービスが滞りなく進んでいきます。
慌ただしさを感じさせない連携は、見ていて気持ちがよいほど。お二人の姿から、プロフェッショナルの仕事に触れる心地よさまでも感じたランチタイムでした。
また訪れたい、薪火の料理
パエージャ・バレンシアーナの炊き上がり。子羊と豚肉の焼き加減。個性の異なるスペインの白ワイン。どれも印象深く、料理一つひとつの味わいが心に残るランチでした。
バレンシアとの交流を続けながら、料理の監修や商品づくりなど幅広い活動を通じてスペインの食文化を日本に伝える栗原さん。
そして日々、お店を切り盛りし、その魅力を日々の料理とサービスを通じて届けているのが、店長の小林敦さんとシェフの小林邦久さんです。お二人が現場を支えているからこそ、こうして心地よい時間を過ごせるのだと感じました。
これほど充実した料理をランチでも楽しめるのは嬉しいことです。
次はカルドッソやフィデウアも味わいに、また訪れたいと思います。
最後に栗原さん、ひろこさんと3人で記念撮影。スペインの食文化を通じて広がるご縁も、取材の楽しみの一つです。

【写真:ひろこさん、オーナー栗原靖武さん、筆者の3人】
薪火パエリア専門店 EL TRAGON(エルトラゴン)
東京都港区西新橋2-13-8 広瀬ビル1階
公式サイト:https://eltragon.owst.jp/
関連リンク

Tomoko Kato 加藤智子
Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer
福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、インポーター業は17年目を迎える。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府、企業団体や生産者からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに参加するほか、取材、イベント企画を行う。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。
GPE スペイン・ワイン・テロワール・ディプロマ|Spanish Wine Specialist・Spain's Pantry(ICEX公認)|オリーブオイルソムリエ®