私たちになじみのある発酵食品といえば、味噌、しょう油、麹、酒・・・。
日常でもよく取り入れているものが多いと思います。
今回はスペイン産ならではの発酵食品「シェリーヴィネガー」にフォーカスし、「酢」の嬉しいはたらきをご紹介します。
まずは簡単に発酵の説明から。
・発酵とは?
著書によると
「微生物たちの活動によって、いろんな原料が発酵すると発酵食品ができあがる。微生物が何かを分解し、何かをつくり出す活動が発酵の基本。」と書かれています。
納豆、ヨーグルトやチーズ、キムチなど世界にある原料から生まれた発酵食品を数えたらキリがないほどありますね。
・世界最古の発酵調味料
発酵食品の「酢」は、塩の次に古くから存在する調味料といわれ、紀元前のメソポタミアやエジプトでつくられていたことが確認されています。
アルコールを酢酸菌が酸化して、酢酸が発生することで酢になるため、「酢」は、酒から生まれたと考えられているのです。
世界にさまざまな酒があって、その酒を原料とする酢が誕生している理由です。
大麦からビールができてモルトビネガーになり、ぶどうからワインができてワインビネガーになるように、ぶどうからシェリー酒ができ、「シェリーヴィネガー」が誕生しました。
・酢がもたらしてくれる8つのはたらき
・殺菌作用、防腐効果
カルパッチョやサラダなどの生モノに使われているのは、美味しさに加え、殺菌や防腐効果という嬉しいおまけが。
・消化促進
酸味により唾液が多く出るので食欲増進のはたらきもあります。
・強い抗酸化
リンゴの変色を抑えたり、私たちの体の老化も控えるはたらきがあります。
・疲労回復
乳酸を分解するので疲労回復のはたらきがあります。
・老化防止
酢酸がカルシウムの吸収を促進し、骨粗しょう症などの老化防止のはたらきがあります。
アミノ酸が豊富なので、糖や脂肪をエネルギーに変えてくれるはたらきもあります。
・肥満予防
酢酸は脂肪の分解と燃焼を促進し、肥満予防のはたらきがあります。
生活習慣の予防や、糖の吸収を穏やかにすることから糖尿病予防、血管を広げるはたらきが高血圧予防にも。
・塩分の代用
酢をつかうことで塩味を感じやすくなり、減塩を促し、高血圧の予防にもなります。
・料理の味を整える働き
酸が味わいのバランスを調整するチカラがあること。料理の味わいを引き立て、彩りとアクセントをもたらしてくれます。
たとえば「あとひとあじ何か足りない・・・」そんなとき、私たちは最初に塩加減を気にすることが多いです。
しかしこの記事を読んだあなたは、塩味の次に、酸味の加減を確認することを思い出してみてください。
酸味は塩味と違うバランスで味わいを引き出してくれるからです。きっとしっくりくる旨味を体験できるはずです。
・シェエリーヴィネガーを選ぶ3つのポイント
一つ目は、ブドウ果汁やブドウ濃縮液などの「原料がシンプルなもの」をおすすめします。
原料に砂糖やカラメル色素などをつかわず、発酵と熟成時間と職人の技術によって生まれる琥珀色の輝き、その風味、自然な甘みやコク。
それがどんなものなのか知った上で、味わいや価格においてご自身が求めるヴィネガーをチョイスしていくこと。
シェリーヴィネガー本来の味わいと酸の嬉しいはたらきが必要な方は、とくに。
失敗しない食材選びにはおすすめの方法です。
二つ目は、どんなタイプの味わいでも信頼できる生産者が手がけたものを手に取ることが大切です。
「シェリーヴィネガー」とボトルに書かれていても、味はブランドや生産者により酸味の強いものからまろやかなものまでさまざまあります。
シェリーヴィネガーと名乗れるものは、シェリー酒からつくられます。
シェリー酒は、ヘレスのワインという意味で「ビノ・デ・ヘレス(Vino de Jerez)」といいます。アンダルシア州のヘレス(Jerez)でつくられていて、使うぶどうの品種も決められいるのです。
三つ目は、初めての1本を手にする方や、ご自身のお好みの味わいを知らない方に。
まず最初は、酸味に丸みがあるものを選ぶと失敗を防ぐことができます。もし購入してみたけれど料理に使いこなせない事態になっても安心だからです。
炭酸で割ってノンアルコールカクテルとして飲んでしまえば無駄なく使い終わりますから。しかも発酵カクテルは、天然のエナジードリンクです。体も喜びます!笑
酸味が穏やかなものを探すときの目安は、甘口のシェリー酒ををつくるときに使われるペドロヒメネス種がつかわれたヴィネガーがおすすめです。
・最後に
長くなるのでシェリーヴィネガーがつくられる方法は次回にご紹介しますが、シェリーヴィネガーは、まずシェリー酒がつくられてから誕生する、ということを知ってもらえたらと思います。
日本の味噌やみりんといった発酵調味料のように、スペインならではの発酵調味料がシェリーヴィネガーです。
発酵のチカラと、職人の織りなす文化の賜物が、自然な甘みと琥珀色に変えてくれます。
サラダのドレッシングにはもちろん、オリーブオイルでさっと焼いた肉や魚にかけたり、スープの隠し味やデザートに数滴垂らしてみたり。和食にも取り入れて、食卓をますます楽しくしたいですね。
【参考文献】
・発酵はおいしい! ferment books おのみさ
Tomoko Kato
Editor-in-chief
短大卒業後、パティシエをスタートして食の世界一筋25年。スペイン産オリーブオイルに一目惚れし、輸入して13年。好きなものは、ワインとドラマと読書。3児の子育てと仕事に奮闘中。調理師、オリーブオイルソムリエ、スペインワインと食協会・共同代表。福岡県出身。
【関連記事】
*欲しい魅力がこんなに! 内側から美肌をつくるアーモンドの成分。