一晩で完売したアーモンドショコラ。
その理由を確かめに、大阪へ行ってきました。目的は、ただ取材をするためだけではありません。

扉を開けた瞬間、空気が変わる
パティスリーの工房に足を踏み入れた瞬間、ふわりと立ち上る、甘く、複雑な香りに包まれました。
大きなオーブンでは生地が焼かれ、コンロではカスタードクリームが炊かれ、中央の作業台では生クリームが泡立てられています。台の向こう側では、別のケーキのための計量が行われ、どこからか、紅茶の香りも漂ってきます。
空気そのものが、ここで生まれるスイーツの世界観を物語っていました。

ラルゲタアーモンドショコラ、まずはキャラメリゼから始まる
まず見せていただいたのは、アーモンドのキャラメリゼ。銅鍋の中で砂糖の色が少しずつ深まり、艶が生まれていきます。「ここだ」という瞬間に、ラルゲタアーモンドを投入。一気に混ぜると白くなり、そこからさらに混ぜながら火を入れてキャラメリゼしていきます。

色づき始めたところで火を止め、バターを加え、アーモンド同士がくっつくのを防ぐ。ほろ苦く甘い香りにバターのコク。思わず香りにうっとりしそうになりますが、すぐにアーモンドをバラしていきます。

これは根気のいる仕事
冷蔵庫で粗熱を取ったアーモンドキャラメリゼに、いよいよチョコレートがかけられていきます。
「テンパリングしたチョコをアーモンドにまとわせていく」と聞くと、どこか優雅なお菓子作りを想像してしまします。けれども実際は、体育会系も顔負けの、ひたすら根気のいる作業でした。
とにかく、混ぜる。しかも、ゴムベラ一本で。

(テンパリングとは、チョコを美味しく仕上げるために必須な温度調整の工程です。50度→27度→30度と温度を細かく管理し、ココアバターを結晶にします。)
つまり、テンパリング自体が、すでに繊細な作業なのです。
5回以上、同じ工程を繰り返す理由
ボウルの中のアーモンドにチョコをかけ、混ぜ、くっつき合うアーモンドを手でほぐす。そしてまた、丁寧にテンパリングしたチョコをかける。

この工程を、なんと5回以上。しかも毎回、チョコレートはテンパリングをし直す。それはもう、見ているだけで、手首や腕にじわりと重みが伝わってくるような作業でした。

何度も「1分間に何回混ぜているのだろう」と数えようとしましたが、おいつきません。4回目、5回目と、疲れがピークに近づく頃でも、1回目から同じ精度で温度計をつかい、チョコの状態を整えていました。

シンプルだからこそ、ごまかしがきかない。
工程自体は、究極にシンプル。

けれどこれは、手作業の限界に近い仕事だと感じました。「少し多めにつくる」ということが、簡単にはできないはずです。スタッフの腕が回復しなければ、次はつくれないのです。

だからこそ、この味わいが生まれる。そう、心から納得しました。
大阪まで来た、本当の理由
今回、大阪まで足を運んだ理由は、ここにありました。
これまでLINEや電話越しにやり取りを重ねてきたオーナーの加奈代さんに、数年ぶりにお会いしたかったこと。そして、まだお会いできていなかったスタッフの皆さんに「ありがとうございます」と、直接お伝えしたかったこと。
昨年、ひと晩で完売したこと。多くの方が、このアーモンドショコラを心待ちにしていること。味わった方々から届く、その感動の声。
それを顔を合わせて報告し、感謝を伝えたかったのです。

「これからも、ぜひつくり続けてください」
もう一つ、大切なお願いがありました。それは「これからも、このアーモンドショコラをつくり続けてください」ということ。
現場を見て、人に会い、手仕事の重みを肌で感じた今だからこそ、形式ではなく、私自身の覚悟として伝えたいと思いました。

味わいの正体は「人」だった
実際にお会いして、リアルな作業を拝見し、言葉を交わすなかで、改めて実感しました。この味わいが生まれる理由は、素材や技術だけでは語れないのだと。

驚くほどシンプルな工程を、近道のない誠実な手仕事で積み重ねているから。
「ここで、この人たちがつくっているから」それが、このアーモンドショコラの味わいの秘密なんだと、腑に落ちました。

昨年、味わいだけですでに「ここにお願いしてよかった」と感じていました。ご購入くださった方々から届く声により、それが独りよがりではないということも実感していました。
今回、加奈代さんとスタッフの皆さんにお会いし、ゼロから完成までを見せていただき、筆者自身がこの現場の大ファンになってしまいました。

スタッフの皆さんのプロ意識、スタッフさんたちを見守る加奈代さんの想い、「この人たちがつくってくれる」ということが、何よりも誇らしく嬉しく感じられたひとときでした。
笑顔が教えてくれたこと
「販売をスタートすると、ひと晩で完売するんです」そうお伝えした瞬間、スタッフの皆さんの表情がぱっと明るくなりました。その場に広がった笑顔は、今もはっきりと心に残っています。

この日、ラルゲタアーモンドショコラを作ってくださったはるかさん。
これを見るために、新幹線に乗ってきて、本当によかった。
そう思いながら、東京へ戻ってきました。
人の手を経て、生まれる味わい
このラルゲタアーモンドショコラは、こうした人と人とのやり取りの先に、生まれています。
バレンタインの贈りものとして。そして頑張ったご自身へのご褒美としても。
心からおすすめしたい一品です。

この日出勤していた1Fパティスリーのスタッフの方々(真中:オーナー加奈代さん)
【ご購入はこちらから】
このアーモンドショコラは、一粒一粒、手作業で仕上げられています。
そのため生産できる数量には限りがあり、前回はいずれも一晩で完売となりました。
もしこの記事を読んで、「あの香ばしさを、実際に味わってみたい」そう感じられた方はどうぞお早めにご覧ください。
(数量に達し次第、販売終了となります)

Tomoko Kato 加藤智子
Journalist (Spanish Food Culture & Wine) & Editorial Producer
福岡出身のジャーナリスト/スペイン食文化・ワイン専門、編集プロデューサー。料理人、ワイン販売、広報・PRを経て、輸入・販売の(株)LA PASIONを設立し、17年にわたりインポーター業を継続。2011年「スペインワインと食協会」を創設し、スペイン食文化とライフスタイルを軸に多くのイベントや講座をプロデュース。ジャーナリストとしてスペイン州政府や企業団体からの招聘を受け、現地展示会や生産者プレスツアーに毎年参加するほか、行政機関や企業団体のイベント企画・発信も行っている。協会公式サイトおよびWebマガジン「LOHASPAIN」は編集長として、コンテンツ企画・構成・執筆を一貫して手がけ、スペインワインと食文化の魅力を国内外に発信中。オリーブオイルソムリエ®、Spanish Pantry(ICEX認定)。
@ tomoko_kato_lapasion

