・世界一健康な国スペイン:ブルームバーグ「健康な国」指数より
・2040年迄にスペインは世界一の長寿国に:ワシントン大学の調査より


長寿と健康」という最も関心の高いテーマで、世界ランキングの上位に躍り出たスペインに、今熱い視線が注がれています。
スペインには一体どんな健康長寿の秘訣があるのでしょう?

スペイン在住のべ13年の筆者が、スペイン生活で発見した長寿や健康につながる
スペイン人の習慣と、エビデンスをもとにその理由を7つ挙げてみました。

スペイン人が長寿で健康な7つの理由:後編

〈前編〉は、今日からすぐに取り入れられる健康的な食事や生活習慣について、
〈後編〉は、恵まれているスペインのシステムや、気候や自然環境、国民性から検証します。

 

5.医療の充実

住んでみて、その手厚さがわかる

政治や社会に不満を抱えるスペイン人も、

「スペインの公的保険制度と医療技術は素晴らしい!」と口を揃えます。

それもそのはず、スペインは医療費が”無料”なのです。Tarjeta sanitaria(タルヘタ・サニタリア)と呼ばれる日本の保険証にあたる医療カードをもつ、公的医療保険に加入している国内居住者は、無料で救急医療やプライマリ・ケアを受けることができます。

この夢のような社会保険制度は、不法滞在の移民でも、緊急の場合は無料で医者にかかれたり、EU圏内の他の国から、手術のためだけにスペインにくるという人も多く、ひずみが生じています。
例えば、がんの手術が2年待ちで、順番が回ってきた時にはすでにお墓の中だった、という笑えない話も聞きます。緊急でない限り、公的保険を利用した公立病院での治療はとにかく時間がかかるので、民間のプライベート保険と併用している人は多いです。プライベート保険は、その会社にもよりますが、月額で検査から手術、個室の入院まで迅速に全て賄ってくれます。


しかも、バルセロナの公立も私立病院も医療技術はとても高いと、みんな胸を張ります。私も、外科、内科の手術で3度、バルセロナで手術入院の経験がありますが、その技術の高さと手厚い対応にはとても満足しています。ただ、matasanos(マタサノス「 matar(殺す)+ sano(健康な)」→ヤブ医者という意味)と呼ばれる田舎の公立病院で、集団訴訟事件に発展するほどひどい治療にあった人も身近にいるので、病院選びは重要です。


「医療が無料」という安心感に加え、高齢になっても家族やコミュニティーの支援も受けられることが、スペインが「世界一健康な国」に輝き、2040年までに世界一の長寿国になる大きな理由の一つだといえるでしょう。

 

lohaspain_ロハスペイン 

 

 

6.太陽に恵まれた気候

日照時間と幸福度は直結する

 

地方によっては300日以上が晴天と言われるほど、太陽に恵まれた国スペインは、一年中安定した地中海性気候で、真っ青な空を見上げて、太陽の光を浴びるだけで幸せな気分になります。スペイン人の陽気で社交的な国民性に、太陽の効力は大きいと思います。

 

大西洋に面したガリシア地方や、バスク地方などの北スペインは、比較的雨が多く緑に囲まれているので「グリーン・スペイン」と言われていますが、内陸は特に雨が少なく乾燥しているため、オーガニック農業に適しています。自然な太陽光をたっぷり浴びた果物や野菜は、甘みが凝縮していて高品質。パリのミシュラン星付きレストランのシェフが、「野菜はスペインのアリカンテまで買いに行く」と言われていたのが印象的でした。日本や他の欧州に比べて値段も安いので、スペイン人は、さまざなま旬の果物や野菜を、毎日たっぷり味わうことができます。

 

またスペイン人は、とにかく太陽が好きで、一年を通してビーチや公園で日光浴をする人たちで賑わいます。バカンスは、海辺の街で毎日ビーチに寝そべって日焼けを楽しみながら過ごすというのが、スペイン人の幸せな夏の過ごし方の一つ。絶対に日焼けしたくない日本人女性には理解できない感覚ですね。バルやカフェも、断然テラス席が人気です。


lohaspain_garraf 


7.ポジティブマインド

世界で一番ハッピーな言語「スペイン語」

 

スペイン語は、「世界で一番ハッピーな言語」だと、 バーモント大学のピーター・ドッズ教授が全米科学アカデミーで発表しました。世界で最も広く話されている 10 の言語から 100,000 語を分析。 スペイン語は、「悲しい」や「泣く」などの否定的な言葉よりも、「愛」や「笑い」など、ポジティブな言葉が多く用いられている言語なのだそうです。

たしかにスペイン人は、ユーモアが好きで、くよくよ気にしないポジティブな人が多いです。スペイン語が話せなくて悩んでいたときも、みんな「ノー パサナダ No pasa nada.(たいしたことないよ/ 大丈夫だよ)」とか、「ポコアポコ poco a poco (一歩づつ→急がなくても大丈夫だよ)」という言葉をかけてくれました。

また、何気ない呼びかけさえも、男性には「グアポ guapo (ハンサム)」女性には「グアパ guapa (美人)」という褒め言葉を用います。初めて会った人に「美人」とか「イケメン」と言われると、日本人の感覚では真に受けてドギマギしたり、照れてしまいますが、その言葉に下心は全くなく、老若男女、誰にでも使うので悪い気はしません。とにかく何気ない言葉がポジティブで、褒め言葉だったり、必ず最後は笑いにつなげたり。「世界で一番ハッピーな言語」というのも、うなずけます。

スペイン本国を入れて、21の国や地域がスペイン語を公用語としていますが、メキシコやキューバ、アルゼンチンなど、スペイン語を話す国に陽気な人が多いのも、スペイン語の持つハッピー要素が影響しているのかもしれません。脳科学的にも、ポジティブな言葉は健康にもプラスに働くと言われています。

ロハスペイン_バルセロナ

 

以上、スペイン人から学ぶ健康長寿の秘訣は、

健康的な地中海食と適度な運動、そして安心の医療制度。その根底には常に、家族や友人との深い絆が根ざしている、ということではないでしょうか。現在、長寿世界一の日本と、スペインの秘訣をうまく合わせたら、最強のライフスタイルが誕生するのではないかと思いました。あなたの健康と長寿のための、少しでもヒントになれば幸いです。

 

スペイン人が長寿で健康な7つの理由:前編

 

【参考文献】

・The Times
・Bloomberg
・Newsweek

 

-------------------------

Ikumi Harada
Art director

大学卒業後、広告代理店でデザイナーとして勤務後バルセロナへ。スペインワインに恋をして、気がつけばスペイン在住歴トータル13年に。ライフワークは「日本とスペインを繋ぐ架け橋」。大好きなテーマはスペインワインと健康。イヌ好き。WSET ® Level 3、スペインワインと食協会・共同代表。山口県出身。