・世界一健康な国スペイン:ブルームバーグ「健康な国」指数より
・2040年迄にスペインは世界一の長寿国に:ワシントン大学の調査より


長寿と健康」という最も関心の高いテーマで、世界ランキングの上位に躍り出たスペインに、今熱い視線が注がれています。
スペインには一体どんな健康長寿の秘訣があるのでしょう?

スペイン在住のべ13年の筆者が、スペイン生活で発見した長寿や健康につながる
スペイン人の習慣と、エビデンスをもとにその理由を7つ挙げてみました。

スペイン人が長寿で健康な7つの理由:前編

〈前編〉は、今日からすぐに取り入れられる健康的な食事や生活習慣について、

〈後編〉は、恵まれているスペインのシステムや、気候や自然環境、国民性から検証します

 

1.地中海の食生活

オリーブオイルをふんだんに使うスペイン料理

スペイン人の長寿の理由としてまず挙げられるのは、ユネスコの無形文化財にも認められている「地中海食」です。地中海食とは、スペイン・イタリア・ギリシャ・ポルトガル・ギリシャ・キプロス・クロアチアなど地中海沿岸諸国の食事や食習慣のことです。

その中でも「世界一健康な国」スペインの食にフォーカスすると、まず、ほとんどの料理は、オリーブオイルを用いて調理されます。また海に囲まれ、太陽が降り注ぐ恵まれた地理と気候から、魚介をたくさん食べ、新鮮なフルーツや野菜、ナッツ、豆類を食事にふんだんに取り入れ、生ハムや鶏肉、チーズ、お米なども適度にいただきます。


英国の新聞誌「The Times」は、赤ワインもスペイン人の寿命を延ばす秘訣として挙げています。もちろんアルコールなので飲みすぎは厳禁ですが。「超加工食品を購入するスペイン人はわずか 20% 」という研究結果もでています。


ロハスペイン





2.家族や友達関係の絆が強い

食事の時間とコミュニケーションを大切にする

スペイン人は家族の絆が強く、家族で囲む食事の時間をとても大切にしています。朝食と夕食は軽めで、ランチがメインなので、お昼休みは日本に比べて長め、仕事を途中で切り上げて、家に帰って家族で温かい食卓を囲むスタイルが伝統的です。オフィスワークが増えた昨今では、お昼休みを1時間として、その分早めに仕事を切り上げる、という職場も増えていますが、基本的に経済的な理由もあり、一人暮らしが少ないので、食事はたいてい同居する家族や恋人、ルームメイトと家でとり、コミュニケーションタイムとしても、食事の時間を大切にしています。

普通のレストランのランチメニューは、前菜・メイン・デザート・パン・飲み物(ワインやビールなどのアルコール、ジュース、ミネラルウォーターから選べる)まで含まれているのが主流で、丼ものをはじめ手軽な外食という選択肢も豊富な日本に比べると、安くても10€(1500円前後)からと高く、毎日外食という人は少数派です。


夜は、20時からレストランが開くなど、ヨーロッパの中でも遅めの夕食が特徴のスペインですが、お昼にしっかり食べるため、夜は軽めです。特別な日以外は、料理にもあまり手をかけず、軽くつまむという感覚なので、翌朝胃がもたれることはあまりありません。友人同士で連れだって、店から店へとはしごしてタパスをつまみながらワインやビールを飲むという文化もスペインならではです。

サンセバスチャン


3.散歩の習慣

心と身体の健康を育む"散歩"とコミュニケーションの融合


長い日照時間、他のヨーロッパ諸国よりも高めの気温、歴史ある美しい街並に溶け込む思わず散歩したくなる公園の数々。 多くのスペイン人は、老若男女、散歩を習慣にしています。通りや公園にあるたくさんのベンチには、お年寄りをはじめ、家族づれや若者たちが腰掛け、お友達と楽しく談笑するのが、毎日の散歩とセットの習慣のようです。

美食の街サン・セバスティアンでは、海道をたくさんの人が散歩している光景が印象的です。バスク人の友人にその理由を尋ねると、「夜にまた美味しいものを食べるために、散歩しているんだ」と答えたのが印象的でした。お昼に美味しい料理をたらふく食べて、家族やカップル、友人と、美しいビスケー湾を眺めながらただただ散歩し、カロリー消費し、お腹をすかせて、またみんなで食卓を囲み、美味しい料理をいただく。これは、究極の幸せの形だと思いました。

また、近年マドリードでは、ベビーカーを押すカップルよりも、犬の散歩をしている人に出くわす可能性は 2 倍、と言われるほど愛犬家が多いスペインでは、お散歩人口がますます増えた印象です。



ロハスペイン



4.シエスタと、ゆったりした時間感覚

世界の有名企業も注目。シエスタのうれしい効能

シエスタ(siesta)とは、昼食を食べた後、数分または数時間休息するスペインで生まれた習慣です。今でも「お昼寝」という意味でシエスタを実践しているのは、スペイン人の 中でも18%だけと言われていますが、それでも都会の忙しいオフィスワーカーは昼寝はしないまでも、昼食をデザートと食後のコーヒーまで会話を楽しみながら休憩をゆっくりとってから、午後からの長丁場に備えます。 今でもシエスタを実践しているのは例えば屋外労働者です。夏の炎天下、暑くて畑仕事ができない時間帯(13:00-16:00)に、長めの昼休みをとり、家でしっかり家族と手づくりのお昼ごはんを食べ、30分から1時間ほどシエスタをとってスタミナを回復して、再び夕方からのハードな肉体労働に備えます。シエスタは、夏は22時まで明るく、日中は40℃を超える暑さ、昼食同様夕食も遅いスペインの長い一日を精一杯生きるための、生活の知恵といえるのではないでしょうか。

近年、適度な昼寝は、睡眠不足の解消だけでなく午後の集中力向上や脳と体のリフレッシュ、病気の予防にも効果的であることが立証されたことから、GoogleやNASAなどの有名企業が「シエスタ制度」を導入。その効能に注目が集まっています。

また、シエスタの習慣からも分かるように、スペイン人の時間はゆったりと流れています。スーパーのレジで行列ができても、支払いにもたついている人がいても、イライラせずみんな寛容です。スペイン人は時間にルーズというのは、ドイツ人やフランス人から良く聞く話ですが、たしかに時間の感覚がゆるい分、他人に対しても寛大でいられるのだと思います。いずれにしても、時間がゆったり流れている分、他人に対するストレスが少ないのも、健康長寿の秘訣のひとつだと筆者は考えます。

 

〈後編〉は、恵まれているスペインのシステムや、気候や自然環境、国民性から検証します

・スペイン人が長寿で健康な7つの理由:後編

【参考文献】
・The Times
・Bloomberg
Newsweek

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Ikumi Harada
Art director

大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして勤務後バルセロナへ。スペインワインに恋をして、気がつけばスペイン在住歴トータル13年に。ライフワークは「日本とスペインを繋ぐ架け橋」。大好きなテーマはスペインワインと健康。イヌ好き。WSET ® Level 3、スペインワインと食協会・共同代表。山口県出身。